クラスク日本チャンピオンに独占インタビュー。確実にクラスクが上手くなる方法があった。

台の下から磁石を使って黒いコマを動かして黄色いボールを相手のゴールに入れる2人用対戦アクションゲーム、それが「クラスク」です。磁石版エアホッケーと言えばイメージしやすいでしょうかね。デンマーク生まれのボードゲームで、2017年にはドイツ年間ゲーム大賞の推奨リストに選出されています。

そんなクラスクですが、なんと世界大会が行われているんです。日本でも2019年に第1回目の大会が行われました。公式の大会が開かれてるくらいプレイヤーも多いし、それだけ盛り上がっているボードゲームなのです。

この度、日本大会優勝者のアカミネトウマさんにインタビュー取材を依頼したところ快諾して頂きました。YouTubeの番組にゲスト出演した事はあるらしいけど、インタビュー取材は初めてとのこと。早い話がBROADの独占インタビューとなります。上手くなりたい人、必読!

 

クラスクは誰とでも盛り上がる

ーーよろしくお願いします。まず、初めてクラスクを遊んだのはいつですか?

「2017年です。当時JELLY JELLY CAFEの下北沢店で働いてたんですけど店にクラスクが入ってきたんですよ。お客さんに説明するために触ったり営業終わった後に遊んだりしてて、コレは友達と遊びたいと思って2018年に購入しました」

ーーお店行けば触れるのに買ったんですね。

「友達と遊びたくて。どの友達とでも確実に盛り上がりますから。クラスクを友達の家まで持って行ったりもしますよ」

ーーえええ!結構重いのに持ち運び……。ちなみにボードゲームは結構な数持ってるんですか?

「あんまり持ってないですね」

ーー数少ないけどクラスク買ったんですか?面白いゲームではありますけど、いわゆるボードゲームっていうタイプじゃないし先に欲しくなるゲームが他にありそうな気も……。

「昔からベイブレードとかビーダマンとかのバトルホビーが好きだったんですよ、アナログなおもちゃとかが。それでクラスクを友達と遊びたいって思って」

ーー元々そういうのが好きならクラスクに食いつくのは自然な流れですね、会うべくして会ったというか。

 

驚きのクラスク練習法

ーー練習は2017年からコツコツやってたんですか?

「いや、2019年に日本大会があると知ってから本格的に練習するようになりましたね、お店のバイトの子とか友達とか。気付くと私に勝つ人がいなくなってて。アレ?強いのかなと。それで1人で練習してました」

ーー対戦ゲームなのに1人で!何をやるんですか?

「まずはサーブです。サーブをしてからゲームが始まるので、サーブは元々1人でやるものですよね。とにかく早いサーブを打つとか、真っ直ぐボールを打ってゴールに入るようにするとか。他にはこの角度でシュート打ったら入るという軌道を探したりとか……」

ーーなるほど。練習する事は多そうですね。

「あとはこの白いのをビスケットって言うんですけど、これが自分のストライカーに2個くっつくと負けなんです。なので相手にくっつけたいので、こうやって飛ばすとか(とビスケットを飛ばす)」

ーーえええ!この白いのって偶然ボールが当たって転がるのかと思ってた!自分のコマ(ストライカー)で打てるの?!

「狙って打てるように練習するわけです」

ーーへぇ〜、後で打ち方教えて下さい…。そりゃあ練習のやり甲斐がありますね。他に練習してた事はありますか?

「相手がいればひたすら試合して。試合しながら相手のシュート見てこの角度で打つとゴールに入るんだなとか、ビスケットがこういう位置にある時はこっちを狙うと良いんだなとか研究してましたね。知らないパターンが無いくらい」

ーークラスクって反射神経の良い人が強いイメージだったんですけど随分戦略的なんですね。優勝は努力あっての結果なのかぁ…。筋トレみたいな事はしてたんですか?

「それはしてないです。やってるって人の話は聞いたことないですね」

ーーじゃあ筋力は関係ないんですね。ちなみに「おばけキャッチ」みたいな瞬発力を競うボードゲームは得意ですか?

「昔は得意でしたね。でもそんなに瞬発力が良いってタイプじゃないですよ。どちらかと言うとウボンゴの方が得意かも」

ーーじゃあ、アカミネさんが特別な能力を持ってる訳じゃないのかなぁ。練習すれば誰でも日本大会の出場チャンスありそうですよね。練習で重要な事ってなんですか?

「一球一球考えて打つのが大切だと思っていて。最初は来たボールをとにかく相手に返すってのが基本になるんですけど、慣れてきたらこのコースで入れたいなと考えて打ったり」

ーー練習したコースをちゃんと実戦で狙って打てるようにする、と。

「そうですね。あとは相手にビスケットが1個付いてるな、と。それならもう1個ビスケット付けてやろうとか。一球一球考えるのが大切だなと思いますね」

ーー考えるのが大切なんですね。一球一球ゴールを狙ってるもんですか?

