専用の記録シートを使い、マスやボックス、地図などにペンでチェックを入れたり、数字や情報を書いたりしながら進める紙ペンゲーム。おもにダイスを振ってから書き入れる“ロール&ライト”、カードを引いてから書き入れる“フリップ&ライト(ドロー&ライト)”の2種があります。紙ペンゲームは欧州では数多くのタイトルが発売されていますが、近年は日本でも数が増えてきており、ゲームマーケットなどで販売される作品にも見受けられるようになりました。
その魅力は、シートに「書き入れる」というプレイスタイルそのものにあるでしょう。ゲームが進行し、シートが完成していくさまを自身で記録していくため、視覚的にも作業的にも「プレイしている」ことが感じられ、独特のプレイ感が楽しめるのです。また、自分の選択とプレイの軌跡が記録に残るので、終わったあとに振り返ることができるのも良い部分です。
全般的にプレイ時間が短く、多人数にも対応し、さらに得点手段が多岐に渡ってプレイの選択の幅が広いことも紙ペンゲームの特徴。ボードゲームのジャンルとしては特殊なタイプになりますが、好きだという人は多いのではないでしょうか。今回は、紙ペンゲームのなかからポピュラーなタイトルや手に入れやすいものを中心に、オススメの7作をご紹介しましょう。
また、人狼系ゲームや麻雀風ゲームなどをまとめた記事もありますので、そちらも併せてチェックしてみてください。
※以下、五十音順に紹介しています。
ウェルカム・トゥ・ザ・ムーン
フリップ&ライトで月面開拓に挑戦!豊富なプレイバリエーションとキャンペーンゲームのストーリーが楽しめる
紙ペンゲーム“ウェルカム・トゥ”シリーズの第3作で、テーマは宇宙への冒険と月面の開拓。プレイヤーは3つの山札からカードをめくって数字とアイコンの3つの組み合わせを作り、そのなかから一組を選んで冒険シートに記入していきます。全員共通のミッションを誰かが3つクリアするなどの条件を満たすと、そこでゲーム終了です。
冒険シートはシチュエーションとルールが違う全8種類が用意されており、それぞれが別のテーマを扱った物語性があります。この8つの物語は個別に遊ぶこともでき、すべて違ったプレイ感があります。
さらに、8つの冒険シートを順番にこなしていくことで、連続したストーリーが楽しめるキャンペーンゲームをプレイ可能。このストーリーはパラグラフアドベンチャーのような分岐が用意されているため、プレイするたびに違った展開でロケットの打ち上げから月面開拓まで至る壮大な冒険の物語を体験することができるのです。
紙ペンの手軽さとキャンペーンゲームの重厚なプレイの両方が楽しめる一作です。
【2022年面白かったボードゲームBEST10「ウェルカム・トゥ・ザ・ムーン」】カードに書かれた数字を書き込んで高得点を目指す「ウェルカム・トゥ」シリーズ最新作。全てやってないけど8種類のゲームが入ってます。過去作を捨てても良いくらい集大成にして傑作。 pic.twitter.com/uPeAVQ8y7o
— 阿曽山大噴火 (@asozan_daifunka) December 25, 2022
【ウェルカム・トゥ・ザ・ムーン 概要】
メーカー:Engames
プレイ人数:1~6人
対象年齢:10歳~
プレイ時間:~30分
カートグラファー
白地図に地形を書き込んで自分だけのマップを作り上げよう!
