遊びながら英会話が身に付くボードゲームカフェ「DyCE」は日本初の新しいスタイルの店だった

202293日、東京・渋谷に国際交流ボードゲームカフェがオープンしました。店の名前はDyCE(ダイス)」です。

ボードゲームカフェは日本中いろんな所にあって説明不要なくらい定着したスタイルのお店ですが、その上に国際交流と付くと頭にクエスチョンマークが浮かんできます。

ボードゲームがメインなのか、国際交流って何なのか。とにかくお店に行かなきゃ何も始まりません。という訳で、DyCEに行って来ました!

場所はJR渋谷駅から徒歩5分。ライブハウスが立ち並ぶ円山町の入り口に位置する渋谷百軒店付近です。「名曲喫茶ライオン」や「中華麺店喜楽」など超有名な飲食店も多い場所で、70年以上も営業している老舗のカレー店「ムルギー」の真向かいにあるSgビルの2階に「DyCE」はありました。

まずは簡単なお店の情報を。

店名 DyCE Global Board Game Cafe

住所 東京都渋谷区道玄坂2丁目17-3 Sgビル2

営業時間 平日11:00〜19:00、土日祝10:00〜19:00

定休日 不定休

料金 2時間1500円/5時間2000

電話 03-6161-1100

飲食 あり

公式サイト https://www.dyce-boardgamecafe.com/

日本初の国際交流ボードゲームカフェ⁉︎

早速、オーナーのアトキンソン麻里菜さんにお話を伺いました。

――あれ? 結構お店広いんですね。HPとインスタグラムの画像を見るとキュッと狭い感じのこじんまりとしたお店かと思ったので。

麻里菜:ホントですか! 良かったです! 私の写真が下手なだけかも知れません!

――テーブルが3つで、テーブルごとに2人掛けのソファが2つずつ置いてあって。カウンターが8席。あと、奥にある大きいテーブルの方は何人くらい座れるんですか?

麻里菜:あのテーブルの周りは10人くらい座れます。一応、半個室としてカーテンで仕切れるんですけど、まだカーテンはどなたも使ってないですね。

――お店のHPには「国際交流ボードゲームカフェ」とか「ボードゲーム×英会話」って書いてたんですけど、一体どんなお店なんですか?

麻里菜:これは私が調べた限り日本初の試みだと思うんです。コロナ禍が長引いて、私が通っていたお店も閉まってしまったんですね。海外に住んでいたこともあって外国人のお友達が多いんですけど、みんなウィズコロナになった今“どこで遊べばいいの?”って。そういう声を受けてオープンしたお店で、国籍にかかわらず集まっていただけるように開いたカフェなので、メインターゲットとしては外国人や他言語を勉強したい方なんです。

――英会話教室とかじゃないんですね。

麻里菜:そういう教室はやってないんです。バックパッカーで外国を旅してたんで分かるんですけど、喋らないと言葉って忘れるんですよね。大学で英語を専攻してましたけど授業で英語を話す時間は限られています。私の英語もほとんど外国人の友達を作って話したり、飲み屋で話して身につけたものなので、DyCEでいろいろ話しながら外国語に慣れたり身についてくれたらいいな、と。

海外のボードゲームカフェ事情

――いろんな国に行ってるんですか?

麻里菜:今まで15ヶ国 45都市に行ってます。多くの国に行ってるわけではありませんが、日本人があまり行かないような国、カタールとかモロッコとかにも行ってますよ。アメリカの幼稚園で数か月働いたこともありますし、日本でお金を貯めた後にバックパッカーとして外国に行ったら数ヶ月滞在して、日本に戻ってお金を貯めてまた数ヶ月後に海外に行って…みたいな生活を大学生の頃からなので、10年ぐらい前から繰り返してます。数日間だけの海外旅行はあまりした事がなくて、女子1人旅でホテルも取らずにポーンと海外に飛んで、現地で友達見つけて一緒に回る感じですかね。日本国内だと45都道府県行ってるので旅が好きなんですね。

――面白そうな生き方してますね〜。お店の話よりそっちの方が気になります()それで外国人の友達が多いのは分かりましたけど、なんで始めるお店がボードゲームカフェになるんですか?

