【イベント】『カタン』日本選手権2024決勝大会で今年の日本一が決定! 史上最大・全国1060人超の頂点が決まった!!

株式会社ジーピーは2024年7月28日、新宿プリンスホテル(東京都新宿区)にて『カタン』日本選手権2024決勝大会を開催した。

同大会は今回で第10回を迎える『カタン』の公式大会。優勝者は2025年に開催が予定されているカタン世界選手権に日本代表選手として派遣される。

決勝大会の出場選手は、昨年と同じく6会場(中部・九州・北海道・関東・北陸・関西)の地方大会を勝ち抜いて出場権を得た『カタン』強者たち。地方大会は昨年よりも参加人数を拡大して開催され、特に関東大会は500人超の参加者が来場して国内最大のボードゲームの大会となった。

2024カタン日本選手権大会・関東大会が開催! 6月16日、500人超が都産貿に集結した国内最大のゲーム大会をレポート&主催者インタビュー

決勝大会出場者は、総勢32名。今回は、いずれ劣らぬ猛者たちが、たったひとつのチャンピオンの座をかけて激突した同大会のレポートと、優勝者の声をお届けしよう。

※この記事内では、大会参加者のお名前を実名ではなくプレイヤーネームで表記しています。

32名のカタン猛者が集結! 予選参加者総勢1060名超の頂点の座をつかむのは誰か

決戦の舞台は、昨年と同じく新宿プリンスホテル。同日の東京で日中最高気温36.8℃を記録した酷暑のなか、さらに熱い戦いが始まろうとしていた。

開会式が始まる30分前ぐらいから選手たちが続々と集まり始めた。顔見知りのプレイヤーたちが旧交を温め合う様子は、『カタン』の大会では恒例の風景だ。なお、参加選手は32名中で決勝大会初出場が18名というフレッシュな大会となった。残りの経験者のうち、2~5回出場が10名、6回目が3名、なんと7回目出場という常連も1名いた。

会場となるのは、昨年と同じくB1Fのパーティースペース“ガーネット”。雰囲気がある落ち着いた部屋で、クリムゾンレッドを基調とした室内の色合いは『カタン』のボックスを想起させる。

午前9時50分、いつものようにジーピー代表・米川和秀氏の開会宣言「1・2・3、おはようございます!」で開会式がスタート。ルール説明や選手紹介ののち、大会モットーであるクラウス・トイバーの言葉「“また明日あなたと遊びたい”と言われるようなプレイで遊びましょう」で締め。

今大会も決勝戦の様子がジーピーのYoutube公式チャンネルにて動画配信される。昨年に続き、実況の秋との子氏、解説のハイカン氏が登場。

【GPGAMESJP カタン日本選手権2024決勝卓実況!!】
https://www.youtube.com/watch?v=UFp8J92TWjY

10時30分、いよいよ決戦の火蓋が切られる!

今大会では、初期配置について2種類のタイル配置のパターンが用意されており、試合開始前にランダムに選ばれた選手が封筒に入ったタイル配置パターンのどちらかを選ぶ仕様となっていた。第1回戦のタイル配置は、前回大会優勝者であるうっちー氏が選択。

全卓でセットアップが終了し、午前10時30分ごろ、いよいよ試合開始! 大会は全4回戦で行われ、第3回戦終了時点での順位1位~4位のプレイヤーが決勝卓に進出。この卓の勝者がチャンピオンとなる。なお、今大会では、手番ごとの思考時間の制限が撤廃され、試合中に審判によって行われていた手番の時間の読み上げがなくなった。また、試合時間は最大80分とし、第4回戦の決勝卓に限り時間無制限となっている。

もうひとつのルールの変更として、前回大会で決勝卓にのみ配置されていたバンカー(資源の配布や回収、確認を担当する役)を全卓でひとり選出するということがある。なお、決勝卓のバンカーのみ、プレイヤーではなく審判が担当する。さらに決勝卓は手番決めのルールも違い、世界大会と同じくダイスを振って目が大きかったプレイヤーから好きな手番を選ぶという形になっている。

熱戦が続き、時間はあっという間に過ぎていった。11時30分ごろに「あと20分」のコール。この頃になるとすべての卓で終盤戦となっており、ひりついた空気が会場内に漂う。11時50分になると全卓が終了。得点計算が始まる。今年のカタン日本選手権は地方大会より得点の集計に専用のアプリが使用されており、選手は結果をスマートフォンから入力、自動的に順位が集計されて確認できるようになった。

短い休憩ののち、12時00分より第2回戦開始。なお、プレイヤーの卓の振り分けは第1回戦と第2回戦はランダム、第3回戦と第4回戦はその時点での順位によって卓と対戦相手が決定する。卓の振り分けについても、アプリで確認できるようになっていた。

食事休憩を挟んで第3回戦開始。ここから卓ごとのプレイヤーの振り分けに順位が反映される。第2回戦を終えた段階で、獲得ポイント合計で首位に立ったのは歴戦のプレイヤー・ナガモリ氏。現在2大会連続で決勝卓進出しており、2022年世界大会に出場の経験がある強豪だ。ナガモリ氏は第3回戦も勝利し、ただひとり3連勝で決勝卓進出を決めた!

