2024カタン日本選手権大会・関東大会が開催! 6月16日、500人超が都産貿に集結した国内最大のゲーム大会をレポート&主催者インタビュー

株式会社ジーピーは2024年6月16日(日)、東京都浅草・台東館(東京都台東区)にて『カタン』関東大会を開催した。

同大会は第10回を迎えた『カタン』日本選手権の関東地区大会で、日本選手権の参加権を賭けて行われたもの。すでに中部地区大会、九州地区大会が行われており、今回の関東大会では上位入賞者14名が8月20日に行われる決勝大会の“ファイナル東京大会” への参加権を得る。

また、今大会では新たな試みとして、同じ会場で前日に前夜祭となる“カタンまつり”や、同日に競技ではなく『カタン』を楽しむための連動企画“エンジョイカタン”といったイベントも開催された。

今回は、同大会のレポートと、主催である株式会社ジーピー・米川秀治氏の声をお届けする。

国内最大規模! 会場を埋め尽くす総勢500名超の参加者

今回使用された都立産業貿易センター台東館(通称“都産貿”)は、かつてのゲームマーケットの開催地で、古くからの関東のボードゲーマーにとってはおなじみの会場。近年も即売会をはじめボードゲームのイベントに使用されている。

開場は9時15分。5階の会場入り口には、すぐに入場者による長蛇の列が出来上がった。行列は会場外だけでは収まりきらず、10時前後の段階で会場内を何重にも折り返して続いていた。受付は選手権参加者とエンジョイカタン参加者で分けて行われていた。

両国KFCホールで行われた昨年の東日本大会の参加者は約300人。今回はそこから大幅増の参加者500人となっており、国内で行われる単一タイトルのゲームの大会では過去最大規模に。会場内は人でごった返す状況となった。10時30分ごろ、受付が終わり参加者全員が着席、開会式が始まった。

 

カタン日本選手権では恒例、ジーピー代表・米川和秀氏の開会宣言「1・2・3、おはようございます!」のコール。続いて今大会のルールやマナーについての説明が行われた。

ここで今年の日本選手権において、大会初参加者が半数を超える58%にのぼっているというアンケートの結果も発表。実際に会場内で初参加者に挙手を求めたところ、かなりの人数が手を挙げていた。

大会のモットーである、カタンのデザイナー・クラウス・トイバー氏の言葉。

「“また明日あなたと遊びたい”と言われるようなプレイで遊びましょう」――クラウス・トイバー

開会式後、全員でポーズを取って記念撮影! 会場内を端から端まで埋め尽くした笑顔の参加者の“人の海”は圧巻(写真はジーピー提供)。

熱戦の幕開け~カタンの猛者たちが激突!

おおよそ11時を回るころ、いよいよ第一回戦がスタート。大会は全4戦。3回戦までの成績上位者の決勝卓17卓のなかから最終的に上位14名がファイナルへの出場切符を得る。会場内は150を超えるテーブルがずらりと並び、500人超の人数が同時に『カタン』をプレイする光景は壮観のひとこと!

なお、今大会では得点の集計を参加者がスマートフォンから入力して自動的に総得点を計算し、順位付けまで行うアプリを使ったシステムが導入されていた。

激しい戦いが行われる一方で、会場の一角では『カタン』を楽しむために集まった人たち約100名によって“エンジョイカタン”のプレイが行われており、家族連れや小さい子の姿が見られた。また、今大会の後援でもあるドイツ大使館からも“エンジョイカタン”の参加があった。

大会開始後、会場の端に物販コーナーが設置され、『カタン』シリーズのタイトルがずらりと並べられた。在庫僅少の『カタン』拡張セット旧版が破格の値段で販売されたほか、ジーピー新作『ドラゴンキーパー』の先行販売もあった。

上位14席の座をかけ、午後も激戦が続く

予定より時間がおしていたこともあって、1回戦後にいったん食事休憩があり、午後から2回戦。プレイヤーはまずは1回戦と同じ席に着いたあと、アプリにて次の対戦の卓の指示を受けて『カタン』選手権ではおなじみの光景、全プレイヤーの大移動が始まった。

3回戦まで終了すると、上位者68名が決勝卓17卓に振り分けられ、4回戦がスタート。決勝卓には、23年日本王者内田氏、2022年世界大会出場のナガモリ氏の姿が。

全卓の4回戦終了し、集計作業に移行。その間に“エンジョイカタン”卓では、“カタンを楽しんだ”成績上位の参加者にプレゼントが手渡された。プレゼンターは“エンジョイカタン”のスタッフを務めたプロギャンブラーのぶき氏が担当。

いよいよ表彰式! ひとつのドラマが……。

閉会式がスタート。いよいよ上位入賞者14名が発表され、ファイナル参加権が授与された。ファイナル進出者は、全員が4戦3勝以上・トータル38点以上を獲得。決勝17卓に残っていた内田氏、ナガモリ氏のふたりは最終14位以内を確保し、ファイナル進出を決めている。なお、6位入賞したハイカン氏はファイナル当日の実況を担当するということもあり、無念の辞退。15位の池田りるは氏が繰り上がり出場となり、ハイカン氏から参加権が手渡された。ドラマチックな展開に、会場中から暖かい拍手が。