プレイヤーは製図家(カートグラファー)となり、地図を作成します。ゲーム開始時、地形ごとのマジョリティや特定の形の地形を作ることなどの得点条件が4つの季節ごとに提示されます。プレイヤーはこの得点条件を考慮しつつ、より高い点が得られるようにシートに地形を書き込んでいきます。
各季節では、まず探険カードをめくり、カードに記載された地形と形状から地図に書き入れるものを選択。探険カードには経過する時間も記されており、これが季節ごとに決められた数値に達するとその季節が終了して得点計算ののち、次の季節に移ります。春夏秋冬の4ラウンドが終わったら総得点を算出、最高得点を得たプレイヤーが優勝です。
また、モンスターの出現というお邪魔イベントがあり、この際は自分の隣のプレイヤーがモンスターを地図に書き入れるので、思う通りに地図作成が進まないことも……。
最大プレイ人数はなんと100人(なお、シートがあればそれ以上でもプレイ可能です)。パズルのように地形のパーツをうまくはめ込んで地図を作っていくのがとても楽しく、さまざまな特典要素との兼ね合いで悩ましくもある。手軽に楽しめる紙ペンゲームです。続編となる『カートグラファー:勇者たちの門出』も発売されています。
#ボードゲーム の #カートグラファー をプレイ🗾
紙ペンゲームなのに、妨害要素もあり✨
地図(領地)を作っていきながら、モンスターとも接触があるシステムが珍しめのゲーム♪
自分の絵(地図)が下手なのが悲しい(T_T)#ボードゲーム好きと繋がりたい#ボードゲーム紹介#面白いボードゲーム#ボドゲ pic.twitter.com/XoQNNuJRp6— カズ@ボードゲーム (@AO40987664) February 23, 2023
【カートグラファー 概要】
メーカー:アークライト
プレイ人数:1~100人
対象年齢:10歳~
プレイ時間:30~45分
ガンシュンクレバー(ガンツ・シェーン・クレバー)
紙ペンゲームを代表する傑作!ダイスロールの運と選択の判断で勝負
ロール&ライト(ダイスを振ってシートに記入していくゲーム)を代表するタイトルです。プレイヤーは振ったダイスの目に応じたシートのマスをチェックしていき、その埋め方によって得点を得ていきます。
まず、手番プレイヤーは6つの色違いのダイスを振り、そのなかからひとつを選んで出目に対応したマスを埋めます。手番プレイヤーはこれを最大3回繰り返し、手番以外のプレイヤーは残ったダイスからひとつを選んで自分のシートのマスをひとつ埋めていきます。
シートにはダイスの色に対応した5つのエリアがあり、それぞれ記入および得点の条件が異なります。得点の条件はマスを埋めてビンゴの列を作ったり、出目がそのまま得点になるなど、5つのエリアごとに違っているため、それぞれのエリアごとの得点の条件を考えながらマスを埋めていくことが重要。さらにマスによってはもうひとつダイスを選んで別のマスを埋めたり、ダイスを振り直したりといった特殊効果が得られるところもあります。
各プレイヤーが手番を1回ずつプレイすると1ラウンドが終了。人数と同じラウンドを行ったら最終得点を計算します。どのダイスを選ぶか、どのマスを埋めるかの選択が悩ましく、ダイスの運も絡んでなかなか思う通りに進められないのですが、戦略がうまくはまったときの快感はかなりのもの。紙ペンゲームをプレイしたことがない方に、最初にオススメしたい一作です。
ダイス目を自分のシートにチェックして得点を競う「ガンシュンクレバー」。運と戦術が半々でビンゴを超面白くしたプレイ感。楽し過ぎ☆
詳しくはブログ「新!ボードゲーム家族」で。https://t.co/56hLMfVPHG#ボードゲーム #知育 #家族で遊ぶ #ゲムマ #カードゲーム #トランプ #パズル #脱出ゲーム pic.twitter.com/1R7ZBlpcIv— ボードゲーム家族 (@Boadgamekazoku) January 14, 2022
【ガンシュンクレバー 概要】
メーカー:メビウスゲームズ
プレイ人数:1~4人
対象年齢:8歳~
プレイ時間:~30分
