JELLY JELLY GAMESは、2023年12月9日に『てのひらダンジョン』を発売する。価格は1320円[税込]。ゲームデザインは『はらぺこバハムート』を作ったStudio GG、アートワークはU井&TANSANが手がけている。
ちょうど(遅ればせながら)『はらぺこバハムート』にドハマりしていた編集部員が、「新作『てのひらダンジョン』を作った人にインタビューをしたい!」と騒ぎ出した(?)ので、早速Studio GGのShun氏とAYA氏に連絡をとってアレコレ聞いてみることに。『はらぺこバハムート』にハマった方は、ぜひ読んでほしい。
様々なカード効果でコンボを楽しめる
──早速ですが、『てのひらダンジョン』について、ゲーム概要を教えてください。
Shun: 『てのひらダンジョン』は、2人から4人まで15分程度で遊べるカードゲームです。18枚の冒険者カードを使ってダンジョンのモンスターを倒して報酬を集めていくゲームです。最終的に「報酬の価値」の合計点が一番多い人が勝利となります。オリジナル版の『きけんなさいくつ』はゲームマーケット2021秋に発売しました。

▲『きけんなさいくつ』
AYA: 冒険者カードの組み合わせでいろんなカードコンボの効果を楽しめるようなゲームになっています。
Shun: ベースになってるのは、同じくJELLY JELLY GAMESさんからリリースされた2人戦用の『はらぺこバハムート』(オリジナル版は『きょうあくなまもの』)で、これを4人でも遊べる形で作ってみようかな……なんていう考えも、着想時に少し思っていました。
だからと言って、『はらぺこバハムート』をそのまま4人用にした……というわけではありません。モンスターは出てこないですし、体力もないですからね。カード枚数の少なさと、カードに特殊効果があるという点は似ていますが、プレイ感は違うと思います。場に4枚の冒険者カードがオープンになっていて、これが全員共通の手札のような感じでプレイしていきます。

▲『はらぺこバハムート』
──どういったプレイヤー層を意識して作りましたでしょうか?
Shun: 基本的に、やることはカード1枚選んで取って1枚使用するという単純なもので、ルールはすごく簡単に作ってあります。いわゆるカジュアル層に気軽に遊んでいただけるように作りました。
カードゲームっぽさみたいなのもあって、さきほども説明したようにカードコンボがあるので、熱心なボードゲーマーやカードゲーマーな方も楽しんでもらえると嬉しいです。
──もともとカードゲーム、いわゆるトレーディングカードゲーム(TCG)というか、あの辺のゲーム枠は結構遊ばれたりはしてたんですか?
Shun: 『マジック: ザ・ギャザリング』歴は20年以上です。長いといえば長いですが、途中休んだりしていますし、今はそんなにすごいガチではやっていません。でも、『マジック』みたいな特殊効果のカードをたくさん使ったTCGをずっと遊んできたので、そういう面白さをボードゲームに取り入れたいなと。
AYA: TCGっぽいものを気軽に楽しめるようなものを作りたかったんですよね。『マジック』とかTCG全般に言えることですが、敷居が高いというか、勉強することが多すぎる印象ですよね。なのでちょっと手が出なくて……。
Shun: AYAはあまりTCGをやってきていないのですが、そういう人でも一緒に遊べるカードゲームを……ということで、まずは『はらぺこバハムート』を作ったんですが、あれだと2人しか遊べないので、もう少し幅広く4人まで遊べるものを……と考えていきました。

▲『てのひらダンジョン』
『きけんなさいくつ』から製品版『てのひらダンジョン』へ
──元の『きけんなさいくつ』を製品化しようという話、JELLY JELLY GAMESさんからはいつごろ話が来たのでしょうか。
Shun: 2022年3月ごろだったと思います。
AYA: このゲームはだいぶカジュアル層向けなので、私たちの中では製品版をやっていただけるならJELLY JELLY GAMESさんにお願いしたいと考えていました。
──ルール変更やカード追加などは検討したのでしょうか?
Shun: 前提として、出版社に対して私たちから「こう変更したい!」と言うことはほとんどありません。基本的にはすべて出版社側にお任せしています。
製品版に向けての変更・追加は一応検討自体はしたんですが、やっぱり元のゲームのままがいいですね、とJELLY JELLY GAMESさんからも連絡がありまして、基本的には変更なしです。
──『きけんなさいくつ』を作っているとき、もっとも苦労した部分はどこでしょう?
Shun: 『てのひらダンジョン』でいう「身代わり人形」というカード関連ですね。持っていると他のプレイヤーからの攻撃カード(得た報酬を手放す)を防ぐことができるカードなのですが、普通に防げるだけだと強くなりすぎてしまうんです。勝っている人がこれを持つことでゲームが硬直してしまう展開になりがちでした。
そこで「貴族」というカードを加えました。これを他プレイヤーが使うと報酬がもらえるのですが、「身代わり人形」を持っていると受け取れなくなります。良い効果すらもガードしてしまうということで、ゲーム全体のバランスが変わりました。
攻撃するカードは多かったのですが、防御カードをどういう効果に落ち着かせるのかは時間がかかった部分です。

