【ボードゲームをデザインした巨匠たち】アレックス・ランドルフ

ボードゲームデザイナーの1人に注目して、どんな経歴の人なのか?今までどんなボードゲームを作ってきたのか?その人の横顔に迫る「ボードゲームをデザインした巨匠たち」シリーズの第2弾です。

ちなみに前回はシド・サクソンを取り上げました。気になる方はコチラをどうぞ。

【ボードゲームをデザインした巨匠たち】シド・サクソン

今回はボードゲームに触れるようになって半年も経てば知らず知らずのうちにこの人のゲームを遊ぶことになるアレックス・ランドルフです。定番ゲームと言われる名作が多過ぎのボードゲームデザイナーですからね。遊んだ後に「これもアレックス・ランドルフなの??」なんて経験ありますよね。

 

アレックス・ランドルフの経歴

1922年5月4日ボヘミア(現在のチェコ)生まれ。幼少期をイタリアのベニスで過ごし、その後スイスの学校に通っていたそうです。1938年、16歳の時に家族と共に渡米(アリゾナ州という説とコロラド州という説が…)して、第一次世界大戦の戦禍で公式な国籍がなかった為アメリカで国籍を取得することになります。そしてシカゴ大学に進学して哲学を専攻するも、大学3年の時に従軍で通信部門に入りアフリカへ。伊・英・独・仏の4ヵ国語を話せることもあって秘密諜報員の訓練を受けた事もあるそうです。

戦後は著述家として活躍。1959年にはボストンの広告代理店で働いていて、事務所の壁にポリオミノ(テトリスのブロックのようなもの)を使った自作の2人用対戦パズルゲームを飾っていたそうです。それを見た代理人が販売してみようと提案して、1961年に「パンカイ」という名前でデビュー作が販売されました。ランドルフは作ったゲームを売るという発想がなかったと後に語っています。ちなみに「パンカイ」は絶版ですが「ユニバース」という名前でリメイクされてるみたいですね。それも入手困難ですが…。

1966年、44歳の時には奥さんと一緒に将棋を学ぶ為に日本にやって来ます。当時三段だった田丸昇さんに週2回のペースで将棋を教えてもらっていたとのこと。気が付くと約7年も日本に滞在して有段者になりました。将棋を指す外国人が珍しかったのか昭和44年9月号の「将棋世界」に写真付きで取り上げられてて、職業は「発明家」と紹介されています。それにしても将棋にハマり過ぎでしょ!

1982年には「ザーガランド」でドイツ年間ゲーム大賞を受賞。それだけでも凄いのに1989年には「みんなともだち」で、1997年には「ライネンロス」でキッズゲーム部門にも選ばれているのです。ちなみに受賞してないのも含めるとドイツ年間ゲーム大賞にノミネートされたボードゲームが16タイトルもあるんです!この数字には驚く他ありません。

50代になると幼い頃に育ったベニスに戻り、意欲的にボードゲームを作り続けました。そして、2004年に81歳でこの世を去りました。生涯で100タイトル以上のボードゲームを商品化したそうです。

ボードゲームデザイナーの地位向上にも奮闘した人で、ゲームデザイナー連盟を共同で創設したり、作者の名前をボードゲームの箱に記した第一人者だそうです。今や当たり前になってるパッケージにデザイナー名が記載されているのはランドルフのおかげ!沢山のボードゲームを作っただけでなく「ボードゲームデザイナー」というルールを作った人なのかも知れませんね。

 

アレックス・ランドルフのゲーム

ハゲタカのえじき

◼️2〜6人

◼️20分

◼️8歳〜

◼️1988年作

数字の書かれたカードを全員同時に出して、一番大きい数字を出した人が得点となるハゲタカカードを獲得するカードゲーム。数字ジャンケンとでも言いましょうか。持ってるカードは全員同じで使い切り。単純明快なルールで初心者でもすぐに遊べるのは使い勝手がいいゲームですね。

最も大きい数字を出した人が複数いた場合は、その次に大きい数字を出した人がハゲタカカードを獲得というルールがゲームを盛り上げます。本当にルールが綺麗!バッティングゲームの傑作。

 

チャオチャオ

◼️2〜4人

◼️30分

◼️10歳〜

◼️1997年作

自分しか見えない筒の中でサイコロを振って、自己申告した数だけ進むブラフ系すごろくゲーム。ウソがバレると持ち駒が谷底に落とされ、本当の申告をウソだと間違って指摘した時も谷底に落とされます。6面サイコロのうち2面が❌なので強制的にウソをつかなきゃいけない場面が来るというのが面白いところ。ホントの出目を申告してるのにウソっぽく思えたりして、疑い始めると目線とか顔色とかなんでも怪しく思えてくるんですよね。人の心を利用したよく出来たルール。

 

ツイクスト

◼️2人

◼️30分

◼️10歳〜

◼️1962年作

2人専用のアブストラクトゲーム。等間隔に穴の空いたボード上に、交互に自分の色のペグを1つ刺して、自分のペグが将棋の桂馬飛びの位置になったらブリッジを架ける…の繰り返し。先にボードの端から端まで繋げたら勝ち。超シンプルなのに奥が深いボードゲームです。

1957年、囲碁をヒントに紙とペンだけで遊ぶゲームとして考案されたそうです。「20世紀の囲碁」なんて異名を持つのも納得ですね。ちなみにオリジナル発売から約60年後の2020年に日本語版が発売されました。

 

ベニスコネクション

◼️2人

◼️10分

◼️10歳〜

◼️1988年作

たった16枚のタイルだけで戦う2人専用ボードゲーム。タイルにはベニスの運河が描かれていて、表面が直線・裏面がL字という16枚全く同じ(イラストはちょっとずつ違うけど)構成。交互にこのタイルを1~3枚まで好きに配置して、運河をグルッと一周キレイに一筆書きさせたら勝ち。もしくは相手が運河を広げ過ぎて一筆書き出来ない事を宣言しても勝ち。

短時間でも濃密な頭脳戦が楽しめて、シンプルなのにキレ味抜群のゲーム性で、対戦ゲームなのに2人で協力しながら毎回違った形の運河を完成させるのも愉快なのです。ランドルフが自宅近くの街並みをヒントに作ったんだろうなぁと想いに耽るのはボードゲーマーのロマン。

ちなみにBROADでは「ベニスコネクション」のタイルを綺麗に並べて街並みを再現する記事も書いていますよ。

ベニスコネクションのタイルを正しく繋げる事が出来たらベニスの街並みが完成するのか?

 

他にも「ガイスター」「ドメモ」「ハイパーロボット」「冷たい料理の熱い戦い」「すすめコブタくん」「ビッグショット」「バイソン将棋」「トロイの木馬」「イースター島」などなど……有名タイトルを並べるだけでも枚挙にいとまが無い!シンプルなルールなのに人の思惑が入ってくると考える事が増えるゲームが多いですね。様々な職業に就いて、いろんな人を見てきたからこそ作る事が出来たのかなぁと勝手な分析。

日本に長く住んでいた事もあって日本人デザイナーのボードゲームを遊んでみたいと仰っていたそうです。残念ながらそれは叶わず…。