ウヴェ・ローゼンヴェルク氏のゲーム7選! 農業テーマのワーカープレイスメント&配置ゲームの名手

ウヴェ・ローゼンヴェルク氏のゲーム7選

ボードゲームの代表的なメカニクスのひとつ“ワーカープレイスメント”。労働者を表す“ワーカー”のコマをボード上に派遣し、アクションを実行していくというもので、2007年に発表された『アグリコラ』で広く知られるようになりました。その『アグリコラ』のデザイナーがウヴェ・ローゼンヴェルク氏です。

ウヴェ氏は、その後もワーカープレイスメントのタイトルを続々と発表してきました。また、ワーカープレイスメントと共に氏が得意としているのがタイルやトークンを置いていく配置ゲームで、こちらも『パッチワーク』をはじめ数々の名作を世に送り出しています。

今回は、ウヴェ・ローゼンヴェルク氏のデザインしたゲームのなかから7つの作品をご紹介しましょう。

※五十音順に紹介しています。

アグリコラ

アグリコラ

ワーカープレイスメントを世に知らしめたパイオニア的作品

舞台は17世紀の中央ヨーロッパ。プレイヤーは農場の経営者で、家族や労働者と共に畑を拡げて作物を栽培し、家畜を増やして、農場を拡大していきます。

“ワーカー”コマをボード上のマスに置いて早取りのアクションを行う基本システムはもちろん、ワーカーのためのコストが必要となる点や、ワーカーを増員することでアクション数を増やすことができることなど、以後のワーカープレイスメントの基礎となるルールはすでにこの段階で完成されていました。また、買い入れた家畜を農場に入れる際には配置ゲームのパズル的な要素もあり、使用するカードの組み合わせによるリプレイ性の確保も含めて現在に至るまでの氏のデザイン思想が詰まったタイトルです。

さまざまな要素が絡み合う複雑なゲームですが、牧場が拡大していくワクワク感と、狙いがハマったときの爽快感は抜群。それまでにないプレイ感は熱狂的なファンと数多くのフォロワー作品を産み出し、ワーカープレイスメントというメカニクスをひとつのジャンルにまで昇華させました。

発売は2007年。海外のボードゲームサイトBoardGameGeekでランキング1位を獲得するなどコアなゲーマーから絶大な支持を得ており、戦略の研究も盛んに行われています。現在は新版『アグリコラ:リバイズドエディション』が発売中。『アグリコラ:泥沼からの出発』などの拡張セットや、簡素化した『アグリコラ:ファミリーバージョン』、2人対戦型の『アグリコラ~牧場の動物達~』などの姉妹作も登場しました。初版発売からすでに18年が経過していますが、重量級ながらも定番化しており、いまなお多くのプレイヤーに愛されている息の長いゲームです。

アグリコラ:リバイズドエディション 概要】
メーカー:ホビージャパン
プレイ人数:1~4人
対象年齢:12歳~
プレイ時間:60分~

アップルジャック

アップルジャック

色とりどりのリンゴを自分の果樹園に並べていく配置ゲーム

ウヴェお得意の農業テーマのタイトルのひとつ。リンゴ農場でリンゴを栽培していくタイル配置ゲームです。発売は2023年。

プレイヤーはメインボードをぐるぐると回りながらリンゴのタイルをドラフト獲得し、個人ボードに配置していきます。タイルに描かれたリンゴは7種あり、うまく配置すると得点となるハチミツを獲得。さらに、終了時にそれぞれのリンゴの収穫量(同じリンゴの種類のタイルを隣接して配置した数)の得点もハチミツがもらえます。