決勝卓は4人のベテランによるハイレベルな戦いに! 僅差で激戦を制したのは……?

第3回戦が終了、決勝卓に進出する選手4名が決定した。

▲1番手赤・ナガモリ氏 (関東地区3位)

▲2番手青・Cast氏(九州地区2位)

▲3番手黄・どど氏(九州地区3位)

▲4番手白・うなぎ氏(関西地区5位)

ナガモリ氏は3大会連続、Cast氏は2大会連続で決勝卓進出。どど氏を含めた3名が世界大会出場経験者で、うなぎ氏もカタン歴19年の熟練のプレイヤーだ。全員が決勝大会出場4回以上のベテラン4名が激突する卓となった。

15時45分、いよいよ最終戦・第4回戦が開始。マップは鉄の産出が2、3、12と極端に絞られたタイル配置となっており、港の確保など、他の入手手段が用意できるかどうかが大きなカギとなりそうだ。

中盤に入り、盗賊が頻繁に動く荒れた展開に。互いに牽制し合いながらもナガモリ氏、どど氏、うなぎ氏が街道を伸ばしていく。最初に最長交易路を獲得したのは、街道の発展カードを使ったどど氏だった。Cast氏は発展カードを次々と獲得していくがすべて騎士。最大騎士力を得るも、やや出遅れて苦しい展開。

戦いは終盤戦に突入。誰が勝ってもおかしくない状況となり、各プレイヤーの手番では、その一挙手一投足ごとに緊張が走る。一歩間違えば即敗戦に繋がるため、交渉も最大限に警戒しながらギリギリの駆け引きが展開。特に勝敗を左右すると思われた最長交易路をめぐっては、全プレイヤーのあいだで丁々発止の掛け合いと綱の引き合いが繰り広げられた。

最終局面。伏せられたままの発展カードはナガモリ氏が1枚保有していただけで、得点については“見えている”ものがほぼすべてという状況。全員がリーチ状態でありながら、あと少しが足りずに手番が過ぎていく。じりじりとした焦燥感が場を支配し、極限の緊張状態が続いた。そんななか、中盤以降耐えに耐えていたCast氏があと2点の場面から一気に都市と開拓地を作り、ついに10点到達! 熱戦に終止符を打った!

小さくガッツポーズを繰り返すCast氏。以前の大会優勝から実に10年ぶりとなる、会心の勝利となった。

閉会式。今回も4位以上のプレイヤーに賞品を授与。2位うなぎ氏は今年発売予定の『カタン エネルギー版』の引換券、4位どど氏には『ドラゴンキーパー』が贈られた。なお3位ナガモリ氏は『カタン 宇宙開拓者版』を獲得したが、昨年大会準優勝の賞品としてすでに所持していたとのこと……。

1位のCast氏には『3Dカタン』が贈られた。Cast氏は優勝の喜びとともに、来年行われる予定の世界選手権についても言及。自身2度目の参加で、前回出場時(2014年)は世界2位だったため、次は“それより上の結果を残したい”と語った。

最後に決勝卓のメンバーで記念撮影。左からジーピー米川秀治氏、うなぎ氏、Cast氏、ナガモリ氏、どど氏、ジーピー代表の米川和秀氏。

最後は歴戦プレイヤー同士の激突となったカタン日本選手権2024は、Cast氏の10年ぶり2度目の優勝で幕を閉じた。Cast氏と2023年優勝のうっちー氏は、来年ドイツで開催されるカタン世界選手権に出場が決定している。日本が誇る熟練プレイヤーふたりの健闘に期待したい。

カタン’24公式大会 決勝大会 大会結果(ジーピーのサイトへ)
http://www.gp-inc.jp/catan/catan_championship2024/final.html


世界大会出場決定! 24年優勝Cast氏&23年優勝うっちー氏にその抱負を聞く!

