残念ながら『プラネピタ』の発売中止が決定したけど、じつはたくさんある「磁石」を使ったボードゲーム9選

2024年7月、アークライトから『プラネピタ』の製作中止の発表がありました。

『プラネピタ』は、SzpiLABがゲームマーケット2022春で発表したボードゲームです。磁石コマを使ったおはじきのような、カーリングのようなアクションゲームになります。同人ゲームながら、ゲーム内容の面白さとコンポーネントの良さで話題になっていました。2022年のアークライトゲーム賞の優秀賞に選ばれて、全国流通する製品化が決定していたのです。

楽しみにしていた人も多いと思いますが、中止が決定しました。BROADではその一件について記事にしていますので、アークライトのコメントなどの詳細はそちらで。

アークライトより製品化が予定されていた『プラネピタ』が発売中止に

簡単に説明すると、日本国内での磁石の取り扱いが厳しくなったのが理由。

厳しくなった背景としては、幼児が磁石を飲んで開腹手術によって磁石を取り出すことになった事故が2017〜2022年の間に11件発生。磁石を飲み込むと複数の磁石同士が消化管壁を挟み込み、消化管壁に穴があくおそれがあるそうです。他にも、水で膨らむボールを子供が誤飲した事故も多発したことから、防止策として「消費生活用製品安全法施行令」というルールを改正する動きがあって、2023年6月19日からマグネットセットと水で膨らむボールの基準が厳しくなりました。

厳密には磁石全てが規制されたのではなく「磁石製娯楽用品」が対象となります。経済産業省の説明によると、「磁石と他の磁石とを引き合わせることにより玩具その他の娯楽用品として使用するもの」が磁石製娯楽用品と呼ばれるそうです。そして磁石製娯楽用品で使われる磁石が、幼児のノドの大きさを定めたシリンダーより大きくて、自然排出される基準の磁束指数が50kG2・mm2未満じゃないと流通出来ないというルールです。

ザックリまとめますが、ちっちゃくて強い磁石の玩具は禁止!

半年間の猶予期間があったので2023年12月までは従来の商品が販売可能でしたが、今は新しいルールに抵触するボードゲームは全て販売禁止となっています。ホビージャパンが扱っていた『侍石』は販売終了、アールエンタープライズが扱っていた『クラスター』は磁石の形と大きさを変更して新ルールに対応した『クラスターデュオ』に変わりました。

面白いボードゲームが消えていくのは残念ですが、これは重大な誤飲事故を防ぐ為なんです。

実は、今現在も磁石を使ったボードゲームはたくさん販売されています。そこで磁石を使った面白いボードゲームを9タイトル紹介します。今後さらに規制が厳しくなるかも知れませんが、2024年8月現在普通に販売されているものだけを選びました。

ベルズ

ベルズ/2〜4人/6歳〜/15分〉

自分の色のベルを磁石でくっつけて取るアクションゲーム。

丸いボード上に4色のベルを置いて自分の色を決めたらゲームスタート。自分の手番では、細長い磁石を持って自分の色のベルをくっつけて取ります。他の色がくっついたら失敗です。これを全員で繰り返して、ベルを10個取った人の勝ちです。

細長い磁石は強力な磁力を持っていますが、かなり大きいので幼児が飲み込む心配はなさそうです。

空飛ぶじゅうたん

空飛ぶじゅうたん/2〜6人/5歳〜/10分〉

宙に浮いたじゅうたんの上にコマを置いて、じゅうたんを落とさないようにするバランスゲーム。

じゅうたんを宙に浮かせたらゲームスタート。自分の手番では、袋の中からコマを1個取り出して、そのコマをじゅうたんの上にのせます。コマが重すぎてじゅうたんを落とした人が負けです。

マグネットパーツと呼ばれる曲がった透明な棒状の先に磁石が付いていて、ひもでボードに繋がっているじゅうたんの上の鉄が磁石に引っ張られて宙に浮いているように見えます。これがこのゲームの魅力の9割を占めますね。コマを少しずつのせて重くなったら落ちるという単純明快なバランスゲームです。

マグネットパーツの中に磁石が入っているので、飲み込む心配はありません。

ホップビアー

ポップビアー/1〜8人/16歳〜〉

木製のビール瓶にビールの王冠を投げてくっつけるアクションゲーム。

全員均等にビールの王冠を配ったらゲームスタート。ピール瓶の先端には強力な磁石が埋め込まれているので、離れた位置からピール瓶の先を目掛けて王冠1個を投げてくっつけます。これを順番に行って、先に王冠がなくなった人の勝ちです。サイコロを振って、出目に従って王冠を投げるルールもあります。

磁石が強力なので、ある程度の場所に王冠を投げれば磁力でくっつくのが面白いゲームです。対象年齢は16歳以上になっていますが、これはドイツでビールを飲める年齢に掛けたシャレのようです。幼い子供でも遊べます。

磁石はかなり強力ですが、木製ピール瓶に埋め込まれているので大人でも飲み込むことは出来ません。

カヤナック

カヤナック/2〜4人/6歳〜/20分〉

氷上でたくさんの魚を釣るのが目的のアクションゲーム。

箱の中に小さな鉄球をいれて、白い紙と氷が描かれたボードでふたをしたらゲームスタート。サイコロ2個を振って、出目に従ってコマを移動したり、氷に穴を開けます。サイコロで魚の目が出たら、釣竿に見立てた棒の先からひもでぶら下げられた磁石を穴の中にいれ、鉄球をくっつけて釣り上げます。鉄球をたくさん集めた人の勝ちです。

