【作者直撃】間取りって面白い。そこから「マドリーノ」は作られた

ボードゲームを作った人の話を聞く【作者直撃】の2回目。作者の話を聞いてから、その人のゲームを遊ぶと狙いや意味がハッキリして楽しさが倍増するもんです。

今回の作者は“マドリーノ”などを作ったナナワリの大山徹さんです。ボードゲームとの出会い、“ポラリッチ”や“ワードン”などの制作秘話、夫婦でゲームを作る理由などいろんな話を伺いました!

 

じゃれ本Nightから1年ぶりの再会

ーーお久しぶりって事になるんですよね。

「じゃれ本のイベントですよね、ちょうど1年前とか?」

ーーまだ普通にイベントやれてたので去年の2月上旬ですね。情熱大陸が田丸雅智さんを密着取材してて。あの時は田丸さんのインタビューだったので大山さんとはほとんど話してなかったですけどね。

イベント潜入レポート「じゃれ本Night」

ーーまず、今おいくつなんですか?

「……いくつに見えます?」

ーーインタビュー取材でそんなパターンあるんですね。面倒臭〜い。

「いえいえ、今39です」

ーーお仕事は何をされてるんですか?

「広告代理店です」

ーー具体的にはどんな事をやってるんですか?

「広告などの企画と制作ですね…キャッチコピーとかCMとか、他いろいろやっています」

ーーじゃあ、ボードゲーム作りはあくまでも趣味って感じですかね。

「そうなりますね」

ーー勝手に抱くイメージですけど、広告代理店って仕事忙しいから趣味とかそんな時間は無いのかなぁと。

「やれている人間は多い気がしますね。ん〜、だから時間が無くなってなくなって切羽詰まって働いてるのかなと」

 

 

中学時代のカタンとマジック・ザ・ギャザリング

ーー普段からボードゲームはやるんですか?

「趣味って言える程やっているかどうかは怪しいですけど、古くから好きだったりはしてまして…」

ーーどれくらい前ですか?

「1995年に“カタン”が入ってきて…当時、中学生でしたけど友人と面白そうだなと一緒に買ってやっていました。“カタン”やりながら“マジック・ザ・ギャザリング”も」

ーー“カタン”が入って来た時にリアルタイムで遊んでたんですね!

「学校にデジタルのゲームは持ち込めなかったけど、何故かアナログは持ち込めたので。ま、“カタン”は持ち込んでなかったかも知れないですけどマジックなら」

ーー海外のボードゲームとかカードゲームが日本に入って来たらしいってのは雑誌とかで情報として知ってましたけど、中学の時に知って遊んでたってのは羨ましいですね。

「幸いやってくれる友人が周りにいて。トレーディングカードも交換出来ますし。で、イエローサブマリンとかトライソフトとかでマジックを扱っていたので彼らと店に行っていたら、輸入された“カタン”を取り扱っていて知るという感じですね」

ーーじゃあボードゲーム歴は長いですねぇ。四半世紀くらい!

「いえ、大学まではやっていて…そこで一旦ちょっと空くんですよ。環境が変わって、遊んでくれる友人が周りからいなくなっちゃったので」

ーーどうしてもボードゲームは対人ですからね。相手がいないとねぇ。

「そうですね。一応あったんですよ、マジック・ザ・ギャザリングのサークルが。でも人間関係が出来上がってて、ちょっと入れないなという空気で」

 

 

モンハンだけじゃなくボードゲームも面白い

ーーそれで間が空いて、ボードゲームを再開するきっかけは何ですか?

「いつですかね〜…ジェリージェリーカフェが渋谷に出来た頃…10年くらい前ですかね。お店行って、今となっては何を遊んだか覚えてないんですけど」

ーー2011年9月オープンだからそれくらいですかね。遊んだゲームは忘れちゃってると…。って事は10年くらいゲームからは離れてた訳ですね。

「いえ、ずーっとデジタルの方は遊んでて……Wiiとか。だからゲームはずっとやっているという感覚ではあったんです。それこそPSPでモンスターハンターが出た頃、あれが半分アナログと言うか対面で遊べるゲームという認識になっていましたね。PSP持って12時間ファミレスにいる、みたいな生活を送っていました」

ーー今から思うと対面可能という部分に魅了されてたんですか?

