ボードゲームの企画展「URABAKO」レポート&主催者インタビュー! 『JI・SO・GI』のEsper Game Studioが仕掛けた企画の狙いとは!? 

2026年9月22日と23日の2日間にわたり、東京・飯田橋の東京日仏学院にて、ゲームカルチャーイベント「The Tenth Mosaic(ザ・テンス・モザイク)」が開催された。欧米においてゲームが「第10の芸術」と称されることにインスピレーションを受けた本イベントは、トークセッションやライブなど多彩な表現を通して、ゲーム文化の深みに触れられる横断的なメディアアートの祭典だ。

会場内では、1980年代に登場したパソコン(PC-8801mkIISRやMSX)やレトロゲーム機(幻の未発売ゲームハード「Panasonic M2」も!)等の展示や、インディーゲームの試遊コーナー、『ペルソナ』シリーズを築き上げたクリエイターの座談会、水口哲也氏による『Rez』25周年振り返り講演、古代祐三氏(『イース』『ベア・ナックル』シリーズなど)や小林早織氏(『パンツァードラグーン』シリーズなど)のライブイベント、ゲームを通してフランス語を学ぶアクティビティなど、様々な企画が用意されていた。

▲会場の東京日仏学院は、フランス政府が管理・運営する語学学校・文化センター

▲インディーゲーム試遊コーナー

▲懐かしいレトロなゲームハードがズラリと並んでおり、未発売ゲームハード「Panasonic M2」はケースに入れたれて厳重に守られていた

▲東京ゲームショウ2026で来日していた外国人が、そのままこっらのイベントにも来場していた印象だ

▲セガサターンで発売された『エネミー・ゼロ』(1996年12月発売)の30周年記念展示

そして、この「The Tenth Mosaic」内の注目企画として展開されたのが、日本のインディペンデントなボードゲーム文化に光を当てる「URABAKO(ウラバコ)」だ。

ボードゲームの体験は、一般的に「箱(パッケージ)を開けてルールに従って遊ぶ」ことで完結する。「URABAKO」のコンセプトは、その名のとおり「箱の裏側(URABAKO)」にある制作背景やグラフィックデザイン、ものづくりの哲学を紐解くこと。

近年、日本のボードゲームシーンは世界的な評価を高めており、ゲームデザインの面白さだけでなく、アートワークやコンポーネント等、その緻密なプロダクトデザインも大きな魅力となっている。

この「URABAKO」では、そうした個性豊かな日本のボードゲームを「プロダクト」や「アート作品」として再解釈し、ギャラリーやデザインショップで作品を鑑賞するように楽しめる空間を作り出した。

▲会場となった東京日仏学院の一室。入口から「URABAKO」のロゴが見えた

参加したボードゲーム会社は、以下のとおり。

●SzpiLAB(『プラネピタ』『スノープ』など)
●itten(『TOKYO HIGHWAY』『クラッシュオクトパス』など)
●Saashi & Saashi(『レイルウェイ・ポーター』『バス&ストップ』など)
●TRICKTAKERs GAMEs(『エターナルデックス』『エターナルセブンズ』など)
●14games(『スノープランナー』『エレメンティカ』など)
●Esper Game Studio(『JI・SO・GI』『エルダータイド:千の光』など)

▲SzpiLAB

▲itten

▲Saashi & Saashi

▲TRICKTAKERs GAMEs

▲14games

▲Esper Game Studio

展示会場では、普段は完成品としてしか見ることのできないカードやアートワークを間近で観察できるだけでなく、作り手の思考プロセスや作品が生まれるまでのストーリーにもふれている。さらに、気になった作品を実際にプレイできるゲーム体験エリアや、その場で作品を購入できるコーナーも併設されており、「見る・知る・遊ぶ・持ち帰る」という立体的な体験ができる仕組みとなっていた。

▲物販コーナーでは、展示されていたボードゲームを購入することができた

「ゲーム」という枠組みを超え、優れたデザインやカルチャーとしての魅力を提示する「URABAKO」。ボードゲームファンはもちろん、デザインやものづくりに関心のある層にとっても、新たなインスピレーションを与える試みとなっていた。

主催のEsper Game Studioインタビュー

本企画展を主催したのは、新進気鋭のEsper Game Studio。アニメ業界を題材にした『JI・SO・GI』で法人デビューし、今夏にリリースした『エルダータイド』も話題となっている。そんなエスパーゲームがなぜこのようなイベントを主催したのか。同社の代表である坂本奈穂氏(以下「坂本」)と、ゲームディレクターのエスパー・ロドリゴ氏(以下「ロドリゴ」)に話を聞いた。

▲坂本奈穂氏(左)とエスパー・ロドリゴ氏

――はじめに、Esper Game Studioを設立するまでの経緯をお教えいただけますか?

