【イベント】ラミィキューブ日本選手権2023レポート。全国から集結した猛者たちが激突!決勝戦は劇的決着

日本ラミィキューブ協会は2023年7月16日(日)、ラミィキューブ日本選手権2023を開催した。会場は東京都・四谷スポーツスクエア。出場選手総勢32名が全国から集まり、ラミィキューブ日本一の座をかけて激闘を繰り広げた。同大会のイベントレポートをお届けしよう。

前回のラミィキューブ日本選手権は2018年に開催された。その後はコロナ禍の影響などで中止や延期となり、今回の大会は5年ぶりの開催となった。

イスラエル生まれの『ラミィキューブ』は、数字が書かれた手持ちタイルを組み合わせて場に出し、タイルが無くなったプレイヤーが勝利するゴーアウト系のアナログゲーム。ルールはシンプルだが、閃きと決断の速さが求められ、世界中で長らく愛され続けている傑作だ。古くからあるゲームだけに、プレイしたことがある人も多いだろう。

大会での試合は4人1卓で行われ、1手1分の時間制限がある。大会の進行は以下。

【ラミィキューブ日本選手権2023・試合進行】
(1)
第1R~10R:4人で2連戦×5。2戦ごとに組み合わせを変えて全10戦を行い、上位8名が準決勝進出。
(2)第11R~14R(準決勝):8名が1戦ごとに組み合わせを変えて全4戦を行い、第1Rからの総得点の上位4名が決勝進出。
(3)第15R~16R(決勝):4名が2連戦。最終的に第1Rからの総得点で1~4位の順位が確定。1位のプレイヤーが優勝となる。
※準決勝進出者以外のプレイヤーは別室にて自由な組み合わせで『ラミィキューブ』を楽しむお楽しみ会に任意で参加可能。

 

全国各地から32名の『ラミィキューブ』猛者たちが集結!

11時30分、開会式が始まった。司会進行は日本ラミィキューブ協会会長の桑原正人氏が担当。ルールの確認や参加選手の紹介が行われた。

参加選手は、前回大会優勝者で2018年当時小学2年生だった“なな”さんや、ななさんに代わって世界大会に出場し、イスラエルで行われたラミィキューブ世界選手権第10回大会で優勝した“沼”さんなどの招待選手に加え、全国15カ所で行われた予選会を勝ち抜いて出場権を得た『ラミィキューブ』の猛者たち32名。

これまでの大会は関東圏の選手が多く出場していたそうだが今回は北海道から長崎まで広い範囲から選手が集結。東京・神奈川から12名、他の地域からの参加者が20名で、地方からの参戦者が関東圏の人数を超えたのは初めてとのことだった。

とくに目立っていたのが、関西の兵庫県加古川市から参戦した選手たちだ。加古川市ではボードゲームショップ「駒の時間(こまのとき)」が中心となって『ラミィキューブ』の普及につとめているそうで、前回大会優勝者の“なな”さんを筆頭に、今大会にも同店から選抜された選手が多数出場していた。

開会式が終わると選手が全8卓に分かれて各々の席に着き、12時を回るころいよいよ開戦! 6時間以上に及ぶ激闘が始まった。

それまではにぎやかに談笑していた選手たちも、いざ試合になると全員がガチ勝負モードに。会場内は静まりかえり、タイルを動かすカチャカチャという音と、タイマーのボタンを押したときの「ピッ」という音しか聞こえなくなった。

試合結果と選手全員の順位はその都度Googleのスプレッドシートに記録され、会場内に設置された大型モニタで公開する。選手たちは試合が終わるとモニタの前にやってきて、順位変動に一喜一憂していた。

第4R終了時にいったん昼食の休憩。休憩時間中、別室ではラミィキューブのタイルを使った例題のパズルが設置されており、激戦のあいま、気分転換に選手たちが頭をひねっていた。

14時15分、5回戦から再開。ここから6戦を消化し、10Rまで終了したときは16時近くに。ここで順位発表が行われ、準決勝進出者8名が選出される。9位以下の選手たちは、ここから『ラミィキューブ』を自由に楽しむお楽しみ会に移行。勝者には景品が用意されていた。お楽しみ会は決勝前まで行われ、大いに盛り上がっていた。

