“デュエル(DUEL)”──カードゲームや格闘ゲームなどで聞くこの言葉の意味は“決闘”。おもに1対1での戦いのことを示します。
2025年2月、“デュエル”の名を冠するボードゲームが2点リリースされました(『クアックサルバー ザ・デュエル』と『アズール:デュエル』)。近年、名作を2人用版としたゲームの発売が続いていますが、そのなかにはタイトルに“デュエル”と付くものがいくつかあります。
今回は、2人用ボードゲームのなかでも名作の“デュエル”版として発売されたものから6つほどご紹介しましょう。
※五十音順に紹介しています。
アズール:デュエル
※画像はホビージャパンのサイトより
進化した得点システムの導入により競技性アップ!
タイル職人による壁の装飾勝負を扱った『アズール』のデュエル版。『アズール』は、タイルを獲得して個人ボード上に配置していくゲームで、2018年のドイツ年間ゲーム大賞とドイツゲーム賞を獲得した傑作です。デザイナーはミヒャエル・キースリング。
シリーズ初、タイルの形が丸型になった本作。デュエル版としての最大の追加要素は、個人ボード右側の装飾スペースが6×6の“ドームエリア”となり、そこに“ドームプレート”と呼ばれる2×2のプレートを置くようになっていること。プレイ中に左のスペースで同じ色のタイルを規定数集めて完成させたものを右側のドームプレートの同じ色のマスに移すと得点が得られます。ドームプレートは個人目標の付加のようなものですが、その縛りによりプレイヤーが集めるタイルの色がある程度定まります。また、タイル獲得時のルールにも変更があり、相手への妨害がしやすくなっています。
得点のルールが複雑になっているため、ややゲーマー向けとなっていますが、元版の『アズール』をプレイしたことがあるなら問題なく理解できるでしょう。華やかなコンポーネントを受け継ぎつつ、バチバチの戦いが楽しめるようになった本作。元版の『アズール』も2人で遊ぶのがベストとされているのですが、さらに2人用に特化した競技性の高いシステムとなっています。
アズールデュエル、ルール確認がてら遊んでみました。
デュエル化ゲームの例に漏れず通常アズールよりもルールはだいぶ追加され、手番の選択肢が増えたことでさらにしっかり考えるゲームになりましたね。
「シンプルさ」は減ったのでそこは趣味が出そう。
私は結構好きですねー。 pic.twitter.com/6FlI11PMKr— ゲームカフェ秋葉原集会所 (@shukaijo) February 23, 2025
【アズール:デュエル 概要】
メーカー:ホビージャパン
プレイ人数:2人
対象年齢:10歳~
プレイ時間:約45分
キングオブトーキョー:デュエル
落日の決闘! 怪獣大戦争を勝ち抜いた強者によるタイマンバトル
トーキョーの街を舞台に、怪獣同士が入り乱れるバトルロイヤルをダイスロールで描いた『キングオブトーキョー』の2人用版。相手の体力をゼロにして打ち倒すか、一定の勝利点を獲得すると決着するのは変わりませんが、勝利点に綱の引き合いの要素が導入され、より1対1の対決に主眼が置かれたシステムになっています。
綱の引き合いとなるのは、街の破壊ポイントと名声のふたつ。一方のプレイヤーが得点を得ると、もうひとりがマイナスとなります。このふたつの要素をともに規定数まで上げるか、どちらかを最大値まで持っていくと即時勝利。相手への攻撃を含めた行動の選択がよりシビアとなり、熾烈な戦いが展開します。
また、もうひとつ大きな追加要素が、モンスター能力の個別設定。怪獣は全6種類が用意されていますが、プレイ中の強化により、さらにこれらの怪獣を自分好みにカスタマイズすることができるのです。
デザイナーはTCG『マジック:ザ・ギャザリング』の作者として知られるリチャード・ガーフィールド。本家『キングオブトーキョー』同様、やや大味な感がありダイス運に左右される部分はありますが、短時間でスッキリ爽快な殴り合いを楽しみたいならもってこいのゲームです。とっつきやすいテーマと楽しいコンポーネントでお子さんと遊ぶのにも最適、ダイスをガンガン振って盛り上がりたいという人にもオススメの一作です。
相方とボ♪
【キングオブトーキョー:デュエル】デュエルとなり、2つの要素の綱引きがメインになりました。プレイ感はそのままに、ゲーム性は結構変わりましたね(*´꒳`*)
本家は泥試合になることもありましたが、本作は短時間で決着がつくのが良き。ダイスをたくさん振れるのは良いゲーム♪ pic.twitter.com/26vNWHeCKZ
— とまけん (@jyfwj966) January 18, 2025
【キングオブトーキョー:デュエル 概要】
メーカー:ホビージャパン
