プログラムやアルゴリズムの教材として用いられるパズルゲーム『ハノイの塔』――と聞くと、一度は遊んだことのある方も多いかもしれません。今回は、その『ハノイの塔』のようなリアルタイム協力型パズルゲームである『カップケーキアカデミー』について考えていきたいと思います。
ルールの概要
各プレイヤーの前には3つのボードが置かれており、中央には共通のボードが一つ置かれています。
また、各プレイヤーは5色(橙・青・黄・緑・桃)の大きさが異なるカップを最初に配られます。
これを小さいものから大きいものへと重ねて、真ん中のボードに置くところからゲームスタートです。
各プレイヤーの目標となる「オーダーカード」があり、この通りに全員がカップを配置することが目的となります。このときに、いくつかの制限があります。
- 片手のみ使用可能。
- 一度に1個しかカップは動かすことができない。
- 動かすことができるのは、自分のボードと共有ボード上のカップのみで、他のプレイヤーのボードから直接カップを取ることはできない。
- 同じサイズかまたはそれ以上のカップを重ねることはできない。
- 「オーダーカード」に書かれていないカップは大きなカップで隠す必要がある。
これらを砂時計の砂がすべて落ちきる7分間でやらなくてはいけないのですから、それは大変、阿鼻叫喚です(笑)。
まずは段取り力
基本的には、「オーダーカード」に書かれた状態を目指して自分のカップを動かしていくこのゲーム、プレイ中には、どのように動かしてどれを隠すかという「段取り力」が要求されます。これだけでも十分に良いゲームと言えそうです。小さな子供たちにとっては、「具体物を用いながらその先について思考する」ということはとても大切です。自分の身体と連動して考えることで、ひとつひとつの考えがより深まり、次第に広く深くいろいろなことを考えられるようになっていきます。
また、これは上手くいかなくてもやり直しが可能であるため、「具体物を用いながらその先について試行する」と表現することもできます。「できるまでやる」は、いつでも誰にとっても大切な永遠のテーマとも言えます。
こうしたことが体験できるなんて、まさに“至高”の教材ですね(笑)。
俯瞰し、それを伝える力
しかし、このゲームはそれだけではありません。リアルタイム協力ゲームなので、インタラクションがありありです! ゲームが進んでいくと、オーダーカードに書かれた自分の欲しいカップが、自分のボード上には存在しない、ということもあります。はたまた、自分はさっさとオーダーカードに書かれた条件を満たしたとしても、他のプレイヤーに必要なカップを隠してしまっている、なんて事態も訪れます。
ですから、このゲームでは自分だけではなく、「他のプレイヤーの状況も俯瞰してみる力」が要求されます。さらに、それだけでは十分とは言えず、状況を理解したうえで、「きちんとコミュニケーションを取って相手に伝える力」が必要不可欠です。
例えば、小学1年生だけでプレイしてもらったところ、「早々に自分の条件を完成させて静観している子」、「自分の欲しいカップをひたすら要求する子」、「自分に必要なカップをなかなか言い出せない子」等が見られましたが、これではこのゲームはクリアすることができません。時には自分以外の人を優先したり、または自分の要求を真っ先に主張したり、常に「全体の最適」を考えながらコミュニケーションをすることが要求されています。
このゲームを通じて、「1枚でも多くのオーダーカードをクリアするにはどうすればいいか」ということを考えプレイすることで、「自分だけ」ではなく「他の人も含めた全体」のことを考える良い機会になるのではないかと思います。「全体の最適」が「自分にとっても最適」というのはとても望ましい状況ですね。
おわりに
7分という短時間、そして砂時計というコンポーネントもこのゲームを面白くするのに一役買っています。ついだらけてしまう時間やあまり気が進まない作業時間などには砂時計を用いてみるのもよいかもしれませんね。