トランプゲームの『大富豪』のように、手札を出し切った人が勝ちとなるルールはカードゲームのメカニクスとしてトラディショナルなもので、古今東西たくさんのタイトルが出ています。このシステムは日本で近年“ゴーアウト”と呼ばれることもあり、ゲームマーケット2025春で同タイプのゲームが多数出展されました。
『大富豪』自体が多くの人に親しまれてきたポピュラーなゲームですが、これをベースにしたカードゲームはいずれもひねりが効いたアレンジが加えられ、より深化した内容となっています。
今回は、手札出し切りの大富豪系カードゲームを7つほどご紹介しましょう。
名匠によるベーシックな大富豪系カードゲーム
ヴァンパイアクイーン

※写真はSchimidt/アークライト版。
『ニムト』『エルグランデ』などで知られる名デザイナー、ヴォルフガング・クラマーによる大富豪系カードゲーム。
基本ルールは大富豪とほぼ同じで、スタートプレイヤーはカード1枚もしくは同じ数字を複数枚組み合わせて場に出し、続くプレイヤーが同じ枚数で上回る数字のカードを出すことで手札を減らしていきます。その順でもっとも大きな数字のカードを出した人が次のスタートプレイヤー。手札がなくなったプレイヤーがラウンドの勝者で、それ以外の人は残った手札がマイナス点となります。
このゲームには、数字以外の特殊なカードが2種類あります。そのひとつは、切り札もしくは任意の数字として扱うヴァンパイアクイーン。そしてもうひとつが、スタートプレイヤーのみが出せるヴァンパイアスレイヤーで、このカードが場に出たら他のプレイヤーは1枚ずつ手札を出し、もっとも大きな数字のカードを出した人が場のカードをすべて引き取ることに。ヴァンパイアスレイヤーのカードは裏面からでも分かるようになっているため、保持するプレイヤーがどのタイミングで出してくるか予測するのが重要です。
元版は1996年発売の『Das GROSSE und das kleine A(大きいAと小さいa)』で、リメイクの『ヴァンパイアクイーン』はSchimidt社から2016年に発売(アークライトより2017年に日本語版)。韓国のPlayte社から韓国語版が2022年にリリースされ、日本語解説書付きの輸入版がHONU Gamesより販売されています。
ヴァンパイアクイーン
ホヌゲームズさんの韓国語版
カードデザインもさることながら、ルールを読んで「あ、好きなやつ」となったカードゲーム。ヴァンパイアスレイヤーカードが良いアクセントになってますねー。今週末遊ぶのが楽しみ。 pic.twitter.com/cYnWbRtIbb— つますイカ (@waifudeer) January 31, 2023
【ヴァンパイアクイーン 概要】
メーカー:HONU Games/ホヌゲームズ
プレイ人数:3~12人
対象年齢:8歳~
プレイ時間:~30分
ひねりが効いた新スタンダードたち
SCOUT

