【おすすめ!定番!!ボードゲーム】『ウイングスパン』は爽快感溢れる中量級エンジンビルドの傑作!

あなたがプレイした種類豊かな鳥カードが、そのままエンジンとなって資源や得点をもたらしてくれる。時にはきれいなコンボが鳥たちによってつくられて、みるみる内に資源や得点が増えていくエンジンが完成することも……!?

そんなエンジンビルド系のゲーム特有の爽快感を、世界中の実在する鳥たちと奏でていくのが本作『ウイングスパン』です。ただ「写真映え」するだけではなく、エンジンビルド系ゲームの奥深さと爽快感を教えてくれる本作の魅力に迫っていきたいと思います。

『ウイングスパン』ってどんなゲーム?

『ウイングスパン』は4ラウンドに渡って、カードとなった実在する世界中の鳥をプレイしたり、その鳥をプレイするために餌や卵やカードの獲得を繰り返したりします。最終的にプレイした鳥や卵の数、さらには鳥カードの下に差し込んだカードやカード上に蓄えた餌の数など、様々な条件を見て勝利点を競う対戦型ゲームです。

▲個人ボードのイラストは、上から「森林」「草原「湿地」に分かれている

このゲームの面白さは、自分がプレイした鳥カードによってそれぞれのアクションの強さが変わってくることにあります。鳥カードは個人ボード上にプレイしていくのですが、この個人ボードがそれぞれの鳥たちの生息地になっています!

個人ボードは「森林」「草原」「湿地」と3つのエリアに分かれています(上の写真参照)。

各エリアについて簡単に説明すると、森林では「餌の獲得」、草原では「産卵」、湿地では「鳥カードの獲得」といったアクションをそれぞれ手番で行うことができます。鳥カードをプレイする際にもこのエリアが重要です。それぞれの鳥カードは左上に示されたエリアにしかプレイできないからです。

また、各エリアで2枚目以降のカードをプレイするには、個人ボード上のカードをプレイする位置の上に示された卵を餌の他に払わねばなりません。

▲各エリアの(左から)2~3枚目のカードをプレイするときは卵ひとつ。4~5枚目のときは卵ふたつを追加コストで支払わなければならない

ちなみに鳥の中には複数のエリアを生息地とするものもいます。これらのカードは指定されたエリアであればどのエリアにもプレイが可能です。

▲フタオビチドリは湿地にも草原にもプレイできる

個人ボード上の該当エリアにアクションコマを置くことで、手番内ではアクションを宣言できます。選べるアクションは以下の4つの内のひとつです。

・必要に応じてコストを支払い、カードに指定されたエリアへ鳥カードをプレイする。
・餌箱から餌の獲得をして、森林エリアの起動時能力を右から発動させる。
・プレイ済みの鳥カード上に産卵させ、草原エリアの起動時能力を右から発動させる。
・鳥カードを山札か公開札から獲得し、湿地エリアの起動時能力を右から発動させる。

たとえば「森林」にたくさんの鳥カードをプレイした場合、「餌の獲得」アクションが強くなります。同様に「草原」は産卵に、「湿地」は鳥カードの獲得に対応しています。

▲まずは餌箱から餌3個を獲得して……、

▲右側から順番にキューブを乗せて、エリアの鳥すべての起動時能力が発動

さらに「餌の獲得」「卵の獲得」「カードの獲得」のアクションを打った後、それぞれ対応するエリア(例えば「餌の獲得」なら「森林」)にいる起動時能力を持つ鳥たちの能力が全て発動します。

つまり、カードをたくさんプレイしたエリアでアクションを打てば、それだけ強いアクションが打ててたくさんの能力を発動させ、資源や得点がガッポガッポ! この爽快感こそが『ウイングスパン』が愛される理由のひとつでしょう。

ちなみに「ウイングスパン」という言葉は鳥の翼の長さを意味します。鳥の翼長はカード右下に記載されています。第2拡張セット『大洋の翼』ではこの翼長を絡めたギミックも登場していますよ!

▲第2拡張の『大洋の翼』。ゲームに慣れてきたら第1拡張『欧州の翼』と共に購入をオススメ

餌集めも辛くない!

