『NAISHI-内侍-』は、封建時代の日本をテーマにしたタブロービルディングの2人用カードゲームだ。プレイヤーは自分の領地(自分の場と手札)に並ぶカードのパターンを整え、より高い名声(得点)を競い合う、というもの。
1回の手番でどのカードを獲得するか、あるいは他のアクションをすべきか。相手の公開情報はカード10枚中5枚なので、そこから何をやろうとしているのか予想をしながら、その一歩先を狙っていく……。その読み合いがじつに楽しい。
ゲームマーケット2026春(5月23日・24日)にて先行発売が予定されている『NAISHI-内侍-』の魅力をじっくりと解説していこう。

▲『NAISHI-内侍-』
並び替えができないのにキレイに配置しなければならない!?
オリジナル版はフランスの出版社である「Merle éditions」から2024年9月に発売された。ゲームデザイナーは本作がデビュー作であるMathieu Bieri氏とAlex Fortineau氏。本作はオンラインボードゲームプラットフォーム「Board Game Arena」でもかなり遊ばれており、このほどJELLY JELLY GAMESから日本語版が正式リリースとなった。

ゲームスタート時は上の写真のような感じだ。場に並べた5枚と手札の5枚、合計10枚のことをこのゲームでは「領地」と呼ぶ。これがゲーム終了時には、下の写真のようになっている。

▲ゲーム終了時は手札を公開する。中央の列は山札(ゲームでは「川」と呼ぶ)
ゲームが終了したら、このように場の下に手札を公開する(場も手札も並べ替えはNG)。この絵面を見れば、ボードゲーム慣れした人なら、
「なるほど、カードの種類によっていろんな得点方法があるんだな」
「この場所に配置すると○点とか、場に全部で○枚あると○点とか、カードAとBが隣接すると○点とか、そんな感じかな」
なんて想像できそうだが、まったくもってそのとおり。
「つまり、カードを山札等から引いて、自分のスペースにうまく並べていくんでしょ?」
そうそう、正解……なのだが、この「うまく並べる」のが、じつはとても難しくて悩ましい。これこそが本作最大の特徴かつ面白い駆け引きが楽しめる部分なのである。
●ポイントその1:並び替えができない!?
横に5枚、縦に2枚、合計10枚のカードを並べていくことになるのだが、上の5枚は場に出しているので対戦相手にも見えている状態で、下の5枚は手札なのでゲーム終了まで相手には見せない。
そしてここが大事なのだが、このゲームは「場も手札も並び替えができない」という特徴がある。
ゲームスタート時の一例だが、たとえば自分の領地がこんな感じだったとしよう。

▲場に並べた「山」カード5枚と、手札の5枚が自分の「領地」
場の5枚はすべて「山」カードで、手札の5枚は3枚が山カードで残り2枚はランダムに配布された発展カード(様々な得点源となるカード。11種・合計34枚)。
山カードは1枚だけなら5点、2枚以上だとマイナス5点なので、ゲーム進行としては最初に「山」カードを整理(つまり捨て札に)して、新たに得点源となる発展カードを獲得していくことが基本的な戦略となる。
手番で行うアクションとしては、対戦相手との間にセットされた「川」と呼ばれる5つの山札(発展カード)の一番上(表になっているカード)を取り、自分の場か手札のカードを1枚選んで捨てて、そこに配置する。このアクションを一番多く実行することになるだろう。

▲対戦相手との間にある5つの「川」のいずれかから、発展カードを獲得する
「川」から獲得したカードは好きな場所のカードを捨ててそこに配置……できればいいのだが、そう簡単にいかないのが本作の最大の特徴だ。このゲームのルールとして、たとえば一番左の「川」から取ったカードであれば、場の一番左もしくは手札の一番左に配置しなければならない。

▲「川」から取った発展カードは、その「川」と同じ縦列の場か手札にしか配置できない。元々その場所にあったカードは捨て札になる
「このカードは端に配置できると得点になるのに、なんで中央の川にあるんだよ」
「あのカードと隣接すればボーナス得点があるのに、この位置では離れている!」
ほとんどの領地カードはその得点方法が何らかの位置縛り(特定の場所か、特定のカードと隣接したときのみ得点など)があるので、この場所へ配置したいのに、「川」から獲得するときは別の場所だから置きたい場所に置けない……なんてことばかりなのである。
じゃあ、どうするのか。安心してほしい。条件はありながらも入れ替えはできる。
●ポイントその2:いろいろ制限あるけど入れ替え可!
自分の領地(場と手札)のカード配置入れ替えは、手番時に追加アクションとして行うことができる(追加アクションなので、やってもやらなくてもいい)。ただし、その入れ替えは以下のルールに従って、どれか1つだけ実行することができる。
・手札の2枚を入れ替え
・場札の2枚を入れ替え
・手札と場札で同じ縦列にあるカードを入れ替え
・「川」の一番上のカードを入れ替え