※写真はワンモアゲーム!版。
このゲームもスタートプレイヤーより強い組み合わせの札を出していき、手札を出し切った人が勝ち。カードは同じ数字もしくは連続した数字なら組み合わせて複数枚を出すことが可能で、枚数が多いほう、同じ枚数なら数字が大きいほうが強くなります。
特徴的なルールは、最初に配られた手札を並べ替えてはいけないということ。カードは上下に数字が書かれており、プレイヤーは最初に手札をそのまま使うか、天地をひっくり返して使うか選択します。そして、カードを出すときも手札のなかで隣り合っている札同士しか組み合わせることができません。
パスのシステムも特色があります。場にカードを出せない、もしくは出さないとき、場のカードのなかから1枚を取り、手札の好きな場所に好きな向きで加えることができます。こうしてパスしたプレイヤーは手札を調整して強くしていくのです。また、プレイヤーはラウンド中に1回だけ2度連続してプレイすることができるため、勝負どころで使うことにより有利に進められます。
シビアな手札のマネジメントと勝負勘が求められる、スリリングなゲーム。同名の元版はワンモアゲーム!よりゲームマーケット2020秋にリリースされ、シンプルながらも斬新なメカニクスが大きな話題を呼びました。オインクゲームズ版は海外向けの新版で、ノンテーマだった元版にフレーバーを加えてアートワークを一新し、2人用ルールを追加したもの。2022年度のドイツ年間ゲーム大賞の最終候補にノミネートされています。
『#scout』
我が家では基本2人プレイなので避けていた作品だが、2人でもプレイ可能にルールが追加されたオインクのscout。
面白すぎてもう何回プレイしたかが分からないw隙間時間にずっとプレイしてる気がする。#ボードゲーム #スカウト pic.twitter.com/1qVXagM3hd— tonjack (@tonjack01206) August 6, 2022
【スカウト(SCOUT)日本語版 概要】
メーカー:オインクゲームズ
プレイ人数:2~5人
対象年齢:9歳~
プレイ時間:~30分
ハリコッツ

ハリコッツとはインゲン豆のこと。このゲームも手札出し切りの大富豪系で、カードを出すときは前のプレイヤーの出した札より大きい数字でなくてはなりませんが、同じ数字を複数枚出す場合はその合計として扱うことができます(つまり、「3」のカードを3枚出せば「9」として使えます)。
また、一部のカードには上下に数字が書かれており、場に出ているカードの数字が15より大きくなると手札が上下逆転して手札も大きい数字で出せるようになるのも面白いところ。そのままでは弱い札でも、上下逆転すれば強くなるのです。
手札を出せなかった場合はパスで、その場合は自分専用の山札から1枚引いて追加。ただし自分の山札は4枚しかなく、山札が尽きた状態でパスすると脱落となってしまいます。
要素を絞ったシンプルなルールながらも、しっかり考えどころがある佳作。デザイナーは豆にこだわりがある(?)矢沢賢太郎氏で、イラストを『CAT IN THE BOX』の井上磨氏が担当しているのも注目ポイントです。
元版はゲームマーケット2024春でHOY GAMESよりリリースされて即完売。同年にForGamesから選択ルールを追加し、5人までプレイ可能となった新版が発売されました。
いろいろ遊ばせてもらったんだけどハリコッツ簡単で面白かったーーー!
欲しいーーーーー!!
めちゃくちゃ綺麗に勝てて全員に嘘だろ!?って言われたのほんと面白かったーw
momiさんが一生懸命ルール確認してくれたけど「7を4枚出しても勝てる。合ってる」ってすごく不服そうにしてたのも良い思い出✨ pic.twitter.com/KEgo7E1foF— 萩乃朋嘩 (@tomokaWmoon) April 30, 2024
【ハリコッツ 新版 概要】
メーカー:ForGames
プレイ人数:3~5人
対象年齢:8歳~
プレイ時間:~30分
ナナトリドリ

1~7の数字が書かれた鳥の手札を組み合わせて出していく出し切り系。『SCOUT』と同じく、このゲームも手札の並び替えが禁止されています。
カードを出すときは、場に出ているカードより大きな数字、もしくは多い枚数で出さなければなりません。カードを出せなかったときは山札もしくは場札から1枚を取って手札の好きな場所に加えます。
カードを出し切った人から抜けていき、最後のひとりになったら負け。2個あるペンギンコマをひとつ失い、ペンギンコマがなくなったプレイヤーが最終的な敗者となります。
元版はBDSよりゲームマーケット2021秋にリリースされた『HACHI TRAIN(ハチトレイン)』。アークライトゲーム賞2022佳作を受賞し、鳥のフレーバーに改めて改題のうえ2023年に発売した新版が本作です。アークライト版はコンポーネントを一新し、パステル調の鮮やかなカードイラストに。かわいいペンギンの木駒も追加され、さらに2人プレイも可能となりました。
ナナトリドリ。SCOUTやシリメツレツの系譜の、手札順入れ替え不可ゴーアウト。今の場より強いカードを出すと、場札すべてを手札の好きな位置に差し込みor捨てます。このジャンルってどうしても拗らせがちだけど、これ超遊びやすくて1つの模範解答感あるな。1人負けを決める造りなのも盛り上がるわね。 pic.twitter.com/98Qw3EeGuV
— ぬん(Be Catchy Games) (@be_catchy) February 12, 2023
【ナナトリドリ 概要】
メーカー:アークライト
プレイ人数:2~6人
対象年齢:6歳~
プレイ時間:~30分
ゴーレム