大会終了後、Cast氏とうっちー氏のふたりに今大会のことと、世界選手権に臨む意気込みについて話を聞いた。

──Castさんは10年ぶりの優勝になりました。いまのお気持ちをお聞かせください。

Cast氏:2014年の第3回大会に優勝し、その後2017年と2023年の大会でも決勝卓まで残ったのですが、残念ながら勝てませんでした。今年は前の優勝から10年が経って節目になったということもあり、そろそろ勝ちたいという思いが強かった。それが実現できたこと、そして、また世界大会に行けるということで、いまは嬉しい気持ちでいっぱいです。

──昨年ベテランのうっちーさんが優勝し、今年は世界大会経験者のCastさんが勝利しました。決勝大会初参加のプレイヤーが18名もいた一方で、古参の底力というものを強く感じたのですが、決勝の場の雰囲気に対する慣れですとか、経験というものが活きてくることがあるのでしょうか。

Cast氏:実際に勝てる局面を見落とさずに勝ち切れるかどうか、ということは経験によるところもあると思います。予選(地方大会)では勢いで突っ走って勝つ人もいるのですが、決勝大会のプレイヤーはそのあたりを分かっていますから、抜けそうになるとマークが厳しくなってきます。それを乗り越えてどう勝っていくか。そのあたりが決勝大会で問われることで、そこに一定の壁のようなものがあるというのが結果として出ているのかと思いますね。

──今回の決勝卓の最終局面は、誰が勝ってもおかしくないという展開でした。そろそろ誰かがあがるだろう、という場面からCastさんまで手番が回ったのは勝負のあやがあったとも思いますが、ギリギリまで粘って待って、そこで勝ち切るという部分にCastさんの強さを見た思いです。

Cast氏決勝卓では中盤でかなり離された状態になってしまったので、もう少しちゃんと付いていきたかったというのが正直なところです。ナガモリさんとうなぎさんが伸びる状況になり、どどさんと自分が遅れた感じになって厳しかったですね。しかし、羊の港を確保したあたりから潮目が変わって、(不足気味の石が産出する)12の目がトータルで4回出るなどダイス運もついてきました。中盤に遅れたことでみんなからのマークが薄くなり、そこから徐々に流れが向いてきて、最後に一気に勝ち切れたという感じでした。

──昨年のうっちーさんも、苦しい局面でダイス運をつかんで勝利を引き寄せた感がありました。ベテランといえども、少しは運に恵まれる部分がないと難しいでしょうか。

Cast氏うっちー氏そうですね(笑)。

──おふたりは世界大会への出場が決まっています。Castさんは2度目の世界大会出場で、前回は2位ということですが。

Cast氏前回より上の順位を目指します。これまで日本人はもちろん、アジアからの優勝者も出ていませんから、ぜひとも狙っていきたいところです。

──うっちーさんは初めての世界大会となります。

うっちー氏:Castさんとは普段からよく『カタン』をプレイしていますし、日本人代表として、ふたりとも上位を目指して頑張りたいです。

──世界大会に参加したナガモリさんの回想として、英語が話せるかどうかが重要だというお話しがありました。おふたりは、英語のほうはいかがでしょうか。

Cast氏:『カタン』をプレイするうえで必要な英語はある程度分かりますから、それほど難しく考えてはいません。

うっちー氏私はそれほど得意ではないので、これから勉強します。あとはCastさんに教えていただこうかなと(笑)。

──世界大会の日程はまだ詳しく決まっていないそうですが(※2025年春ごろ開催?)、それまでにおふたりで練習したりですとか、準備したりといったことは考えていらっしゃいますか。

うっちー氏そうですね。誰が勝つか今日まで分かりませんでしたが、よく知っているCastさんが優勝してくれましたし、これからふたりで計画をたてていこうと思います。

──最後におふたりにお聞きします。ズバリ、世界大会での目標は。

Cast氏2014年に2位で、それより上の順位を目指すということは、あとは優勝しかありません。

うっちー氏日本人ふたりとも上位に残り、最後の4人に入って決勝卓でCastさんと対戦したいですね。それが目標です。

力強くガッツポーズを決める世界選手権出場選手のうっちー氏(左)、Cast氏(右)。


来年の日本選手権はどうなる? ジーピー米川秀治氏を直撃

第10回となるカタン日本選手権を最大規模で開催したジーピーの米川秀治氏に、今年の大会を振り返ってもらった。

──2024年のカタン日本選手権を総括していただこうと思います。今回の決勝大会で、のべ1000名を超える参加者があった一連の大会を完走し、成功させました。主催として、どのように手応えを感じていらっしゃるでしょうか。

米川氏昨年よりも人数を拡大して開催し、ありがたいことにチケットも完売しました。あくまで主催者としての体感になりますが、昨年より1.5倍ぐらいの盛り上がりがあったと感じています。会場によっては早期にチケットが売り切れたところもありますし、昨年は800人程度の参加者だったところを今年は1000人を超える人数にしてみて、もっと少し増やしていけるのではないかとも思いましたね。

それと、関東大会で同時開催したエンジョイ勢向けのイベント“エンジョイカタン”もありました。今回はいろいろな実験をして、しっかりと手応えを感じた大会になったと思います。

