他人と被ったら負け? それとも積極的に狙っていく? 読みと直感で勝負のバッティングゲーム7選

“バッティング”というボードゲームのメカニクスをご存知でしょうか。主に同じ数字のカードやダイスを複数のプレイヤーが出すと無効になってしまうものを指します。このタイプのゲームでは被り(バッティング)を避けるのが必勝法となるわけですが、そこに推測と読み、そしてブラフが絡んで心理戦が展開するのです。

今回は、バッティングのゲームを7つほど選んでご紹介しましょう。

バッティングを知りたいならまずはこのゲームがオススメ!

『ハゲタカのえじき』

バッティングというメカニクスを持ったゲームを紹介するうえで、まず最初に名前を挙げるべきなのがこの作品。定番のゲームなので、プレイしたことがある人も多いのではないでしょうか。アレックス・ランドルフの代表作のひとつであるカードゲームです。

全員が1~15までの数字が書かれたカードを持ち、毎ラウンド1枚ずつ同時に出していきます。そして、数字が大きいカードを出したプレイヤーが場に出ている得点カードをゲット。基本ルールはこれだけです。ただし、複数プレイヤーが同じ数字のカードを出したときはバッティングが発生。その数字は無効となり、次に高い数字のカードを出したプレイヤーが得点を得ます。これを15ラウンド繰り返します。

場に出た得点カードのポイントが高いときは大きい数字を出して取りたいのですが、誰かと狙いが被ってしまうとバッティングして出したカードが無効になってしまうかもしれません。それなら、他のプレイヤー同士がバッティングするのを期待して自分は次点を狙ってみるのはどうか? それとも、このラウンドは捨てて別の機会に勝負をかけるか? ルール自体は極限までシンプルですが、プレイヤー同士の駆け引きを存分に味わうことができる傑作です。

ハゲタカのえじき 概要】
メーカー:メビウスゲームズ
プレイ人数:2~6人
対象年齢:7歳~
プレイ時間:~30分

バッティングの進化形! さらにバッティングゲームを楽しみたい人はこちら

『XTING(バッティング)』

ゲーム名がそのものズバリ、“バッティング”。他人と被らないように指定した宝石を奪い合うゲームです。

プレイヤーは宝石が乗ったタイルのうちひとつを同時に指差します。このとき単独でタイルを指定できていれば、宝石を獲得。誰かと被ってしまったらバッティングが発生してそのタイルの宝石は誰も獲得できません。

取った宝石はいったん自分の金庫に移されるのですが、これで安心するのはまだ早い。誰かの金庫にある宝石も、次のラウンド以降に指定すれば獲得できるのです(ただし、このときもバッティングが発生する可能性があります)。金庫に宝石があるプレイヤーは、タイルを指定する際に“バリア”を宣言することでこれを守り、金庫から安全な場所に移して完全に獲得することができるのですが、1手ぶんを使ってしまうことになります。

宝石は全部で4色あり、それぞれ得点が違います。宝石はすべてのタイルの上に毎ターン追加されていくため、誰も取らなかったタイルには多くの宝石が乗ることに。ここに選択の余地が生まれ、バッティングが発生する要因となるのです。ルールが易しく、誰でもすぐに楽しめるパーティゲームとしてオススメです。

XTING(バッティング) 概要】
メーカー:リゴレ
プレイ人数:2~6人
対象年齢:6歳~
プレイ時間:~30分

『プレイアナザーデイ』

5種の動物たちによる食物連鎖の生存競争を扱ったカードゲーム。プレイヤーはクマ、オオカミ、ヤマネコ、フクロウ、ネズミの5枚のカードを受け取り、そのなかから1枚を伏せて出します。動物には強さがあり、クマが最強、次いでオオカミ、ヤマネコ、フクロウと続き、ネズミが最弱となっています。

