チキンレースとは、何名かで危険なことに挑戦し、先に降りたほうが臆病者(チキン)と呼ばれる度胸試しのこと。ボードゲームでもポピュラーなメカニクスで、古典的なゲームから人気作まで数々のタイトルが登場しています。
のるかそるかの勝負の場面が何度も訪れ、どのような結果でも盛り上がるチキンレース。今回は、チキンレースの要素を持つボードゲームを7つほどご紹介しましょう。
チキンレースとはいえばこれ! まずはトラディッショナルな作品から
キャントストップ

※写真は旧版のもの。
プレイヤーはダイスを4つ振って2個ずつを組み合わせ、2から12までの出目に対応した列のコマを進めていきます。3つのコマをゴールまで導いたプレイヤーが勝者です。デザイナーは『アクワイア』でも知られるアメリカの名匠シド・サクソン。
ひとつの手番でダイスを何度でも振ってコマを進めることができますが、一度にコマを置ける列は3つまで。もし進めている3つの列以外のダイスの目が出てしまうとバーストとなり、その手番で進めたぶんをすべて戻さなければなりません。
かなりタイトな勝負になるので、他プレイヤーに対してアドバンテージを得るには一手番で何度か進めたいところ。しかし勝負をかけたときに限ってバーストしたり……。なかなか思う通りにならないダイスにやきもきさせらながらも振るたびに盛り上がる、チキンレースを代表するタイトルです。
久々に遊んだキャントストップが楽しすぎた。やっぱダイスをたくさん振れるのは楽しいですね🎲🎲🎲🎲✨️✨️#ゆこる#ボードゲームカフェ pic.twitter.com/FaIi2MqQ1X
— きむち。 (@kimuti_maru) July 24, 2025
【キャントストップ(2023年版) 概要】
メーカー:ニューゲームズオーダー
プレイ人数:2~4人
対象年齢:9歳~
プレイ時間:~30分
インカの黄金

※写真は旧版のもの。
プレイヤーは冒険者となり、仲間とともにインカ時代の神殿を探索します。しかし神殿には盗掘者を待ち受けるさまざまな危険が存在しており、深部に進むほどリスクが増していくのです。あなたは恐怖に打ち勝ち、多くの宝を掘り当てることができるでしょうか?
毎ターン公開される神殿の通路カードを見て、プレイヤーは手番に冒険を続けるかキャンプに戻るかを選択します。進めばさらに宝石を獲得するチャンス。キャンプに戻る場合は、それまでに手に入れた宝石を確保しますが、そのラウンド中の行動は終了です。
赤い枠の障害が出たら危険が迫っているサイン。同種の障害がもう一度出たら、その時点で進んでいたプレイヤーは集めた宝石を失ってしまいます。
選択肢は進むか退くかのふたつのみですが、危険と成功に挑むか安全を取るかの大きなジレンマが味わえる、チキンレースの面白さが詰まったタイトル。2025年1月に発売された新版『インカの黄金 再発掘』は、ふたつの拡張モジュールが同梱されており、より戦略的でエキサイティングなゲームを楽しむことができます。
インカの黄金再発掘
ミニ拡張が追加された再発となったインカの黄金。追加されたミニ拡張を入れた味変のゲーム調整具合が良く、一度入れて遊んだら次からはナシでは物足りなくなるw何度もインカの黄金を遊んだことある人でも、ミニ拡張入りを絶対遊んでほしいね!これは買い替え大成功!オススメ! pic.twitter.com/legxsEJgE7— 太陽皇子。 (@taiyo_prince) August 11, 2025
【インカの黄金 再発掘 概要】
メーカー:アークライト
プレイ人数:3~8人
対象年齢:8歳~
プレイ時間:30~60分
ヘックメック