ロドリゴ:私はブラジル出身です。元々は大学でビデオゲームデザインを学んだ後、2018年に来日してからはメディアや広告代理店、eスポーツのイベント会社でグラフィックやディレクション、撮影などを幅広く担当していました。コロナ禍の時期に、たまたまゲームマーケットの会場近くを通りかかり、フラッと入場してみたことが大きな転機となりました。そこで刺激を受けて「自分でボードゲームを作ろう!」と決意し、個人事業として『ザ・クイーンズ・ニュー・キャピタル』を制作してクラウドファンディングを実施しました。

坂本:このクラウドファンディングが成功したことをきっかけに、2024年にEsper Game Studioを設立しました。法人としての1作目『JI・SO・GI』は、私がアニメ業界にいた縁も活かし、アニメ制作現場で働く人々のリアルな情熱や苦労を込めた作品で、国内外で大きな反響を呼びました。

また、私たちは単にゲームを作るだけでなく、ボードゲームを起点としてデジタルゲームや漫画へ広げるIP開発を目指しており、その第一弾として最新作『エルダータイド』を作りました。

ロドリゴ:コンポーネント(内容物)の品質や世界観作りにこだわり、クラウドファンディングを通じてファンと直接繋がるスタイルを大切にしています。

――今回のイベント「URABAKO」についてお聞かせください。このイベントを立ち上げることになった経緯や目的は何だったのでしょうか?

坂本:元々は「The Tenth Mosaic」というデジタルゲーム中心のイベントがあり、うちのスタッフがイベントの主催会社で働いていた縁から、「ボードゲームの展示枠を作りませんか」とお声がけいただいたのがキッカケです。

ロドリゴ:そこで、既存のコアなボードゲームファンだけが集まる場所ではなく、デジタルゲーム好きや一般の方向けに「日本のボードゲームにはこれほど多様な世界観やデザインの深みがある」という魅力を伝えたいと考えたんです。そのため、世界観やコンポーネントのクオリティ、デザインに強いこだわりを持つ出版社様にお声がけをし、出展していただきました。ボードゲームに詳しくない方が入ってきた時に、一目で「遊んでみたい!」「美しい」と感じてもらえる空間作りを目指したんです。大規模なゲームマーケットとは異なり、各プロダクトの美しさや制作者の思いを、別の角度からじっくり見てもらえる展示構成に仕上げました。

▲『エルダータイド』のコンポーネント

――実際に「URABAKO」を開催してみて、来場者の反応や感触はいかがでしたか?

ロドリゴ:普段デジタルゲームを遊ぶ方や、東京ゲームショウの流れで訪れた外国人の方、ボードゲーム初心者の方まで、非常に幅広い層に来ていただけました。初心者の方からは「見た目が可愛い!」「こんな世界観があるんだ!!」と驚かれ、海外のお客様からも「素晴らしいアートワークやコンポーネントだ」と絶賛の声をたくさんいただきました。デジタルゲームは知っていてもアナログゲームに触れてこなかった方々へ魅力を届けることができ、市場を広げる大きなポテンシャルを感じています。

コアファン向けではなく、一般層に向けたホビーイベントという「隙間」に入り込む良い機会になりました。今後はショッピングモールなど身近な場所にも持っていき、さらに多くの人にボードゲームを知ってもらいたいですね。

坂本:今回のテスト開催を通じて、参加してくださった出版社様同士のコミュニケーションや、展示の組み立て方において大変多くの学びがありました。今後はボードゲームのテーマやジャンルのレンジをさらに細かく分けてご紹介するなど改善を重ね、より多くの人にボードゲームの深みや楽しさを伝えていけるイベントに育てていきたいと思っています。