そして、強い動物のカードを出したプレイヤーから、誰を捕食するかを宣言。ただし、このときバッティングが発生します。同じ動物のカードが2枚以上出ていたら無効となってしまい、次に強い動物の宣言に移るのです。誰とも被らなかったプレイヤーは、捕食の宣言。自分より弱い動物の名をひとつ挙げ、その動物のカードを出していたプレイヤーは即座に脱落となります。

カードは5種類しかないため、誰がどのカードを出したか覚えておくことが重要。さらにバッティングを避けつつ、うまく宣言を的中させていかなければなりません。たった5枚のカードでプレイするゲームですが、短い時間で推測とブラフが飛び交う心理戦が楽しめます。

プレイアナザーデイ 概要】
メーカー:ホビージャパン
プレイ人数:2~5人
対象年齢:8歳~
プレイ時間:~30分

サイコロ振りたい人はこちら! ダイスロールでバッティング

『ベガス(Las Vegas)』

カジノの街ラスベガスを舞台に、賞金を取り合うマジョリティ(勢力争い)のゲームです。

プレイヤーは8つのダイスを振り、出目に対応した1~6の数字のタイルに任意の数を配置。次のラウンドに残りのダイスを振って再び任意の数を配置し、これを全員のダイスがなくなるまで続けます。ラウンドが終了したら、それぞれの数字のタイルごとに配置されたダイスの数が多いプレイヤー1位と2位が、そのタイルの賞金を獲得。全3ラウンド終了時にもっとも大きい額の賞金を稼いだプレイヤーが勝者です。

ここで紹介している以上、もちろんこのゲームにもバッティングの要素があります。タイルに配置されたダイスの数が複数のプレイヤーで同じだった場合、そのダイスは無効。次にダイスが多かったプレイヤーが繰り上がります。

ダイスは6つしかないので、どこに配置するかはよく考えなければなりません。単独でマジョリティが取れるタイルに置くもよし、あえて他人のダイスとバッティングさせて誰かの足を引っ張るということもできます。ただし、あくまでもダイスを振って出た目のタイルにしか置けないため、狙った通りに配置できないことも。後手番のプレイヤーのダイス目によって、悲喜こもごもの展開が繰り広げられるのです。戦略と運の要素のバランスが良く、ダイスを振ることも楽しい一作です。

拡張セットを含んだ新版『ベガス:ロイヤル』も発売されています。

ベガス 概要】
メーカー:メビウスゲームズ
プレイ人数:2~5人
対象年齢:8歳~
プレイ時間:30~60分

『12王国の玉座』

玉座を巡る争いを描いたダイスロール&バッティング。まずプレイヤーは12面体ダイスを振り、その後に全員共通の配下のカードを使ってダイスの目を修正して最大の数値にすることを目指します。

配下のカードは一斉に出して効果を反映していくのですが、その能力はさまざま。ダイスの目を増減させたり、一定の値にしたり、「小さい目のほうが強くなる」といったように勝利条件を変えてしまうものもあります。そのうえ、2人以上が同じカードを出していると無効になってしまうのです。さらにバッティングは修正後のダイスの目にも発生。複数プレイヤーの修正後のダイスの目が被っていると無効です。

このバッティングをかいくぐった1位と2位のプレイヤーがポイントを獲得します。なお、得点にもバッティングがあり、ラウンド終了時にポイントが同じだったプレイヤーの得点は無効に。なんとこのゲーム、バッティングの要素が3つもあるのです。

ダイスロールの運要素に加え、配下のカードの使い方と出す順番、3重にもわたるバッティングの発生で予想もしない展開になることもしばしば。短い時間でプレイできますが、存分に読みと駆け引きを楽しむことができるゲームです。

シリーズ作品の『12王国の評議会』『12王国の女王』も発売されています。

12王国の玉座 概要】
メーカー:テンデイズゲームズ
プレイ人数:2~4人
対象年齢:10歳~
プレイ時間:~30分

激アツの読み勝負! バッティングを狙っていく醍醐味を味わいたいなら

『宿命の旅団』

古代文明の遺跡を探索する部隊を率い、他者を出し抜いてポイントを獲得していくゲームです。

プレイヤーは戦士や魔術師、考古学者といったさまざまな能力を持つ9枚の団員のカードからそのラウンドで使用する4枚を選び、1枚ずつ出していきます。このカードの効果によって資源や勝利点を獲得していくのです。

