イベント潜入レポート「じゃれ本Night」

2020年2月6日。JELLY JELLY CAFE池袋2号店で「じゃれ本Night」というイベントが開催されました。実はBROADがこのイベントの取材をしていたのです。しかも、他のウェブメディアはいなかったので(TVの取材は入ってたけど…)ウェブ上では独占情報となります。「じゃれ本Night」のレポートが読めるのはBROADだけっ!

 

この「じゃれ本Night」はショートショート作家の田丸雅智さんをゲストに招いて、参加者全員でじゃれ本を遊ぼうじゃないかという企画なのです。

 

じゃれ本ってどんなゲーム?

知らない人のために「じゃれ本」の説明を簡単にしておきますか。

カードやサイコロなどは無く「じゃれ本」と書いてある1冊のノートとペンを使って遊びます。一言で説明するなら、リレー小説ゲームです。

公式サイトにはこんな説明文が掲載されています。

リレー小説形式で、短くて不思議な物語「ショートショート」をみんなで書き上げていく新感覚の “遊び” です。
物語を書くなんて難しそう。他の人に迷惑をかけたらどうしよう…。そんなあなたも、この魔法の「じゃれ本」と、楽しむ気持ちさえあれば大丈夫。もちろん、物語や創作が好きな方も大歓迎です。 できあがった物語の完成度に唸るもよし、あべこべ具合に捧腹絶倒するもよし。 名作、迷作の数々を、ぜひあなたの手で生みだしてください!

みんなでちょっとずつ物語を書いて、ゲームを終えると一冊の本が完成するんです。その出来上がったストーリーを読んで楽しむゲームとなっています。得点も無ければ勝ち負けもありません。強いて言うなら楽しんだ人の勝ち。ゲームと言うより“遊び”って感じかな。

ゲストの田丸雅智さん、daitaiの大山徹さんと島田賢一さん、この3人が共同で作ったゲーム………それがじゃれ本なのです。

 

 

遂にイベント開始!

ゲストの田丸雅智さんと、daitaiの大山徹さん島田賢一さんのあいさつでイベントスタートです。と言ってもかしこまった感じじゃなく、なんとな〜くの始まり。

奥にいるのが島田さん、真ん中は田丸さん、手前は大山さん。

 

参加者は14人くらい。出来れば4人1組で遊んで欲しいということで、4人ずつ着席すると1つのテーブルに空席があるじゃないですか。

人数合わせという事もあり、せっかくなので……と、空席に着席。参加する事になってしまいました。あららら。取材なのに遊んでて大丈夫なのか?

 

4人1組になったところでじゃれ本が1人一冊配られました。そして、田丸さんからルール説明です。

「まずはタイトルを決める事から始めます。なんでもいいのでパッと思い付いた名詞を10コ書いて下さい。【机】でもいいですし【ボードゲーム】でもいいですし」

 

あまりに唐突で戸惑ったけど、適当に10コ書いてみました。

何かを狙ったんじゃなく思い付き。池袋駅で降りてからこの店に着くまでに見たモノとかをサササッと書いたらこん感じに。一万円札って何だ?落ちてたのか?なんで書いたんだ?なんか恥ずかしいな…。

 

「次は、その名詞の中から1つ選んでイメージする言葉を5つ書いてみて下さい。これってこんな感じだよねという形容詞とか。名詞でもいいですよ」

10コの中から適当に「たけのこ」を選択しました。そして、たけのこから思いつく言葉をひねり出さなきゃ。うむむ〜。

たけのこと言えば「おいしい」「元気」「たくさん」「雨」「ラーメン」しかないでしょ!他にある?さらに言葉を書き出せって言われたら頭パンクしてたはず。

 

「最後に、今の5つの言葉とさっきの10コの名詞を組み合わせてタイトルを作ってみましょう。出来るだけありえないモノの方がいいですね。聞いたこともないような。3つ書き出してみましょうか」

