鉄道と旅と冒険! 『チケライ』で知られるアラン・ムーンのゲーム7選

『チケット・トゥ・ライド:アメリカ』の新版が、2025年9月30日にホビージャパンから発売されます。同作はマップ上に線路を引いていくだけのシンプルなルールで鉄道のロマンを最大限に表現しており、舞台を変えた姉妹作や拡張セットが発売され続けている傑作タイトルです。

デザイナーはアラン・R・ムーン氏。イギリス出身のデザイナーである彼は、『チケット・トゥ・ライド』シリーズ以外にもたくさんのボードゲームを手掛けており、なかにはドイツ年間ゲーム大賞を受賞した作品もあります。

今回は、アラン・ムーン氏の作品を7つほどご紹介しましょう。

広がる“チケライ”ワールド! 鉄道ゲームを代表するシリーズ

チケット・トゥ・ライド:アメリカ

2004年のドイツ年間ゲーム大賞受賞作。鉄道をテーマとしたボードゲームのなかでいの一番に名が挙がる、アラン・ムーン氏の代表作です。

プレイヤーは手番で手持ちの列車カードを出し、20世紀初頭のアメリカを再現したゲームボード上に自分の色の列車コマを配置。都市と都市を線路で繋いで鉄道網を作っていきます。ただし、都市間の線路には色と距離が設定されており、同じ色の列車カードを距離の枚数だけ1回の手番で出さなければなりません。

行き先チケットに書かれたふたつの都市を繋ぐと得点を獲得。新たな行き先チケットを引いて新たな経路の構築していきます。手番では列車を置くかわりにカードを引くことも可能で、この場合は場に出ている5枚の列車カードから欲しいものを2枚補充。また、達成できない目的地カードを捨てて引き直すこともできます(終了時に達成できなかったカードが残っているとマイナス点になってしまいます)。

都市間の線路はひとつ、もしくはふたつしかなく、誰かに線路を引かれるとあとから入ることができないため、早い者勝ちです。このため、ゲーム開始時からひりひりとした延伸合戦が展開。目的地が察知されると経路の途中の線路を取られてしまうこともあり、簡素なルールながらも、シビアなインタラクション性があります。

元版は2004年に発売され、2006年に日本国内で同作を最初に出したのはバンダイです。その後、ホビージャパンから旧版が2012年4月、新版が2025年9月に発売されました。新版ではボックスやカードのデザインが改訂されたほか、ボードに記載された都市名が日本語となり、よりプレイしやすくなっています。

チケット・トゥ・ライド:アメリカ 新版

※画像はホビージャパンのサイトより引用。

チケット・トゥ・ライド:アメリカ 概要】
メーカー:ホビージャパン
プレイ人数:2~5人
対象年齢:13歳~
プレイ時間:30~60分

チケット・トゥ・ライド:ヨーロッパ

舞台をヨーロッパに移した“チケライ”シリーズ第2弾。日本語版は2010年10月に発売されています。

マップは西はスペイン、イギリスから、東はロシアまで欧州のほぼ全域をカバー。基本的なルールは『チケット・トゥ・ライド:アメリカ』と同じですが、単純な陸路に線路を引いていた前作と違い、今回は海峡を渡るフェリーや、アルプスの山岳を抜けるトンネルなど地形に左右される部分があり、通常よりも高いコストを払う必要がある経路も存在します。さらに他のプレイヤーの線路の区間をひとつだけ使用できる“駅”のルールも追加され、戦略性もアップしました。

マップ上の都市名は20世紀初頭のそれぞれの国の言語で記載されており、雰囲気バツグン。複数の国をまたにかけ、鉄道網を広げていくロマンを味わえる一作です。

チケット・トゥ・ライド:ヨーロッパ 概要】
メーカー:ホビージャパン
プレイ人数:2~5人
対象年齢:13歳~
プレイ時間:30~60分

チケット・トゥ・ライド:ロンドン

“チケライ”シリーズ”のなかでの異色作。今回はロンドンの街が舞台で、交通網の構築も鉄道ではなくバスで行います。

ロンドンの街はバッキンガム宮殿をはじめ大英博物館やビッグベン、ワーテルロー広場といった数多くの名所があり、プレイヤーは市内にダブルデッカー(二階建てバス)などの路線を拡張して地区と地区を繋いでいきます。