鳥カードをプレイするために必要な餌は五種類あり、主に森林エリアの餌の獲得アクションで餌を獲得していく流れとなります。

森林エリアに鳥カードを1枚もプレイしていない状態だと獲得できる餌はひとつのみですが、1枚以上プレイしていれば餌獲得アクションで獲得できる餌が増えるのに加えて、鳥の起動時能力でも餌を獲得できることがあります。

エンジンビルドというと、序盤はあまりできることがなさそうな印象があるかもしれませんが、『ウイングスパン』に関しては1枚でも鳥カードをプレイしただけでアクションが強くなります。そのため、序盤からそこまで辛い印象がなく、楽しくゲームに入りやすいと思います。

餌の獲得アクションでは、森林エリアにおいてカードが置かれていない一番左のスペースにアクションコマを置き、そこに示された数の餌を餌箱から獲得します。

▲餌箱のダイスと餌チップ。トレイ内の餌を獲得できるが、ダイス目にある餌しか獲得できない

下の写真のような状態だった場合、餌を1個獲得し、手札の鳥カードを1枚捨てることで、もうひとつ餌を餌箱から獲得できます。

餌の獲得をしたら、その後森林エリアにプレイした鳥カードのうち起動時能力を持つカードをすべて右から順に起動します。例えばブユムシクイ(下の写真)だと、虫をひとつ共通在庫から獲得できます。つまり、獲得アクションと合わせて最大3個の餌、獲得が可能です。

▲コストも軽く、序盤プレイするにはうってつけの鳥だ

また、鳥カードの下段には起動時能力をはじめとする効果が書かれていますが、カード左側中央付近にはカード自体の勝利点・巣の形・持てる卵の数も示されています。鳥カードの中にはゲーム終了時の勝利点が増えない鳥もいますが、こうした鳥は多くの場合、プレイするためのコストが低く、優秀な起動時能力を持っていることが多いです。

そのため、とくに序盤は勝利点が少ないカードでも積極的にプレイしていき、次々に起動するエンジンを作っていくといいでしょう。

▲勝利点が0点でもコストが軽く優秀な起動時能力を持ち、さらに卵も4個置けるホシワキアカトウヒチョウ

▲メリケンアジサシは巣の形を参照するとき、全ての巣の代わりになるありがたい鳥だ

鳥カードを獲得してプレイする鳥の選択肢を増やそう!

せっかく餌を獲得したのに、プレイしたい鳥が手札にいなければどうにもなりませんよね。そういうときは、鳥カードの獲得アクションを実行することで、新しい鳥カードを山札もしくは3枚の公開札から獲得することができます。

たとえば湿地に「ミドリツバメ」をプレイしている下の写真のような状況。

湿地で鳥カードを1枚プレイしているため、ここでカード獲得アクションを打てば、まずカードを1枚が獲得できて、さらに卵を追加で払えばもう1枚獲得できます。しかも、プレイ済みのミドリツバメは起動能力を持つため能力が発動します。

▲手札の入れ替えをしつつ差し込みによる得点化までできるミドリツバメ

こうなれば、まずアクションの効果で1~2枚ドローをした後、手札を鳥カードに差し込み1枚ドローとなります。鳥カードの下に差し込んだカードは1枚1点ですから、計2~3枚のカードを引きつつ、不要なカードを得点化することができます。

このように、湿地の鳥は手札の入れ替えや手札を得点化する能力を持つことが多いです。

▲起動時能力によって手札入れ替え、産卵、と多くの得点行動ができる並びだ

そのため、鳥カードの獲得アクションではアクションでのドローで良い鳥を獲得できなかったとしても、起動時能力でそのカードを入れ替えたり得点化したりすることで、無駄を省くことができます。また、手札を増やして選択肢を増やすことは、プレイヤー間のラウンド目的争いにも影響を与えます。

『ウイングスパン』ではラウンド毎に目的が設定されており、それらの達成状況によって各プレイヤーにボーナス点が入ります。たとえば「森林エリアにいる鳥の数」を表すこのタイルがラウンド目的となっている場合、そのラウンド終了時に該当の鳥の数を各プレイヤーボードで数え、最多のプレイヤーから順にボードに示されたボーナス点が得られます。

▲ラウンド目標は該当順位にアクションキューブを置くことで、忘れないように記録しておく

▲1ラウンド目はこの場合、森林エリアにプレイした鳥数を競う。同数なら同順位だ

各ラウンド終了時にこの目的を計算し、該当する順位に自分のアクションコマをひとつ置きます。資源を焼くというような直接攻撃がほぼない本作において、このラウンド目的の取り合いで他プレイヤーを出し抜けるかどうかが、勝敗の分かれ目となることも多いでしょう。他にも、プレイした鳥カードに示された巣の形や、カード上の卵の数等がラウンド目的になることもあります。

▲ラウンド目標では巣の形が重要になることも多い

▲巣の形を参照する場合も「鳥の数」と「卵の数」のパターンがあるので注意

終盤はひたすら強い得点行動を打ち続けよう!