意外とこの段階ですでに楽しい。アレでもないコレでもないと組み合わせた結果、

「雨階段」「たくさんの香川県」「おいしいかぜ薬」の3本が出来上がりましたー。これがタイトル候補。さ〜て来週のサザエさんは?って感じですかね。

この中から「おいしいかぜ薬」を題名に選んで、左隣の人にじゃれ本を渡します。

 

当然、自分の手元には右隣の人からじゃれ本が渡されます。タイトルは…

「グランパのしげみ」だと?何これ?意味不明だ…。

 

「このタイトルで50文字程度の短い文章を書いてもらいます。その続きを次の人が書いて、更にその続きは次の人が書いて…と。これを8回繰り返すと1つの話、ショートショートが出来上がるんですね」

 

文字数はピッタリである必要はなくて、細かいルールも無く好き勝手に書いてOK。ただし、

「制限時間は120秒です!」と。時間が決められてるんですよ。

物語を考えて、それを50文字に収めて、漢字を思い出して、書き終えるまでがたったの2分???当然、参加者からは無理でしょと言わんばかりの「え〜!?」という悲鳴が。

 

「ではスタート!!」

 

グランパのしげみの書き出しは…

グランパっておじさんだっけ?その茂みってどういう事?ってか、何を書けばいいのやら?そんなことより、物語を執筆するなんてやったことないんですけど…。

 

「残り60秒でーす」

 

ヤバッ、時間が無い。よく考えたら自分一人で「グランパのしげみ」を完成させる訳じゃなかったな。無責任にスラスラ…と

何かストーリーらしきものを書き上げてみましたよ。これが面白くなるのか……?誰かが何とかしてくれるでしょ。

 

 

次に来たのはハイレグサンシャイン

「グランパのしげみ」を左隣の人へ。すると、自分の手元には別のじゃれ本が回ってきました。タイトルは「ハイレグサンシャイン」…?

 

「右隣の人が書いた文章が1番に書いてあります。それとタイトルをヒントに続きを2番の所に書いて下さい。120秒です。よ〜い、スタート!」

 

右隣の人が書いた文章はコチラ。

1981年8月20日。あの熱い夏のことだった…。ボクは白い砂浜の広がるあの場所でアイツと出会った。それは、本当にホントウに…

意味ありげな日付が書いてあるけど、何かの記念日でもないし。思わせぶりなアイツって誰だよ。それで題名は「ハイレグサンシャイン」って。こりゃあ参ったなぁ〜。制限時間もあるのでテキトーに

アイツって誰?という気持ちをそのまま書いてみました。話は進んでないけど繋がってるでしょ。

 

「では、1番をめくって左隣の人に渡して下さい」

 

そうなんです、このゲームは直前の人が書いた文章だけを読んで続きを書かなきゃいけないんです。だから、この続きを書く左隣の人は1番に書かれた「1981年」とか「白い砂浜の広がるあの場所」とかを読めなくなる訳です。そりゃ滅茶苦茶なストーリーになるよなぁ。

 

 

しげみは茂みじゃなかった

何かを書いたら、右隣の人が書いた文章をめくって、左隣の人に渡す。これを4人でグルグル回して繰り返します。当然、さっきのじゃれ本がまた自分のところに戻ってくる訳です。手元にあるのは一周した「グランパのしげみ」です。

うむむ?そう「しげみ」はアンドロイドだった…!ってなんで??一周したら「しげみ」がアンドロイドの名前になっちゃってるよー!なんて驚いたり、

「おいしいかぜ薬」に、しげみが特別出演してるよ〜なんてスピンオフ作品が出来てることにビックリしたり。話が混ざってきてハチャメチャだ。

 

 

「では8番目書き終わったので、これで物語は終わりまーす。皆さん!出来上がったじゃれ本を読んでみましょう」

出来上がったショートショートを黙読です。ってか、黙って読めないですね。あちらこちらから笑い声が聞こえてました。

 

「ではテーブルごとに代表作を決めて、皆さんの前で読み上げてもらいましょう!」

4つの中から代表作を選ぶことになりました。「こっちもいいよね」「それも話が面白いしー」と何かを競うゲームじゃないのに真剣にベストワンを選出です。結局、我々のテーブルの代表作は私の「おいしいかぜ薬」に決定!