上位3名には表彰状に加え賞品が手渡された。関東大会優勝・なおき氏は唯一の4戦全勝40点を達成。ファイナル進出は8年ぶりとのこと。また、表彰式が終わると日本選手権大会参加者に抽選でプレゼントが贈られた。

 

最後にファイナル進出者が揃っての記念撮影! ファイナル東京大会は関東大会上位14名を含めた総勢28名にて行われる。


過去最大規模のボードゲームを開催~株式会社ジーピーの米川秀治氏を直撃

第10回を迎え、昨年よりもさらに規模を大きくして行われているカタン日本選手権。昨年に引き続き、大会を主催する株式会社ジーピー常務取締役の米川秀治氏に日本選手権のことと、今回の関東大会について話を聞いた。

──昨年は4年ぶりの選手権大会が開かれ、今年は第10回目の大会となります。主催として、どのような意気込みでこの大会に臨まれたのでしょうか。

米川氏:今年の大会開催にあたって私たちがまず目指したことは、大会規模を昨年よりも拡大するということでした。前回大会を企画した段階では、まだ世間的にコロナ禍の影響から完全に脱していなかったということもあり、我々も手探りの状況でした。しかし、いざチケットを発売してみると各地方で早々に完売となり、想像していたよりもずっと大会に参加したいという方が多いということが分かったんです。それは、大会中断前の2019年と比べても多い人数でした。

そのため、今年の大会は第10回の記念大会ということもあってさらに拡大し、すべての会場で人数を増やしていくことになりました。

──今回、会場数は昨年と同じでしたが、お話しいただいたように参加人数は増えており、特に関東大会については前回の300名から(エンジョイカタン含め)500名超と大幅に増加しました。今後の拡大についての展望はどのようなものでしょうか。

米川氏:会場数は増やしたかったのですが、そこは我々の力不足という部分もあって、今回は各会場での参加人数を増やして地固めを行なうということになりました。開催地増はかなり検討しておりまして、中国・四国、および東北については現地の協力団体の方たちからもお声がけをいただいており、来年こそは拡げていきたいと思っています。

関東大会については、会場規模からすると600名ぐらいまでは入れられるということだったのですが、前回の300名から倍になるのは運営面でもリスクがあるということで、まず400名で募集し、状況を見て追加募集をするという流れになりました(※関東大会の最終的な大会参加者は追加募集ぶん含め468名)。エンジョイカタンの参加者も含めて500名超ということになりますね。

──500名を超える人数が単一のボードゲームをプレイしているということで、間違いなく過去最大のボードゲームの大会かと思います。会場も都立産業貿易センター台東館となりました。かつてはここでゲームマーケットが開催されていたこともあり、古くからの関東のゲーマーにとっては、ボードゲームの「聖地」という印象があります。

米川氏:ジーピーが最初にゲームマーケットに出展したときの会場もここで、確かフロアも同じ(5階)だったと記憶しています。先日ゲームマーケットの創設者である草場純さんとお会いする機会があり、このこともお話ししたのですが、この場所を自分たちで貸し切って『カタン』の大会を開催し、たくさんの人に来ていただけたということは、私たちとしても感慨深いものがありますね。

──大会のチケットについては、今回も完売したということですが。

米川氏:関東大会のチケット販売の速度を見ていると600~700名ぐらいまで募集しても大丈夫ではないかというところだったのですが、増やしすぎてコントロールできなくなってしまっても意味がありませんし、500名規模で締め切らせていただきました。

残念ながらたくさんの方に我慢していただいたということになりますし、我々としても将来的には東京の大会だけで700人、さらに増やして1000人といった数字を目標としております。先にもお話ししました通り、関東以外の地方も含めて拡大については今後も検討していきます。

──今大会から、地方大会に“地元枠”が設けられ、開催地近郊に住む方が最低でもひとりはファイナル進出できるようになりました。“地元枠”を導入した理由はどのようなものですか。

米川氏:東京や大阪といった大きな都市ですと現地からの参加人数が多く、自然と地元からの参加者が上位に残るのですが、他の場所の大会では、別の地方から来る、いわゆる“遠征組”が上位に入ってくることがあります。もちろん地方にも実力者がたくさんいるのですが、『カタン』は運の要素もあるゲームですから、遠征してきたプレイヤーが上位を独占してしまう可能性もある。

せっかく全国大会として各地に会場を設けていますし、私たちとしてもそれぞれの地区からファイナル進出者が出てきていただきたいということで、各大会で地元登録したプレイヤーを優先する“地元枠”を設けさせていただきました。