※写真は海外版のもの。
ニワトリたちが集まってバーベキューパーティー! 炭火焼きの材料となるイモムシを取り合うダイスロールゲームです。
プレイヤーは8個のダイスを振り、好きな数字のダイスを確保して残ったダイスを振り続けていきます。ただし、すでに確保している目は以後選択ができません。もし振ったダイスの目がすべて選んでいる数字の場合はバーストで、その手番は失敗となります。
振り直しをやめたら、そのとき出ているダイスの目の合計と同じ数字のイモムシタイルを獲得。これがポイントとなります。イモムシタイルは21から36までの16枚。もしダイスの目が他人が最後に獲得したタイルと同じ数字だった場合は、そのタイルを奪って自分のものとします。失敗した場合、ペナルティとして獲得しているタイルを1枚場に戻します。
バーストする確率は振り直しをするたびに増えていきますが、タイルを獲得するために必要な合計数を確保するのは難しく、なかなかうまくいきません。狙った目が出たときも、失敗してバーストしたときも盛り上がるゲームです。デザイナーは多作でおなじみライナー・クニツィア。2005年の作品です。より手軽に楽しめるカードゲーム版『ヘックメック カード』もリリースされています。
「ヘックメック」クニツィア。ダイス目の合計値で、タイルを獲得し、1番芋虫の数が多い人が勝利。ダイスを振るたびに、好きな目を選び、キープ。芋虫のダイス目は数値5と同じで、タイル獲得に必須。他の人のタイルを奪ったり、失敗したらタイル返却もあります。ダイス目の選択時に非常に悩みます。 pic.twitter.com/gyU4e4oALd
— モリグー (@moriguu2022) August 30, 2022
【ヘックメック 概要】
メーカー:メビウスゲームズ
プレイ人数:2~7人
対象年齢:8歳~
プレイ時間:30~60分
本格派タイトルでも度胸試し!
クアックサルバー

プレイヤーは薬を調合する治癒師。薬の材料を鍋に入れてぐつぐつと煮込むのですが、配分を間違えると爆発してしまうことも……?
プレイヤーは、自分の材料袋から材料チップを取り出し、個人ボードの鍋に追加していきます。続けて何度でも引けますが、数字が書かれた白いチップを引いた場合、その合計値が大きくなると爆発してそこで手番終了。バーストした際は獲得できる得点が減少してしまうため、どこで引くのをやめるかの判断が重要になってきます。
鍋に入れた材料チップの種類によっては特殊効果があり、その引く順番や組み合わせによって強力なコンボが発生することもあります。袋からチップを引く“バッグドロー”タイプのゲームですが、本作はさらに袋のなかのチップをより良い内容に調整していくことが求められる“バッグ・ビルディング”です。
袋からチップを引く手触り感、バッグビルドや得点要素を早取りする戦略性に加え、どこまでチップを引くかのチキンレース要素があり、スリルと興奮が味わえるタイトル。拡張セット『薬草使いの魔女たち』や、2人専用にした『クアックサルバー ザ・デュエル』も発売されています。
『クアックサルバー』
袋からチップを引いてスコアを積み上げて買い物してさらにチップを引くのが楽しくなっちゃう!素敵な循環のゲーム。チップのルールも変えられて繰り返し遊ぶのも楽しい!
がっつり遊んだねぇ! pic.twitter.com/sURm4WgLVj— ですNO (@desuno) May 3, 2025
【クアックサルバー 概要】
メーカー:アークライト
プレイ人数:2~4人
対象年齢:10歳~
プレイ時間:30~60分
クランク! カタコンベ

ダンジョンに潜って財宝をかっさらう『クランク!』の姉妹作で、今回の舞台は死霊がうろつく地下墓地。単体でもプレイ可能で、基本セットと組み合わせて遊ぶこともできる独立拡張です。
基本セットの『クランク!』は音を立てないようにしつつドラゴンの目を盗んで進んでいくバッグドロー&チキンレースのゲームで、プレイヤーは移動や戦闘といった行動を手持ちのデッキのカードを使って行います。手札を強化していくデッキ構築要素に、進んでさらなる成功を狙うか退いて成果を確保するかのチキンレース、バッグドローのドキドキが加わり、唯一無二のプレイ感が味わえます。
『クランク! カタコンベ』はシリーズの基本システムを踏襲しつつ、ダンジョンの構成がタイル配置となり、毎回違ったゲームが楽しめるため、リプレイ性が高くなっています。これまでたくさんの拡張セットや独立拡張が出ているシリーズですが、マップをタイル配置にした本作はシリーズでも異色の存在。さまざまな要素を見事に融合させ、高い完成度でまとめあげた佳作です。
クランク! カタコンベ。
クランク!がローグになって帰ってきた。ダンジョンの全体像が見えず、新たな部屋に入る度にそこが明らかになるシステム。計画性と引き換えにワクワクがプラス。令和に蘇ったダンジョンクエスト。正しくパーティゲームになったがソロ感も。○ pic.twitter.com/D3TIVboVhz— 彼葉 (@hiyou_) June 1, 2025
【クランク! カタコンベ 概要】
メーカー:アークライト
プレイ人数:2~4人
対象年齢:13歳~
プレイ時間:60分~
何度でもプレイしたくなる! ライトに楽しむチキンレース
だるまあつめ