どの色のリンゴを集めるか、どのように配置していくか。シンプルでライトなゲームですが、悩みどころが多くジレンマに苦しめられることでしょう。ソロプレイも可能です。

アップルジャック 概要】
メーカー:アークライト
プレイ人数:1~4人
対象年齢:8歳~
プレイ時間:30~60分

オラニエンブルガー運河

オラニエンブルガー運河

運河周辺の地域を発展させる2人用ワーカープレイスメント

19世紀のドイツ・ブランデンブルグに建設されたオラニエンブルク運河周辺の工業発展を競うゲーム。2人用ながらも本格派ワーカープレイスメントという、ちょっと珍しいタイトルです。

プレイヤーはアクションボードにワーカーを派遣し、資源の獲得、建物の建設、建物カードの獲得といったアクションを行って開発を進めていきます。建物にはリソース獲得の効果がありますが、建設後限られた回数しか効果を発動できません。状況を整えることでこの効果を高めることができるものの、どのタイミングで発動させるかの判断が重要となります。

建物カードは全120枚あり、拡張2種によってさらに240枚が追加されますが、1回のプレイで使用するカードはこのなかから24枚のみ。登場する建物カードによって状況がドラスティックに変わるため、プレイするたびにがらりと展開が変化します。高いリプレイ性があり、ソロプレイも可能なので、繰り返し楽しむことができます。

オラニエンブルガー運河 概要】
メーカー:テンデイズゲームズ
プレイ人数:1~2人
対象年齢:12歳~
プレイ時間:30~60分

ヌースフィヨルド

ヌースフィヨルド

長老たちとは仲良くしましょう! 漁村を舞台に展開する漁業会社の運営&発展合戦

ノルウェー・ロフォーテン諸島の漁村ヌースフィヨルドで漁業会社を運営し、村と会社の両方を発展させていく箱庭系ワーカープレイスメント。プレイヤーは漁船を漁に出して獲った魚を売却したり、株を発行することで資金を得ます。さらにボード上の森林を伐採して木材を獲得、資材を使って村に施設を建設し、村の繁栄に貢献していく必要もあります。

特徴的なシステムは、村の有力者たちの存在。長老たちに魚をふるまうことにより、特殊効果の発動という形での協力が得られるのです。

限られたターン数のなかでアクション数を逆算し、最善の手を探っていく楽しさは独特のものがあります。発売は2017年。多くの要素を見事にまとめあげたシステムは、ワーカープレイスメントの進化形ともいえるものです。

5人までプレイ可能で、ソロプレイにも対応。『ヌースフィヨルド:カレイデッキ』などの拡張セットも登場しており、2024年には4つの拡張セットを同梱した『ヌースフィヨルド:BIG BOX』も発売されました。

ヌースフィヨルド 概要】
メーカー:ホビージャパン
プレイ人数:1~5人
対象年齢:12歳~
プレイ時間:60分~

パッチワーク

パッチワーク

タイルを置いて美しいパッチワークを作り上げる2人対戦ゲーム

パッチワークとは、端切れを縫い合わせて1枚の布(キルト)とする手芸のこと。本作は、色とりどりの端切れを表すタイルを個人ボード上に配置し、パッチワークを作る2人用のゲームです。

プレイヤーは手番に布地タイルを獲得し、9×9の広さがある個人ボードに配置していきます。タイルはさまざまな大きさと形がありますが、空白のスペースが発生しないように配置していったほうが得点が増えるため、考えなしに取って置くわけにはいきません。タイルの選択と配置する場所、獲得のために支払うコストに加え、手番順とゲーム終了に影響する時間経過の要素など考えどころが多く、頭を悩ませることになるでしょう。

鮮やかな色彩のタイルは見栄えバツグン。駆け引きの要素が強めで、ガチ対戦となるなかなか辛口のゲームですが、ルールが易しくプレイ時間が短いので、ボードゲームに慣れていない方にもおすすめできます。発売は2014年。紙ペンゲームの『パッチワーク ドゥードゥル』や、簡素化してテーマを改めたキッズ向け『ツメコミ引越センター』などの派生作も登場し、2024年には『パッチワーク:10周年記念バージョン』も発売されました。

