“緑の人”フリードマン・フリーゼのゲーム8選! こだわりと独創性溢れるタイトルが続々登場

精力的にタイトルを発表し、当代きってのボードゲームクリエイターとして名が挙がることも多いドイツのデザイナー、フリードマン・フリーゼ。

独創的かつ精緻なメカニクスによって多くのファンを持つ氏ですが、ボックスの色や自身のファッションを緑に染め抜いてみたり、デザインするゲームのタイトルの頭文字を自分のイニシャルにちなんで“F”に統一してみたり、といったユニークなこだわりを持つことでも知られています。ちなみに、氏が率いる出版社“2F-Games”の名もFがふたつ入るイニシャル(Friedemann Friese)から取ったものです。

▲ゲームマーケット2024春に来日し、スペシャルステージのトークショーに出席したフリーゼ氏。当日は会場内の様子を見て回り、特徴的な外見から大いに目立っていたため、SNS上で目撃報告が相次ぎました。

今回は、“緑の人”と呼ばれるフリードマン・フリーゼ氏のデザインしたゲームを8つほどご紹介しましょう。

※五十音順に紹介しています。

5本のキュウリ

ヤバいキュウリの押し付け合い! おいしく漬けられてしまうのは誰?

色やスートがなく、数字のみのカードでプレイするトリックテイキング。プレイヤーは手札から1枚ずつカードを出していくのですが、直前のカードの数字と同じか、それより大きい数字のものしか出すことができません。出せるカードがない場合は、手札のなかでもっとも小さい数字のカードを出さなければいけなくなります。

勝敗に直接関係するのは、ラウンドの最後のトリックのみ。ここでトリックに勝ったプレイヤーは自分で出した手札に書かれている数(1~5本)のキュウリを押し付けられ、その合計が6になるとピクルスとして漬けられて脱落です。これを繰り返し、最後まで生き残ったプレイヤーが勝者となります。

最後のトリックで勝たないようにすればいいのですが、これがなかなか難しい。いかにして厄介なカードを手放し、数字の小さいカードを温存するかのハンドマネジメントが問われます。シンプルながら駆け引きの要素もあり、軽く楽しめるので隙間時間で遊ぶのにも適したタイトルです。

5本のキュウリ 概要】
メーカー:アークライト
プレイ人数:2~6人
対象年齢:8歳~
プレイ時間:~30分

FTW!?(エフテーヴェー!?)

お助け札を作るか、手札を減らすか。選択が悩ましい出し切り系カードゲーム

1~60までの数字が書かれたカードを配り、手番で1枚ずつ出していく、いわゆる“ゴーアウト”系のカードゲーム。基本ルールは場にあるものより大きい数字のカードを出していくというオーソドックスなものですが、手札を出せない、もしくは意図的に出さない場合に場から1枚を獲得し、“お助け札”にすることができます。お助け札は次回以降の自分の手番で手札を出す際に一緒に使用することで、お助け札の数字を手札の数字に加えることが可能。このため、場札の数字が高くなってもお助け札を使うことで低い数字の手札を処理できます。

得点のルールも独特。手札が1枚のみになったプレイヤーが出るとそのラウンドが終了となり、上がったプレイヤーは残した手札がそのまま得点に。ほかのプレイヤーは、手札のうち最大の数字から、その他の手札の合計数を引き、残った数字が得点になります。

ほかのプレイヤーの動きを予想しつつ、自分の手札をいかに減らしていくか、どの札をお助けとするか、残して得点の軸にする札はどれかなど、悩みどころはたくさん。シンプルなルールと数字のカードだけでプレイする、ちょっと地味な見た目のゲームですが、メカニクスの奥深さを感じることができるタイトルです。

エフテーヴェー!? 概要】
メーカー:サニーバード
プレイ人数:2~6人
対象年齢:8歳~
プレイ時間:~30分

電力会社:充電完了

バチバチにやり合いながら電力ネットワークを拡大!