ライナー・クニツィア作。だるまのカードを集めていく、坊主めくりタイプにマジョリティの要素を加えたカードゲーム。
だるまカードは1~10の数字が書かれており、プレイヤーは手番に好きなだけこのカードを引きます。ただし、手番中に同じ数字のカードを2枚引いてしまうとバースト。引いたカードをすべて捨てて手番終了となってしまうのです。
バーストするまえにやめた場合、引いたカードは「予約」となり、次の自分の手番が回ってくると確保となります。しかし、続く他のプレイヤーが予約のだるまと同じ数字を引くと奪われてしまいます。
1プレイは15~30分程度。運要素が強いゲームですが、カードを引き続ける緊張感と高揚感、手番を終えたあとで自分のカードが奪われるかどうかのドキドキ感が手軽に味わえます。取ったり、取られたりの攻防は毎回大いに盛り上がることでしょう。6人までプレイできるので、パーティゲームにも向いています。
だるまあつめ
めくる度胸試し。3枚まで予約、被ったらバースト。横取りされまくって予約カードほぼなし🤣10カットと横取り白熱😆2回目はこどもチームが勝利👏おとなもこどもも盛り上って最高✨ pic.twitter.com/mIePM6Oa3w
— ふの (@Noritive_game69) June 19, 2025
【だるまあつめ 概要】
メーカー:テンデイズゲームズ
プレイ人数:2~6人
対象年齢:8歳~
プレイ時間:~30分
パリの屋根

※写真はすごろくやのサイトより引用。
パリの街を騒がせる怪盗たちの“お仕事”を描くプッシュ・ユアラック(運試し)&マジョリティ。
プレイヤーは手番に宝物のカードを1枚ずつめくって獲得。しかし、カードのなかには捜査官を進めるものが含まれており、捜査官に補足されるとバーストしてしまいます。どこまでカードを引くがこのゲームのチキンレース要素ですが、カードを引くたびに獲得できる枚数が増えていくため、どうしてもめくりたくなってしまうのです。
宝物カードはさまざまな色や種類があり、それぞれのカードごとに多い枚数を獲得しているプレイヤーに得点が入ります。バーストした際は、それまで獲得していた宝物がドラフト式に他のプレイヤーに分配されるため、捜査官や自分のポジション以外にも、それまでに得ていた宝物と他人の手持ちの宝物をにらみつつ引くかやめるかの判断をすることになるでしょう。
プレイ時間30分程度の軽いゲームですが、チキンレースの醍醐味を存分に楽しめるタイトルです。
【パリの屋根】
いわゆる捲り系バーストゲーム。お宝を捲っていくと捜査官が近付いてくるので、接触するとするとバースト。面白いのがカードは種類別に揃えて枚数を競うのだけど、特定のアイコンが書かれているカードを一定数受け取ると没収される。… pic.twitter.com/hrWPUw0WWt
— 春99 (@hal_99) February 5, 2025
【パリの屋根 概要】
メーカー:すごろくや
プレイ人数:2~4人
対象年齢:10歳~
プレイ時間:~30分
普段は冷静な判断ができるひとでも、気持ちが大きくなっていたり、誘惑に抗えなかったりで、進むことを選んでバースト……。チキンレースでよく見る場面です。状況によっては降りたほうがいい場面でも、ついつい進むことを選択してしまう。あとで思い返してみると「どうしてあんな選択を?」と悔やむこともしばしば。でも、どうしても勝負したくなってしまうんですよね。
メカニクスとしては、突き詰めると「進むか退くか」の二択ということになるのですが、進んだ場合、成果を得ても、失敗してすべてを失っても、鉄板で盛り上がることがチキンレースの特徴。チキンレース系には名作が数多くあり、今回ご紹介していないものでもダイスロールの『ストライク』や『海底探検』『スポッツ』、バッグドローの『チーキーモンキー』、キッズ向けなら『ねこのねずみの大レース』『ヒューゴ』などなど、枚挙にいとまがありません。
今回取り上げたゲームをまだ未プレイのひとは、ぜひとも体験してみてください。ドキドキのスリルと成功したときの爽快感、そしてミスったときの(そこはかとなく笑いを誘う)ガッカリ感を味わってもらいと思います。



