【名作リプレイ】『ito』~みんなでワイワイが楽しい! 価値観を比べる共感系コミュニケーション&協力ゲーム

これまでBROADは、さまざまなボードゲームの紹介をしています。しかし、従来の記事では複数のゲームを紹介することに重きを置いており、個々のゲームをフィーチャーすることはあまりやっていませんでした。そこで、BROADではこれまで発売された人気のゲームや名作と呼ばれるタイトルをプレイしてその魅力を再確認し、改めてお伝えしていこうかと思います。

その第1回でご紹介するのは、YouTuberなどのインフルエンサーがプレイ動画をあげたり、ボードゲームカフェやプレイスペースで勧められたりすることが多いアークライトの共感系コミュニケーションゲーム『ito』。同作は短い時間でプレイ可能で、最大10人(姉妹作『ito レインボー』は14人)まで遊ぶことができるため、パーティゲームの定番として知られている作品です。

今回は、『ito』の遊び方や楽しさのポイントを、リプレイを通じてご紹介しましょう。

数字を言葉に例えて価値観を比べ合う協力ゲーム

まずは簡単なルール説明から。このゲームは、各人に配られた数字カードの数字について、お題に沿ったキーワードを発表し、カードを小さい順に並べていくことが目的になります。自分のカードの数字は秘密で、察せられるような発言もダメ。あくまでキーワードでみんなに数字を想像してもらうのです。全員で協力しながら正しい順番でカードを並べることができれば成功です。

以下に、簡単に手順とルールを解説します(プレイヤー人数は4人とします)。

1.各プレイヤーに1~100の数字カードを1枚ずつ配ります。

まずは1人1枚ずつ数字のカードを配ります。数字は秘密で、他のひとにカードを見せたり、数字が分かるような会話をしてはなりません。

2.テーマカードを引いて、お題を決定します。

テーマカードにはふたつのテーマが書いてあり、親となるプレイヤーがどれかを選択します。

例では、「人気のおにぎりの具」というお題を選択。0に近い数字が人気がない具で、最高の100は大人気となります。

 

3.各プレイヤーは、お題に沿って自分の数字を「表現」します。

プレイヤー1は(あくまでも主観で)「おかか」に決定。他のプレイヤーは「チョコ」「梅」「柿」と発表しました。おにぎりの具にふさわしくないものも混じっていますが……。

4.好きなタイミングで、自分のカードを場に出します。ただし、カードは小さい順(1~100の昇順)に、一列で並べなければなりません。

各プレイヤーは数字のカードを裏側で場に出し、小さい順になるように一列に並べていきます。他人のカードが置かれた位置に対して異議があったり、自分のカードを動かしたい場合は相談して変えてもらうこともできます。

5.全員のカードを並べ終えられれば成功です。

全員が数字カードを出したら、小さいほうから公開。数字の並びがキチンと小さい順に並んでいれば成功で、ひとつでも数字の並びが間違っていたら失敗! 再びお題を引いて新しいラウンドに入ります。みんなで協力しながらゲームを成功に導きましょう!

実際に遊んでみる! 大人数で大論戦

では、実際にプレイしている風景をのぞいてみます。この日集まったプレイヤーの人数は9名(プレイヤーA~I)、テーマは“人からごちそうされたい食べ物”になりました。1が別に嬉しくないもの、50が普通、100がとても嬉しいものです。
※このリプレイでは、『ito レインボー』のカードやコンポーネント、テーマを使用しています。

A:では皆さん、キーワードの発表をお願いします。
B:焼き鳥3本」にします。
A:いいねえ。では僕は「シャトーブリアン」。
C:お肉。これは(値段が)高い?
D:希少部位ですからね。

E:自分は「ハーゲンダッツ3個」。
F:3個もくれるんだ。
G:良さそう。ハーゲンダッツ高いですし(笑)。
C:私は「千疋屋(せんびきや)のマスクメロン」。
一同:おー。
A:ギフトの定番というか、分かりやすく値段が高いのが来た。

D:自分は「行きつけのモツ焼き屋で食べ放題」。お値段はそれほどでもないけど、おいしいお店。
H:私は、ダイエット中に「ヤングドーナツ」をおごってもらう。
A:駄菓子だ(笑)。急に値段が下がった。
D:それ、ごちらそうされたいか?(笑)

I:自分は「オリジン弁当ののり弁」で。
F:ちょうどいいやつ。良くも悪くもない。
G:ダブルチーズバーガーのセット」。ポテトとドリンク(M)ね。

F:最後、自分は「屋台の焼きそば」。目玉焼き乗ってる、ちょっとだけいいやつ。
C:これはどのくらいなのか、評価が難しい。
F:屋台なので、キチンとしたお店のものよりは下かな。

A:これで揃ったかな。じゃあ並べましょうか。

お題発表の段階で、侃侃諤諤(かんかんがくがく)の議論が交わされました。さて、どのような並びになるのでしょうか。

(相談しながらカードを並べていく)

F:一番小さい数字はヤングドーナツでいい?
A:そうですね。次はなんだろ。焼き鳥3本かな。その次はハーゲンダッツか。
D:ハーゲンダッツはいいほうでなのでは? お弁当の上ぐらいとか。
G:ファストフードとか弁当とかよりは上かな。

A:ダブチセットオリジン弁当焼きそばあたりは数字が近そうな気がするけど、とりあえずこの順で。
F:あー、ちょっと不安になってきた。焼きそばは少し下げていいですか。弁当、ダブチより下で。
I:自分の弁当もダブチより下にしたいです。

