【先行プレイ】テックツリー系ボードゲーム『アトラスロスト:ライズ・オブ・ザ・ニューソブリンズ』の魅力を紹介!

最近、巷ではAIを使ったイラスト作成が流行っているらしい。

描きたい構図を上手く言語化し、AIに読ませることで自動で絵を描いてくれるものらしいが、この完成度が非常に高い。人類がコンピューターを発明してから、まだ50年も経っていないのに、もうその技術は人間の手を超えていこうとしているのだ。私なんて、生まれてからもう30年は経とうとしているのに、成長するのは身体の脂肪のみ、精神はいまだ幼児のそれなのだから、嫌になってしまう。

しかし、こうなってくると誰もが知っている某有名映画のように、AIが自立した思考を持ち、我々人間に牙を剥く日もやってくるのかもしれない。

前置きが長くなってしまったが、そんなディストピアが本当に起こり、どうにかAIから勝利を収めた人間たちがいたら、そんな世界はどうなっているのだろうか。これに懲りて、みんなが幸せになるハッピーエンドな世界を構築するのだろうか。

…いや、そんなことは決してないだろう。人間という生き物は、醜く、残酷だ。きっと私利私欲のために、また同じことを繰り返すに違いない。今回は、そんなディストピア後の、近未来のゲームの話。

注意 本記事でご紹介しているコンポーネントはデモ版です。カードの色や材質など、製品版とは異なる低品質のサンプルを使用しています。ご留意くださいませ。また本作は2022年9月6日にKickstarterにてクラウドファンティングを開始予定です。製造可否を確認するためにすべてのストレッチゴールを達成した場合の仕様となっています。実際の製品とは一部仕様が異なる場合があります。

『アトラスロスト:ライズ・オブ・ザ・ニューソブリンズ』Kickstarterプロジェクトページ:
https://www.kickstarter.com/projects/tacticalgames/rise-of-the-new-sovereigns-project-atlaslost

『アトラスロスト:ライズ・オブ・ザ・ニューソブリンズ』ってどんなゲームなの?

まずは、今回紹介する『アトラスロスト:ライズ・オブ・ザ・ニューソブリンズ』の簡単な情報についてまとめておこう。

基本情報

ゲーム名 アトラスロスト: ライズ・オブ・ザ・ニューソブリンズ
ATLASLOST RISE OF THE NEW SOVEREIGNS
プレイ人数 2-4人
プレイ時間 40-90分程度
対象年齢 14歳以上
複雑さ ★★★☆☆
デザイナー 戸塚中央
アーティスト 幸田和磨、三好奈緒
出版社 TACTICAL GAMES(タクティカルゲームズ)

プレイヤーは、退廃した世界の中で、新たに発足した国家を率いるリーダーの1人。この世界に残されたものは、退廃前の旧文明の遺物たち。それらを用いて国家の礎を築き、いち早く新世界の主導権を握らなければならない。

毎回のゲームでは、「テックツリー」と呼ばれる5種類のテックから、3種類のテックツリーを使用しゲームを行う。各テックツリーにはそれぞれ固有の特徴があり、ゲームごとに変わったプレイ感をもたらしてくれるだろう。そのテックツリーにプレイヤーは「先遣隊」を派遣し、旧文明の力を活用していく。さまざまな組み合わせが考えられる中で、いかに他のプレイヤーたちより上手く立ち回り、主権を握ることができるかがカギとなるだろう。

プレイ方法

ゲームの目的

前述のとおり、このゲームの目的は国家の代表として「主権を得ること」になる。そのために、各テックツリーの特徴を理解し、うまく活用しながら与えられた資源を管理したり、増やしたり、時には奪ったりしながら国家の礎を築こう。

勝利条件

このゲームに勝利するには、複数ある勝利条件のどれかひとつを満たせばいい。

  • 技術点勝利
  • 影響力勝利
  • 主導権勝利

の3つである。

技術点勝利

技術点(TP)というのは、このゲームにおける「勝利点」のことだ。このTPをいち早く「30」点獲得すれば、その時点でプレイヤーは勝利を手にする。

影響力勝利

このゲームでは、各プレイヤー手番の最後に「影響力」を上げることができるフェイズが存在する。その影響力を誰よりも早く「最高到達点」まで引き上げることができれば、その時点でプレイヤーは勝利を手にする。

