【イベント】「これはゲームなのか?展3」レポート。常識にとらわれない“遊び”が集結した不思議な展覧会に潜入! これはゲームなのか、それとも他の何か……? 2月14日まで渋谷で開催中

ボードゲームデザイナーをはじめとするクリエイターの企画展覧会“これはゲームなのか?展3”がShibuya Sakura Stage・404 Not Foundにて開催中(2月11日~14日)。今回は、出展作を実際に体験してきた筆者によるレポートと、主催のニルギリ氏のインタビューをお届けする。

“これはゲームなのか?展”とは

同イベントは国内外で活躍する気鋭のデザイナーが集い、ゲームの枠におさまるか分からないような実験的な作品を出展する場。作品はこの場でしか触れることができないものばかりで、いずれも試遊が可能となっている。

出展作は体裁として一応はゲームの形を取ってはいるが、その内容はアナログであったりデジタルであったり、ルールががっちり決まっていたり、いなかったり、勝敗を決めるものであったり、協力型であったり、そもそもゲーム性があるのかないのかわからないものがあったり……と、さまざま。クリエイターごとに表現方法が違い、受け取る側の感性次第によって伝わるものが変わってくるような、なんとも説明しにくいものだ。実際に会場を訪れた人は、ゲームを遊ぶというよりも不思議な体験をした、という感覚になったのではないだろうか。

会場となった渋谷サクラステージ・404 Not Foundは、JR渋谷駅の新南口改札から出て右手すぐ、エスカレーターを上った4Fにあるイベントスペース。それほど広くない場所に全19点の出展作が並べられていた。入場は無料。開催初日となった2月11日は祭日ということもあってか、大勢の人が訪れて入場制限が行われるほどの大盛況になっていた。

筆者の取材は開催2日目となる12日の平日。開場待ちの列も少なく、開始直後の11時の段階ではある程度自由に会場内を周れたのだが、午後になると一気に参加者が増えて出展作のほとんどすべてに人だかりができていた。

入場時に、出展者と出展作品、解説のキャプションが収められた冊子を受け取る。ここには全作品のタイトルと紹介文が書かれているのだが、多くは概念的な説明にとどまっており、出展作の内容は実際に触れないと分からない。

出展作品は全部で19作。以下にすべての出展を紹介する。作品によってはネタバレの恐れがあり、一部出展については詳細な説明ができなかったり、写真や文字での説明が難しかったりするため、触れた際の感情をすべて伝えることはできないが、少しでもあの場の空気を感じてもらえれば幸いだ。

※紹介順はキャプション冊子での掲載順による。
※XアカウントおよびサイトURLはキャプション冊子に記載があるもののみ紹介している。

#河原にて

出展者:佐々木 隼(オインクゲームズ)
Xアカウント:https://x.com/44gi

石を積み上げていく。ただそれだけ。ルールも何も設定されていない。しかし、無心でただ高く石を積んだり、複雑なバランスで石を立てて積み上げたり……と、皆がそれぞれ自分のなかでの決まりや目的を持って触れていたのが印象的。ときには芸術的な石積みも見られたが、次の人が遊ぶ際にそれが崩されてしまうことに一種のカタルシスを感じた。

撫物(なでもの)

出展者:daitai(大山徹・島田賢一)
https://daitai.tokyo/
https://www.lutecia.design/

テーマは神仏や像を撫でることで力や願いを身体で受け取ろうとする“撫信仰”。展示された犬と猫の像を撫でることで、何かを受け取る……ことができるかどうかは、撫でた人次第。どちらを撫でるか、どこを撫でるか、どう撫でるか。すべては撫でる人に任されている。

リヴァイアサンのゲーム

出展者:朝戸 一聖(TANSAN)
Xアカウント:https://x.com/tansanasa

X上でも話題になっていた出展。台の上にカードが一枚吊るされている。定められたルールはひとつだけ、自分の財布を台の上に置いてしばらくここから離れること。この場において社会一般の“良識”は守られるのか、シンプルながらも恐ろしい社会実験が体験できる。さて、財布はどうなる?