パッチワーク 概要】
メーカー:ホビージャパン
プレイ人数:2人
対象年齢:8歳~
プレイ時間:~30分

ボーナンザ

ボーナンザ

同種の豆を集めて畑で栽培! 交渉がカギとなるカードゲーム

今でこそ重量級ワーカープレイスメントで名を馳せるウヴェ・ローゼンヴェルク氏ですが、初期作品にはライトなゲームも見受けられます。『ボーナンザ』は1997年にリリースされた、氏の出世作となったカードゲームです。

プレイヤーはふたつの畑を持ち、豆を植えて育てます。収穫した豆を販売することで金を獲得、最終的に所持金がもっとも多いプレイヤーが勝者です。豆は全部で8種類ありますが、栽培できる豆は畑ごとに1種類ずつ。同種の豆をまとめて収穫することでより高値で売れるようになるため、できるだけたくさん植えてから収穫したいところです。

手番では山札から2枚の豆カードを公開し、手札とあわせて他プレイヤーと自由に交換することが可能。交換が終わったら1~2枚の豆カードを畑に植えなければなりません(すでに畑が埋まっている状態で違う種類の豆を植える場合は畑の豆が売却されてしまいます)。

交換は1対1だけでなく非対称枚数の交換や、3人以上を巻き込んだ多角トレード、将来的な交換の約束なども許されており、自由度が高いことが特徴。口八丁、手八丁の交渉力がものをいいます。

2人専用の『ボーナンザ対決』も発売されました。交渉がなくなった代わりにブラフと駆け引きの要素が加わっており、通常の『ボーナンザ』とは違ったプレイ感のゲームとなっています。

ボーナンザ 概要】
メーカー:メビウスゲームズ
プレイ人数:3~5人
対象年齢:12歳~
プレイ時間:30~60分

マンマミーア

マンマミーア

みんなで材料を持ち寄ってピザ作り。素材はきちんと揃ってたっけ?

トッピングの材料をそろえてピザを作るカードゲーム。発売は1999年。

プレイヤー全員がトッピングの手札7枚と、全員共通のレシピカードのセットを一組持ちます。レシピカードには、それぞれピザの種類と必要なトッピングの数が書かれています。

次に、プレイヤーは順番にピザのトッピングのカードを場に出していきます。材料がそろったと思ったプレイヤーは、追加で手札にあるレシピのカードを出すこともできます。ただし、すでに出たカードの内容を確認することはできないので、何が出たか覚えておかなければなりません。山札がなくなったら、答え合わせ。きちんと材料が揃っているならピザは完成します。足りない材料があった場合、レシピカードを出したプレイヤーは手札を出して足すことも可能。完成させられなかった場合、レシピカードは出したプレイヤーの手札に戻ります。

3ラウンドを行って、最終的に完成させたピザがもっとも多かったプレイヤーが勝者。記憶違いが何度も起きたり、適当にやっていても後からなんとかなってしまったりと、ゆるめにワイワイと楽しめるゲームです。

マンマミーア 概要】
メーカー:メビウスゲームズ
プレイ人数:2~5人
対象年齢:10歳~
プレイ時間:~30分


ウヴェ・ローゼンヴェルク氏は、2025年現在すでに100を優に超えるゲームを世に送り出している多作なデザイナーです。ワーカープレイスメントが代名詞的に語られることが多いのですが、今回ご紹介したように配置ゲームやカードゲームなどもたくさん作っており、そのバリエーションは豊か。

もちろん、基幹となるワーカープレイスメントについては『アグリコラ』『ヌースフィヨルド』以外にも『カヴェルナ』『オーディンの祝祭』など新たなシステムを取り入れながら進化を続け、2024年に日本語版が発売された『プランタ・ヌーボー』『ブラックフォレスト』に至るまで、現在も新作がリリースされ続けています。

練り上げられた精緻なワーカープレイスメントや配置ゲームは、今後も我々を驚かせてくれることでしょう。