 

取材に来たはずがゲームに参加して、みんなの前でじゃれ本を朗読してるんですけど…。何故こんなことに?結果はそこそこウケたので良しとしましょう。笑いは多少起きてたはず。勝ち負けじゃないですからね、じゃれ本は。

他のテーブルからも代表作が朗読されて大笑いしたり、感心したり。気が付くとイベントが始まって1時間も経っていました。これは時間があっという間に過ぎていくなぁ。それくらい面白いし集中しちゃうんですよ。ホント、よく出来たゲームだ。

 

次はジャンル指定

ちょっと休憩を挟んで、第2回戦です。今回は追加ルールで遊ぶ事になりました。

さっきと同じやり方でタイトルを決めたら、テーマが書いてある紙を1枚めくってジャンルを決めるというルール。これだけで文章の自由度が奪われるんですよ、ストーリーが暴走しないようにみんなが補正してくるというか。さっきよりこっちの方が面白い!

やる事はさっきと同じ流れなので省略するけど、文章を書くのがみんな上達してるんですよ。自分たちのテーブルもそうだし、他のテーブルの代表作を聞いてても明らかに上手くなってる。みんな伸びしろが凄い!やれば出来る子かよ。

 

参加者から「お〜!!」と感嘆の声が上がっていた作品はコチラ。タイトルは「色とりどりのパンダ」です。ジャンルはSF。

 

その島の伝説の生き物をめぐって、世界がもめている。戦争がぼっ発しそうな危機である。

という文章から始まり、パンダの色を変えるために科学者が実験を始めるというストーリー。いろんな飲み物で試したところビールを使ってパンダをゴールドに光り輝かせることに成功という流れが、4人で書いたリレー小説とは思えないほどちゃんとした展開。みんな聞き入ってましたね。しかも最後は「ビールで上手くいったんだから、今度はキリンで実験してみよう」という落語のような見事なオチまでついてました。どのテーブルも完敗って感じ。

 

という訳で、どのテーブルも代表作を2つ選んで朗読したところでイベントは終了。これで2時間ですからね。本当にあっという間。参加者みんな満足そうな笑顔を見せてたし、楽しいイベントだったんじゃないでしょうか。個人的には取材というより普通に遊んじゃってましたよ。詳細なレポートになってないのは楽しんだ証。満足満足!

 

 

作者:田丸雅智インタビュー

なんと田丸さんにお話を伺う事が出来ました。独占インタビューです!

 

 何故じゃれ本を作ろうと思ったんですか?

田丸「元々ボクが作家でショートショートってジャンルをやってるんですけど。誰でも書けますよって講座をやってるんです、それは7年くらい前からやっていて。(daitaiの)大山さんがボードゲームが好きで『掛け合わせやりませんか?』って言ってくれたんです」

Q 2人で作ったんですか?

田丸「大山さんはdaitaiってチームを島田さんとやっていて、今は抜けちゃったけどもう1人いらっしゃって。大山さんの音頭で『何かやろうじゃないか』と。それでクリスマスイブだったと思うんですけど、男4人で集まって。しなびたチキンとポテト、安いワイン飲みながら。大山さんだったかなぁ、誰からともなく『こういうのどうですか?』って今のじゃれ本の原形みたいな話が」

Q 最初っから出来てた?

田丸「そうなんですよ。それで紙を切って4人でやってみたんですよ、酒飲みながら。そしたらメッチャメチャ盛り上がって!もう腹抱えて笑っちゃって。これはイケるんじゃないかって、形にしていったんです」

 完成までの苦労話を聞きたかったのに!無さそうですね。

田丸「そうですね、残念ながら(笑)やっぱり元々ボクが講座をやってたのがデカイと思いますね。途中まではやり方一緒なんで、小学生もお年寄りの人もやっていて年代問わずに1人で物語が出来るって分かってたので。そこにリレー小説の要素が加わって、ま、出来るだろうなと」

 

Q ちなみにボードゲームはやるんですか?