主導権勝利

ゲームでは、3つのテックツリーを使用するが、各テックツリーにはその技術を最も多く利用している者に与えられる「主導権タイル」というものが存在している。さらに、それにプラスして影響力を最も進めているプレイヤーにも影響力の「主導権タイル」が与えられる。つまり、合計4つの「主導権タイル」がゲームに登場することになるが、この主導権タイルすべてを1人のプレイヤーが手にしたとき、その時点でプレイヤーは勝利となる。

手番でできること

手番では、大きく「アクションフェイズ」と「影響力フェイズ」の2つに分かれている。また、「アクションフェイズ」では、さらに「メインアクション」「コマンドアクション」「カードプレイアクション」「カード起動フリーアクション」が存在しており、そのすべてを好きな順番で一回ずつ行うことができる。

アクションフェイズ

アクションフェイズでできること
  • メインアクション
  • コマンドアクション
  • カードプレイアクション
  • カード起動フリーアクション
メインアクション

メインアクションではさらに、4つの選択肢から1つを選び実行することができる。「先遣隊の派遣」「研究資源の獲得」「データの収集」「技術の使用」だ。

先遣隊の派遣

個人ボードに待機している「先遣隊」をメインボードのテックツリーの対応している場所へ派遣させることができる。派遣した先の技術が今後使用できるようになるため、派遣先は悩ましい選択を強いられるだろう。

研究資源の獲得・データの収集

個人ボード上に示された数だけ、研究資源orデータを獲得することができる。このとき、先遣隊を派遣していれば獲得資源が増えたり、各テックツリーによってはさらに獲得資源が増えたりする。

技術の使用

すでに先遣隊が派遣されているマスの技術を使用することができる。多くの場合、研究資源やデータをコストとして使用するため、手元に資源を持っておく必要がある。

コマンドアクション

コマンドアクションでは、「コマンド資源」をコストとして支払うことにより、任意のテックツリーの技術を使用することができる。この場合も、技術の使用にはコストが必要になるので、資源管理には注意しよう。

カードアクション

手札より、コストを支払ってカードを1枚プレイすることができる。カードには、使ったら即時に効果が発動される「クレートカード」、使った際に効果は発動しないが、毎ターン能動的に使用できる「アクティブカード」、使ったら永久に効果が発動し続ける「パッシブカード」が存在する。

カード起動フリーアクション

上述のカードプレイで、「アクティブカード」が自分の場に存在する場合のみ行うことができるアクション。アクティブカード1枚につき一回、コストを支払って効果を発動することができる。

影響力フェイズ

アクションフェイズ終了後に、コストを支払うことで影響力トラックを「好きなだけ」上げることができる。

『アトラスロスト』の魅力

プレイ感

まずは、ざっくりとしたプレイ感をお伝えしよう。上述したように、このゲームの大枠を考えるのであれば、間違いなく重量級に分類されるだろう。

しかし、そんな重量級の中では比較的ルールはシンプルで、さっぱりとした印象が強い。アクションフェイズでは多くの選択肢が提示されているように思えるが、理解が深まるとそこまで迷うこともなくなる。

まさにタクティカルゲームズさんが作り出すゲームのコンセプトである中重量級がピッタリのゲームといえる。以下ではさらに掘り下げて、このゲームの魅力といえる部分について紹介していく。

美麗なイラストとわくわくするコンポーネント

初めてこのゲームの箱絵を見たとき、その美麗なイラストに目が釘付けになった。退廃的で、なのに近未来感のあるアートは、スクウェア・エニックスから発売されているPC/家庭用ゲーム機ソフト『ニーア オートマタ』等のコンセプトアートを手がけた幸田和磨氏。世界観がしっかりと形作られており、ゲームへの没入感をより高めてくれる。