「あの時は凄い画期的だと思ったんですよねぇ。集まれば良かったんだ〜って。みんな集まって麻雀やるのと似てるのかも知れないですけど、アナログだと集まれるんだぁと再発見でした」

ーーボードゲームは10年近く触ってなかったのにジェリカフェ渋谷店に行ったのは何故ですか?

「何でですかね〜。妻と行ったんですけど…気が付くとその前からボードゲームらしき物を買ったりしてたんですよ。何持ってたかは覚えてないですけど…」

ーー遊んだゲームも持ってたゲームも覚えてないなんて〜。でも購入してたんですね。

「自分の中で急にボードゲームが来たんですよ、そう言えば“カタン”持ってたな〜とか」

ーー中学の時のやつを捨てずに持ってたんですか。

「そうなんですよ、ずーっと持ってて」

ーーじゃあ中学時代にボードゲームで楽しんだ思い出を引きずってて、奥さんと何か遊べるゲームを買おうとしてた…とかですかね?

「あっ!そう!!それですね」

ーー今、思い出した感じになってますけど…。無理矢理合わせなくても大丈夫ですけどね。

「それで“ガイスター  ”とか“クアルト”買ったりとか」

ーーイエローサブマリンとか扱ってる店の知識はあったんですもんね。

「うっすらとイエサブってまだあるのかな?みたいな感じでしたけど」

ーーじゃあ奥さんと時間空いた時にボードゲームやるようになっていたと?

「そうですね。モンハンとかもやってて、…妻はゲームが凄い好きで今もデジタルゲームを一緒に遊んでいるんですけど『ボードゲームも面白いね』みたいな感じになってて」

ーーお互いゲームが好きという共通の趣味があったんですね。じゃあ『ボードゲームカフェってのが渋谷に出来たらしいよ』と。

「そうですね。でも当時ボードゲームは置いているけどコワーキングスペースも兼ねていた頃で、ゲームは置いてあるのでご自由にどうぞって」

ーーそうそう!初期のジェリカフェってそんな感じでしたよね!ボードゲームはオマケ程度で、店員はドリンク担当みたいなね。

「店員さんも『私は詳しくないんです』『Wi-Fiは飛んでます』みたいな」

ーーハハハ、そうそう!ルール説明出来なくて勝手にどうぞってね。じゃあ、そこから再びボードゲームにハマっていく訳ですね?

「そうですね、他のボードゲームカフェも行くようになって。そこで面白かったのを買うようになってドンドン持っているのが増えていきましたね。あとはすごろくやさんに行き始めたというのが大きいですかね。すごろくやさんに行くと3〜4個買っちゃって。前から気になっていた物とその場でデザインが良い物とか。気付くと100個くらいになってました」

ーーその頃に衝撃受けたボードゲームとか印象深いボードゲームはありますか?

「その当時斬新だなぁって思ったのは“キャメルアップ”ですかね」

ーーあれ?普通ですね。変わったゲームを作るから変なゲームタイトルが挙がるかと思ってしまいました。

 

 

初めて作ったのはルールが無いボードゲーム

ーーゲームを作ろうと思ったきっかけは何ですか?

「大学の同級生の島田(賢一)と社会学のゼミが一緒で、何故かボードゲームを作ってたゼミで」

ーーえ?授業でボードゲーム作り?

「授業の中でコミュニケーションとは何なのか?というのを学ぶ為のボードゲームを彼は作っていて、私はケータイ電話を調べるという全然違う事をやってたのでそのボードゲームを横目で見てたんです。それで『ここ変えた方が面白いんじゃない?』とか勝手に言ってたりして。それで大学卒業後にちょくちょく卒業制作展に出してたんです、卒業生も出して良いよって先生が言ってくれていたので。それで毎年何かしら出していたんですけど、ある時島田と二人で一緒にやってみようという話になり、アナログゲーム関連でやってみようと」

ーーなんでゲームにしようという話になったんですか?

