新企画スタート! 7月から9月のあいだにBROADスタッフが遊んだゲームのなかから、面白いと感じたゲームをピックアップ
アン:BROADはこれまでもさまざまな“オススメのボードゲーム”の記事を公開してきました。今回はちょっと違った角度から見た紹介記事ということで、“直近3カ月のあいだにプレイしたゲームのなかから面白かったタイトル”をBROADスタッフ2名が対談形式で挙げていくという新企画をお届けいたします。参加者は、BROADライターのアンと……。
松井ムネタツ:BROAD編集長の松井ムネタツです。よろしくお願いします。
アン:今回名前を挙げるゲームは、以下のルールにのっとってご紹介するものです。
・参加者が7月から9月までプレイしたボードゲームのなかで面白かったもの
・できるだけ初プレイのゲーム(新作とは限らない)
・上記タイトルを各人4つ挙げる。紹介順は順不同で、タイトルごとに順位をつけるものではない
※ここでご紹介するタイトルは、あくまでも個人が「面白いと感じた」ものとなっています。
※紹介タイトルのメーカーについて、日本語版がある場合はそちらを優先して記載しています。
まずは第1回ドイツ年間ゲーム大賞受賞の名作!
アン:それでは、編集長からお願いします。
松井ムネタツ:自分が挙げる最初の作品は『ウサギとハリネズミ』(ラベンスバーガー他/メビウスゲームズ)。これはかなり古いゲームで、ドイツ年間ゲーム大賞(Spiel des Jahres=Sdj)の第1回受賞作になります。ドイツ年間ゲーム大賞を取ったゲームを遊ぶゲーム会というものが開催されて、そこでプレイしました。

ウサギとハリネズミ
アン:1979年の作品。ちょっと子供向けのような趣を感じるゲームですが、当時はキッズゲーム部門がないので、純粋に最初のSdj受賞作ということなんですね。ダイスを使わないすごろくタイプのゲームですか。
松井ムネタツ:このチャンスを逃すと、もう遊ぶ機会がないかな、と思ってプレイしたんだけど、流石の面白さ。手番では手札のにんじんカードを消費してコマを進めたり、ボード上ににぎやかに並んでいるにんじんカードを補充したり。今の感覚だと少し手順が煩雑な気もするんだけど、ルールは分かりやすいです。そのうえでいろいろな駆け引きがあって、なるほど当時はこのようなゲームが主流だったんだな、と感慨深いものがありました。
アン:ユーロゲームの源流、といった感じでしょうか。
松井ムネタツ:日本語版はないですし、古いゲームではありますが、長くボードゲームをやっている人なら持っていることもあると思うので、チャンスがあったらぜひプレイしてみてほしいです。
9月に新版が登場したばかりの名匠の代表作
アン:では次に自分の1作目。これも古めのユーロ系で、ライナー・クニツィアの『ラー』(ニューゲームズオーダー)です。初プレイというわけではないのですが、9月に新版が出ましたし、タイムリーかな、と。

ラー(写真は2023年発売の海外版新版)
アン:『ラー』は競りによって得点要素となるタイルを獲得していくゲームです。競りはもちろんですが、セットコレクションとマジョリティ、さらにチキンレースの要素もあり、複数のメカニクスがうまく融合していて、なおかつプレイ時間が1時間程度。これぞユーロというゲームだと思います。1999年初版発売ですが、非常に完成度が高く、いま遊んでもまったく古い感じがしない。
メビウスゲームズの能勢良太さん(メビウスおやじさん)がおっしゃっていたのですが、このゲーム、発売当初は評判がいまいちだったそうです。少し経ってから再評価されて、でもその時はもう入手難になっていた。だから一時期は知る人ぞ知る“幻の名作ゲーム”のような扱いだったとか。
松井ムネタツ:最初の日本語版が2014年発売で、それまでは輸入版しかなく、さらに品薄だったということか。
アン:自分がプレイした写真の版は海外で2023年に発売されたものです。ラーの木駒が10cmぐらいあるかなり大きいサイズで、横殴りでこの駒を取って“ラー!”と叫ぶのが気持ち良かったですね。
松井ムネタツ:9月に発売されたニューゲームズオーダーさんの新版は『モダンアート』の新版と同じく小さめの箱に納まるサイズで、値段も2,200円(税込)に抑えられています。
アン:昨今は新版発売の際に価格改定があって値段が上がることがほとんどですし、『ラー』についてはゲームのボリュームを考えると信じられないほどのバリュー感。これはユーロ系のゲームが好きな人全員に買ってプレイしてほしい。11月ぐらいに専用の木駒と袋のセットがニューゲームズオーダーさんから通販で販売されるそうなので、興味がある人はぜひこちらも!
加速ぶりが心地よいダイスロール&拡大再生産
松井ムネタツ:では続いて、自分の2作目。『スペースベース』(アークライト)です。これも少し前のゲームで、日本語版発売が2019年。