▲追加アクションで、川・場・手札・縦列のいずれか1か所だけ位置入れ替えができる
完全に思い通りの入れ替えができるわけではないが、この追加アクションを利用することでかなり理想に近い配置にすることができる。後で入れ替えること前提で、カードを獲得していくのもありだ。
これができるなら配置制限なんて無いようなものでは?なんて思ったよね。僕も最初はそう思ったよ。本作はここからが重要。
じつはこの入れ替え、使用回数制限がある。
各プレイヤーは使者トークンを2つ持っており、カードの入れ替えを行うときは宮廷カードの上にトークンを置く。使者トークンを手元に戻したい場合は、手番を1回使って「使者を呼び戻す」というアクションを実行することで、手元に使者トークンが戻ってきて再びカード入れ替えを行うことができる。

▲場か手札の位置変更は両プレイヤー合計で3トークンぶん(左側)できる。また、川を2か所選び、一番上の表になっているカードを捨て札にして、新たにカードをめくる(川のカードの更新)ことも可能だ。その場合は右側の空挺カードに使者トークンを置く
使者トークンを呼び戻せば何度も入れ替えができるのだが、呼び戻すには「手番を1回使う」のが悩ましい点だ。手番を1回使う=その手番では自分の領地へ新たにカードを配置することができないので、相手に遅れを取る。
ゲーム終了条件は「1つでも川が尽きたときにどちらかのプレイヤーが終了宣言をする」か「川が2つ尽きる(この場合は強制的に終了)」かのいずれか。何度も使者トークンを手元に戻していると相手より領地の更新が遅れて、点数を稼ぐチャンスが減ってしまう。2つの使者トークンをいつ使っていつ戻すか。これがとても重要な駆け引きとなっている。
●ポイントその3:相手の場にあるカードと交換もできるが……!?
さらには手番で行うアクションのひとつ「天皇からの命令を受ける」を使うことで、相手のカードと交換することもできる。欲しかったカードが相手に獲られたとき、このアクションを行うことで自分のものにできるのだ。
これは手番1回ぶんを使って使者トークンも消費し、1ゲーム中どちらかのプレイヤーが1回だけ使用できる。しかも、このアクションで使ったトークンは「使者を呼び戻す」を使っても手元に戻ってこない、使い切りのアクションとなる。

▲宮廷カードの中央は、どちらかのプレイヤーがゲーム中1回だけ使えるアクション「天皇からの命令を受ける」。対戦相手と同じ位置にあるカードを交換できる。ここに置いたトークンはアクション「使者を呼び戻す」を実行しても戻ってこない。つまりゲーム中に使えるトークンが1つ減ることになる
「どちらかのプレイヤーが1回しか使えない」というのが大きなポイントで、対戦相手が自分の場にあるこのカードをほしがっているなと感じたら、あえて先にこのアクションを使う、という作戦もありだ。筆者はこの作戦で見事勝利した(えっへん)。
●ポイントその4:いつゲーム終了トリガーを引くか
前述のとおり、5つある「川」のうち1つ尽きた時点で、手番を使って「ゲーム終了を宣言する」というアクションを実行することができる。対戦相手の場を確認し、今なら自分が勝てそうだなと思ったら終了宣言をしていいのだ。まだ自分は勝てないなと思ったら宣言はせず、強制終了となる「川」が2つ尽きるまでプレイ続行となる。
どこかのタイミングで対戦相手が終了宣言をするかもしれないので、「川」が1つでも尽きそうになってから一気に場がヒリヒリし始める。
「あのカードを獲ってから終了宣言すべきか?」
「でも見えている場のカードからして自分のほうがスコアを稼げてなさそうな気もするし」
「せめてこのカードを入れ替えてから終了宣言するか?」
「あ、川にあのカードが出てきた! 絶対ほしい……けど、あの位置だとうまく得点が伸びない。もう2手番くらい必要になるな。どうしよう!?」
と、終盤はお互い脳みそフル回転状態に。そこまで長考するような場面はないと思うが、それでも「ちょ、ちょっと待って……」とじっくり考える場面は何度も出てくる。

カード効果を把握するのに少し時間がかかるかも?
1プレイは20分程度。とても濃密な悩ましさがありながらもプレイ時間20分程度という手軽さは、本作ならではだろう。中量級の2人用ゲームを探し求めていたなら、うってつけの1本になりそう。

難点があるとすれば、カード効果を把握するまで多少の慣れは必要かな、という点だ。一度プレイすればだいたいわかってくるが、11種類ある発展カードの得点方法はどれもクセがあって、カードアイコンだけではすぐに把握しきれない。特に初回プレイは何度もサマリーカードやマニュアルを確認することになった。
それも最初の何回かなので、慣れてくればその手間もなくなる。遊べば遊ぶほどカード効果や自分なりの攻略法(好きな得点の稼ぎ方)が見えてきて、そうした戦法のぶつかり合いも楽しい。
フランスでは2025年に拡張パック『NAISHI ー Legends and Travelers』がリリースされており、日本でも発売してほしい。そのためにもまずはこの『NAISHI-内侍-』がたくさんのボードゲームファンに楽しんでもらえるといいなあ!


