【ボードゲームをデザインした巨匠たち】ヴォルフガング・クラマー

世界的に有名なボードゲームデザイナーの1人にスポットを当てて、どんな経歴の人なのか?今までどんなボードゲームを作ってきたのか?その人を深掘りする「ボードゲームをデザインした巨匠たち」シリーズの第3弾です。

前々回がシド・サクソン、前回がアレックス・ランドルフを取り上げました。今回はヴォルフガング・クラマーです。

 

ヴォルフガング・クラマーの経歴

1942年6月29日ドイツ・シュトゥットガルト出身。大学では経営学の勉強をし、自動車部品のボッシュ社や電子機器のシーメンス社などで仕事をしていたそうです。そして1973年〜1988年の間は働きながら趣味でボードゲームを作っていたとのこと。

1989年には勤めていた会社を辞め、専業ボードゲームデザイナーになります。ドイツ人としては最初のボードゲームデザイナーだそうです。デビュー作は1974年に発表した『Tempo』という手札でコマを進めて賭けをするレースゲームになります。

その後は次々とボードゲームを発表し、1986年に『アンダーカバー』で、1987年に『アウフアクセ』で、1996年に『エルグランデ』で、1999年に『ティカル』で、2000年に『トーレス』でドイツ年間ゲーム大賞(Spiel des Jahres)に選ばれています。5回も大賞に輝くのは当然、最多受賞者です。ドイツゲーム賞(Deutcher Spiel Preis)も 1994年の『ニムト』を始め、3度受賞しています。ご自身のサイトには様々な受賞歴が掲載されてますが多過ぎて見にくいという事態になっています。

1984年に発売した『アンダーカバー』では、ボード外周に得点用のトラックを配置し「KramerListe(クラマーライステもしくはクラマーフレーム)」と名前付きで呼ばれる程のアイデアとなりました。1999年発売の『ティカル』では手番に複数の行動が出来る「アクションポイント制」を考案しています。「全く新しいタイプのゲームを開発する」を理念にしているそうで、体現しているのは流石です。

クラマー1人で作ったゲームも多々ありますが、友人であるミヒャエル・キースリングと作った『トーレス』『アブルクセン』『ティカル』『勝利への道』『ペッパー』『炭鉱讃歌』『プエブロ』『アサラ』やリヒャルト・ウルリッヒと作った『エルグランデ』『フィレンツェの匠』など共作が多いのも特徴です。

200タイトル以上のボードゲームを発売して総発行部数は1000万セットを超えているボードゲーム界の伝説級の人物なのですが、2020年には『リネイチャー』が発売されていて意欲的にゲームを作り続けている現役のボードゲームデザイナーです。

 

ヴォルフガング・クラマーのゲーム

ニムト

◼️2〜10人

◼️45分

◼️8歳〜

◼️1994年作

全員同時に数字が書かれたカードを出して、昇順でカードを並べて、一列の6枚目に置かれた人が失点になるバッティングゲーム。

人数が多いと思わぬドラマを生み出し、非常に盛り上がりやすく、初心者にもルールが分かりやすい傑作カードゲームです。カードには数字しか書いてないのに面白いという美しいルールに溜息が出ますね。派生した赤ニムト、青ニムト、Xニムトなどもはやシリーズ化しています。

 

ヒューゴ オバケと鬼ごっこ

◼️2〜8人

◼️30分

◼️8歳〜

◼️2013年作

お城のダンスパーティーで地下から現れたオバケから逃げ回るすごろく型ボードゲーム。サイコロを振って自分のコマを部屋の中に逃がせば得点です。しかし6面サイコロの2面にオバケが描いてあって、オバケが出るとオバケが近付いてくるのでスリル満点の盛り上がりやすいパーティーゲームです。

1989年発売の「ミッドナイトパーティー」のリメイク版で追加ルールでも遊べるようになっています。

 

アンダーカバー

◼️2〜7人

◼️30分

◼️8歳〜

◼️1984年作

自分の部下であるスパイを操って得点を稼ぐ正体隠匿ボードゲーム。サイコロを振ったらどの色のスパイを動かしても構いませんが、自分が担当するスパイは一色だけ。何色を担当するかは他の人は知らないのでバレると自分の色のスパイが集中的にマイナスを食らうことになるのが非常に面白く、よく出来ています。

上記の通り、ボード周りの得点表がボードゲーム界の発明なのです。

 

フォルム・ロマヌム

◼️2〜6人

◼️45分

◼️10歳〜

◼️1988年作

古代ローマの議会を舞台に、市民の支持を集めるというテーマのエリアマジョリティゲーム。運の要素が全く無いので、アブストラクトゲームと言ってもいいかもしれません。7コの駒を配置したら、自分の手番では駒を動かしてどこかに配置するだけ。タテ、ヨコ、ナナメのいずれかに駒が一列置かれたら精算で、一番駒が多い人が加点で最も少ない人はマイナス点。

全く無駄のないゲームデザインで、テーマも地味。そして、かなり面白いんだけどドッと疲れるボードゲームです。

 

「クラマーの代表作はその4つじゃないだろ!」と文句を言う読者もいるでしょう。もちろんクラマーと言えば『ティカル』『トーレス』『エルグランデ』などが思い浮かびますが、クラマーが1人で作ったゲームから選出してみました。軽いゲームから重いゲームまで、古くても面白いのが多過ぎて選びきれない…。

逆に言うと「このクラマーって人が作ったゲーム面白い!」と思って他のボードゲームを遊ぶと全く違うシステムに面食らうかも知れませんね。それくらい様々なゲームを作り上げた人です。