「彼はゲーム会社にいて、私も広告やる前はゲーム会社を目指してて、中学生の頃からプログラミングとかやっていたんですよ。だから完全にゲームの世界に行くんだろうなぁと思いながら大学生活を過ごしていたんです。そしたら大学の先生に佐藤雅彦先生がいらして……だんご3兄弟とかピタゴラスイッチとかの」

ーーポリンキーとかドンタコスとかのCMを作った方ですね。

「プレイステーションで“I.Q”作っていた人だと思っていたので、授業聞いて『え?メインはCM作りだったんだ〜』って。それで佐藤先生は、作り方を作る…という言い方をされているんですけれど、広告もゲームも番組作りも共通した方法論で作っているという授業なんですよ。その話が面白くて広告を作る方に結果的には進んだんですけど、ゲームもいつか作りたいなぁとず〜っと思ってたんです」

ーーその授業って、アイデアの出し方とか?どう具体化するかみたいなことですか?

「どうすれば自分が面白いって思っている物を作れるようになるかという授業でした」

ーーそれは興味深い授業ですね〜。

「でも授業を受けて10年経った今分かったのは、結局あのやり方は佐藤先生にしか出来ない!」

ーーブハハハ〜、天才のやり方は天才にしか出来ないと。

「そうなんですよ。しかも、朝アイデアが突然降ってきたとか言ってたなぁ〜と。」

ーーアハハハ。ひらめく時は理屈じゃないんですね。

「でも教えていただいた方法論や自分の中で面白いと思うことをこうやって整理するやり方はその通りだなって。作り方は自分自身で作る必要があるんだなと。」

ーーゲームを作りたいって思いがずっとあったのは分かりましたけど、デジタルゲームじゃなくアナログゲームだったのは何故ですか?

「デジタルは頑張れば作れたと思うんです、売れるようなものが作れるかどうかは置いておいて。一方でボードゲームは作れないと思っていたので…木を形作るとか、コマを作るとか、ボードもどうやって作ってるのと?と。それが3Dプリンターじゃないですけど、調べてみると自分の手でいろいろと作れるんだ。出来ないと思っていたものが出来るようになるなら、やってみようかなと。あとは単純にボードゲームが好きになっていたので」

ーーそれが何年くらいの話ですか?

「2014年ですね。」

ーーさっき言ってた“キャメルアップ”とかが発売された頃ですかね。どんなのを作ったんですか?

「卒業制作展では、積み木などのコンポーネントだけがあってルールは無いので皆さんルールを考えて遊んで下さいという展示でした。隣でどんな遊び方をしたのかというのを記録取っていくという」

ーーゲームと言うよりはアート作品って感じですかね。

「そうですね。それから、ものづくりを始めるようになって。ある時、木のおもちゃの作家さんと話す機会があって『それなら小田原の木工所で作れるよ』と聞いて、小田原の木工所に行って。売り物にはならない価格帯のものを一つだけ作りました。凄く良い物が仕上がってきたんですけど」

ーーホントの一点物ですね。

「それを2015年に東京デザイナーズウィークというアート展に出しまして。その時にこういう物がみんなの手に渡ったり、遊べたりしたら子供たちも喜ぶんじゃないかと思うようになりまして。ゲームマーケットで配れるくらいの数は作ってみたいなと。それで誰かと一緒に組んでやれたら面白そうだなと声を掛けたのが田丸雅智さんなんです」

ーー本格的に作った最初のゲームがリレー小説の“じゃれ本”なんですか?!!

「そうですね」

ーーでも“じゃれ本”ってあれはゲームなんですかね?

