【ゲムマ2023秋】バトルフィールド再び燃ゆ!『デュエルボーイポケット』登場でさらに熱い戦いが展開! デザイナー上杉真人氏かく語りき【特別企画編】

5月のゲームマーケット2023春の総合受付で販売され、会場内でプレイされていたTCG(トレーディングカードゲーム)『デュエルボーイ』。7枚のカードを使う2人対戦型のこのカードバトルは、盛り上がるゲームマーケットの裏側でイベントとして行われており、その楽しさと斬新さが話題となった。

【ゲムマ2023春】ゲームマーケット会場内で、静かに熱く燃え上がっていたカードバトル『デュエルボーイ』とは何か!? デザイナー上杉真人氏を直撃!【特別企画編】

『デュエルボーイ』の特徴は、会場内でプレイヤーであることを示すステッカーを身体に貼った人を見つけたら、バトルを申し込んで良いという対戦システム。これにより“出会った好敵手と戦う”という、バトルをテーマとしたコミックやゲームの世界観が現実のものに! さらに、バトル後に敗者が勝者から2枚のカードを選び、自分のカード2枚と交換するという、敗者に選択権があるトレードも本作の大きなポイントである(ゲームデイ用ルール採用時)。つまり、負ければ負けるほど強いカードが集まっていくが、強くなって勝つと今度は取られる側に回る。弱者はいつまでも弱者ではないし、その逆も真なり。プレイすればするほどに、奇跡のバランスが保たれる。

ゲームマーケット2023春では、開催された両日とも“バトルフィールド”をうろついて対戦相手を探したり、立ったまま対戦している『デュエルボーイ』プレイヤーたちの姿を見ることができた。熱中しすぎて、ゲームマーケット会場内でゲームを見たり試遊したりすることより『デュエルボーイ』をプレイすることに時間を使ってしまったという人もいた。

そして迎えたゲームマーケット2023秋。『デュエルボーイ』は、さらにパワーアップした新版『デュエルボーイポケット』となって帰ってきた!


『デュエルボーイポケット』は、イベントの会場内でプレイすることに特化してさらにシェイプされ、より戦略性が高まり、スピーディーに勝負が付くようシステムを改良。ステータスや能力の見直しなどにより、カードはすべて新しくなった。大きな変更点は以下となる。

・手札と捨て札のあいだに挟んでいた「仕切り札」を廃止。自分から見て右側にある表向きのカードを手札、左側にある裏向きのカードを捨て札とする。
・戦術カードはなくなった。
・物理戦闘力と魔法戦闘力はひとつに統合されて単に「戦闘力」となった。
・すべてのカードに種族が設定された。種族と能力や、手札・捨て札の組み合わせによってカード同士にシナジー効果が発生する。
・3本先取だった勝利条件が1本勝負となった。

他にもいくつか変更点があり、より一回の勝負が手軽に、早くプレイできるよう改良されている。

▲『デュエルボーイポケット』(上)と前作『デュエルボーイ』(下)のカードの比較。『デュエルボーイポケット』のカード裏面とステッカーは黒、『デュエルボーイ』のカード裏面とステッカーは白

 


今回も総合受付の周辺が“バトルフィールド”に設定され、前回を上回る数のプレイヤーが集結! バトルが終わると次の相手を探し、すぐに見つかってまたバトルが始まる……。1バトルが短縮化されたこともあり、早い回転でバトルがあちこち同時多発していく。まさにそこは戦いの場、“バトルフィールド”と呼ぶにふさわしい状況に!


バトルフィールド内の柱には、『デュエルボーイポケット』をプレイすることを想定したテーブルがいくつか配置された。このテーブルの周囲にもプレイヤーたちが集い、次々と対戦が行われていた。

ルールの周知についても力が入っていた。前作はQRコードでルールのサイトに誘導していたが、今回はそれに加えて購入者にルールのパンフレットを配布したほか、ゲームマーケットのカタログにもルール全文が掲載されていた。さらにルール自体もよりシンプルになっており、買ってすぐ始められるよう工夫が見られた。

よりプレイしやすくなった『デュエルボーイポケット』。前回にも増して熱がこもった戦いがあちこちで展開した。目立っていたのが、バトルが終わったあとのプレイヤーの楽しそうな姿だ。すぐに次のバトルを始めたくて相手を探す人もいれば、興奮冷めやらず感想戦に花を咲かせるプレイヤーもいた。そんな“デュエリスト”たちの『デュエルボーイポケット』への声を集めてみたので、ぜひ耳を傾けてほしい。