スカイジャンケン

出展者:mor!
Xアカウント:https://x.com/mori_boardgame

相手のライフを攻撃して削る、2人対戦型のゲーム。勝敗判定をジャンケンで行い、ライフやラウンドはすべてボード1枚とマーカーで管理する。三択のジャンケンをさらに高いゲーム性を持つ遊びとして昇華した、今イベントでもっともゲーム寄りといえる出展。パッケージ版も販売されていた。

■店

出展者:明地宙
Xアカウント:https://x.com/SoLunerG

通販に特化した小売店“ダークストア”がテーマ(のはず)。仕切られたブースのなかに入ると、そこには何かがある……? かどうか、そして、そこで何を感じたかは、入った人にしか分からない。

世界から出ないで水をそそぐために

出展者:ニルギリ(するめデイズ)
Xアカウント:https://x.com/NILGlRl

ブースにはQRコードのみが書かれている。しかし、実はその周辺にこの作品の“世界”が広がっており、QRコードを読み込んだプレイヤーはそのなかでひとつのゲームに挑戦することに。視覚とリンクした不思議なゲーム体験を味わえる。

チェルシー・ホテルの芸術家たち

出展者:Atelier Mimir
https://www.ateliermimir.jp/

待ちゆく人々の言葉を頼りに、ペーパークラフトで再現されたホテルの部屋に住む芸術家の人物像を考える。最後にホテルの裏面を見ると、部屋に住む芸術家たちの姿が明かされる。美しく鮮やかなペーパークラフトと、モダンな世界観が秀逸な“浸れる”出展。

じゃんけん

出展者:Xaquinel(椎名 隼也・中森 源)
https://www.xaquinel.com/works/

“手軽な遊び”じゃんけんをテーマにした出展。最初はオーソドックスなじゃんけんに始まり、進めるごとに版を重ね、新たなルールが加わったり、ダイスやチップなどを使用したりして、どんどんルールが変容・進化していく。それはゲーム性の高まりか、それとも単なる複雑化か?

Wobble(ゆらぎ)

出展者:itten(島本 直尚・富岡 克朗)
https://www.itten-games.com/

遺伝子を構成する4つの塩基を組み合わせ、生命を創造する“神の遊び”。スマートフォンでQRコードを読むとアプリが起動。塩基から9つ選択すると、該当する生物が表示される(その組み合わせの種類は4桁に及ぶとのこと)。誕生した生物で勝敗を決めるなど、独自の遊び方で楽しんでいるプレイヤーもいた。

conect light(つなげてピカッチ)

田中 英樹
https://www.tokyo-ic.com/

大量にある電源タップをタコ足配線で接続してステージ構築。次に手持ちの電球をタップに挿していく。電球が点灯すれば成功、点かなければ失敗。タップは内部で断線しているものもあるため、どこが通電しているかは電球を挿すまで分からない。実物の電球とタップを使いつつ、ゲーム性を確保した一作。

作法―伝習―

出展者:IKE
Xアカウント:https://x.com/tenken1031

示された3つの“作法”を実行。そのなかからひとつ「意味がない」と感じたものを排除し、自分が考えた新たな作法と入れ替える。ただし、その際に元の作法が“意味”を持っていた場合はそれを継承しなければならない。作法は次々と入れ替わっていき、最初にあったものとはまるで違うものへと変わっていく……。変質していく作法と、その意味とは?

迷子になるゲーム

出展者:木原 共(Other Rules)
インスタグラム:https://www.instagram.com/tomo_kihara/

大きな話題を呼んだ、攻めに攻めた体験型の遊び。参加者は、車でどこかに連れ去られて放置されてしまう。そして、あえてスマートフォンを封印して街を“漂流”し、普段は見つけることができないような風景を探し出す。開催初日(2月11日)の参加者は抽選で選ばれたが、かなりの人数が応募して高い倍率になったとのこと。2日間以降はひとりで体験できるキットを販売。