プレイ人数:2人
対象年齢:8歳~
プレイ時間:約20分
キングドミノ・デュエル(日本語説明書)
※画像はテンデイズゲームズのサイトより
紙ペンゲームとして生まれ変わった2人用『キングドミノ』
タイルドラフトと配置によるエリア構築『キングドミノ』を大幅改訂した、2人プレイ専用ロール&ライトの紙ペンゲーム。デザイナーはブルーノ・カタラです。
今作では、タイル選択のかわりに紋章が描かれたダイスを4つ振り、そのなかからふたつを選んで専用のシートに書き入れていきます。このときのダイスの選択は、振ったプレイヤーがまずひとつ選び、次に相手プレイヤーがふたつ選択。残ったダイスを振ったプレイヤーが獲得します。このため、振ったプレイヤーはどのダイスを優先して獲得するかとともに、何が残るか予想することが大事です。同じ紋章を出来るだけ多く繋げていくと得られる得点がアップ。また、領域数に対しての乗算の得点要素となる“高官”を含んだダイスを選択することも重要となります。
さらに、本作の独自要素となるのが“呪文書”の存在。高官が含まれない紋章を書き入れると、シート上の呪文のマスを埋めることができ、これをすべて埋めると強力な特殊アクションが発動可能で、一発逆転を狙う一手となりうるのです。
『キングドミノ』から受け継いだパズル要素と選択の楽しさに加え、ダイスロールのランダム性、呪文による新たな戦略性の追加により、シンプルな紙ペンゲームながらも考えどころが多いタイトルです。
キングドミノ デュエル。2人用のゲーム。2枚目はコンポーネント。支配している都市から得られるポイントが高い人が勝ち。手番が回ってきたらその人がプレイヤーAとなる(ここ重要)3枚目の画像は結果。プレイヤーAの人はこの中でから1つ確保。プレイヤーBが2個確保。残りの1つはプレイヤーA。 pic.twitter.com/N8KEcs6H0r
— ゆっきゅん🍤 (@yuqn) September 30, 2019
【キングドミノ・デュエル 概要】
メーカー:テンデイズゲームズ/Blue Orange Games
プレイ人数:2人
対象年齢:8歳~
プレイ時間:~30分
クアックサルバー ザ・デュエル
患者の取り合いが熱い! 進むか止まるか、スリル抜群のチキンレース
チキンレースと袋の中のチップを強化していくバッグビルドのシステムによって薬を調合し、患者を治療する『クアックサルバー』の2人用版。デザイナーは『ザ・マインド』や『ガンシュンクレバー』で知られるヴォルフガング・ヴァルシュです。
薬袋から薬剤チップを引いて薬ビンボード(個人ボード)に配置し、一定数置くことができれば薬が完成。患者を治療します。ただし白い薬剤チップが溜まってしまうとバースト! そうなる前に適切なタイミングで打ち切らなければなりません。しかし、薬剤チップの数が少ないと効き目が薄い薬になってしまうのです。薬剤チップは全部で9色あり、さまざまな効果を持っているので、チップごとの効果と白いチップの数、個人ボードの状況などを考えてチップを続けて引くか、やめるかの判断をする必要アリ。これがなんとも難しく、誘惑に負けてバーストを繰り返してしまうのです……。
薬を作って診療テント上の患者コマを進め、自分のテントまでたどり着くと治療成功。先に6人の患者を治療するか、7ラウンド終了時により多くの患者を治療した側が勝利となるのですが、作成する薬のなかに患者を自分の側に引き寄せるという効果を持つものがあり、患者の取り合い合戦も勃発します。
進むか止まるかを判断するドキドキ感、リスクをかえりみず薬剤チップを引くときのスリルは本家と同じく抜群。大差がつかないよう工夫されているため、ある程度プレイ経験が違っているプレイヤー同士でも楽しむことができます。
クアックサルバー ザ・デュエルを遊びました。
クアックサルバーのバッグドローの楽しさと理不尽さを残したまま、2人戦ならではの駆け引きがしっかり詰まった良作だと思いました。デュエルでは袋から引いた素材の数字分だけ患者を自分の方へ引き寄せます。… pic.twitter.com/Pl143vk2eN
— ボードゲームカフェ らうんどとりっぷ (@RoundtripGames) February 9, 2025
【クアックサルバー ザ・デュエル 概要】
メーカー:アークライト
プレイ人数:2人
対象年齢:10歳~
プレイ時間:45~60分
ズーロレット:デュエル(日本語説明書)
自分の動物園を充実させよう! 仁義なき動物の奪い合いが勃発
動物タイルをトラックで運び、動物園のスペースに入れていくタイル配置ゲーム『ズーロレット』の2人用版。元版はドイツ年間ゲーム大賞を2007年受賞しています。デザイナーは『王と枢機卿』や『ラッキーナンバー』でも知られるミヒャエル・シャハト。