「1プレイが短く、手軽にできる」
「買ってその場で遊べる。そして、ここでしか遊べない」
「ルールが簡単で、誰でもすぐに遊び始めることができる」
「(バトルフィールドに)プレイヤーがたくさんいるので、対戦相手に困らない」
「勝ったほうがマイナスになるシステムなので、負けているプレイヤーほどデッキが強くなるところがおもしろい」
「立ったまま短い時間でプレイできる。立ってプレイするコンセプトに合ったシステム」
「手札を使う順番に高い戦略性があり、シンプルだけど考えさせられる」
「手札の右3枚しか使えないので、そこだけ見ていればいいというところが、デッキの内容がころころ変わるゲーム性とマッチしている」
「相手のカードがどんなものか見当がつかない。知らないカードに出会えるとワクワクする」
「強い人、うまい人は弱いカードのデッキでもうまく勝つという印象で、そこが面白いと思った」
「何度でもやりたくなる。終わったらすぐ次のバトルがやりたい」

いかがだろうか。実際に話を聞いた身としては、プレイヤーから「すごいゲームをしている!」「こんなゲームがやりたかった!」という熱気が強く伝わってきた。ここでしか経験できない、今しかできないという興奮と感動が、そこにあった。

また、意外に思ったのが、『デュエルボーイ』初体験だというプレイヤーの多さ。話を聞いたプレイヤーの半数が、今回初めて触れたという人だった。中にはゲームマーケット2023春での評判を聞いたり、SNSや紹介記事を見てプレイしようと考えた人もいた。もし今後も『デュエルボーイ』シリーズがゲームマーケットのたびに販売されるのであれば、さらにプレイヤーが増えていくのではないだろうか。

デザイナー上杉真人氏が語る『デュエルボーイポケット』と『デュエルボーイ』シリーズの今後の展望

▲『デュエルボーイポケット』デザイナーの上杉真人氏。『ボルカルス』や『マグノリア』、『ペーパーテイルズ』といった作品を手がけたことでも知られる

多くのプレイヤーに衝撃を与えた『デュエルボーイポケット』。前回に続き、デザイナーの上杉真人氏に、このゲームについていろいろと聞いてみた。

――前作『デュエルボーイ』について、ゲームマーケット2023春から今回の新版の企画が決まるまで、上杉さんのもとにどのような反響が届いていたでしょうか。

上杉氏:『デュエルボーイ』のイベントを個人で開いてくださった方もいらっしゃり、とてもありがたかったです。特に驚きだったのが、アメリカから『デュエルボーイ』を大量に購入し、イベントを開き、さらに英語版を制作してプリント&プレイ(印刷用のデータを配布する方式)で広めてくださった方の存在でした。世界のボードゲーマーの層の厚さを感じました。

――今回、『デュエルボーイポケット』がゲームマーケット2023秋にて販売および再度のイベント開催となった経緯はどのようなものでしたか?

上杉氏:自分としては半年前の『デュエルボーイ』で一区切りついたという気持ちだったのですが、(2023年の)9月半ばに先方から「ゲームマーケット2023秋にもう一回やらないか」と打診をいただきました。その際の先方の提案は「新規カードを少数追加してはどうか」というものだったのですが、自分としては「もっと根本的な部分からシンプルにして、会場でプレイしやすくしたい」という考えがあり、わがままを受け入れてもらって、新たに『デュエルボーイポケット』として生まれ変わらせることにしました。

――新版『デュエルボーイポケット』を制作するにあたり、ルールやコンポーネントについてリファインされた部分はどこですか。また、その変更はどのような意図をもってされたものでしょうか。

上杉氏:とにかくルールを理解しやすく、かつ短時間でプレイできるようにしたかったため、削れる可能性のあるものは全て削りました。具体的には「ユニットと戦術」「物理と魔法」「仕切り」「手札の復活」「3点先取」といったルールを全て取り除きました。

これらは『デュエルボーイ』を特徴があるゲームにするために必要なルールでしたが、その代わりに「種族」という新要素を導入し、1回1回のデュエルは単純であっても、1日を通じて自分のデッキを組み上げていくことに大きな意味が生まれるようにしました。この変更により、『デュエルボーイポケット』はイベントでのプレイにより適したゲームになっています。

カードのデザイン面では、前回に引き続きZUMEさんにご協力いただき、シンプルなゲーム性という側面にスポットライトを当てて、ピクセルアート風のUIとアートで構成しました。

――『デュエルボーイポケット』で、意図的にクセを強くしたり、特殊な効果(能力)を持たせたカードはありますか。また、上杉さんが個人的にお気に入りのカードがありましたら、そちらもお教えください。

上杉氏:ゲーム全体を限界までシンプルにしつつ、その中で歴戦のゲーマーの方々にも「こんな状況が起こるのか!」と思っていただけるようなカードを用意したいと考えていました。その一例が《オムニマンサー》で、自分の捨札にある種族「魔術師」の全てのカードの能力を得るという効果を持ちます。捨札に「魔術師」が複数枚あるときはとんでもない状況になることもあり、それを楽しんでいただければと思います。