スペースベース
松井ムネタツ:自分は『街コロ』のシリーズが好きなのですが、『スペースベース』はそれに似た雰囲気のゲームだと聞いて発売当初に購入して、だけど今まで積んでいたんです。最近ゲームを整理したときに出てきて、せっかくだからプレイしてみようと。
2個のダイスを振って、全員がその結果を同時に反映するのでダウンタイムがほとんどないのが良いところです。『街コロ』に似ているというだけあってシンプルな拡大再生産だけど、その度合いがかなり派手で、終盤はお金も資源もガンガン入ってくる。これがすごく面白かったですね。自分は3人でプレイしましたが、最大5人まで遊べるし、ダウンタイムがないから人数が多いほうが楽しいかもしれない。
アン:デザイナーのジョン・クレアは『キュビトス』や『ダービーカジノ』を作った人なんですね。
松井ムネタツ:『スペースベース』は海外では拡張セットも出ているんだけど、日本語版は未発売。これがちょっと残念です。何かのきっかけで日本で人気に火が点いて、再販されたり拡張セットが出たりすると嬉しいな、と思うところですね。
論理&推理で他人の手札を予想する
アン:自分の2作目は『マッシュルームソート』(操られ人形館)です。これも7月から9月に初プレイだったわけではないのですが、期間中もっとも遊んだゲームなので、紹介させてください。

マッシュルームソート
アン:4つのスートに1から8までの数字がある32枚のカードでプレイするゲームです。最初に配られた自分の手札1枚と、場に出ている他人の札4枚を獲得して組み合わせ、ポーカーのような役を作っていきます。
場に出た札は伏せられて数字が分からないのですが、裏からでもスートだけが判別できるようになっていて、さらに数字の昇順で並んでいる。自分の手札と場札、公開済の場札などの確定情報を整理し、他人の場札の数字を推理。3択、2択、と絞り込んでいくのですが、これが本当に悩ましいし楽しい。
松井ムネタツ:これは自分もプレイしました。ゲームマーケット2025春でリリースされたゲームですね。
アン:論理パズルのような面があるので、『ドメモ』や『クリプティッド』あたりのゲームが好きな人にハマりそう。デザイナーは常時次人さん、アートワークを井上磨さんが担当していて、これは『CAT IN THE BOX』と同じコンビになります。シンプルにまとまった軽いゲームで見た目もポップですが、考えどころがしっかりある。ちょっとした空き時間でもプレイできますし、何度でも繰り返したくなるスルメゲーです。
『SETI』作者による原初の“宇宙研究”ゲーム
松井ムネタツ:どんどん行きましょう。次は『ガリレオ・ガリレイ』(ホビージャパン)。このゲームの日本語版が出るとなったとき、自分が一緒に遊んでいる仲間たちの食いつきっぷりがすごくて。あまり重いゲームをやらないメンバーなんだけど、テーマに興味をもってくれました。

ガリレオ・ガリレイ
松井ムネタツ:ちょうど、少し前にアニメが放送されていた『チ。』に近い時代と世界観のゲームなので、タイミングが良かったようです。重ゲーだけあってプレイ時間は長かった。4人で遊んで、インスト込みで3時間弱だったかな。
アン:中世欧州の宇宙研究を描いたタイトルですね。同じ作者の『SETI』もそうでしたが、ルールの量が多くてインストに時間がかかる。ただ、『ガリレオ・ガリレイ』のほうはプレイ時間自体はそれほどでもなかった気がします。ゲームの難しさは同じぐらいに感じましたが。
松井ムネタツ:得点方法がいろいろあって、天体観測の部分は分かりやすいんだけど、それ以外の方法が複雑で、1回プレイしただけでは把握しきれない。1回でも通しで遊べば、それぞれの要素がどのように得点に結びついてくるのか見えてくると思いますが、初プレイ時はなかなか難しい。
インストのとき聞いている側もみんなピンときていなくて「大丈夫なのかこれ?」って。でも、フレーバーや世界観はみんな楽しんでいたようでした。次にやるときは上級ルール込みでやってみたいですね。
共感系ワードゲームのニューフェイス!
アン:では次、『ワンラウンド(One Round)』(Schmidt Spiele)。海外の新作でまだ日本語版が出ていませんが、『ito』のような共感系のワードゲームです。0(100)~99の数字のカードに好きな言葉を書き入れて円環状に配置。手番プレイヤーは続いて引いたカードの数字に対して、20秒以内に適した言葉を考えて伝える。他のプレイヤーはその言葉を聞いて、場に出ているカードのどの言葉に近いか、どの数字と数字のあいだにその言葉に入るか予想します。複数のワードから正解を予想する感じは、『ito』より『ことばのクローバー!』や『ニゴイチ』あたりが近いかもしれないですね。