田丸「今はやれてなくて…いや、好きなんですけどね。昔はモノポリーをメチャメチャやりましたし、ベタですけど人生ゲームとか。あと家にすごいあったのは、カードゲームですけどマジック・ザ・ギャザリングとか遊戯王とか」

Q 結構やってたんですね。作家として言葉を使ったゲームを作ろうって自分からは思わなかったんですか?大山さんに言われて受け身って感じに聞こえましたけど。ゲームマーケットとかもあるんだし。

田丸「その視点が無かった…かなぁ。だから大山さんに言われてありがたかったですね、その手があったかと。しかも皆さん作ってるし(ゲームマーケットが)活況だと。だから、やれやれって」

 

 じゃれ本を遊んだ人が講座の方に行ったりとか影響はあったりしますか?

田丸「ありますあります!講座は誰でも書けるってうたってるんですけど、やっぱり興味が無いと講座には来ないじゃないですか。じゃれ本がもっとハードルを下げてくれて、遊びだからっていうのはきっかけとしてありますね」

Q 逆はどうですか?講座に参加してる人がじゃれ本で遊んだりとかは?

田丸「あります!気軽にあべこべでも良いし、むしろじゃれ本はその方が良かったりするんで頭をほぐすじゃないですけど。『そんな事もやってるんですね』と」

 いいリアクションですね!でも…どうですか、数行とは言え文章を書かなきやいけないのか〜って人もいると思うんですよ。みんなプレッシャーないのかなぁと。

田丸「そういう人もいらっしゃるんですけどね、迷惑掛けたらどうしようって。特にじゃれ本やってない人が。やれば分かるじゃないですか、そうじゃないって。だからそこが課題ですね、もったいないなと。知ってもらって、やってもらって。書けなくてもいいんで。イベントで過去にいたんですよ、一言しか書かずに隣に回した人もいれば、イラスト書いた人もいましたから」

 絵?そんなのありでしたっけ?

田丸「隣の人は困惑するんですけど、それを楽しむのがじゃれ本。ストーリーも繋がらないし、朗読の時も読めないから周りは苦笑してましたよね。ボクとしては最高だなと」

 じゃれ本を広めていく先に何か狙いあるんですか?

田丸「講座のハードルを下げてショートショートに親しんでもらいたいです」

 

 聞いちゃっていいんですかね、どれくらい売れてるんですか?

田丸「言ってもいいんですけど、大山さんが把握してるのかな?…大山さん!」

大山「じゃれ本は…500〜600セットですね。イベントの度に100は出ているので」

田丸「1セットで4冊入ってるので、掛ける500冊ですか。それだけの数が」

Q せっかくなので大山さんにも質問を。田丸さんに話を持ち掛けたのはあなたですよね?なんで声掛けたんですか?

大山「ゲームや遊びというのが、勝手に難しそうとか敬遠してるものに対してハードルを下げる効果があるんじゃないかなと思ってまして。田丸さんが講座やってるのは知っていて、文章書くってねぇ…読書感想文とか、敷居が高いじゃないですか。でも私も講座行ったら『これは出来る!』となりまして。そこで、もっと敷居を低くする事出来るんですかねぇと相談されたのが始まりです」

Q 講座をゲームにしようと?

大山「いや、それもあるんですけど…小説家と組むってのは今まで無いだろうと。ゲームデザイナーが1人で考えるのが多い中、難しいかも知れないけど面白くなるんじゃないかなと」

Q ちゃんと狙い通りですよね。

大山「そうですね、10分くらいで原稿用紙1枚書き上げて『アレ?文章書けちゃった』と思ってくれたら万々歳です」

 

 

じゃれ本は4人以上でワイワイ遊べるパーティーゲームとして秀逸です。文章を書くのにおびえてる人に是非やってもらいたいですね。