麻里菜:単純に、日本に帰ってきて外国人の友達とボードゲームカフェに行くと外国語版のボードゲームが全然なくて、え!どうしよう?ってなったのがきっかけです。海外でやっていたボードゲームもなくて、店員さんも英語が喋れる人がいなくて。まあ、当たり前ではあるんですが、友達と出掛けたときに遊べない。それが1つのきっかけでした。海外ってボードゲームカフェが多いんです。今から7年くらい前かな? スペインに3ヶ月くらい滞在してたんですけど、スペイン人は家にボードゲームがあって皆ボードゲームやってるんです。それが当たり前で、お友達の家で遊んで衝撃でしたね。

――スペインでボードゲームに目覚めたんですか!スペインってそんな感じなのか〜、全くイメージが無いですね。ちなみにそのときスペインでは何を遊んだんですか?

麻里菜:アルゼンチンで作られたゲームなんですが『T.E.G.』っていうゲームです。『リスク』みたいな感じのゲーム性で、世界征服を目指すゲームですかね。ゲーム自体全てスペイン語ですが、お店に入荷したので今度遊んでみてください! 説明はさせていただきます!

――へぇ〜、聞いたことないです。あの〜、他の国のボードゲーム事情も知ってるんですか? 個人的に物凄く知りたいです。

麻里菜:スペインより前に訪れた国はボードゲームが目に入ってなかったので分からないですけど、スペイン以降に訪れた国では結構ボードゲームカフェも行っていて。例えばイギリスは6ヶ月くらい住んでて主人の母国なんですけど、イギリスって1年の半分が雨なんですね。なので、みんな外に出ないで家の中でボードゲームやってるんですよ。『スシゴー』とか『マイス&ミスティックス』とか『ハナビ』とか。麻雀もみんな普通にやってましたよ。

――え? イギリス人が麻雀やってるんですか? 初めて聞いた!

麻里菜:箱に漢字じゃなく『MAHJONGG』ってアルファベットで書いてあって。

――そうなんですか〜。あと、お店のインスタグラムではデンマークのボードゲームカフェ店内で撮影した動画をアップしてましたよね。

麻里菜:デンマークはメインの駅にボードゲームカフェが何ヶ所もあって、座席数も100席近いのにいつ行っても満席! しかもお店にテラス席がありましたから。デンマークは英語を話せる人が多い国なので『カタン』はもちろんですけど、いろんなゲームがありましたよ。覚えているのは、『Betrayal at House on the Hill(丘の上の裏切者の館)』とか。簡単に言うと、突然ホラー映画のような館に閉じ込められてしまったプレイヤー達が、最後まで殺されず生き残って館から脱出できるのか?というゲームで。基本協力ゲームなのに、突然のゲームの途中で裏切り者が出てしまい、仲間だった人にも殺されてしまう可能性があるドキドキハラハラ満載のゲームがありましたね。


ボードゲームカフェを始めた理由

――デンマークってそんなに盛り上がってるのか

麻里菜:だから日本に帰って来たとき、ボードゲームカフェあんまりないなぁと思ってたんです。有名なところだとJELLY JELLY CAFEさんくらいじゃないですか?

――まぁ、チェーン展開してる店だとそうですね。

麻里菜:この近くにも渋谷店があるので行きましたし、他のボードゲームカフェにも1人で行ったんですけど、グループのお客さんばかりで1人じゃなかなか遊べなかったんですね。女性1人だと入りづらい空気感もあって。

―― JELLY JELLY CAFEだと相席ナイトっていう1人のお客が集まるイベントもあるんですけど、その日以外だと相席NGの人達も多いのかも知れませんね。

麻里菜:デンマークだと隣のテーブルのお客さんと一緒に遊んだりしてるので、あれ〜?って思って。ここでは海外のボードゲームカフェをイメージしているので、基本相席設定にしています。昨日も別々に入店した知らないお客様同士でボードゲームを一緒に遊んでくれていました。もちろん入店する際に言ってくれれば、そのグループだけで遊べるように他の人が入らないように配慮させていただきます。

――基本的にお店全体が相席OKで、ダメな人は前もって言って下さいという感じなんですね。

麻里菜:そうですね。

――海外のボードゲームカフェみたいなお店をやろうとしている、と。

麻里菜:そうですね! 私が大学生の時に30歳までに自分の会社を作るって目標を立てたんですけど、今29歳で。やるなら今だ!何をしよう!?と考えたときに、英語とボードゲームが脳内で合体して“よしっ!私が外国人も利用出来るボードゲームカフェを作ろう!”と思い、開店させていただきました。日本に住んでいる外国人がボードゲームカフェで遊びたいと思っても、店員さんが日本語以外ダメだったり、説明書も日本語しかなかったり、外国人向けの店が無い今、リラックスした空間で気軽に遊べる場所を提供したいなと。海外に比べてまだまだボードゲームの認知度がそこまでない日本で、英語や外国語と組み合わせればボードゲーム人口も増えるのではないかな、と。ちょっと期待してます!