ワンラウンド
松井ムネタツ:これはカードに数字が書いてあって、それに対応した言葉を書き入れていくんだよね?
アン:そうですね。このゲームはお題のようなものが一切ないので、どんな言葉を書くかは自由です。ふわっとした概念的な言葉を入れておくと楽ですが、狭い意味の言葉や固有名詞を書くとかなり条件が厳しくなり、途端にカオスな展開に。その後にとんでもない答えが出てきたりして、これが笑えるんですよ。
ルールが理解しやすく、12人までプレイ可能なので、パーティーゲームとして人気が出そう。現在、日本国内では海外版が流通しています。言語依存がないから問題ないと思いますが、遠くないうちにどこかのパブリッシャーから日本語版が出るのではないでしょうか。
真打登場! ドイツ年間ゲーム大賞を受賞したあのゲーム
松井ムネタツ:では続いて『ボムバスターズ』(Engames)。

ボムバスターズ
アン:なんといっても日本人デザイナー初のドイツ年間ゲーム大賞受賞作ですから、このゲームは取り上げざるをえませんよね。
松井ムネタツ:とにかく遊んでみよう、と。このゲーム、いわゆるキャンペーン型、レガシー型なんですよね。シナリオを進めるごとに新要素を開封して追加していく。
自分もすでに何回か遊んでいるのですが、そのたびにお初の人がいて、そうなるとシナリオを進めるより最初からプレイして内容を掴んでもらおう、となるんですよ。なので、先のほうのシナリオはまだ体験できていないのだけど、そのぶん、これからどうなっていくんだろう? という楽しみはあります。
アン:『ボムバスターズ』だけを遊ぶ日を作って、一気にプレイするのが良いかもしれませんね。実際、かなり中毒性があって、ひとつシナリオをクリアーしたら「もっと遊びたい! 次、次!」となる。
松井ムネタツ:ゲーム内容については、先の『マッシュルームソート』と同じく論理パズル的なタイプで、だんだんと情報が集約されていく感じが似ているかもしれない。ババ抜きや神経衰弱に近いと言われているようですが、協力型でわりと考えるゲームですから、あまりボードゲームに慣れていない人が噂だけ聞いてやろうとしたときにどうなのかな? と思うところはあります。
アン:基本ルールはシンプルで理解しやすいと思います。レガシーゲームということで複雑な要素はあとから追加されていくようになっていますし、徐々にステップアップしていくスタイルが良い方に作用していますね。商業版(海外版)になってディヴェロップがかかり、アートワークとフレーバーの変更、コンポーネントの強化があって、よりプレイしやすく、多くの人に受け入れられるゲームになったのではないでしょうか。
松井ムネタツ:元版となる『ボムスカッド』は確かちょうどコロナが流行した時期にリリースされたゲームで、当時一度プレイしたことがあったかな。
アン:実際のところ、2025年の時点で『ボムスカッド』をプレイしている人はあまり多くなかったと思うんです。「忘れられていた」と言うと失礼なのですが、プレイしてみるとこれが本当に面白い。これほどのゲームが見落とされていて、元版発売から5年以上が経過したいま掘り起こされてドイツ年間ゲーム大賞を取るまでになる、というのもすごい話です。
松井ムネタツ:改めてデザイナーの林尚志さんの底力と、日本のボードゲーム界の裾野の広さを感じるところですね。
大人になった三匹の子豚VS狼軍団の果てしなきバトル
アン:最後は『Castle Raisers(キャッスルレイザーズ)』(Wonderful World Board Games/ホヌゲームズ)。台湾のメーカーの作品で、これもまだ日本語版が出ていません。

キャッスルレイザーズ
アン:童話『三匹の子豚』の未来の話で、成長した豚たちと狼軍団の戦いというフレーバーがもう最高。内容はデジタルゲームでいうところの“タワーディフェンス”に近いもので、次々と攻め寄せる狼の大群を、要塞にこもったプレイヤーの豚たちが迎え撃ちます。
配置するとさまざまな効果を発揮する城壁のタイルをドラフトで獲得し、城壁を高くしたり、住人を増やしてアクションを強化したり、攻め寄せる狼に熱々のスープをかけて撃退したりしつつ、自分の要塞を守り抜くのが目的です。
松井ムネタツ:ゲームマーケット2025春に台湾メーカーの合同ブースで販売されていたようですね。現在はホヌゲームズさんが和訳説明書付きで販売しているのか。
アン:プレイヤー全員が個人ボードの要塞を強化していきます。円形の城にタイルを積んでいくと城壁が高くなっていき、見た目にも楽しいですし、城壁を配置したときに発生するアクションのシナジー効果やコンボを考えるのも面白い。
得点要素が豊富で勝ち筋がいくつもある。台湾発ながらもユーロの香りがして、非常に好みでした。といっても古臭くはないですし、対戦だけでなく協力ルールが用意されているのも今風のゲームという感じですね。これも将来的にどこかが日本語版を出す可能性が高いと思っています。
いかがだったでしょうか。今回は7月から9月のあいだにBROADスタッフがプレイしたゲームのなかから面白いと感じた8作品をご紹介しました。
ここで名を挙げたゲームはあくまでもスタッフが実際に遊んだなかから選んでいるため、人気タイトルが抜けていたり、発売から時間が経ったゲームが混じっていたりしますが、少しでも皆さんが遊ぶボードゲームを選ぶ一助になれば幸いです!