──“エンジョイカタン”は今回は関東大会のみでしたが、他の地区大会での開催はお考えですか。

米川氏会場の規模やスタッフの確保などの問題があって、まだ構想段階としかお答えできませんが、やるとなればまず関西になるかと考えています。競技ではなくシンプルに遊びとしての『カタン』を、知らない誰かとプレイしてみたいという方もいらっしゃいますし、関東大会の“エンジョイカタン”の盛況で、そのような考えを受け入れてくださった人がたくさんいたと感じました。

これは以前にもお話ししたことですが、日本選手権に出場するような人は、『カタン』プレイヤーの全体からすると1%もいないと思っています。私たちとしては、大会に出場するような方以外の人にも、もっと楽しめる場を提供できればと考えています。

──関東大会の参加者は500人を超え、これは世界的に見ても大規模な大会になったかと思います。ジーピーとして、世界クラスの大会の開催はお考えですか。

米川氏日本選手権についてもそうですが、大会の主催は大変な労力が必要です。それでも私たちでできることは何かないかと考えていて、いま話し合っているのはアジア選手権の開催。日本だけでなく東南アジア全体でも『カタン』は盛り上がっていて、プレイヤーの人口もかなり多いので、このエリアでの大会ができないものかと。まだ構想の段階でしかなく、話をしているだけという状態ですが、いつか実現したいことですね。

──日本選手権については、これまでにお話しいただいているように、さらに拡大することをお考えということですが。

米川氏現時点での最終的な目標として、関東大会で1000人集めたいということがあります。それぐらいの潜在的なプレイヤー人口はあると思っています。ただ、選手権大会に出るということはハードルが高いと考えている方が大半とも考えていますから、その規模でやるとなると別のアプローチが必要かもしれません。

──その答えのひとつが“エンジョイカタン”などのさまざまな仕掛けになるわけですね。

米川氏ゲームを通じて新たな人たちと知り合い、繋がりが広がっていく。そういった楽しみがあるということも、ぜひ知っていただきたいですね。9月に予定している女性向けの“レディース大会”の開催もそうですが、さまざまなやり方があるかと思っています。さらに、地方のカタンクラブなどが主催する大会がたくさんあって、例えば東京の“カタン名人戦”ですとか、大阪の“なにわのカタン王決定戦”など。前述のレディース大会も含め、このようないろいろな規模、地域の大会を、もっとうまく日本選手権と結び付けていければとも考えています。

──来年以降の選手権大会について、何か決まっていることはありますか。

米川氏これもすでにお話ししていることですが、各会場の参加人数を増やしていきたいということと、“中国&四国”および“東北”の2エリアの地方大会の追加ですね。6会場の開催でもかなりのパワーを要するので今年は手が回らなかったところがありますけど、それぞれの地方で協力してくださる方々がいらっしゃいますし、来年はそれを踏まえてやっていきたい。現時点で確定しているという話ではないのですが、追加の2会場についてはぜひ開催したいという意志をもって“確定させるためにいろいろと動いている”という状況です。

──最後に、改めてカタンプレイヤー、ボードゲーマーの皆さんにひとことお願いします。

米川氏今回の決勝大会では、32名中18名が初出場で、そのうち8名は大会自体に初参加とのことでした。新しいプレイヤーがどんどん増えています。競技の大会というと気が引けてしまう方もいらっしゃるでしょうが、知らない誰かと新しい形で『カタン』がプレイができる。そう考えていただいて気軽に参加してもらえれば、知っている人とプレイするものとはまた違った『カタン』が楽しめるはずです。

ルールがうろ覚えでもいいし、それこそ『カタン』をやったことがなくてもいい。新しい人との出会いと、新しいゲームの楽しみ方との出会い。そういったものがあると捉えていただければ。日本全国で行われているいろいろな『カタン』会は、1年でのべ1000回を超えると言われており、毎日、日本のどこかで大会が行われているような状況です。まずは各地の『カタン』会に参加してみて、ぜひとも“出会い”を体験し、楽しんでいただければと思っています。


余談であるが、閉会式中にジーピー代表の米川和秀氏が語ったことによると、新作として『カタン日本(カタンジャパン、仮題)』の制作が決定したそうだ。これは5年ぐらい前からドイツのコスモス社と協議を重ねていたもので、日本のテイストを取り入れた新しいカタンになるとのこと。どのようなものになるか、今後の発表を楽しみに待っていよう。

また、『カタン』別バージョンの新作としてゲームマーケット等でサンプルのモックアップが展示されていた『カタン エネルギー版』については、すでに製造が始まっているそうで、年内発売の予定。秋のゲームマーケット前には発表がありそうだ。こちらも期待したい。