4ラウンド目の開始時点ともなれば、それなりの鳥カードがプレイされているはずです。もちろんエリアによってはプレイ時効果など、アクション時に発動しない効果の鳥もプレイされていることでしょう。それらを考えて、どのアクションを打つことが、より多くの得点に繋がるのかを考えましょう。

中でも、産卵は卵がひとつにつき1点となるため、得点行動としては非常に強力です。中盤までに得点系の起動時能力を持つ鳥を複数枚、草原へプレイすることができた場合は、積極的に産卵アクションを打ちましょう。

▲卵の得点だけでなく起動時能力による得点も入れれば1手で10点近く増えることもある

産卵ではプレイした鳥カードに応じて卵を獲得し、鳥カードの上に置きます。産卵する鳥カードはどこのエリアの鳥でも構いませんが、カードに示された上限数を超えておくことはできません。

▲カナダヅルにはこれ以上卵を置けない

ただし、終盤になって鳥カードをプレイすることも無意味ではありません。とくに強力なプレイ時効果を持つ鳥は、今からプレイしても大きな得点をもたらしてくれます。たとえばアメリカシロヅルはそれだけで6点分の価値があるだけでなく、プレイ時にゲーム終了時に得点となるボーナスカードを引かせてくれる優秀な得点源です。

ボーナスカードはゲーム開始時に1枚持っている状態から始まりますが、こうして鳥カードのプレイ時効果で引くこともでき、うまくいけば1枚10点近い得点を出せるボーナスカードも存在します。

▲捕食能力を持つ鳥カードを集めると1枚10点も夢じゃない!

アクションによるコンボで得点を稼ぐもよし。単純に卵の数を稼いで得点を稼ぐもよし。強力なプレイ時効果を持つ鳥をプレイしてさらに鳥カードの素点を底上げするもよし。

ウイングスパン』は終盤になればなるほどやりたいこと・やれることが目白押しになってますます楽しくなってきます。

ですが、ここでひとつ落とし穴が!

本作は4ラウンドであることは冒頭で述べましたが、じつは1ラウンド目には8手番あったのが、各ラウンドに進むごとに一手ずつ減っていくのです。つまり2ラウンド目は7手、3ラウンド目は6手、4ラウンド目は5手しかありません。ラウンド目的でアクションコマを使用するのはそのためです。

つまり、いかに効率的にエンジンを強化し、どこで得点化に移るかという戦略が重要となってきます。

▲例えば餌や手札を整備するラインと得点化するラインを、それぞれ作っておくとプレイしやすい

多彩な鳥たちが主役、攻撃要素がない、失点要素もない……と一見「ほんわかした」雰囲気のゲームですが、こうしたシビアさは戦略系ゲームの醍醐味のひとつ。ただ「優しい」だけでないゲームの奥深さを、終盤以降は味わえるでしょう。

エンジンビルド系ゲームの名作なので、とにかく遊んでみて!

いや~、とにかく満足感が高い! 最初にこのゲームを遊んだら、そんな感想を抱くこと間違いなしでしょう! 自分で一からエンジンとなる鳥たちの箱庭を完成させていく爽快感。多彩な効果を持つ膨大な鳥カードたち。ただ無限に拡大していく訳ではなく、きっちり戦略を持って得点化を狙わなければ勝てないゲームの収束性。

これらすべての要素が絶妙に解け合って「遊びやすい名作」となっています。

▲最終盤面ともなると、鳥カードや卵でいっぱいになって色鮮やかだ!

中でも、起動時能力のバランス調整が秀逸で、たとえば森林にプレイする鳥の能力は餌関係のものが多く、分かりやすく餌獲得というリソース確保のアクションを強化してくれます。同様に手札を使ったシナジーの効果が多い湿地の鳥や、卵を消費する能力や得点行動につなげやすい能力が多い草原の鳥など、実際の鳥の特徴だけでなく、ゲームのメカニクスにうまく溶け合った鳥の能力が、本作を遊びやすく爽快感が高い作品へと昇華させています。

1回のプレイで1時間以上は覚悟しなければなりませんが、戦略系ボードゲームが好きな方はもちろん、TCGや『ギズモ』等のコンボ系ゲームが好きな人はドはまり間違いなし! ぜひ遊んでほしい作品です。

ウイングスパン
日本語版発売元:アークライト
デザイナー:エリザベス・ハーグレーブ
発売日:発売中(2019年10月17日発売)
価格:7150円(税込)
プレイ人数:1~5人
対象年齢:10歳以上
プレイ時間:40分~70分