▲『てのひらダンジョン』の冒険者カード「身代わり人形」
──プレイ人数は2人から4人とありますが、ベストなプレイ人数はありますか?
Shun: プレイ人数なりの楽しさがあると思っています。2人プレイだとガチな対戦になりますし、4人だとパーティーゲーム要素が強くなります。3人だとそのあいだくらいかな、と。
Studio GGは、とにかくテストプレイに時間をかける
──では改めて、Stuio GGについて教えてください。
Shun: 私とAYAの夫婦でやっているボードゲーム制作サークルです。2013年から活動しておりまして、製品化されたゲームは『リトルタウンビルダーズ』(アークライト)、『はらぺこバハムート』(JELLY JELLY GAMES)、『ブラウニーズ』シリーズ(やのまん)などがあります。
──ボードゲームを作り始めたキッカケは?
Shun: 最初、友人がボードゲームを作りたいと言い出したのに便乗して自分たちも作り始めたのがキッカケです。
AYA: でも、その友人は忙しくなってしまって作るのを止めてしまったので、結局私たちだけが作り続けています。
──ゲーム作りのペースはどのくらいでしょうか?
Shun: 1年に1本だったり2年に1本だったり……。
AYA: 今年で10年目なんですが、今までに8作出しています。もっと早く出したいなと思っているんですが、完全に納得して出したいので、なかなか早く出せません。
Shun: テストプレイに時間をかけていて、完成するまでに50回以上はやっています。
──ゲームデザインはShunさんのほうで?
Shun: 最初の案は私が企画して、いけそうならふたりで改良案を出してブラッシュアップしていく、という感じでやっています。どちらかが行き詰まるとどちらかが「こういうのどうだろう?」と改善案を出す、みたいな感じですね。
AYA: ゲームが完成したかどうかは、最終的に私が判断しています。Shunが完成したと言っても、私が「まだ」ということは多いです。その場合は一緒に検討して、最終的には、毎回お互いに納得できる形に落ち着きます。
Shun: 私はいつも全てのルールに理由がないといけないと思っています。なので、お試しでまあとりあえずこのルールでやってみよう……ぐらいのことはしますが、最終的になんでそうなのっていうのを自分なりに理屈をつけて、自分の中で納得したいっていう気持ちがあるんです。
それを制作ノートという形で記事にしていますが、必ずしも先に理論ができるわけではなく、最終的に出来上がったゲームの自分のなりの解釈をまとめたものを記事しているような感じですね。

▲『てのひらダンジョン』の報酬カード
Studio GGのこれからと
『てのひらダンジョン』のオススメポイント
──サークルとして、今後の予定を教えてください。
AYA: ゲームマーケット2023秋は私たちはゲムマ春に出した『マイトロッコタウン』の再販をします。『てのひらダンジョン』以外には、やのまんさんから『ファームウィズブラウニーズ』の新作『ノーザンブランチ』が出ますので、よろしくお願いいたします。来年以降に出るだろう新作も現在制作中なので、またよろしくお願いします!
──最後に、『てのひらダンジョン』のここが面白いよっていうオススメポイントをお願いします。
Shun: まず1つ目は、いろんな効果のカードを使ってダンジョンを潜っていくというのが単純に楽しいものになっています。カジュアルに特殊効果ありのカードを使うゲームを遊びたい人にはすごくオススメです。
すでに元の『きけんなさいくつ』を持っている人は、製品版『てのひらダンジョン』はフレーバーに注目してください。正直、カードを見て読んでいるだけで楽しいです。フレーバーをしっかり楽しめるようなカードデザインになっていて、これだけで『きけんなさいくつ』とは違った面白さが出ているなと感じています。ぜひ手に取っていただけると嬉しいです。

▲『てのひらダンジョン』の冒険者カード