「こういうの出したら皆どういう反応をするんだろう…とゲームマーケットに出して。ブースに来て頂いた方に『こういう物なんです』って言うと『ふ〜ん見たことないよねぇ…500円なら良いか』って感じで買って頂いて。その半年後のゲームマーケットで『やってみたら不思議な感じでした』とか『あんなに笑ったの初めてでした』という意見をいただいて。ツイッター見ると『面白い。でもゲームじゃないんですよね』って。一時期、神保町のアソビカフェに持ち込んでやってくれてた方が『ボードゲームではないと思うけどボードゲームカフェで遊べる物』とおっしゃってて。そこからは遊べるものになっていればいいじゃないか!と思うようになりましたね」

 

 

これがゲームになればいいのにね

ーー島田さんとはdaitai名義で“じゃれ本”とかを作った訳ですけど、今もボードゲームは作ってるんですか?

「今はお互い子供がいたり、家庭環境が変わったりで忙しくなって。会ってガッツリ作るのが出来なくなってしまいました。今後も一緒に作りたいとは思っています」

ーーそんな中、ナナワリ名義でゲーム作り。これって奥さんと2人で作ってるんですよね?夫婦で作ってるのは珍しいケースですよ。

「3年前に子供が小学生で足し算を覚え始めて。夏休みの宿題で算数のドリル持ってきたんですけど、やらないんですよ。なんでやらないのかと訊いたら『出来る。分かる』って言うんですよ。書かなくても分かるんだと。出来るのと慣れるのは違うし、だからドリルなのに…と。逆に言うと面白くないんだろうなって。そこで妻が、小学生が使う算数ブロックを右手と左手に握ってパッと出して『何個と何個か数えて?』って見せると『2個と3個で5個!』と何回でもやっているんですよ。それでドリルやるようになればいいかなぁ〜と。『これがゲームになれば良いのにね』って言ってて。じゃあ作ってみるかと。それが“ポラリッチ”になりますね」

ーーそんな思い付きみたいなきっかけなんですね。

「そしたら妻はエンジニアで工場の設計とかの仕事をしてるので、発注をするとかプロジェクトを進めていくとか普段からやっていて、何かに火が付いたみたいで『中国の工場だとコマ作れるみたい』とかやり取り始めるんですよ」

ーー仕事でやってる事だからやりたくない…じゃないんですね。

「ゲームの中身に関してはコップに隠した方がいいとか家族総出でやっていたんですけど、発注とか予算とかスケジュール管理とかは彼女がやっていましたね」

ーー大山さんの作業は?

「主にこのゲームをどう見せようかと。名前どうしようとか、もっとキレイにするにはどうしようとか、キャッチコピーとか。それはこっちが仕事で普段やってる事なので。最終的には二人で決めています。」

ーー得意分野をそれぞれが担ってたんですね。完成した“ポラリッチ”は自分のお子さんには好評でした?

「子供が“ポラリッチ”あんまりやってくれないというね…」

ーーガハハハ。それは悲しい話だ。でも2019年のゲームマーケット大賞ではキッズ賞を貰って、ゲームとしてちゃんと評価されてますもんね。

「ありがたいですね」

 

 

得点をなくしたことでマドリーノは笑えるようになった

ーー“ポラリッチ”の次に作ったボードゲームは何ですか?

「“マドリーノ”になります」

ーーメチャクチャな間取りを書くゲームですね。このゲームはどんなきっかけで作られたんですか?

「お互いに『こんなの出来ないかなぁ』と話していて、彼女が『間取りのゲーム出来ないかな』って。『間取りって面白いよね』という話になりまして」

ーー間取りって面白いですか…?でも、ヘンな間取りって本も話題になったりしたか…。

「ありましたよね!変な間取りは見てるだけで笑えるという共通体験があって、ゲームにならないかなぁというのが始まりですかね。いろいろカードゲームで実現できないか考えて、紙ペンで間取りを書いていくのが良さそうだなと。それで無理難題を押し付けられるという風にしたら変な間取りが出来て、笑えたんですよ」

ーー”マドリーノ”の何が凄いって、間取りが出来上がったら得点化しそうなもんじゃないですか。それが面白いプレゼンして選ばれるのが目標って!

「そこが苦労したところなんですよ。自分達も最初は得点にするもんだと思ってたんです、じゃないと勝敗が決まらないので。窓が何点とか、壁がちゃんと繋がったら何点とか、部屋が広い方が高得点とか。ところがいざ得点化してみたら、みんなその得点がほしくて進めていくから、変な間取りにならなかったんですよ。みんな普通の間取り。」

ーー得点の設定が悪かったんですかね?