「狙ってる時もありますし、左右に振って横に打って相手に印象付けるとか」

ーーコイツ横にばっかり打つ人だなぁと思わせる訳ですか。

「そうです、横に強いなぁと思わせてスーッとゆっくり真っ直ぐ打つみたいな。フェイントと言うかそういう戦略ですね」

ーーテニスっぽいですね。同じ方向に打ち返してここぞって時に逆サイド打ったり、ポ〜ンと高いロブ返したりするし。

 

日本大会でサプライズ発表

ーー気になるのは、2019年の日本大会ってどんな人が集まってたんですか?アカミネさんみたいなガチ勢ですか?

「ボードゲーム会繋がりの人達が多くて、ワイワイと『結局決勝に上がってきたね〜』みたいな感じで盛り上がってて。そんな中、私はホント1人だったので逆に燃えちゃって」

ーーそのボードゲーム会ってクラスクを練習してたんですかね?

「クラスク会というのがあって、その知り合い同士が日本大会まで上がってきたというか。応援もその知り合いとかで」

ーーは?!クラスク会?クラスクの道場みたいな?知らない世界があるんですねぇ…。でもクラスク会にしてみればアカミネさんこそ何者なんだろうって存在ですよね?

「JELLY JELLY CAFEの各店舗で予選をしてたんです、勝ち抜いた上位2人が日本大会に出場というルールで。その頃私は水道橋店で店長をしてて、水道橋店の予選に参加したんですよ。その予選で私に負けて2位になった人がクラスク会の中心的人物で『あの水道橋の店長は強いよ』って触れ込んでくれてたみたいで。それを聞いて負けられなくなってきたなと」

ーーアハハ、少年ジャンプの漫画みたいだなぁ。猛特訓で鍛えたクラスク会のメンバーが優勝するかと思いきや、謎のライバル登場って。

ーー他の人のプレイ見て、勝てると思いました?

「いや、自分も含めみんな緊張してたんですよ。あと大会の直前に仕様が変わったんです……」

ーー直前に変更?何があったんですか?

「今のストライカーって底にシールが貼ってあるんですけど、最初に販売されてたのは何も貼ってなかったんです。ボードを傷付けるとか音がうるさいって理由でシールを貼るようになったんですけど。それが『この大会から導入します』って言われてみんな戸惑ったんですよ」

ーーえ〜っっ!そんなぁ〜〜!!

「シール無しでメチャクチャ練習してきたから『これだと凄い滑るな〜』みたいな。みんな5割くらいの実力しか出せなかったと思いますよ」

ーー滑りやすいのかぁ。ってか、当日発表だったんですか!もしオリンピックで「今日からコレ使いますね」って急に道具変わったらパニックですよ。

「シールは良いアイテムだね〜……でもそれで今日やるの?みたいな。行った人しかあの戸惑いは分からないと思いますね。マウスのポインターの設定が1.5倍になってる感じ。思ったより行っちゃうみたいな。なので普段通りやれればイケるかなと」

ーーそんなハプニングもあったんですね。大会って参加者と応援の人合わせると結構な人数いたと思いますけど、盤面をカメラで撮影してモニターを見てたんですか?

「いや、みんなでクラスクを囲って見てましたよ。一応カメラで撮ってたのかな?でも囲って応援してましたね。だからビスケットが飛ぶと近くの人が拾ってスタッフに渡すという」

ーーガハハハ、ユルいなぁ〜。日本大会なのに。

「ま、1回目の大会って事で。探り探りですよね」

ーーストライカーのシールも当日発表ですもんね。ユルいなぁ。

「いや、世界大会も動画見ると、暗い部屋で凄いライトアップして格好良くやってるんですけど製作者と解説者はパンツ1枚でビール飲みながら実況やってますからね」

ーーブハハハ……世界大会はもっとユルい!

 

必ず上手くなる方法は?

ーークラスクを遊んだことない人も多いと思うので、ますは磁石の持ち方を。良い持ち方とかあります?

「薬指が可動域狭いので、薬指の上に乗せてます。そうするとずっと平行に移動出来ます。斜めになっちゃうとストライカーがどっか行っちゃうんで」

ーー磁力から外れて相手の陣地に飛んでっちゃうパターンですね。今まで鉛筆とか持つ感じで持ってたわ〜。持ち方から違ってた…。

ーーズバリ、上手くなる方法は?

「自分のシュートコースを見つけるというのが上達のコツだなって思いました。そして必殺技の名前を付けるんですよ。横に振って入れるヤツは『スネークバイト』って名付けてましたから。そうすると、このコースは入るんだなって必殺技の名前と関連付けて覚えるんです。遊びながら楽しく覚えて、それを何度も練習して実戦で『おりゃ〜スネークバイトだぁぁー!』と。そうなると自然とシュートコースを考えるようになりますね」

ーー攻撃だけじゃなく防御もありますよね?