マップ内に電力ネットワークを作り、収入を得ていく拡大再生産タイプの重量級ゲーム。フリーゼの代表作として名の挙がることが多い傑作です。プレイヤーはオークションで発電所を獲得し、電線を引いてネットワークを拡大。建設した建物に電力を供給して電気料金を得ます。発電所は石炭、石油、バイオマス、原子力、風力が存在し、風力以外は稼働させるためにそれぞれ違ったリソース(燃料)が必要です。

発電所の配置は早い者勝ちで、後から置くとかかる費用が上昇したり、設置数に制限があるため、手番順も重要。建物の数や性能が高い発電所の保有によって手番が遅くなるため、手番順の調整も考える必要があります。考慮する要素が多くアブストラクト性が高いゲームですが、フェイズごとにできることが整理されており、ルールの理解はそれほど困難ではありません。リソース管理の難しさはあるものの、拡大再生産特有の加速していく感覚を存分に味わえるでしょう。

初版発売は2004年。『電力会社:充電完了』は2019年に登場した現在の最新版で、ふたつのマップ、それぞれの特殊ルールや2人用ゲームの追加、コンポーネントの強化などがはかられています。また、本作の魅力のひとつとして拡張性の高さが挙げられます。世界各国・各地域の追加マップと、そのマップにまつわるルールやコンポーネントが次々と発表され、ファンを飽きさせません。ゲームマーケット2024春のトークショーでフリーゼ氏本人からシリーズのさらなる展開が示唆されており、今後の動きにも注目したいところです。

電力会社:充電完了 概要】
メーカー:アークライト
プレイ人数:2~6人
対象年齢:12歳~
プレイ時間:60分~

ファウナ

データを推理してベット! 誰でも動物に詳しくなれるクイズゲーム

さまざまなデータが書かれた動物カードの、どれかの項目を予測して賭け、正解したり、近い答えを出したりすると得点を得るクイズゲーム。予想するデータは生息地域、体重、体長、全長・体高、尻尾の長さと多岐に渡ります。プレイヤーは、お題として引いたカードの動物のデータを予想し、順番にコマを置いてベットしていくのですが、他の人と同じ答えは選べません。

クイズゲームゆえに答えを覚えてしまえばいい……と思うかもしれませんが、動物カードは全360種が用意されており、知名度が低い動物もたくさん含まれているため、そう簡単に記憶できるものではありません。さまざまな動物の特徴を知ったり、生息地域指定のために用意された世界地図によって国の場所を覚えたりと、知育的な要素もあります。

簡単ルールで誰でもプレイでき、美麗な動物カードのイラストとデータを眺めているだけでも楽しいタイトル。なお、本作はフリーゼ氏のゲームとしては珍しく、緑色のボックスが採用されていません。

ファウナ 概要】
メーカー:ホビージャパン
プレイ人数:2~6人
対象年齢:10歳~
プレイ時間:約45~60分

フィッシェン

デッキ構築要素が加わった新感覚トリックテイキング

全8ラウンドで行われる、マストフォローのトリックテイキング。取ったトリックが得点となり、さらに獲得したカードがそのままデッキとなって、次のラウンドはそのデッキからラウンドごとに指定された枚数のカードを引いて手札とします。

このとき、前のラウンドでトリックが取れず手札が足りなくなったプレイヤーは不足分を新たに山札から補充するのですが、追加される新規カードはそれまで場に出ていたカードよりも強い札です。つまり、前のラウンドでトリックが取れなかったプレイヤーほど、次のラウンドのデッキが強化されるのです。

負けるほど手札が強くなる一方で、最終的な勝敗を決める得点は獲得したカードの枚数によるので、ずっと負け続けるわけにもいきません。どこでトリックを取り、どこで落とすかの判断がシビアで、全8ラウンドのなかで意識して自分で流れを作っていかないとなかなか勝てない! システムはシンプルながらも、これまでのどのゲームとも違う、非常にユニークなトリックテイキングです。

フィッシェン 概要】
メーカー:サニーバード
プレイ人数:3~5人
対象年齢:8歳~
プレイ時間:30~60分

袋の中の猫フィロー

袋の中身はなんじゃろな? 猫が出るか、ウサギが出るか、それとも……?

全プレイヤーが手札のなかから1枚を伏せて出し、1枚ずつ公開しながらコインをベットして取り合う競りゲーム。

カードはプラスの得点となる猫のほか、場を荒らす犬、得点無しのウサギ、そしてマイナス点の猫があり、全員が出したあとでまず1枚を公開。ひとりずつ競りの型式でコインを賭けていくのですが、途中で降りたプレイヤーは賭け金が戻るほか、少しの枚数のコインを獲得します。そして、ひとり降りるごとに1枚ずつカードを公開して競りを続け、最後まで残ったプレイヤーはコインを支払って場のカードをすべて獲得するのです。