日本語版は2019年9月に発売。従来のシリーズ作品と比べるとマップが狭く、コマの数も少なくまとまっています。プレイ時間も20分前後と短いため気軽に遊べますが、凝縮された“チケライ”の魅力を存分に味わうことができるでしょう。

チケット・トゥ・ライド:ロンドン 概要】
メーカー:ホビージャパン
プレイ人数:2~4人
対象年齢:8歳~
プレイ時間:~30分

チケット・トゥ・ライド:ファーストジャーニー(アメリカ)

※画像はDays of Wonderのサイトより引用。

さまざまな部分を簡略化し、よりキッズ向けになった“チケライ”です。マップはアメリカですが、本家と比べると大幅に圧縮されており、プレイ時間も短くなっています(なお、ゲームボードやコマなどのコンポーネントは本家と比べても大きいぐらいのサイズ)。

対象年齢は6歳からと引き下げられていますが、そのゲーム性は健在。マップがシンプルになって線路の数が減ったぶん競争度が高まったため、大人がプレイしても苛烈なルート構築合戦が展開します。

リリースは2016年。ヨーロッパマップ版もあります。完成度が高く、デザインしたアラン・ムーン自身もお気に入りだとか。残念ながら日本語版は未発売ですが、現在でも通販等で入手が可能ですし、ボードゲームカフェなどでプレイできる場所もあるようなので、興味がある方はぜひ探してみてください。

【チケット・トゥ・ライド:ファーストジャーニー(アメリカ) 概要】
メーカー:Days of Wonder
プレイ人数:2~4人
対象年齢:6歳~
プレイ時間:15~30分

チケット・トゥ・ライド・レガシー:西武開拓記

※画像はホビージャパンのサイトより引用。

遊ぶたびに新たなルールが増えるレガシー要素を追加した、複数回のプレイからなるキャンペーンゲーム型の“チケライ”。ドラマチックなストーリーとシリーズ最大の重厚なコンポーネントで19世紀後半のアメリカの鉄道発展の歴史を描く、骨太な作品です。

ゲームはシナリオ仕立てとなっており、全12回のプレイで行われます。プレイヤーは鉄道会社を率い、アメリカでの鉄道発展の時代において競合他社との事業戦争に乗り出すのです。特徴は、もちろんそのレガシー要素。プレイするのは従来の“チケライ”のルールにのっとったゲームなのですが、シナリオを進めるごとにストーリーが進行し、新たなルールやコンポーネントが次々と追加・変更されていくため、ゲームをするたび毎回新鮮な驚きを感じることができるはず。

プレイを全12回繰り返すということでかなり時間がかかりますが、最後まで終えることができれば壮大なストーリーに感動を覚え、それまで戦っていたはずのプレイヤー同士に不思議な連帯感が生まれることでしょう。鉄道や“チケライ”が好きで、ともにプレイする仲間と時間が確保できるのであれば、ぜひとも体験してほしい一作です。

チケット・トゥ・ライド・レガシー:西武開拓記 概要】
メーカー:ホビージャパン
プレイ人数:2~5人
対象年齢:10歳~
プレイ時間:60分~

ムーンが贈る旅と冒険! “チケライ”のほかにも名作が続々

エルフェンランド

ここはエルフの国。プレイヤーはエルフの成人の儀式として、国の各地を回って旅をします。

マップ内には全部で20カ所のポイントがあり、プレイヤーは全4ラウンドのうちにできるだけたくさんのポイントを回らなければなりません。手札として毎ターン配られる移動手段は帆走車、イノシシ、トロールの引き車、ユニコーン、魔法の雲、ドラゴン、そして水場を進む筏の7種があり、それぞれに得意とする地形が違っています。これらの移動手段をうまく使って、より多くのポイントを回るルートを構築していくことができるでしょうか?