同じ数字を複数枚組み合わせて出すことが可能なカード出し切り系。このゲームは、手札のほかに開始時に3枚配られるチップがあり、プレイヤーはこのチップもなくさないと勝利になりません。
チップの効果は、カードを出すときに山からチップを引き、ともに出すことで数字をアップさせられること。カードには青と赤の2種があり、チップを併用した際、青は数字を1ずつ増やすことができ、赤は数字を倍々にしていけます。ただし、カードに乗せたチップは手持ちに戻ってきてしまうのです。
パスをすることで、手持ちのチップを2枚返却することも可能。チップを減らす手段はこれしかないので、チップを使って手札を強化できる一方で、手持ちのチップを増やしすぎても勝利が遠のくことに。プレイヤーはどのタイミングでチップを使って勝負をかけるか、どこでチップを減らしていくかのジレンマに悩まされることでしょう。
2人用ルールも用意されており、さらに手持ちのチップをカードに乗せる別ルール“リミットオン”もあります。この場合、カードを出す際に山からチップをもらうことができず、パスをするとチップを1枚獲得。手元にチップが残っていてもカードをなくせば勝利です。プレイ感が大きく変わるので、通常ルールとともにどちらもプレイしてほしいところです。
ゴーレム。
大富豪系で、前の人より強いカードを出して手札を無くしていく。場から数字チップを何枚でも取れ、取るとカードを強化できるものの、そのチップも無くさないと上がれず、パスしないと減らせない。
かなり良い! 無限強化と返済のバランスもヨシ!Amazonhttps://t.co/VuDmpoaRXz pic.twitter.com/62zdcDJXPD
— フクハナ (ペリオン) (@fukuhanameck) September 7, 2025
【ゴーレム 概要】
メーカー:ForGames
プレイ人数:2~6人
対象年齢:8歳~
プレイ時間:20分
ゲームマーケット2025春で話題を呼んだ次世代ゴーアウト
マッチ売りの大富豪

※写真はHEY!のXより引用。
0から9に加え、A~Fまでの全14種類(6と9、3とEが共通)のカードを出し切りでプレイする大富豪系カードゲーム。カードの数字は電卓などで用いられるデジタル表示になっています。
このゲームにはマッチ棒型のトークンが用意されており、カードに乗せることで表示されている数字やアルファベットを変えられます。例えば、0のカードにマッチ棒を1本加えて8にする、といったように、がらりと数字を変えてしまうことができるのです。マッチ棒はパスすることで1本獲得できるので、パスも重要な戦略のひとつ。
カードは同じ数字であれば5枚まで出すことが可能です。5枚同時出しの場合は“革命”が発生し、数字の強弱が逆転するので、大きく流れが変わることになります。
カードとマッチ棒の両方をゼロにしたプレイヤーはアガリ。最後のひとりまで残ったひとが敗者です。カードを使い切った際にマッチ棒が残っていた場合は、1手番ごとにマッチ棒を1本ずつ返していかなければなりません。マッチ棒をうまく使えば大量にカードを出すことが可能になる一方で、使い切れないとそれだけアガリが遅れるため、必要な本数とパスの回数の見極めが重要です。
最大8人までプレイ可能なので、パーティーゲームとしても優秀。マッチ棒の要素が加わるだけで大富豪がこれほど変わるのか、と新鮮な驚きが感じられるタイトルです。
マッチ売りの大富豪
ゴーアウトで出し方はリードの出し方に従う(シングルor同数複数枚)
マッチ棒を使って別の数字(アルファベット)を作って手札を強化可能!
パスをすればマッチ棒をもらえるが、手札を出しきれてもマッチ棒が残っていたらあがれないのでパスのし過ぎに注意
面白いから皆さんもぜひ! pic.twitter.com/PFZ77SXWdv— Eternal_in_Flame (@EternalBrain) July 14, 2025
【マッチ売りの大富豪 概要】
メーカー:HEY!
プレイ人数:2~8人
対象年齢:8歳~
プレイ時間:20分
ラーテル