なお、本作は無料でプレイできるWEBブラウザ版(英語サイト)もあり、ひとりで練習したいときなどに便利です。
https://m.brettspielwelt.de/ganzschoenclever/
WEB版紹介記事
https://broad.tokyo/news/70
ニュースボーイ
販売数アップと労働環境改善を目指せ!ニューヨーク新聞少年の戦い
1890年代のニューヨーク、ブルックリン地区で新聞配達をする少年をテーマにした、最大4人までプレイできる紙ペンゲーム。プレイヤーは新聞少年となり、販売エリアを広げて販売数を増やしつつ、雇い主の新聞社に対して賃上げ要求を通して労働環境の改善も狙います。
ラウンドの始めに山札をめくり、各プレイヤーはカードに描かれた3つのアイコンと個人で振った3個のダイスの出目から1色を選択して自分のシートにチェックをしていきます。シートには販売エリアを示すマップとストライキゲージが描かれており、マップへのマークで販売エリアを拡大、ストライキゲージを進めることで労働環境の改善を目指します。
チェックの結果、各ブロックの建物アイコンをちょうどぴったりの数でマークすることができると、ボーナスとしてもうひとつマークできます。うまく繋げると1回のラウンドにボーナスを何度も連続で発生させて大きな連鎖を狙うことも可能。プレイヤーの腕の見せ所です。
プレイは同時に進行するためダウンタイムがなく、プレイヤー数が増えてもほとんどプレイ時間に影響がありません。Saashi&Saashiのゲームらしいお洒落なアートワークと、手軽ながらも本格派のしっかりとしたゲーム性が楽しめるフリップ&ロール&ライトのゲームです。
新作『ニュースボーイ』を10月ドイツのSPIEL’23、9月台湾TOBEで先行販売します(一般販売は11月)。1890年代ブルックリンの新聞売り少年は販売エリアを広げ新聞社へのストライキで労働環境を改善。軽妙な同時進行のFlip & Roll & Writeのゲームです。@SPIEL_Messe #SPIEL23https://t.co/8OzfVPdq9H pic.twitter.com/wbl3zRw0pj
— Saashi & Saashi (@saashiandsaashi) September 13, 2023
【ニュースボーイ 概要】
メーカー:Saashi&Saashi
プレイ人数:1~4人
対象年齢:10歳~
プレイ時間:~30分
ペーパー・ダンジョンズ
成長する冒険者パーティーを率いてダンジョン探索!ボスを倒して成績トップを目指す
専用ダイスとシートを使ったロール&ライトゲーム。戦士、魔法使い、僧侶、盗賊の4名からなるパーティーでダンジョンを探索し、内部に現れる3体のボスモンスターと戦います。
ダンジョンは引いたダンジョンカードにより内部の構成と待ち構えるボスモンスターが変わり、さらに任務カードや目的カード、特殊能力が得られるパワーカードでプレイするたびプレイヤーごとに展開が変化。4人のキャラクターはダンジョン内での冒険や戦闘によって成長し、強くなっていきます。出現する敵ボスもどんどん強いモンスターとなっていくため、的確な育成と特殊能力の獲得、冒険を有利にするアイテムの取得が重要となるのです。
ゲームは3つのフェイズに分かれた全8ラウンドで行われます。ラウンドごとに6つのダイスを振ってそのなかから3つを選び、移動やキャラクターの成長といったさまざまな要素にダイスを振り分けてダンジョンの探索を進行。フェイズごとの最後のラウンドでは、ボスモンスターとの対決が待っています。
古典的なRPGのダンジョン探索を彷彿させるファンタジー世界観は雰囲気たっぷり。毎回展開が変わるうえ、プレイ時間が短く手軽に楽しめるため、繰り返しプレイしたくなるタイトルです。サブ目標や強力なアイテムなどが加わった拡張セット『ペーパー・ダンジョンズ:拡張 サイドクエスト』も発売されています。
ボドゲ朝活してます!
一発目は7人でペーパー・ダンジョンズ。
紙ペンゲームでありながら、しっかり冒険した気分にさせてくれるゲーム。
手元のカードの組み合わせで、毎回違った挑戦ができるのが面白いです!
