【おすすめ!最新!!ボードゲーム】推理ゲームの完成形『ミュージアムサスペクツ』レビュー

2022年9月2日、すごろくやから『ミュージアムサスペクツ』の日本語版が発売となりました。本作は数多の推理ゲームの中で極めて遊びやすくかつ面白さも損なわれないかたちで作られています。

以下の記事でルールの大枠は説明しておりますので、あわせてご確認ください。

博物館の窃盗犯を見つけ出す推理ゲーム『ミュージアムサスペクツ』 発売

推理ゲームの大別

モダンボードゲームにおいて、推理ゲームといえば『クルード』(1949年)に代表される情報を整理していく”推理”の必要ない論理パズルと、『シャーロック・ホームズ 10の怪事件』(1985年ドイツ年間ゲーム大賞)に代表される、推理小説で犯人を当てるような”推理”を必要とする物語系の推理ゲームがあります。

前者は、『ブラックウィーン』(1987年)、『スルース』(1967年)、『4人の容疑者』(2016年)、『クリプティッド』(2018年)、『厄介なゲストたち』(2016年)、『誰だったでしょう?』(2007年)、『ザ・キー』(2020年)があります。後者は、『ワトソン&ホームズ』(2015年)、『Qシャーロック』(2018年)、『ウィットネス』(2014年)、『ポケット・ディテクティヴ』(2019年)、『クライムズーム』(2020年)、『クロニクル・オブ・クライム』(2018年)、『ディテクティヴ』(2021年)といったタイトルが挙げられます。

情報整理系推理ゲームのシステムについて

本作は、前者の情報整理系の推理ゲームです。

まずは、一般的な情報整理系推理ゲームの基本システムについて簡単に説明します。

容疑者A~Fが書かれたカードを用意し、そのうち1枚を内容を確認せずに抜きます。抜いたカードに書かれたアルファベットが犯人というわけです。残りのカードをプレイヤーに配ります。5人で遊ぶなら、各自カードを1枚持っていて、そのカードだけは犯人ではないということが分かっています。手番では、誰かの指名して「Aを持っていますか?」と問いかけます。これを繰り返して全員の情報が明らかになれば、自動的に犯人がわかります。ここに”推理”の余地はありません。どのゲームもベースはこのシステムです。

このシステムの瑕疵として、問いかけに対して間違ったことを回答をするとゲームに矛盾が生じ、解けなくなってしまう点があります。人間がプレイしている以上、こういったミスは必ず起こり、回答するときは、本来とは違った意味でドキドキしてしまうものです。筆者は回答を間違えて、二度ほど事件を迷宮入りさせたことがあります。誰も正解できずいたたまれない空気になります。

もうひとつ、この手のゲームとしては情報を整理する宿命から逃れられないという点に触れます。これを問題と捉えるかどうかは、主観によりますが、大抵のゲームにおいては情報があふれて止まらないため、「メモの取り方うまい選手権」になりがちです。

この二点において、情報整理系推理ゲームは遊ぶ際には、うまくやらなきゃならないというプレッシャーを感じることがあります。

『ミュージアムサスペクツ』のシステムについて

さて、ようやく本題です。『ミュージアムサスペクツ』は、この2点を解決したゲームです。気楽に遊べて情報が整っていく楽しさはちゃんとあり、さらには、人と遊ぶ意味のあるシステムになっているという贅沢なゲームです。

『ミュージアムサスペクツ』では、カードを1枚抜いておき、それを犯人とするという手法を取りません。その代わり、犯人を導くための情報がいくつか抜かれています。情報が抜かれているので、犯人が確定しないこともあります。その場合は、複数犯です。あるいは、情報が多すぎて、全員のアリバイが証明されてしまうこともあります。その場合は、「犯人はここにはいない」が正解です。

このように犯人の人数に揺らぎを持たせたことが、情報整理系推理ゲームの窮屈さを和らげると同時に「過程」に意味を持たせています。

本作では、8つの「情報」があります。そのうち6つしか見ることができません。だから、そもそも厳密なゲームにはなりえないわけです。そういった意味で気楽に遊べます。しかし、当てずっぽうで答えることになるかといえばそうではありません。他の方法で犯人に迫ることができます。

他の方法とは、他の人の予想を踏み台にすることです。手番でプレイヤーは、情報を1つ見たあと、容疑者1人に疑惑の証としてチップを置きます。ゲームが終わり、その容疑者が犯人だった場合、このチップが得点になるわけです。プレイヤーは情報を見てから、チップを置くわけですから、情報の反射をチップに見ることができるのです。この手法はクニツィア氏が得意とするもので、『メンバーズオンリー』のようなドイツゲーム然としたゲームで使われています。

最後に、メモです。写真を見れば一目瞭然ですが、見たカードの情報をシンプルに記録していくことで、自動的に容疑者が絞られていきます。ここに技術の差は生まれず、ゲームに集中できます。

結論

情報を人に聞くのではなく、自分でカードを確認することで、ゲームが壊れるのを避け、簡単にメモを取れるようにし、人の予想を利用して犯人に迫っていくインタラクションが楽しいという、まさにファミリーゲームとして見事な着地をしています。ぜひ遊んでみてください。

ミュージアムサスペクツ
日本語版発売元:すごろくや
デザイナー: フィル・ウォルカーハーディング
発売日:発売中
価格:3410円[税込] プレイ人数:2~4人
対象年齢:8歳以上
プレイ時間:20~30分