1999年のドイツ年間ゲーム大賞でキッズゲーム特別賞(後のキッズゲーム大賞)に選ばれたボードゲームですが、大人同士でも楽しめる釣りゲームです。

磁石は小さめですが、木の棒と糸にくっついているので無理矢理取り外さない限り飲み込む心配はなさそうです。むしろ小さな鉄球を飲み込んでしまうという別の不安がありますかね。

プラネットメーカー

プラネットメーカー/2〜4人/8歳〜/45分〉

条件を満たすように惑星を作るタイル配置ゲーム。

自分の手番では、5枚の地形タイルから1枚選んで自分の12面体コアに貼り付けます。条件を満たす置き方をすれば、生物カードが貰えます。これを全員で12面体コアに12枚の地形タイルを貼り付けるまで繰り返して、得点の高い人の勝ちになります。

地形タイルがマグネットタイルになっていますが、磁力はそんなに強くはなくて幼児が飲み込めるような大きさではないので問題はなさそうです。

スピンデレラ

スピンデレラ/2〜4人/6歳〜/20分〉

クモに捕まらないようにアリ3匹をゴールさせるすごろくゲーム。

ボードが上段と下段の二重構造になっているのがこのゲーム最大の特徴です。1人3個のアリコマをスタート地点に置いたらゲームスタート。自分の手番では、サイコロ3個を振って出目に従ってアリコマを進めます。サイコロを振ってクモが出た場合は、上段のボードにいるクモを動かします。クモにはひもでぶら下がった女王グモが繋がっていて、上段のクモを動かすと女王グモが下段のボードに向かって降りていきます。女王グモには磁石が付いているので、鉄製のアリコマがくっつく事があります。女王グモに捕まったらスタート地点に戻されます。これを全員で繰り返して先に3個ともゴールした人の勝ちです。

2015年のドイツ年間キッズゲーム大賞に選ばれた見た目とギミックが派手なボードゲームです。

磁石はクモ型のコマにくっついているので、飲み込む心配はありません。

魔法のラビリンス

魔法のラビリンス/2〜4人/6歳〜/15分〉

めくられたチップと同じマスを目指すボードゲーム。

箱の中の溝にいくつかの壁を設置してボードを被せ、コマの下の磁石でボードを挟むように球をくっつけたらゲームスタート。チップを1枚めくって、同じ絵柄のマスを目指します。自分の手番では、サイコロを振って出た数だけコマを進めます。進んだ時に、ボードの下にある壁を通過すると球が落ちるので、球が落ちたら角にあるスタート地点に戻ります。チップと同じ絵柄のマスに到着したらチップが貰えます。これを全員で繰り返して、先にチップを5つ集めた人の勝ちです。

球が落ちると「ゴトン!」と鈍い音がして、スタート地点に戻されます。これを繰り返すと、少しずつ見えない壁が見えてくるので迷路を覚えるという変化球のメモリーゲームでもあります。2009年のドイツ年間キッズゲーム大賞に選ばれている傑作。

磁石は大きなコマに埋め込まれているので、飲み込む心配はありません。

クラスク

クラスク/2人/8歳〜/10分〉

相手の穴にボールを入れる対戦型アクションゲーム。

ボード上に細長いストライカーをお互い置いて、ボードの下から磁石でくっつけてストライカーを操作します。ボードの真ん中にビスケットと呼ばれる白いコマを3つ置いたらゲームスタート。先行の人がボールを打ち出し、どちらかの穴にボールが落ちるまで交互に打ち続けます。相手の穴にボールを入れたら1点獲得で、先に6点取ったほうが勝ちです。

ストライカーを動かす磁石が強力ですが、飲み込める大きさではありません。気になるのは3個ある白いビスケットのほうで、誤飲が心配されるほど小さくて中には磁石が入っています。ですが、磁力は強くないのでルール上セーフということでしょうか。

やぎのべッポ

ベッポ/2〜4人/5歳〜/15分〉

やぎのベッポが止まった場所に従って進むアクションすごろくゲーム。

スタート地点に全員のコマを置き、草原にやぎのベッポを置いたらゲームスタート。自分の手番では、ボードの角から鉄球を転がしてやぎのベッポにぶつけます。やぎのベッポが弾かれて飛んで止まった地形と同じ色のマスまでコマを進めます。これを全員で繰り返して、先にゴールした人の勝ちです。

ボード上に磁石が埋め込まれていて、転がした鉄球が勢いよく磁石にくっつきます。鉄球がやぎのベッポにゆっくり当たっただけなのに、やぎのベッポは想像以上の速さで飛んでいきます。このギミックだけで何回も遊びたくなるゲームです。しかも、やぎのベッポにぶつかったコマはスタート地点に戻されるのも盛り上がりポイント。2007年のドイツ年間キッズゲーム大賞に選ばれていて、磁石を利用したボードゲームで一番楽しいと言っても過言じゃないでしょう。2023年にリメイク版が発売されました。

言葉で説明するより見た方が早いボードゲームなので、ベッポが吹っ飛ぶ動画を貼っておきます。

磁石はボードに埋め込まれてるので、飲み込むことはありません。


磁石を使ったボードゲームは、キッズゲーム大賞の受賞率が高いですね。それだけ子供向けのゲームと磁石の相性が良いのでしょう。確かに磁石の力って不思議ですよね。S極とN極はくっついて、同じ極同士は反発することは知ってても、何故そういう現象が起こるのかは説明出来ませんから。ボードゲームを楽しみながら磁石について考えてみましょう。