#テンデイズのゲーム pic.twitter.com/IKPUVomrGQ— FRIENDS (@friendsjp22061) May 11, 2022
【ペーパー・ダンジョンズ 概要】
メーカー:テンデイズゲームズ
プレイ人数:1~8人
対象年齢:10歳~
プレイ時間:~30分
メトロックス
フリップ&ライトで路線図を作成!路線拡大の方針はあなた次第
地下鉄ネットワークが描かれたシートに路線を敷いていく紙ペンゲーム。プレイヤーは指示カードに従ってシートの路線の駅に丸を書き入れ、路線図を作っていきます。最初にひとつの路線を完成させることができると高得点が得られます。
路線ごとに丸を書き入れることができる回数は限られているため、どの路線を優先してチェックを入れていくか、どこを空白とするかが悩ましい。同じ指示カードを見て全員が丸を書くにもかかわらず、プレイヤーごとの目標や戦略の違いによりまったく違う伸び方になるのが面白いところです。プレイ人数は最大6名となっていますが、シートがあれば実質何人まででもプレイできます。
基本セットは東京と大阪のマップシートが入っており、さらに『メトロックス追加マップ集』『メトロックス追加マップ集2』のふたつの拡張セットが発売されています。マップごとにかなりプレイ感覚が違っているので、ハマれば長く楽しめることうけあいです。
メトロックス
紙ペンゲームでカードを引いてその数だけ○を書き込みます
出発駅から終着駅まで行けば点数
書き込める○は意外と少ないので乗り入れを上手く活用😃書き込みにも条件があるのでなかなか一路線を制覇するのは難しいですね😅
結果20個以上の空マスになりペナルティを受けました💦 pic.twitter.com/2wqxZsr9tM
— 東のめんま (@eastmenma) December 19, 2019
【メトロックス 概要】
メーカー:OKAZU brand
プレイ人数:1~6人
対象年齢:8歳~
プレイ時間:~30分
大人が楽しい 紙ペンゲーム30選 改訂版
※画像はすごろくやのサイトより
誰でも楽しめる30種の遊びのルール集
紙とペンを使って遊べるゲームのルールを30タイトル紹介している書籍です。収録ゲームは「定番紙ペンゲーム」「低学年と楽しめるゲーム」「高学年と楽しめるゲーム」「少し高度に楽しむゲーム」「じっくり楽しいゲーム」の各章に分けて掲載されています。
紹介されているゲームのなかには、しりとりで文字数を増やしながら7文字を目指す『しりとりガンマン』のように道具不要のものや、『絵スチャー』のようにテレビ番組で遊ばれているものだったり、『ワードウルフ』などボードゲーム化、カードゲーム化されていたりするものも含まれ、その種類は多岐に渡っています。いずれもルールは簡単で、誰でもすぐに始められるうえ、用意するものも人数分の紙とペンだけです。
どれも狭義な意味でのボードゲームとは違いますが、パーティーゲームとして優れており、盛り上がること必至の遊びばかり。みんなで集まった場や、旅行などの際にこの本があると役立ってくれるでしょう。
※同書籍は2024年5月30日(木)に改訂版が発売されており、7月22日に記事内の内容を改訂版のものに改めています。
紙とペンなど、身近な道具を使って楽しめるゲーム30タイトルを厳選し、その遊び方を解説するハンドブック『大人が楽しい 紙ペンゲーム30選』。
収録文章やイラストなどをすべて見直した改訂版ができあがりました! 5/30(木)の一般発売に先駆けて、すごろくやでは先行販売を開始しています。… pic.twitter.com/9wVJqByIqD— すごろくや (@sugorokuya) May 21, 2024
【大人が楽しい 紙ペンゲーム30選改訂版 概要】
メーカー:すごろくや
プレイ人数:3人~
対象年齢:6歳~
プレイ時間:5~20分
いかがだったでしょうか。紙ペンゲームをより楽しむために、筆記用具や下敷きを別に用意したり、シートをラミネート加工して水性ペンを用いて繰り返し使えるようにしたりするなど、いろいろと工夫をこらしている人もいると思います。
まだ紙ペンゲームを遊んだことがないという人は、ぜひ今回挙げたゲームをプレイして、その独特の楽しさに触れてみてください。
今回はご紹介していませんが、『イスタンブール』や『ブルゴーニュ』『オルレアン』『ガンジスの藩王』『トロワ』『ズーロレット』『横濱紳商伝』といったボードゲームの名作タイトルにも、それぞれ紙ペンゲーム版が存在しています。多くはコンパクトになってプレイ時間が短縮され、セットアップが不要になるなどしてプレイしやすくなっているので、好きなゲームに紙ペン版があるのなら体験してみることをおすすめします。本家とは一味違った魅力が感じられることでしょう。