カワイイけど狂暴な動物たちが登場する大富豪系カードゲーム。カードは-5から+5までの10種類で、スタートプレイヤーは同じ数字のカードを何枚か同時に出すことが可能。続くプレイヤーは同じ枚数でより大きな数字のカードを出していかなければなりません。
このゲームは、全員がパスして場が流れたときの処理に特徴があります。最後にカードを出した人は、出したカードがプラスであれば自分が出したもの以外の好きなカードを数字の枚数ぶんだけ手札に追加。出したカードがマイナスであればその数字のぶんだけ手札を捨てられます。手札がなくなった人はアガリで、最後に残ったひとりが1ダメージ。2ダメージ目を受けると敗戦です。
ルールはこれだけ。大きなプラス数字で勝っても不要なカードが増えてしまうことがありますし、一方で低いカードを持っていてもスタートプレイヤーに手持ちより多い枚数で出されてパスせざるをえないこともあります。出し切りを狙うためには手札のマネジメントが必要で、これがなかなか難しい。非常にシンプルながらも、メカニクスの妙を感じることができるタイトルです。
※『ラーテル』のルール紹介について間違いがありましたので、修正いたしました(2025年9月11日)。
ラーテル
ゲムマ2025春で好評を博した大富豪系ゴーアウト
-5から+5の札があり、自分以外がパスした時自分が出した札の数字により場から札を取ったり、さらに捨て札できたり
最後に手札残った人がダメージああ、これはアイデア
強い札は勝っても手札増えちゃう
でも増やして勝つ戦略必要悩めていい pic.twitter.com/mL8FqeFppb
— きむにぃ@ボドゲと酒と肴と (@kimnii_game) July 21, 2025
【ラーテル 概要】
メーカー:ロクジゾー
プレイ人数:2~6人
対象年齢:7歳~
プレイ時間:15~30分
以上7作品を紹介しました。今回取り上げたタイトル以外でも、シンプルながらも奥深い『エスカレーション』や『アブルクセン』、牌を使った『レキシオ』、『SCOUT』の発展的姉妹作である『Revolve』、林尚志氏デザインの『金魚の商人』、ゲームマーケット2023秋で話題を呼んだ『ゴーアウトガール』などなど、大富豪系のゲームには枚挙にいとまがありません。
流行の兆しが見られたゲームマーケット2025春では、『ラーテル』『マッチ売りの大富豪』のほかにも『群青グラデーション』『TABLETOP CLIMBER(テーブルトップクライマー)』『depot(デポ)』などが注目されていました。
大富豪系のカードゲームは、勝負の機微を存分に感じることができるうえ中毒性が高いことが特長です。1プレイにかかる時間が短く手軽にプレイできるため、ちょっとした空き時間にもプレイできますが、つい熱中して延々と遊んでしまうことも……。口頭で簡単に伝えられるほどルールが易しく、多人数にも対応したタイトルが多いので、パーティーゲームにも向きます。ほとんどが小箱のサイズで持ち運びもラクラク、カバンの隙間に忍ばせて持っていくと重宝する場面も多いでしょう。
皆さんにもぜひお気に入りの大富豪系カードゲームを見つけてほしいと思います。