「壁が離れてたら加点とか変な間取りになりそうな要素を高得点にしてみたら、みんな壁を端っこから書き出して、壁を離してみたりとかして間取りとして全く面白くないんですよ。で、これはヤバいと思って。もうその時には箱とかボードとかコンポーネントは全部発注していたんですよ」

ーールール固まってないのに物だけは揃っちゃってたんですね。

「ただ説明書だけは出来ていなくて、ルールは最後まで詰められるようにしていたんです。

ーーそれは賢い!ギリギリまでルールを考えられたと。

「それで間取りを見て笑うという体験自体が無くなってしまうようなルールはきっと違うのだと考えたんです。勝敗を決めるよりも、みんなで間取りを笑い合う体験を重視したルールにしようと。そう考えたら、出来上がった間取りをみんなで見て、話し合っているだけで十分なのではないか?となりました。『こんな間取り無いよ〜』『強いて言うならアリなのはこれ?』って言い合ってるだけで楽しい。ゲームになっているかどうかよりも、その体験をできるようになっているか、だなと」

ーー笑った体験に絞った結果なんですね。反響はいかがでした?

「『ゲームじゃない』って言われて、海外だとスレッド立って議論になってましたよ」

 

体験してもらう為に何が合ってるか

ーーこのインタビューが2人目なのでまだ断言出来ないですけど、大山さんは他の人とボードゲームの作り方が違いそうですね?

「今日話していて自分でもそんな気がしてきました。他の皆さんは、こういうルールを作りたいというところから作っている方が多い気がしています。今までにない新しいシステムから入ってみる。で、そのシステムやルールに合う世界観は何だろうという順番で考えているのかなぁと。私たちは、間取りってなんか楽しい…というのをなんとかボードゲーム、遊びという形で共有したい。それだったら、カードゲームがいいのか、すごろくがいいのか、紙ペンがいいのか、という流れで。“ポラリッチ”ならいつの間にか楽しく計算出来ていたという体験。こういう体験をして欲しい。その体験をしてもらう為に何が合っているのかという順番で考えていますね」

ーー“ワードン”も何か体験させたいってのがあったんですか?

「そんな話をしておきながら“ワードン”はちょっと違うのかなぁ…?沈黙の艦隊って漫画を全巻読みまして。それがメチャクチャ面白くて『潜水艦のゲーム作りたいっ!!』と。潜水艦とか海戦モノとかやれないかなと。『そう言えば昔、潜水艦ゲームあったよなぁ』と思い出して、五十音の表に置き換えて2人でやってみたら、彼女も面白いと」

ーー五十音の表を使おうってのはどこから来たアイデアなんですか?

「う〜ん…なんでですかね〜。なんで思い付いたんだろう?この前に“みもじ”を作って、ひらがなのタイルを9枚並べてそこにタイル1枚差し入れて3文字の言葉を見つけるというゲームで。妻も好きだと言ってくれているゲームです。『頭の中にある言葉を探すパズルみたい』って言ってました。でもこれがゲームとしてはちょっと難しいんですよ。難しいから面白いのですが、もうちょっと簡単なワードゲーム作りたいなぁというのはありましたけどね」

ーーワードゲームのリベンジみたいな思いがあったんですね。

ーー五十音表を使うって、昔からある古典ゲームなのに誰もやってなかった発明だと思うんですけど。言葉で潜水艦ゲーム作ってた人っていたのかなぁ〜。

「いたような気もしますよね〜。でも凄い調べました、ありとあらゆるタイプの潜水艦ゲームを。どうも無さそうですし、メモ帳という形もあまり無さそうでしたので、作っても良いかなと思いました」

ーーリモートで対戦できるのも今っぽいし良く出来てますよね。ホントは沈黙の艦隊を体験させたいんですよね。このゲームに関してはあくまでもイメージですか。

「私が“ワードン”やってる時は、気分は沈黙の艦隊です!」

ーー奥さんは何か言ってました?