団員のカードは、即時に効果を発揮する表側に加え、より強力な効果を持つ裏向きで出すこともできます。この場合、効果はすぐには発揮されず、次の自分の手番が回ってくるまでに他のプレイヤーが同じ団員のカードを出さないことが発動の条件になります。獲得した資源は勝利点に繋がる宝の獲得に使用します。

即時に発動する効果と遅延して発動する効果のふたつを使い分け、うまくバッティングを避けていくことが勝利のカギ。確実に資源を得るか、1ターン待って大きな効果を狙うか。このゲームはバッティングが発生した場合に両者とも無効になるのではなく、先に出した人だけ無効になります。このため、後の手番を確保することと、意図的にバッティングを狙っていくことが重要です。

4枚の団員カードの選抜と、カードを表で出すか裏で出すかの決断がシビア。他人が同じカードを持っていないことを読み切って裏向きのカードが“通った”ときの爽快感はなかなかのものがあります。

宿命の旅団 概要】
メーカー:ホビージャパン
プレイ人数:2~4人
対象年齢:12歳~
プレイ時間:~30分

ドイツ年間ゲーム大賞受賞! 名匠によるバッティングゲームの名作

『貴族の務め』

『カタン』のデザイナーとして知られるクラウス・トイバーの1990年の作品。同年のドイツ年間ゲーム大賞を受賞した名作です。

プレイヤーは、オークションハウスで買い集めた骨董品のカードを組み合わせて城で展示会を開きます。良いコレクションを披露したプレイヤーはゲームボード上のマスに置かれた自分のコマを進めることができ、終了時にもっとも先にコマがあったプレイヤーが勝利となります。

手番では、まずオークションハウスと城のどちらに行くかを決定。オークションハウスを選んだプレイヤーは場に出ている骨董品のカードを手持ちの小切手で購入します。一方、城では骨董品の展示が行われます。骨董品カードの枚数が多いプレイヤー上位2名が盤上のコマを進めます。

このゲームの強烈なスパイスとなる要素が泥棒の存在。城の展示会に手下の泥棒を忍び込ませたプレイヤーは、展示品からひとつ選んで自分のものにできるのです。ただし、泥棒を捕まえる探偵を送り出すことも可能で、泥棒と探偵が同時に出ると泥棒は逮捕されて牢屋送りとなり、探偵を出したプレイヤーは盤上のコマを進められます。

いかに手番を無駄にせず効率よく骨董品を集め、コマを進められるか。オークションハウスと城の両方とも、単独で選択した場合に骨董品の購入や展示が自動的に成功します。このため、行き先の段階でバッティングを避けることができれば大きな成果が得られるのです。

複数の要素がコンパクトにまとめられた、ユーロゲームらしいゲーム。本作は現在入手難ですが、名作ゆえプレイスペースやボードゲームカフェに置いてあることも多いようです(JELLY JELLY CAFE渋谷本店など)。もし見かけることがあったら、ぜひプレイしてみてください。4~5人で遊ぶのがオススメ!

【貴族の務め 概要】
メーカー:F.X. シュミット/メビウスゲームズ(和訳説明書付き輸入品)※現在取り扱い無し
プレイ人数:2~5人
対象年齢:12歳~
プレイ時間:60~90分


いかがだったでしょうか。バッティングを主なメカニクスとしているゲームは、シンプルでライトなものが多いことが特徴です。ルールも易しく、5人もしくは6人までプレイ可能なものもあるので、パーティーゲームにも向いています。

バッティングが発生したり、かいくぐって大きな手を成功させたりした際は、場が沸きあがることでしょう。手軽に遊べて、大いに盛り上がる。みなさんもぜひバッティングのゲームを楽しんでみてください。