――ボードゲームカフェに限らず、日本にあるお店は当然お客さんが日本語を話せる前提ですもんね。もちろん日本人も大歓迎なんだけど、外国人向けのボードゲームカフェですかぁ…ありそうで無かったですね。対応してるお店もどこかにあるんでしょうけど。

麻里菜:それをハッキリと前面的に打ち出して営業しているボードゲームカフェは調べた限り無いのかなって。

――9/3に開業して、今日(9/14)が11日目。お客さんの状況はどうですか?外国人は来てます?

麻里菜:いろんな人が来てくれてるんですよ! 私がスペイン語を学びたいと思ってたらスペイン語を話せるお客さんが来たり、ドバイから日本に来てるって人もいましたし、一昨日は韓国人のお客さんが韓国のボードゲームやってましたね。ドイツ人のお客さんもいましたし。あとはお店のプレスリリースを出したんですけどそれが結構広まったみたいで、検索で“英会話”って言葉が引っ掛かって興味持って来てくれた日本の人も多いです。相席で外国語の勉強をしたいって思ってる人、コロナ禍で海外行きたいけど行けないみたいな人には、国内留学をしている感覚で練習しながら遊べると思いますよ。もちろん、私も英語で対応させていただくことも可能ですし! ボードゲームって旅行・植物・世界征服・街の建設など様々な分野のゲームがあるので、学べる単語も幅広くなって言語学習者にとってはスペシャル教材になるので、凄く良い組み合わせなのではないかなと思っています! お客様のスタイルによって言語を変えているので、オール英会話デーも、オール日本語デーもあります! 明日は、先週台湾から来たばかりの留学生の予約が入ってるので、日本語を教えてあげたいですね。

――そんなにいろんな国の人が来てるんですか! オープンから1週間のエピソードとは思えないですね。

60歳近い母と一緒に『テラフォーミング・マーズ』やってます

――オーナーさんは普段からボードゲームやるんですか?

麻里菜:開店に合わせて買ったゲームもありますけど、ここにあるのはお店始める前から個人的に持ってたものがほとんどで。遊び過ぎたのはカードがボロボロだったりしますから()。

――好きなゲームは何ですか?

麻里菜:う〜ん、スペインが好きなので『サグラダ』かなぁ。分かりやすいし、綺麗ですし。絵面的に面白くて初心者にも紹介できる『筋肉猫』もハマってますね。イギリスでハマってた『ライズ・オブ・トライブス』も入荷して、最近またハマり始めました。あとは『テラフォーミング・マーズ』とか。

――店内に置いてあるボードゲームが軽めの物だけじゃなく、プレイ時間が2時間級のボードゲームも多いなぁと思って気になってたんですよ。あの辺の棚に『ツォルキン』『惨劇RoopeR』『光合成』とかがあったので、ガチゲーマーなのかなと思って。

麻里菜:こんな見た目なのでボードゲームとかやらなそうに思われるんですけど、結構重ゲー好きなんですよ。『テラフォ』とか家族巻き込んでやってますから。母親は60歳近いんですけど、コロナ禍で外に一歩も出れなかったときに覚えてくれて、それ以来いろいろとハマってくれて外に出れるようになって。今も「久々にやりたい!」とかって連絡きますからね(笑)。ゲームが長引いたときはボードを写真に撮って中断して、翌日同じように並べて日をまたいで続きやったり。ボードゲームカフェを開店すると決める以前から、家族全員をボドゲファンにしてました(笑)。この前も、元々『人生ゲーム』しか知らなかった弟が、ここに遊びに来てました。

――家庭内で広まってますねぇ。そう言えば気になったのは、お店にあるボードゲームの名前はHPに書いてないですよね? オープンしたばかりで忙しいんでしょうけど、書いておけば“アレがあるなら行ってみよう”って人もいるかも知れませんよ。

麻里菜:ボードゲームはエクセルで管理してるのでお店のHPに出そうかなとも思ったんですけど、楽しみがなくなるなぁと思って。お店に来て“こんなゲームあるのか〜”とかのほうが楽しいと思うんですよね。1ヶ所にボードゲームを固めないで店内の向こうの棚にもそっちの棚にもわざと離して置いてるので、お店にいる時間は子供の頃に戻って探検したりワクワクした気分でいろんなゲームに触れて欲しいなと! “こんなゲームがやりたい”ってリクエストを頂いたら、可能な限り次回来ていただくときまでに入荷しておくようにしてます!