また前作『デュエルボーイ』に引き続いての収録ですが、相手の場のカードと永遠に入れ替わってお互いのデッキ内容を変えてしまう《チェンジリング》はこのゲームならではのカードであり、会場で何度も驚きの声を聞くことができたお気に入りのカードです。

――ズバリ、『デュエルボーイポケット』のカードは全部で何種類あるのでしょうか。

上杉氏:「カードは50種類以上ある」とお伝えするようにしています。どんなカードが存在するのかわからず、未知のカードに出会うことができた黎明期のトレーディングカードゲームの感覚を楽しんでいただけると嬉しいです。

――現時点(ゲームマーケット2023秋終了直後)での『デュエルボーイ ポケット』の反響、手ごたえはいかがでしょうか。

上杉氏:前回以上にゲームマーケット運営にもご協力いただき、イベントとしてうまくいったと思います。両日ともに何時間もずっとプレイしてくださる方々がいらっしゃり、自分自身も2日間続けてプレイしていてずっとおもしろく、よいゲームになったと感じています。個人的には前作の『デュエルボーイ』以上の手応えを感じています。

――『デュエルボーイ』シリーズはゲームマーケットのイベントのひとつとしてユーザーのあいだで定着していきそうな気がします。『デュエルボーイ』シリーズの今後について、何か新たな展開、企画などはありますか。

上杉氏:会場でいくつかお声がけいただきまして、もしうまくいけば次の展開もありうるかもしれません。日本のボードゲーマーの皆さんに楽しんでいただくと同時に、普段ボードゲームに触れていない方々や、日本国外の方々にも届けられればと考えています。

また、今回の『デュエルボーイポケット』はシンプルさに寄せた調整にしましたが、7枚のスタンディングTCGという枠組みは保ったままで、「トラップカード発動!」といったTCGの醍醐味をより再現した調整の案もあり、そちらのバージョンももし機会があればお披露目することができるかもしれません。

――前回もお聞きした質問ですが、『デュエルボーイポケット』のゲームマーケット以降の会場外でのプレイについて、「このようにプレイしてほしい」「こうするといい」といったようなプレイヤーへの要望やアドバイスはありますか。

上杉氏:今作は前作と比べてイベントでのプレイにより適しているので、可能であれば6~8パックは用意して多人数で遊んでいただけると幸いです。ルールブックに書かれた「ゲームデイ」での遊び方の他、全員が1パック開けてドラフト(パックから1枚取って残りを左隣に渡すのを繰り返す方式)でデッキを作り、総当たり戦で勝ち星を競うという方式でも楽しんでいただけると思います。

また、通常のゲーム会に参加するときやゲーマーの友人と会われるときにこっそりポケットに忍ばせておき、その場で2人出会って対戦する…といったことが起こればこのゲームを作ったかいがあります。

――最後に、『デュエルボーイポケット』を楽しんだプレイヤーの皆さんにひとことお願いいたします。

上杉氏:『デュエルボーイポケット』はプレイヤーが集まってこそ成立するゲームなので、皆さんのおかげではじめて完成するものであり、とても感謝しています。自分自身もこのゲームを大いに楽しんでおり、まだまだ大きなポテンシャルのあるゲームだと感じていますので、今後とも機会がありましたら遊んでいただければ幸いです。

ゲームマーケット2023秋の両日ともにバトルフィールドに長く留まり、多くのプレイヤーと対戦していた上杉真人氏。デザイナーみずからプレイヤーとのバトルと交流を楽しんでいた。


『デュエルボーイポケット』ルールのパンフレットには、ゲームデイの得点についての記載があった。

・対戦した人数ごとに:1点
・SNSに投稿すると:1点

つまり、勝敗は“ゲームデイの得点”には関係がない。これは、どういうことだろうか。ルールには、最後にこう記載されている。

・得点が何点であれ、キミがゲームデイの勝者だ。

ゲームマーケットという場で、あのバトルフィールドで、あのときに『デュエルボーイポケット』をたくさん楽しんだ。それこそが勝者の条件なのだ。これは実際に体験した人であれば納得がいくところだろう。

今後、また『デュエルボーイ』シリーズが販売されたり、ゲームマーケットをはじめとするイベントでゲームデイが開催されるかどうかは分からない。しかし、『デュエルボーイ』シリーズをプレイしたことがない人は(もし次の機会があったなら)ぜひともこの世界を体験してほしいと思う。場所と開催日の両方が揃ってこそ、あの興奮を味わえるのではないだろうか。

『デュエルボーイ』シリーズの虜となったデュエリストの諸君も、まだ未体験のTCGプレイヤーも、今後の『デュエルボーイ』シリーズの動向に注目しよう!