また、メインボードや個人ボードは余計な情報を省き、多くをアイコンで示している点にも注目だ。最初こそアイコンの意味を理解するのに時間を要するかもしれないが、直感的な意味合いのものが多く、慣れれば多くあるアクションフェイズで迷うことも少なくなるだろう。

そして、イラストに負けていないのが「コンポーネント」である。150を超えるカラフルでリアルな木コマは、今にも動き出しそうに生き生きとし、「今ボードゲームをしている」ことを実感できる。ダブルレイヤーボード(ボードが2重になっている)にきっちりとハマり、凛と佇む姿は、それだけでそそるものがある。なにより、使うテックツリーによって個人ボードが拡張される仕様は、興奮を隠しきれない。

勝利条件

ゲームの説明を聞いたとき、とくに面白いと感じたのは勝利条件についてだ。多くのゲームでは、最初からラウンド数が決まっている「ラウンド制」のゲームや、本作のように何か条件を満たした時にゲームが終了する「トリガー式」の2つに分けられる。中でも本作は、トリガー式である上に、そのトリガーが3つ用意されている。

これは、有名なゲームだと『シヴィライゼーション』を想起させる。本作においても多少なり影響を受けているのかもしれない。トリガー条件が複数あることで、プレイヤーはゲーム中、どの勝利を目指すべきなのか選択肢を与えられる。またプレイ中に他プレイヤーの進行状況を見て路線を変更することもできるため、早々に勝ちの芽が摘まれることも少なくなり、最後までゲームを楽しむことができるだろう。そういった意味で、このような勝利条件の複数設定はゲームに彩りを与え、プレイヤーに楽しみを提供してくれる。

カード

このゲームで比較的大きな比重を占めているのは、カードプレイである。各テック30枚ずつ、計150枚のカードは、オールユニークであり、1枚1枚に違った効果が付されている。多くのユニークな効果が示されたカードは、毎ターンプレイヤーたちを一喜一憂させ、ゲームを動かしてくれることだろう。

こうしたカードゲームの場合、一部の強いカードが場を支配していしまうことも少ないのだが、効果の強いカードでも、支払うコストが大きかったり、程よいバランス調整が施されており、抜きん出たものが少ない。

システム

このゲームのメカニズムを紐解くのであれば、まず目につくのが説明としても出てきている「テックツリー」システムであろう。5つの種類から3つのテックツリーをゲームごとに選択し、プレイヤーはそれぞれのテックを研究することで土台を築いていく。ゲームごとに3種類のテックは自由に組み合わせることができるため、全10通りの組み合わせが存在し、リプレイ性は高いといえる。

さらに、5種類のテックツリー「科学、文化、経済、軍事、宗教」はそれぞれに特徴を持ちあわせている。科学、文化、経済は自国の強化という色が強く、拡大再生産の側面が強い。それに対し、軍事は他人の物資や勝利点を奪ったり破壊したりする、干渉要素の強いテックだ。また、宗教は他人に依存して資源を得たりするような少しトリッキーなテックといえる。

この中から3つを選んでプレイするわけだが、科学、文化、経済が選ばれた場合と、軍事、宗教が入った組み合わせとでは、かなりプレイ感の変わるゲームとなりえる。ゲームごとに違った顔を見せてくれるという点では非常に面白く、人によっては合わない・物足りないといったプレイの好みを、組み合わせによって調整できるシステムが特徴となっている。

そして、実際にゲームをプレイしてみると、テックツリー以外のシステムが顔を出してくる。ゲームを進めていくと、アクションのたびにコストが必要になってくることから、割と緻密な「リソースマネジメント」が要求されてくる。そして、メインアクションの1つである「カードアクション」だ。これらのメカニズムが融合していながらも、複雑になりすぎていないところが魅力の1つといえる。

最後に

今回紹介したアトラスロストの魅力は、まだまだ本作のほんの一部に過ぎない。私がプレイしたのはサンプル版であることから、ここからさらにバランス調整等が施され、完成の時にはより良いものとして帰ってくることは間違いない。気になる方はぜひ、本作を支援し、プレイしてみてはいかがだろうか。