生き死に骰子

出展者:米光ゲーム
Xアカウント:https://x.com/yonemitsu

6つの6面体ダイスを振る。ひとつひとつのダイスは、5面が「生」、1面のみ「死」と描かれている。すべての面が死となる確率は2万3千328回に1回。あなたは生き残ることができるか。そもそも死ぬとはどういうことか、そしてその確率とは何か? さあ、生きよう! ダイスが大型で振るだけでも楽しく、また振ったときの音も面白い。ミニ版も販売。

Find the shoes

出展者:Zennyan
https://zennyan.wixsite.com/zennyan

台の上には、額装されアップライトで配置された短いテキストのみ。詩のようにも思えるそれは、ちょっとだけ心に引っかかり、そして後々思い出してしまいそうな一文。ただそれだけなのに深く印象に残る。どう捉えるかは受け取る側に委ねられており、非常に“これはゲームなのか展”らしい作品といえる。

Reading Propaganda

出展者:井上 明人
https://www.critiqueofgames.net/

ヒトラーやムッソリーニなど、近代史上で悪名を轟かせる面々のプロパガンダ(政治的宣伝)のメッセージを見て、その技法を学ぶ。次々と表示される攻撃的な文言に戦慄を覚える。怖いもの見たさで始めてしまうとなかなか離れることができない、魔性の一作。

本展示におけるゲーム製作行為はご遠慮ください

出展者:赤野 工作(模範的工作員)
Xアカウント:https://x.com/KgPravda

無許可のゲーム製作が違法とされたディストピア的世界観のなかで、キーワードのカードを出しながら会話を続けていく。ただしゲーム創作に繋がるような言葉が話中に出てきた瞬間に監視員が現れ、非が認められると告発されて強制終了となってしまう。みんなで協力しながら進めていく会話とロールプレイが楽しい。

記憶喪失の女

出展者:安藤 耀司(なの)
Xアカウント:https://x.com/_andoyoji

大型モニターに映し出された謎の女性と話し、彼女の素性を探っていく対話型のミステリー作品。粗い画像とぼんやりとした会話により、独特の息苦しさと不思議な世界観が構築されている。先人の残した付箋が蓄積される情報となり、あとのプレイヤーほど彼女の実像に迫ることができるため、一種の協力ゲーム感がある。

独房書房

出展者:常春(トキキル)
Xアカウント:https://x.com/tokiqil

“懲役一冊”。参加者は独房に収監され、本を一冊読み切らないと解放されない。独房は公開されており、しかも撮影自由。囚人は衆人環視のなか本を読み続け、最後に看守による読破チェックを受けてこれを突破しなければ継続して収監されることになる。物理的に拘束される恐ろしい出展ながらも、一度に5名が収監されているときもあるなど、人気を集めていた。

記号とゲーム

出展者:ひみつり
Xアカウント:https://x.com/bg_himitsuri

出展者:安藤 耀司(なの)
Xアカウント:https://x.com/_andoyoji

会場隅の超大型モニターに映し出されるイベントのロゴ。その前に設置された台で、本イベントの満足調査が行われている。QRコードを読み込むとアプリ上でアンケートに答えるのだが、ここでもひとひねり。なんと、回答を色で答えるようになっている。さて、あなたがこのイベントで感じたのは何色だった?

イベント主催のニルギリ氏を直撃! “これはゲームなのか展”とは何なのか!?

──まず、“これはゲームなのか展3”の趣旨についてお話しください。

ニルギリ:イベントの趣旨は始めようと思った動機に繋がるのですが、これはいくつか理由あります。私はボードゲームが好きで自分でも作っているのですが、現代アートも趣味としています。“これはゲームなのか展”を最初に開催した2018年当時、現代アート方面のクリエイターさん、アーティストの皆さんがゲームの形式を使った作品を作っているのを見ていたのですが、それらはルールがそのままチェスであったり、ジェンガであったりと、既存の有名なゲームを流用したものが散見されたんです。

アートとゲームの間で生まれてくる作品には大きな可能性があると思っているのですが、そのイメージが既存の有名ゲームのルールの流用というところで固まってしまうのが嫌で、当時かなり焦りを感じていました。これに対する答えとしては、作り手を名乗っている以上は作品でアンサーすべきだと思って、そこで展覧会を始めたというのがもっとも大きな理由となります。