──一方で、ファイナル進出権を求めて『カタン』プレイヤーが各地方へ“遠征”することが選手権の名物といいますか、文化に近いものとなっているという気もします。

米川氏:そうですね。熟練プレイヤーが地方に行くことで現地の方との交流も生まれますし、私たちとしても遠征はダメだというつもりはありません。ですから、“地元枠”を設けた代わりに、これまでの「地方大会は3会場までしか参加できない」というルールを撤廃し、今回からひとりのプレイヤーが何度でも地方大会に参加できるようにしました。ファイナル参加権を得るというのが大きな目的なのは確かですが、これまでも全国を縦断しながら旅や各地のプレイヤーとの出会いを楽しむ人がいましたから、これも『カタン』が繋ぐ拡がりであり、大会の持つ価値のひとつなのかと思います。

──今回の関東大会での新たな試みとして、“エンジョイカタン”卓の設置があると思います。どのような意図があって行われたものなのでしょうか。

米川氏:『カタン』プレイヤーの人口の割合として、大会に参加する人は全体の1%ぐらいなのではないかと考えています。ですが、初心者の方や、競技としてプレイするのは自信がない、純粋にゲームを楽しみたいという方もたくさんいらっしゃるのではないでしょうか。せっかくこのような大きな大会を開催するのですから、もっとこの場を活用したいということで、『カタン』を楽しむだけの集まりとして“エンジョイカタン”を企画しました。いろいろな方とプレイしたり、純粋に楽しむことで、ボードゲーム本来の楽しさを感じてもらったり、交流の輪が広がったりすると嬉しいですね。

こちらもご好評いただけたようで、用意したチケットは完売しています。9月にはレディース大会も企画していますし、私たちも『カタン』を通じていろいろな形でさまざまな人に楽しんでもらうお手伝いができればと思っています。

──同じく、新企画の前夜祭イベントとして開催された“カタンまつり”についてもお話しください。

米川氏:これも第10回記念大会の一環ということになります。今回の大会は500名もの人が来る大きなものですから、前日から集まって『カタン』を遊んでいるような方々もたくさんいらっしゃると考え、せっかくですからそのような“前乗り”している皆さんに向けて、もしくは大会当日は都合が悪いけど土曜なら行けるという方や、みんなで『カタン』を楽しみたいという人のために開催したものになります。こちらものべ120名ほどの参加者にお越しいただけました。

──6月15日のXでは、“カタンまつり”でさまざまな『カタン』の拡張セットや派生作品、例えば『サッカーカタン』などを楽しむポストが投稿されていました。

米川氏:大会では通常の『カタン』しかプレイしませんが、『カタン』にはたくさんの拡張セットがあり、それぞれ別の楽しさがあります。『航海者版(海カタン)』であったり、『宇宙開拓者版(宇宙カタン)』、といったものですね。以前からこれらの拡張セットをご紹介する場を用意したいと思っていて、今回実現しました。“カタンまつり”では拡張セットの卓から埋まっていったので、こちらも成功といったところです。『サッカーカタン』については、時期は未定ですが輸入品に和訳を付ける形での提供を考えています。

──今大会ではスマホアプリを利用し、大会参加者が登録して得点を入力することで、大会中にスコア確認ができるシステムが導入されました。このシステムを採用した理由はどのようなものでしたか。

米川氏:前回は300名の参加者に得点を紙に記入してもらい、こちらも人海戦術で集計したのですが、プレイヤーと運営の両方に人為的なミスがあったり、時間がかかったりしました。参加人数も増えてきましたし、以前からデジタル化しないと運営に支障をきたすと考えていたんです。今回得点集計にアプリを使ったことにより、集計の確認や間違いの修正が容易になりました。

このシステム自体は昨年の大会にも参加していた『カタン』のプレイヤーの方にご提案いただいたもので、検証してみて使いやすいということで導入を決めたものです。今後も改良を加えながら使用していきたいと思っています。

──最後に、全国のカタンのプレイヤー、ボードゲーマーの皆さんに向けてひとことお願いいたします。

米川氏:これからも、『カタン』を通じてボードゲーム界を盛り上げていきたいですね。目指すところは世界ナンバーワンの『カタン』大会の開催。日本選手権を関東1000人、全体2000人規模の大会まで育てたいです。いろいろな方にボードゲームをプレイしていただき、楽しんでもらいたいと思っていますので、これからもよろしくお願いいたします。


カタン日本選手権の地方予選は、6月30日(日)北陸地区大会と7月7日(日)関西地区大会を残すのみ。いずれもチケットは完売しているが、追加募集や当日キャンセル枠の受付も行っているとのこと。情報はサイトにて随時公開されるそうなので、気になる人は逐一チェックしてみてほしい。

【カタン’24公式大会】
http://www.gp-inc.jp/catan/catan_championship2024/index.html

そして、地方大会を勝ち抜いた総勢32名によるファイナル東京大会は、7月28日(日)新宿プリンスホテルで行われる。昨年は終盤の劇的な展開のすえ内田裕太氏がチャンピオンとなった。今年はどのような戦いが繰り広げられるのか、今から楽しみだ。