プレイヤーは動物園の経営者となり、動物を集めていきます。手番には動物カードを引いてトラックに乗せるか、トラックの動物を自分の動物園で引き取るかのどちらかを行います。
本作は、2人専用とするうえで元版からいくつかのルール追加や改訂が行われています。大きく違うのは得点のルール。動物を入れるスペースには3~6までの広さを持つ列があり、先に各スペースの列の上限まで動物を入れたプレイヤーが、その列の得点を獲得します。つまり『バトルライン』のように列ごとのマジョリティ(支配)をふたりで競う形になっているのです。
動物によっては、同種のつがいを作ることで増えるなど、特殊な効果を持つものもいます。また、2人用版の追加ルールとして、コインを支払って相手の動物園のスペースから動物を盗んで自分のものとすることも……。行動の幅が広がったぶん、選択と判断が悩ましく、元版より戦略性が増しています。
なお、本作は日本語版が発売されていません。もし入手を考えているのでしたら、日本語の説明書が付属しているかどうかきちんと確認してから購入したほうがいいでしょう。
ズーロレットデュエル。
ズーロレットというよりはシステム的にはコロレットのゲームエンジンで行うエリアマジョリティ。安定感のある面白さ。富めるものが富むデザインになってるのは不思議。お金の要素が野暮ったいんだけどそこがズーロレットらしいといえばズーロレットらしい。 pic.twitter.com/qQaFx9iunB— 彼葉 (@hiyou_) March 15, 2018
【ズーロレット:デュエル 概要】
メーカー:ABACUSSPIELE
プレイ人数:2人
対象年齢:8歳~
プレイ時間:約20分
指輪物語:デュエル 中つ国の決戦
指輪をめぐる光と闇の対決! ドラフト、チェイス、マジョリティで『指輪物語』の世界を忠実に再現
“中つ国”を舞台とする世界的ファンタジー作品“指輪物語”の世界観をボードゲームに落とし込んだタイトル。基本システムは『世界の七不思議 デュエル』を流用したものですが、簡素化しつつ大きなアレンジが加えられており、ふたつの勢力の駆け引きと激戦、壮大なストーリーのロマンを存分に味わうことができるようになっています。
プレイヤーはフロドら“旅の仲間たち”とナズグル率いる“サウロン”陣営をそれぞれ担当して対決。手番ではドラフトで手札としたカードをプレイして並べるか、地形タイルを獲得しつつ、フロドは滅びの山への到達、ナズグルは指輪の奪取を狙います。また、全種族のアイコンを集めるか、マップ上の7地域を征服しても勝利です。
フロドたちは滅びの山を目指して進み、ナズグルはそれを追う。プレイするたびにドラマチックに展開が変わり、手に汗握る激しい戦いと熾烈なマッチレースが繰り広げられます。
物語の再現度が高いため、原作小説を読んだり映画を見たりしておくとさらに深く没入して楽しむことができるはず。美しいアートワークとコンポーネントも素晴らしく、ボードゲームサイト“BordGameGeek”でも高い評価を得ている傑作2人用ゲームです。
【指輪物語 デュエル】
世界の七不思議 デュエルのリメイク作。
割引きのルールがシンプルになり、遊び易い印象。お互い交互にカードか建物を購入していくだけなのだが、ずっとジリジリ。場に並ぶカード順と、ラウンド毎に余る3枚のカードがあるので、展開が変わる。面白い。 pic.twitter.com/lOh8f0GJPg
— ホットゲームズ 【2025春ゲムマも出展!】 (@hotgames2016) November 24, 2024
【指輪物語:デュエル 中つ国の決戦 概要】
メーカー:ホビージャパン
プレイ人数:2人
対象年齢:10歳~
プレイ時間:30~60分
いかがだったでしょうか。今回ご紹介した“デュエル”のゲームは、2人用に特化しているぶん、元版を2人で遊ぶよりもエキサイティングな展開になるよう工夫されています。普段から2人でゲームを楽しむことが多い人はもちろん、元となったゲームを多人数で何度もプレイしている方にもプレイしてもらいたいと思います。
なお、『宝石の煌き デュエル』および『世界の七不思議 デュエル』『横濱紳商伝 デュエル』『イムホテップ デュエル』は過去の同テーマの記事で取り上げています。ぜひこちらもご覧ください。
■2人用『宝石の煌き デュエル』が2022年秋に発売決定
https://broad.tokyo/news/14623
■『宝石の煌き デュエル』発表記念!名作が2人用にアレンジされた2人専用バージョンのボードゲーム9選
https://broad.tokyo/news/14767