犬カードが出ると最大得点、もしくは最大マイナス点の猫を消します。しかし、犬カードが2枚以上あると犬同士で消えてしまいます。プレイヤーの手札は1枚だけランダムで省きますが、基本的に全員が同じ構成。誰がどの札を出したか、何が残っているかを覚えておくこと(カウンティング)も重要となります。

降りてわずかなコインを確保するか、それとも突っ張って得点を取りにいくか。公開されていくカードのうち1枚は自分が出したものなので、どこでそのカードが表になるかも重要な判断要素です。どのカードを出すかの戦略と他のプレイヤーの出したカードを予測するゲーム要素に加え、1枚ずつカードが明かされていくドキドキ感があり、一風変わった競りゲームとなっています。

袋の中の猫フィロー 概要】
メーカー:アークライト
プレイ人数:3~5人
対象年齢:8歳~
プレイ時間:~30分

ブラックフライデー

乱高下する株価を予測してディールの勝者となれ!

株式売買を扱ったゲーム。価格が変動する5種の株を売ったり買ったりしつつ、勝利点となる現金や金塊を集めていきます。株は売られると価格が下がり、買われると上がるので、そのときの価値や他のプレイヤーの懐事情などを考慮して売買を進めなければなりません。

注意しなければいけないのは、ポイントごとに訪れる相場変動。このときバッグドローで株を引き、結果によって特定の銘柄の株価が上昇する一方、暴落してしまう危険もあります。株価変動のシステムは複雑で、さらに運も絡んでくるため予想が難しいのですが、先読みと駆け引き、そして嗅覚で勝負! 危機を察知して売り抜けに成功したり、我慢して持っていた銘柄を先に売られて価値がガクっと下がったり、急な暴落で大損してしまったり……と悲喜こもごものマネーゲームが展開します。

初版は2010年に登場。2024年に発売された新版ではルールの改訂やバランス調整が行われており、さらに少人数プレイ時に対応するNPCルールも追加され、プレイしやすくなっています。

ブラックフライデー 概要】
メーカー:サニーバード
プレイ人数:2~5人
対象年齢:15歳~
プレイ時間:30~60分

ロビンソン漂流記

襲い来る困難に立ち向かえ! ひとりぼっちの脱出劇を描くソロゲームの傑作

孤島でのサバイバル生活を扱った1人用のデッキ構築型ゲーム。プレイヤーはひとり島に残されたロビンソンを導き、脱出を成功させなければなりません。

ゲームは、まず災厄カードを2枚引いてどちらかを選択。次にロビンソンデッキからカードを引いて災厄に立ち向かいます。プレイヤーはロビンソンの体力を管理しつつ災厄である獣や人食い族を退け、強力な手札を入手してデッキの強化していくのですが、ロビンソンは怠けてしまったり、大事な局面で突然バカになってしまったりと、なかなか思うように動いてくれません。体力が尽きてしまうと、その時点で失敗となってしまいます。

困難を乗り越えつつデッキのカードを3回使い切ると、いよいよ最後の戦いへ。海賊とのバトルに臨み、これを撃破すれば脱出成功となります。4段階の難度が用意されているのですが、もっとも易しいレベルでも勝利するのは難しく、熟練のゲーマーでもかなりの歯応えを感じるはず。クリアするまで何度も黙々と繰り返してしまうことうけあいの傑作ソロゲームです。

ロビンソン漂流記 概要】
メーカー:アークライト
プレイ人数:1人
対象年齢:14歳~
プレイ時間:~30分


フリーゼ氏のデザインするゲームは、『電力会社』のようにプレイ時間が2~3時間にも及ぶような本格派から、『5本のキュウリ』といった手軽に楽しめるもの、知育要素を持つ『ファウナ』、ソロゲーの『ロビンソン漂流記』、さらには今回紹介していない中でも正統派ユーロゲームの流れをくむ『ファイユーム』、実験的な作品の『緑の国のアリス』『トリックマイスター』、などなど多種多様にわたり、まさに緩急・硬軟自在。

そして、そのいずれの作品も思わずうなってしまうような独創的な要素が散りばめられており、ひとたびプレイすればそのトリコになってしまうことでしょう。デザインの幅が広い一方で、ボックスカラーやアートワーク、タイトルを見れば、フリーゼ氏の作ったゲームであることがすぐ分かるようにもなっています。

ボードゲーム界に絶大な存在感をもって君臨する鬼才、フリードマン・フリーゼ。誰もが彼の作ったもののなかに好きになれるゲームがあるはずなので、ぜひとも触れてみてほしいと思います。