【ボドゲと子供と教育と】『フォーセール』で相場を見極めて、勝負どころを学ぶ

教室の中で小学生たちがボードゲームをしている様子を見ている中で、「女子のほうが勝率が高いのでは?」と個人的に感じているジャンルがあります。それは「競りゲー」と呼ばれるジャンルです。男子たるもの、ましてや小学生男子は、ついついお金を使い過ぎてしまうからなのかもしれません(笑)。

今回は、その「競りゲー」の中でも、ルールがシンプルでありながら、2段階の競りを体験できるフォーセールについて書いていきたいと思います。

ゲームの概要

1から30まである30枚の「不動産カード」と$0と$2,000から$15,000まで、$1,000刻みで2枚ずつある30枚の「資金カード」があります。

▲不動産カード

▲資金カード

このゲームは、2段階のフェーズに分かれています。

フェース1ではプレイ人数に応じて配られたコインを元に、「不動産カード」を競っていきます。不動産カードの山札から、プレイ人数に等しい枚数のカードを場に公開します。

そして、各プレイヤーはこれらのカードについて、「入札」または「パス」を選択して行います。「入札」を選択した場合には、それまでに入札されている最高額よりも上の金額を提示しなくてはいけません。

「パス」を選択したプレイヤーは、場に出ている最も価値の低い(数字の小さい)「不動産カード」を受け取ります。さらに、パスをする前に入札していた金額の半分が手元に戻ってきます(端数は切り捨て)。こうして、最後の一人になるまで競りを続け、最後までパスをしなかったプレイヤーは入札した金額すべてを支払い、もっとも価値の高い(数字の大きい)不動産カードを受け取ります。

フェーズ2は、フェーズ1で獲得した「不動産カード」を手札として、「資金カード」に対して競りを行っていきます。「資金カード」の山札から人数分の資金カードを公開します。そして、各プレイヤーは手札である不動産カードから1枚を選択し裏向きで出します。その後、カードを同時に公開し、価値の大きい不動産カードを出したプレイヤーから、公開されている資金カードの中で、額面が大きいカードを獲得していきます。

こうして、最終的にはフェーズ1で残ったコインの額面とフェーズ2で獲得した資金カードの額面を合計し、多いプレイヤーの勝利となります。

「相場」という考え方

もちろん個人差はありますが、小学生が「競りゲー」をプレイすることが容易でない大きな原因としては、「何にどれくらい金額をかければよいかわからない」ということがあります。もちろん、初見のゲームの場合には、大人でもこのような「相場」はわからず、むしろこれを探っていくことがゲームの楽しみのひとつであったりします。

では、子供との違いは何かというと、「相場がある」ということについて考えているかどうかです。

例えば、$5,000支払ってまで価値が10である不動産カードを取りにいくかどうか、という場面を想定してみましょう。大人の場合には、ここまでに自分が獲得したカードや支払った金額、また他のプレイヤーがどれくらいの金額でどれくらいの勝ちの不動産カードを獲得しているか、といった客観的な事情を根拠に、「高いか安いか」を判断しようとします。

他方で、子供たちは「$5,000は高い」といった絶対値のみに着目してしまったり、「自分はまだ1回も最後まで残っていないからそろそろ残りたい」といった感情的な側面から判断をしてしまったりします。

「割安」「割高」という言葉がありますが、これは、ある程度の基準となるものを前提に「割と安い」のか「割と高いのか」は判断されます。そのように考えると、この「基準」について考え、自分で設定することが「競りゲー」で求められる「相場」について考えるということに他なりません。「基準に従う」のではなく、「基準を主体的に考える」ところに「競りゲー」の楽しさはあると言っても過言ではありません。

もちろん、基準についての判断には「$1,000あたり」のような考え方や各プレイヤーの残りの所持金等、いろいろな要素が絡み合ってくるため、小学生にとって決して容易ではありませんが、「価値」というものについて考えてみる良い機会でもあると思います。また、このゲーム自体もガチガチの競りゲーというわけではなく、競りゲーの導入としても最適だと考えられます。

勝負どころを意識する

フェーズ2について考えてみると、一括入札の方式が採用されています。このとき最も価値の高い$15,000の資金カードが欲しいことは全員が同じなのですが、それ以上に自分の手札の中で「一番価値の低いカード」をどのように処理するのかということも大切です。

例えば、6人プレイを想定していた際に、写真のような資金カードの列になったとしましょう。

すると、一番低いカードを取ることになったとしても、つまり最低でも$9,000は獲得できるということになります。このように考えれば、自分の手札の中で一番弱いカードを出しても、$9,000を獲得できるということになります。

子供たちは「勝つこと」に着目しがちですが、実は「負け方」を意識することで「どこで勝負をかけるか」、すなわち「勝負どころ」というものを意識することができるようになってきます。全ての勝負に勝つことが現実的でない以上、どこで勝ち、どこで負けるかを考えるということです。

この「勝負どころを意識する」ためには、全体を俯瞰しながら、時には大きな決断をしなくてはいけません。考えるだけではなく、決断も求められるわけですから、子どもたちにとってもよい経験となることは言うまでもありません。

最後に

「教室の中で」と書きましたが、何を隠そう、私自身が「競りゲー」はあまり得意ではありません。好きなのですが、得意ではありません(笑)。理由は、小学生男子と同じで、「ついつい使い過ぎてしまうから」。三つ子の魂百までとはよく言ったもので、実は小学生の頃から何も変わっていないのかもしれませんね。