「何言ってんの?って感じでしたけど」

 

NYの地下鉄路線図はキレイ

ーー新作は何かあるんですか?

「“ライズオブザメトロ”を春のゲームマーケットで出します。(昨年の秋に間に合いませんでした。)今回はゲームらしいゲームですね」

ーーこれは地下鉄を体験させたい訳ですか?

「これはですね、ニューヨークの地下鉄の路線図が凄いキレイで。それを作れるゲームです」

ーーボード上で再現出来ると。路線図作りの体験ですね。

「(タブレットでニューヨークの路線図見ながら)ちゃんとデザイナーさんが書いてるんですけどキレイで整然としてる感じがいいなぁと思っていて、路線図ってちゃんと作れば良いデザインになるんだなと」

「路線が繋がって交流が多い駅が得点高いとか、だんだんルールが固まっていきました。そのあともコンポーネントとして紙ペンかな、六角形のタイルにしようかなと悩みまして。ボードにしようと決めまして、そのあともマップの種類を六角形にするか、三角形にするか、図形の敷き詰め方を調べ出して。最終的には地図の上に三角形の線を引くという形でこういうボードのデザインに落ち着きました」

ーーこれは奥さん関わってるんですか?

「関わってますね。例えばデザインの原案は私が描いてるんですよ、(タブレット見せながら)これとか」

ーーアートデザインは大山さんなんですね。

「妻のノートを持ってきたんですけど…思い付きで『こういうルール面白いんじゃない』って言ったのをメモってくれていて。それで、これは良かったダメだったとか、ここは検討とか彼女が書いてくれています」

ーー(ノート見て)うわー!かなり細かくメモ取ってるんですね〜。最高の記録係じゃないですか!ダメ出しも赤ペンでいっぱい書いてますね。奥さんの熱量もなかなかですよ。

「気付くと記録と進行やってくれていて」

ーー“ポラリッチ”は自分の子供の為ってのがあったじゃないですか?それ以降は奥さんのモチベーションはどこにあったんですかね?

「設計して形になるという仕事をしてる人なので、こういうのが楽しかったみたいですね。ものづくりが」

ーー夫婦共同作業って感じですよね。お互い仕事の特性を活かして。

「私が仕事でやってる事と妻が仕事でやってる事と共通してることも多いんですけど、仕事では出来ない部分をやっているので楽しく…ですね」

ーー仕事でのストレスをそこで解消してるってのもあるんですかね。

「それはあるかもしれません」

ーーでも2人で作ってると揉めません?

「ゲームづくりでストレスを溜めるのはやめようと話をしていて。…ま、完成する直前はストレス溜まるんですけどね。でも、お互いが作りたい物を作ろうというのが大前提です。だって趣味なんだからと。他の人が何て言おうがまずは自分たちが面白いと思う物を作ると。あと彼女はツイッターも懸命にやってくれていて、それも含めて活動全体が楽しいんでしょうね。僕もルール説明の映像を自分の手で編集したりとか、普段の仕事では自分自身でやらないことを、やりたくてやっています」

ーーホントに楽しんでやってるんですね。よく奥さんと出会えたなぁと。出会うべくしてと言うか。2人ともゲーム好きで、ものづくり好きで。今日はお忙しい中、お話しして頂きありがとうございました!

 

終わっての感想

大山さんが作ってるボードゲームって見た目がオシャレなんですよ。棚に飾っても様になると言うか、キャッチーと言うか。それって広告作りの手法だったって事なんでしょうね。ルールとかじゃない部分も大事ですよ、ボードゲームって。

それにしても夫婦で楽しんで作ってるんだから微笑ましい。こうして話を聞くと、ナナワリのボードゲームを遊んでる時に「面白い」「楽しい」って感じてるのは、作ってる時の楽しさがそのままパッケージされてるって事なのかも知れませんね。面白い体験を伝えるのが上手い夫婦。そして「面白い」を感覚だけじゃなく言葉で説明出来るゲームデザイナー。これは今後の作品も期待してしまいますな。