移動に先立ってルート構築が行われ、まずここで鍔競り合いと読み合いが繰り広げられます。プレイヤーはランダムに配布された移動手段のトークンを通りたい道に配置していくのですが、トークンが置かれた道は他のプレイヤーもその移動手段で通らなければいけません。他人の道に便乗できることもあれば、望まない移動手段を指定されたり、意図的に妨害されてしまうこともあるのです。

もっとも効率よく移動するには一筆書きに近いルートを通るべきなのですが、手札の都合でそううまくはいきません。さらに、道をふさいで移動コストを増やす倒木のトークンをゲーム中に1回だけ使うことが可能なため、他者からの妨害も考えられます。

手札のマネジメントと、よりよいルート構築が悩ましくも楽しい一作。“チケライ”以前の作品ですが、1998年のドイツ年間ゲーム大賞を受賞しており、アラン・ムーンの名声を確たるものとしたタイトルです。

エルフェンランド 概要】
メーカー:メビウスゲームズ
プレイ人数:2~6人
対象年齢:10歳~
プレイ時間:60分~

インカの黄金

※写真は旧版のもの。

冒険者となってインカの古代遺跡を探検するチキンレースタイプのゲーム。

プレイヤーは公開された神殿の通過カードと、そこに書かれた障害を見て、進むか戻るかを決めます。進んだ場合は新たな宝石を獲得できるかもしれませんが、続いて引いた通過カードの障害が2回連続で同じものになると集めた宝石はすべて失われてしまいます。戻れば手持ちの宝石は確保できるものの、それ以上の成功を収めることはありません。恐怖に打ち勝ってより多くの成功を収めるか、それとも手堅く失敗を回避することができるのか。すべてはプレイヤーの選択と運次第なのです。

問答無用で盛り上がるチキンレースタイプの代表的なゲームとして取り上げられることが多い本作。ルールは非常にシンプルながらも、毎ターン進むか退くかの選択に迫られ、スリルと興奮を味わうことができます。

発売は2011年6月。2025年1月には拡張セットを同梱した新版の『インカの黄金 再発掘』が発売されました。

インカの黄金 再発掘

※写真はアークライトのサイトより引用。

インカの黄金 再発掘 概要】
メーカー:アークライト
プレイ人数:3~8人
対象年齢:8歳~
プレイ時間:30~60分

ブロック・アンド・ゲス

※写真はホビージャパンのサイトより引用。

さまざまな形のブロックで組み上げられて表現されたものが何かを想像し、当てるゲーム。チーム同士の対戦で行われ、相手チームのプレイヤーはお題を確認し、用意されたブロックのなかから適当な形のものをいくつか選びます。ヒントを出す役のプレイヤーは、そのブロックを使ってお題を表現。そして回答役のプレイヤーがブロックを見てお題を想像するのです。

ヒントに用いるブロックは対戦相手が選ぶので、当然ながら“お題を表現しにくい”ものが選択されます。ヒント出題役のプレイヤーはそのブロックを四苦八苦しながらなんとかお題に近付けたものにするわけですが、うまくいくわけもなく……。お題からかけ離れた思いもかけない形のブロックができあがると、回答役が当てても外しても場は笑いに包まれ、盛り上がりを見せるでしょう。

発売は2024年3月。アラン・ムーン氏は鉄道以外のテーマや、軽めのゲームも作っています。『ブロック・アンド・ゲス』はその一作で、対象年齢は8歳から、プレイ人数は8人までと、パーティーゲームとして適したものとなっています。

ブロック・アンド・ゲス 概要】
メーカー:ホビージャパン
プレイ人数:3~8人
対象年齢:8歳~
プレイ時間:~30分


『チケット・トゥ・ライド』は姉妹作や拡張セットがたくさんリリースされ、アラン・ムーン氏の代名詞的なシリーズとなっています。一方で氏は多作であり、それ以外のタイトルにも名作、傑作と呼ばれているものがいくつもあります。

その多くはマップを駆け巡る“旅”や“冒険”を扱ったものが多く、今回ご紹介した『エルフェンランド』『インカの黄金(ダイヤモンド)』のほかにも、『エアライン・ヨーロッパ』『10デイズ・イン・ザ・USA』『黄金の島 イスラ ドラーダ』(※3人の共著)など、枚挙にいとまがありません。

ルールがシンプルでプレイ時間が短くまとめられているものが多く、気軽にプレイできるのも魅力的。もしプレイする機会があったら、ぜひとも体験してみてほしいと思います。胸躍る旅と冒険があなたを楽しませてくれることでしょう。