16時30分、準決勝が開始。8名が2卓に分かれて対決、組み合わせを変えながら4戦を行い、上位4名が決勝進出となった。なお、決勝進出者4名(“ゆみ”さん、“かな”さん、“たけなお”さん、“いーちゃん”さん)の全員が関西からの遠征組で、これも史上初の出来事だったとのこと。

いよいよ決勝戦! 劇的な幕切れに会場は大盛り上がり

17時45分、お楽しみ会が終了し、大勢のギャラリーが卓を後ろから見守るなか、ついに決勝戦がスタート。

決勝初戦(第15R)は全員の手持ちタイルがなかなか減らず重苦しい展開が続き、残りの山のタイルが10枚を切った。このまま山がなくなり、いわゆる“引きあがり決着”(全員の得点を計算してマイナス点がもっとも低い人が勝者)になるのか……という空気が流れるなか、“たけなお”さんがたくさんあった手持ちのタイルを一手番内に一気に出し切って電撃的な勝利。

見事なプレイに会場内は沸き返る。“たけなお”さんは決勝戦開始時第1位だった“ゆみ”さんに25点差までに迫る。

いよいよ運命の最終戦(第16R)。引き続き動きが鈍い展開となり、プレイヤー4人とも山からタイルを引くばかりでなかなか場にタイルが出てこない。勢いに乗るかと思われた“たけなお”さんもイニシャルメルド(※)ができない苦しい状態が続く。

【※イニシャルメルド】
プレイヤーはまず手持ちのタイルの組み合わせで数字が合計30以上になる「ラン(同じ色の連番3枚以上)」もしくは「グループ(違う色の同数字3~4枚)」を最初に出さないと、その後の手番で手持ちのタイルを出すことができないという『ラミィキューブ』独特のルール。複数のランもしくはグループを出してすべてのタイルの数字の合計が30以上になっても可。これができない場合、自分の手番で山からタイルを1枚引くだけで終わる。

 

しばらくタイルを引き続け、ようやくイニシャルメルドをすませた“たけなお”さんは攻勢開始。次の手番に10枚以上のタイルを一気に出し切った! ……と思いきや、見落としで不完全な組み合わせが存在しており、痛恨のペナルティ。場のタイルを自分の手番の前の状態に戻し、山からタイルを1枚引く。

ミスしたことで気持ちが切れてしまうこともあるが、ここで“たけなお”さんはくじけなかった。一巡して回ってきた次の手番、今度は正しく10枚以上のタイルを出し切る! 劇的な展開に会場内は拍手に包まれ、卓を囲んでいたギャラリーは沸き上がった。

激戦が終わり、表彰式が行われた。優勝した“たけなお”さんをはじめ、第3位までは盾の授与があった。

【“たけなお”さん優勝コメント】(※スタッフとの一問一答)

――最終戦、なかなかイニシャルメルドできませんでしたが、どのような心境でしたか。

たけなおさん:頼むから(必要なタイルが)来てくれと。たくさんのギャラリーの皆さんがうしろで見ていて、「あいつなかなかイニシャルできないな」という視線のプレッシャーを感じながらのプレイでしたね(笑)。

――やっとイニシャルできて、その後に上がりまで持っていきましたが、ペナルティ。そこからリカバリーして、今度こそ上がりとなりました。

たけなおさん:(最後の手は)細かいことはほとんど覚えていないです。普段ならすぐできるような手でも、とにかくギャラリーの皆さんからの圧がすごくて思いつかなくて……。

――メンタリティとしては、あせっていましたか。それとも落ち着いていたのでしょうか。

たけなおさん:(ペナルティをしてから、誰も上がらずに)一周回ってきましたから、とにかく手持ちのタイルを出せるだけ出して失点を減らそうと思いました。1位は無理でも、3位までに入れば盾がもらえますから、そこを狙って。でも、どんどん手持ちのタイルが減っていったので、途中から「もしかしたら上がれるかも?」と思い直しましたね。そんなことを考えながらも、やはり周りからの圧を感じて……とにかく圧がすごかった(笑)。

* * * * *

背後に立つ他の選手やスタッフからのプレッシャーを感じながらのプレイだったと語った“たけなお”さん。会場内も、終始笑いの絶えない勝利者インタビューとなった。


最後に、日本ラミィキューブ協会の桑原会長より、次回のラミィキューブ日本選手権についての発表があった。大会は来年2024年の春以降、できるだけ早い時期に開催したいとのこと。次回大会の優勝者は、現地時間2024年9月6~9日、ポーランドのグダニスク(Gdansk)で行われる第11回ラミィキューブ世界大会(The WRC- Rummikub World Championships)への参加権の授与を予定しているそうだ。