A:下から焼きそばオリジン弁当ダブチセットの順で、その上にハーゲンダッツかな。
C:ハーゲンダッツはさすがにシャトーブリアンよりは下だよね。
H:好き嫌いでいうと、ハーゲンダッツのほうが好きかもしれないけど(笑)。

E:その次をメロンシャトーブリアンモツ焼き屋食べ放題が争ってる感じ?
C:シャトーブリアンのほうが上という気はする。単純に値段がお高そう。
D:金額でいうとシャトーブリアンのほうがモツ焼き屋より高いけど、メロンも高い。あとは、ごちそうになってうれしいかどうか。
F:値段だけじゃないよね。
B:千疋屋のメロンは強いでしょう。
C:お肉も強いですよ。

A:じゃあシャトーブリアンをいちばん上にして、次はメロン
I:自分もそう思いますね。
A:上からシャトーブリアンメロンモツ焼き屋食べ放題の順にしますか。

カードを並べるにあたっては、発表のときよりさらに活発な議論が行われました。そして、その結果は以下の通り(数字が小さい順)。

↑低い
ヤングドーナツ(H)
焼き鳥3本(B)
屋台の焼きそば(F)
オリジン弁当ののり弁(I)
ダブルチーズバーガーセット(G)
ハーゲンダッツ3個(E)
モツ焼き屋食べ放題(D)
千疋屋のマスクメロン(C)
シャトーブリアン(A)
↓高い

A:これで全部配置しましたね。では“人からごちそうされたい食べ物”、下から答え合わせをしましょう。
H:じゃあ自分から。ヤングドーナツ、数字は20でした。
B:次は焼き鳥3本21
A:いきなり連番成功してる! すごい!(※カードの数字が連番になっていると、正しく並べるのが難しい)
F:次は屋台の焼きそば47
I:次、オリジン弁当ののり弁40……。

一同:あー。

A:残念だけど失敗このあたり、並べていても難しい感じがしましたね。とりあえず続きも見ましょうか。
G:ダブルチーズバーガーセット42。ここもダメでした。
E:次、ハーゲンダッツ3個81。いきなり上がる。
D:モツ焼き屋食べ放題93
A:うわ、高い。やっぱりか。
C:千疋屋のメロン86。ダメかあ。
A:シャトーブリアン92。これもダメ、しかも93と連番。でも、お気に入りのお店の食べ放題呑み放題のほうがうれしいと言われたら、確かにそうだ、と思ってしまう。モツ焼き屋を軽視しすぎたかも。ちょっと失敗しましたね。

【答え合わせ】
カッコ内がカードの数字で、線で区切った以降が失敗した部分です。

20 ヤングドーナツ(H)
21 焼き鳥3本(B)
47 屋台の焼きそば(F)
ーーーーーーーーーーーーーーー
40 オリジン弁当ののり弁(I)
42 ダブルチーズバーガーセット(G)
81 ハーゲンダッツ3個(E)
93 モツ焼き屋食べ放題(D)
86 千疋屋のマスクメロン(C)
92 シャトーブリアン(A)

このようにお題をプレイしていき、3回成功すると勝利。間違った順番でカードが出るとライフを失い、3つのライフがなくなるとゲームオーバーです。人数が多いと難度が上がるのですが、今回はそれに加えて難しい連番のカードを2組も引いていたため、かなりキツイ状況だったかもしれません。

プレイヤー同士の価値観の相違などもあって失敗となりましたが、ここに至るまでにさまざまな意見が交わされ、雑談に花が咲きました。『ito』の面白さは、まさにこのトークの部分にあります。あれやこれやと話し合い、共通の話題で盛り上がること、コミュニケーションが取れることが何より楽しい。そして、価値観のズレが笑いに変わる。これこそ『ito』の最大の魅力なのです。

『ito』シリーズ作品

『ito』は、最初に発売された同名作品に続き、姉妹作や派生作が登場してます。以下にシリーズ作品をご紹介しましょう。

『ito』

2019年に発売された最初の『ito』。ゲームをデザインした326(ナカムラミツル)氏がイラストも担当しています。今回ご紹介した“クモノイト”ルールのほか、自分に配られた数字カードと合う相手を探す“アカイイト”ルールで遊ぶこともできます。

『ito レインボー』

2022年12月発売のシリーズ第2作。対応プレイ人数は最大14名までとなりました。カードサイズの見直しが行われ、砂時計やプレイヤーカラーを示すクリスタルを同梱。さらにお題カードを一新しました。これ単体で遊べるほか、最初の『ito』と組み合わせることも可能です。協力ルール“クモノイト2.0”に加え、2チームに分かれて対戦する“ニジノイト”ルールも用意されています。

『ito クラシック』

2024年3月発売。海外版をもとにして、シンプルでクラシックなデザインとなった『ito』です。基本的なルールは『ito』と同じで、お題カードが従来作から厳選された87問+新規13問に改められています。

『コロコロ ito』

2023年5月、小学館グッドゲームズより発売。小学館のキッズ向け漫画誌『コロコロコミック』とコラボしたスペシャルバージョンで、数字カードに『ドラえもん』や『爆走兄弟レッツ&ゴー』『絶体絶命でんぢゃらすじーさん』などの登場キャラクターたちがあしらわれているほか、お題に『コロコロコミック』に掲載された歴代人気コミックをテーマとしたカードが追加されています。


人数を選ばずに簡単なルールでコミュニケーションをはかることができるため、普段ボードゲームを遊ばない人たちや、初顔合わせのメンバー同士でも鉄板で楽しめる『ito』。

もし未体験という方がいらっしゃいましたら、ぜひともプレイしてみてください。みんなで協力する面白さ、トークで盛り上がる楽しさを存分に感じることができるはずです。