──動機がいくつかあるとのことでしたが。

ニルギリ:もうひとつは、“変わったゲーム”を発表する場を作りたかった、ということですね。アナログゲームの体を取るならボードゲームの業界で出せばいい。例えばゲームマーケットでいい、ということになるのでしょうが、あの場は(評価の基準として)楽しさが求められので、楽しいものでなければ無視されてしまう可能性が高い。ですから、変なゲームがきちんと評価される場があったほうがいいと思ったんです。

それと、ボードゲームと文化というものを考えたとき、そこには批評があるべきという想いもありました。かつてボードゲームを文化にしたいという声があったと記憶していますが、自分のなかで“文化”とは何かと考えたとき、それは批評の存在だと考えたんです。批評によっていろいろなものにきちんとした価値が付けられ、そこで初めて歴史のような文脈が出来上がり、文化になっていく。ですから、批評の対象になりそうな運動をボードゲームでやってみたい。そんな想いがありましたね。

今回で3回目の開催となりますが、動機としてはいまお話ししたものから変わっていません。

──開催回数でいいますと、1回目が2018年、2回目が2019年で、そこから時間が空いての今回ということになります。2回目と3回目のあいだが空いたのはどのような理由でしょうか。

ニルギリ:その間も構想自体はありました。もともとボードゲーム業界のためにもこのような変わった試みがあるべきだと思って始めていますし、それが途中で終わってはならない。点で終わらせず、線にしなければいけない。

自分がやらなかった理由としては、第2回のときに少し無理をして規模を大きくしたところ、イベントとしては大成功だったのですが、金銭面で難しい部分が出てきたということがあります。ですから、会場を借りるのに費用がかかるなら、もう屋外で開催して、作家の皆さん個人個人がばらばらの場所でやってもいい、なんて考えもありましたね。今回SHIBUYA GAMES WEEKさん、会場のShibuya Sakura Stageさんからお話をいただくことができて良かったな、と思っています。

──出展者の皆さんは、どのようにして決めていらっしゃるのでしょうか。

ニルギリ:こちらからお声がけした方もいますし、メンバーから推薦を受けた人もいらっしゃいます。先方から出たいというお話をもらって、プランを出していただくこともありました。最終的には、自分の方で責任を持って参加メンバーを決定しています。

ただ、今回のメンバーについては少し考えを変えていて、それはゲームの可能性を広げたいということに繋がります。私がこのイベントで表現したいのは、ゲームの端の部分。どのような分野も端っこは他の分野に接近すると思っていて、ここに可能性がある。例えば文学との端まで行けば「ゲームの文学」、演劇との端まで行けば「ゲームの演劇」という感じで。

──他の分野との境界があいまいなところまで行くと、ふたつの要素が融合してくる感じなんですね。

ニルギリ:そういった意味では、少しコンセプトが変質しているのかもしれませんね。ですから、“これはゲームなのか展3”ではゲームとアートだけにこだわりませんでした。今回は体験型のイベントの一種として捉えているので、参加メンバー、特に今回からの方にはそのようなつもりでお声がけしています。

──過去には出展作を収録した書籍や、グッズの販売などがありましたが、今回のイベントについて、何かの形で記録や出版をお考えでしょうか。

ニルギリ:記録は考えています。出版は未定ですね。グッズは、急に決まったイベントだったので間に合いませんでした。イベント用に用意したキャプション集などは、もう少し手を加えればじゅうぶん商品になるかとも思うのですが、今のところは考えていません。

──先ほど点ではなく線のイベントにしたいとおっしゃられていましたが、今後の開催についてはどうでしょうか。

ニルギリ:まだ具体的な話はありませんが、今後についても、ある程度の間隔で開催していければ良いかな、と思っています。


“これはゲームなのか?展3”の出展作品はゲームという枠に収まらず、写真や言葉で説明できないようなものが数多くあり、すべてがこれまでに体験したことがないものだった。

同イベントは2月14日まで開催されている(入場無料)。興味がある人は、ぜひ実際に出展作に触れてみてほしい。えもいわれぬ、不思議な感覚を味わえること請け合いだ。