ラミィキューブ公式サイト・第11回ラミィキューブ世界大会https://rummikub.com/wrc10/

日本ラミィキューブ協会会長を直撃! ラミィキューブ世界選手権に向けて普及に尽力

劇的決着の余韻を残したまま、ラミィキューブ日本選手権2023は幕を閉じた。大会終了後、桑原会長に今回の大会を総括してもらった。

――今大会は全国から参加者が集まり、決勝戦をはじめ非常に熱い戦いが展開しました。上位が加古川からの参加者に独占されるなど、『ラミィキューブ』というゲームをプレイする地域が広がり、競技人口が増えてきていることを示した大会でもあったかと思います。

桑原会長:この結果は意外でもあり、うれしいことでもあります。『ラミィキューブ』というゲームは裾野が広く誰でもプレイできるという良さがあるのですが、その一方で競技性が高く、勝つための戦略やテクニックがたくさんあり、これまでの関東のプレイヤーはそれを良く知っていました。ですから私はつい昨日まで「勝ちにこだわったプレイは関東勢に一日の長がある」と思っていたのですが、それはとんでもない勘違いでしたね(笑)。

――加古川の方にお聞きしたところ、子供を中心にゲームを広める運動をしていらっしゃるというお話をお聞きしました。その結果として前回大会の“なな”さんの優勝があり、今大会も“なな”さんを含め加古川から未成年のプレイヤーが何人も参加しています。そして、優勝した“たけなお”さんも加古川の方でした。スタッフの方からは、関西は関東よりも競技人口が多いという声が聞こえていましたが。

桑原会長:実際にそうだと思います。これは関東の僕らの努力不足で、実力のある人を拾い切れていないということですから、もっと積極的に普及活動に取り組んでプレイヤーを増やしていかないと、このまま関西に押されていく一方になるという危機感を抱いていますね。

――2024年の日本選手権でも、熱戦が期待されるところです。さらに同年9月にはポーランドで第11回ラミィキューブ世界選手権の開催が予定されていますね。

桑原会長:まだ詳しいことは決まっていませんが、来年も日本選手権を開催して、その優勝者を世界選手権に送りたいと思っています。私自身、何度も世界大会に行かせてもらって、いい思いもさせてもらっていますから(第1回、第5回世界大会優勝)、今後は普及も兼ねて、協会の皆さんにも協力してもらいながら大会を開催するお手伝いをしていきたいですね。

――日本ラミィキューブ協会として、プレイヤーの人口を増やしていくという取り組みについては、どのような考えをお持ちでしょうか。

桑原会長:今回、全国15カ所のボードゲームのプレイスペースやボードゲームカフェなどで予選大会を開催してもらいました。今まではこのような場所に対してこちらから積極的にアプロ―チすることはなかったのですが、お店からするとこれでお客様を集めることができますし、自分たちも普及する手助けとなりますから、ウィン-ウィンの関係になれると思います。ですから、まずはお店などで開催する予選大会を増やすという活動からしていきたいですね。

他には、この会場(四ツ谷スポーツスクエア)から、10月のスポーツの日に開催されるイベントの一環として出展してほしいという要望がありまして、そのようにいろいろな方面に協力して『ラミィキューブ』の認知度を上げ、裾野を広げていければと思っています。


大成功に終わったラミィキューブ日本選手権2023。桑原会長が触れていたように、今回の大会では、関西勢、特に加古川からやってきた選手たちの躍進が目を引いた。また、決勝の参加者の三分の一ほどは未成年で、中学生以下のプレイヤーも目立っていた。競技層の幅が広がっていくなかで、今後関西勢がますます勝利を重ねていくのか、関東勢の巻き返しはあるのか、はてまた他の地域から強豪が現れるのか。

これからの『ラミィキューブ』日本選手権、そして世界大会の展開にも注目していきたい。

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2023ラミィキューブ日本選手権Twitter:https://twitter.com/Rummikub_japan

※この記事について、公開後に決勝戦の“たけなお”さんのプレイについて一部修正いたしました。