――あと一番気になったのは営業時間が19時までなんですよね。渋谷で19時閉店ってかなり早いなぁと。終電まで余裕ありますよ。

麻里菜:間借り営業をしてて、ここは午後8時からは普通のバーなんです。それで19時までなんです、ホントはもっと遅くまでやりたいですけどね。

――そういうことなんですか。って事は、20時以降はお店に置いてあるボードゲームはどうなるんですか?

麻里菜:片付けて私が持ち帰ります。

――えええっ! 毎日持ち帰って、毎朝飾ってるんですか?

麻里菜:そうなんです。少しは棚に置いて帰りますけど、開店する日は毎日コツコツ飾ってますね(笑)。

――100個以上ありますよ! そりゃあ、店に置いてあるボードゲームのタイトルは出さないほういいですね。日替わりってことにしておきましょう。

店名に込められた想い

――9月中は学生証を提示すれば500円OFFのキャンペーンやってますけど、今後イベントとかは考えているんですか?

麻里菜そうですね、キャンペーンとしては“BROADの記事読みました”と予約していただいた方は、フードオーダーをして頂ければ平日60分500円にいたします! 今回が初取材となりますので、取材を記念して!! 2022年10月いっぱいのキャンペーンになるので、この機会にランチやディナーついでにDyCEがどんな雰囲気か味わっていただけたら嬉しいですね! イベントとしては、言語限定デーをやる予定です。スペイン語限定とか中国語限定みたいな。早速ですが、10月中旬に韓国語イベントを開催します! 韓国の料理やお酒等も出す予定なので、韓国語初心者の方でも来ていただければと。詳細は、HPやインスタで配信予定となりますのでご確認ください。また、10月はハロウィーンイベントもありますので色々と楽しみにしていてください!

――言語限定は面白い! それは他のボードゲームカフェではやれないイベントですね。その言葉を話したい人が集まる、と。

麻里菜あとは『カタン』デーとかボードゲームを限定したり。『テラフォーミング・マーズ』限定とかもやりたいんですけど、重いゲームはイベントというよりはやりたい人を集めてテーブル固定でやってもらうとかになりますかね。

――あと、食事がピザとかナチョスとか結構しっかりしたものを出してるんですね。スペシャルドリンクとかこだわりのケーキもあって。

麻里菜料理やスペシャルドリンクはシーズン等によって替わりますが、ピザは定番メニューとして出す予定です! 一番の新作は、ボードゲームの『枯山水』をモチーフにつくった禅GARDENですかね。波紋風の抹茶ケーキに石を配置して、見た目はThe枯山水。だけど食べれちゃう! めちゃくちゃ映えると思います(笑) 。メニューを考える時は、常に美味しい+映えるメニューを考えているので、家ではなかなか作れない、味わえないものを目でも舌でも楽しんでいただきたいなと思います!

――最後に1つ質問いいですか? あの〜…サイコロのダイスって綴りがDICEじゃなかったでしたっけ? 店名はDyCEになってますよね。意味があるのか、スペル間違いなのか…。

麻里菜残念ながらスペルミスではありません(笑)。DyCEは“英会話/国際交流ができるボードゲームカフェ”をコンセプトとしているので、お店のロゴは地球儀とサイコロ(Dice:ダイス)をイメージして作成しました。サイコロを転がすことで、世界が回っていくことをイメージしてこのロゴになりました。ダイスのスペル、おっしゃる通り正しくはDICEなので正解は“I”なんですけど、私(I)よりも、お客様のあなた(You)の世界を変えていきたいという思いで、この綴りにしました。意味としては、“DyCE will roll your world” 「DyCEであなたの世界を(新たな世界へ)回していきたい」という願いや意味が込められてます。

――なるほど!


国際交流ボードゲームカフェって何なの???と思いながらインタビューを始めたんですが、バックパッカーとして海外のボードゲーム事情を目の当たりにして、重ゲーも好む彼女だからこそオープン出来たお店と言えそうです。日本に住んでいるボードゲーム好きの外国人にとっては遂にオープンしたお店という感じですかね。ボドゲをやりながら外国人と喋りたい人、日本語版じゃないボードゲームを遊びたい人、ここは店として相当面白いっすよ。他では見掛けない珍しいボードゲームもあったし。

そして「BROADを読みました…」と言って電話予約をすれば、利用料金がフードオーダーありで平日60分500円になります。2022年10月中なら受けられるサービスなので、興味のある人はこの機会に食事しつつちょこっと店内を見てみるのもいいかも知れませんね。

渋谷でボードゲームを遊ぶ場所の1つとして覚えといて損はないですよ。