「自分はここからのコース弱いなぁというのを遊べば遊ぶほど分かると思うんです、いつもこっちから入れられるなぁと。防御出来るようにしようと遊ぶ中で意識的に考える。やり方を発見してそれを再現する。攻撃も守備も適当にエイエイ〜ってガチャガチャやるんじゃなく、考えて遊ぶのが大事だと思います」

ーーさっき言ってたビスケットの打ち方って教えてもらえませんか?

「このビスケットですけど、穴が上を向いてる時はストライカーを近付けるとくっついちゃうんです。S極N極の関係で」

ーー知らなかった!この穴が空いてる側、銀色のが見えてる時はストライカーを近付けちゃダメなのか〜。

「クルッと半回転してからくっつくので、そのスキに打つ!あとは穴が上を向いてても真っ直ぐ振り抜くと打てます」

ーーえ〜??どうなってんの?そんなの説明書に載ってました?

「載ってないです。穴の方がストライカーにくっつくようになってるんですね。ゲーム開始時は3つとも穴を上に向けるルールなので、磁力で一旦手前に引き寄せてから打つとか。ビスケットを操れるようになると強いですね」

ーーへぇ〜操るのか…。ビスケットって自分のゴールに入れてもいいんでしたっけ?

「大丈夫ですよ。世界大会ではエンジェルって言うらしいです。体感ですけど2割くらいボールが入りにくくなりますね。だからエンジェルなんでしょうけど」

ーーそれならビスケットを3つとも入れればボール入らなくなるんじゃないですか?

「それが2つ入るとストライカーにくっつきやすくなるんですよ〜」

ーーどういうことですか?(実際にやってみて)ホントだ!なにこれ!くっついた〜。

「面白いですよね。世界大会ではビスケット使いが上手い『ビスケットウィザード』って呼ばれてる人がいるらしくて、必殺技に名前付けてたからそういうの憧れますよね」

ーービスケットの扱いが上手い人かぁ〜。世界大会だと想像超えたテクニックありそうですね。

「ちなみに自分のゴールに入ったビスケットも出せるんですよ……ほらっ」

ーーえええええ!手品みたいだ!

「磁力で浮かせて出せるんです。ビスケットが相手に1個くっついてる時は手前に飛ばしてディフェンスラインを下げさせようとか。ゴール前にビスケット飛ばして近付けないようにしようとか。ビスケットは本当に考えること多いですね」

ーーこれスポーツですね!!ボール打つだけじゃなく、ビスケットの位置もあるんだもんなぁ。サッカーとかバスケのフォーメーションみたいな感じなんですかね?

「そうかも知れないです。パターンは全然少ないですけどね」

ーー逆にやらない事、やっちゃいけない事ってあります?

「自分のゴールにストライカーを落とさない。基本中の基本ですけど。これで相手に1点入るのって悔しいし、つまんないじゃないですか。一番多い失点パターンなんですけど、これだけはやらないように練習した方がいいですね。あとはストライカーが磁石から離れて飛んじゃうのも多いですよね。磁石を離さないようにして。意識しながら遊ぶといろいろ考えるようになるんです」

ーー失点を少なくすると?

「失点がなくなれば当然強いですよね。6点先取のうちの1点ですから」

ーー努力あっての優勝なんですねぇ。優勝した後に何か反響ありました?

「水道橋店に『お手合わせお願いします』って何人かいらっしゃいましたね。『必ず勝つけどいいですか?』って確認して」

ーー必ず勝ちました?

「100%勝ちましたね」

ーーそんなに強いならアカミネさん主催でクラスク会やったらいいんじゃないですか?

「いや、人見知りなんで。友達と遊びたいんですよ」

ーー元々のスタートも友達と遊ぶことでしたもんね……。最後にクラスクに興味持った人、これから遊ぼうと思ってる人にメッセージお願いします。

「まずはボードゲームカフェ行って遊んでみたらいいと思います。気に入ったら購入して。そうすると勝ちたいってなるので、自然と考えて遊ぶようになると思います」

ーー上達の秘訣は、考えて遊ぶですね。今日はインタビュー取材ありがとうございましたー!

 

クラスクって適当にガチャガチャやってたらシュート入ってた、みたいな大騒ぎのボードゲームだと思ってたんだけどなぁ。かなり戦略的なゲームで、それをやるために練習が必要ってことも分かりましたね。イメージがガラッと変わりました。特にビスケットの扱いは本当凄い!お見事としか言いようがないですね。

2020年はコロナの影響で大会は中止だったんだけど、予選を行う予定のボードゲームカフェは初回より増えてたそうです。徐々にクラスク人口も増えているって事ですよね。2021年は第2回大会が開かれることを信じて、練習に励みましょう!