【ボドゲと子供と教育と】『リスのこのみ』で心理戦を学び、戦略ゲームの入り口に立つ

子どもが幼稚園に入り、次第にできることも増えてくると、「そろそろちょっとだけ難しいゲームもやってみようか」となってくるのがボードゲーマーたる親の性(さが)ではないでしょうか。

私も例に漏れずそうではあるのですが、今日はそんな方にオススメとも言える戦略ゲームの入り口に最適な『リスのこのみ』(原題『Squeeerrels』)をご紹介します。

ゲームの概要

このゲームは、1ラウンドが「探索」「仕込み」「獲得」という3つのフェーズから構成されており、人数分のラウンドを終了したとき、最も多くの「木の実」を獲得したプレイヤーの勝利です。

「テン」「木の実」「ハリネズミ」の三種類のカードをよく混ぜ、プレイ人数に応じて4~5の束に分けます。これを「森」と呼びます。

なお、「テン」のいる森では、スタートプレイヤーしか「木の実」を獲得できず、「ハリネズミ」は「木の実」をひとつ隠してしまいます。

まず、「探索」フェーズでは、各プレイヤーがひとつの「森」を選択し、その「森」のすべてのカードを覗き見て、それを記憶し、元に戻します。最後手番のプレイヤーだけは2つの森を覗き見ることができます。

次に、「仕込み」フェーズでは、自分の持つ三種類の「リスカード」を一枚ずつ裏向きで、選択した森の前に並べていきます。

三種類のカードについてですが、「リーダー」のカードは、一度だけ他のリスと場所を変えることができ、「力持ち」のカードは2つの「木の実」を獲得することができ、「足じまん」のカードはハリネズミが隠している「木の実」をひとつ獲得することができます。

最後に、「獲得」フェーズでは、「森」と「リスカード」のすべてを表向きにし、一人ずつ「どの自分のリス」で「どこの木の実を取るか」を選択していきます。

心理戦と場合分けの入り口

まずは、各プレイヤーが「覗いた森に自分のリスカードを置くかどうか」によって、考える内容が変わってきます。

例えば、スタートプレイヤーは自分が覗いた森にカードを置かず、自分が覗いてない森にリスカードを配置したとします。

さて、これはなぜ置かなかったのでしょうか?

というのも、スタートプレイヤーは「テン」がいる森であってもカードを獲得できるため、一見すると、自分が覗いた森を避ける理由がないように思えるからです。素直に考えれば、「ハリネズミ」が多く、木の実カードが少ないのかもしれません。

はたまた、この行為は実はハッタリをかけていて、自分だけは「テン」がいても構わないという特徴を活かして、思い切って見ていない森に飛び込んだのかもしれません。

このように、自分が覗いた森の内容を記憶しておくことはもちろんですが、各プレイヤーがどの森を覗いたか、その結果、そのプレイヤーは自分の覗いた森にリスカードを置いたか、ということを慎重に見極めなければいけません。

もちろん、客観的な判断要素は多くないため、運要素があることは否定できませんが、反対に心理戦や場合分けの導入としては、これくらいの緩さのほうが大人と子供の差も大きくなり過ぎず、いい塩梅で収束しているような気がしています。

自分で考えたことが結果につながることは、何物にも代えがたい経験値として子供たちの中に集積していきます。

反面、「なんとなく」リスカードを配置しても、一応ゲームとしては成り立ってしまうのが少し難点といえば難点です。

初めのうちはラウンドごとに「どういう意図で一番最初のカードをその森に置いたのか」「カードの種類に関して、配置順はどのようにして決めたのか」確認していくのもよいでしょう。いずれにせよ、「自分で考える」ということの入り口となるようにリードして行ければよいと思います。

手順を考えることの入り口

このゲームは、心理戦だけに留まりません。「獲得」フェーズにおいては、「どのリスから自分のもとに戻すか」ということがとても重要になってきます。子供たちは、ついつい二つの木の実を取ることのできる「力持ち」から自分のもとに戻してしまいがちです。しかし、もし、二つの木の実を獲得することが決まっているのなら、そのリスは後回しでも構いません。

それよりも、優先すべきリスがいないかをよくよく検討するべきです。

また、「リーダー」は他の「リス」と入れ替えることがます。この効果がこの「獲得」フェーズでは非常に効果的に作用していきます。

例えば、「リーダー」のいる森に木の実が複数ある場合に「力持ち」と交換して木の実を2個獲得することを目指したり、「ハリネズミ」がいる森においては、「足じまん」と交換して「ハリネズミ」に隠された木の実の獲得を目指すといった具合です。

このゲームでは、思いのほか、一つの森ある木の実は多くありません。基本的には早い者勝ちになるため、他の人がどうのようにリスを自分の元に戻すか、または、戻すと予想されるか、ということを考えながら、自分のリスの戻し方を考える必要があります。

慣れないうちはうまくいかないこともあるでしょうが、大人が行う「リーダー」の使い方を見たり、終了後に「こうすれば、あと一つ多く木の実が取れたよ」などと教えてあげることで、すぐに上手にプレイできるようになると思います。

手順によって獲得できる木の実の数が変化するというのを体感することが大切です。

また、このように「手順」というものを意識しながらプレイしていくことにより、他のゲームはもちろんのこと、日常生活においても「順序」というものを意識できるようになってきます。

「なんとなく」からの脱却ですね(笑)

ゲームを楽しくプレイしていたら、気が付いたら「順序」に対する意識が培われていた、というようなよい循環になっていければ最高ですね。

最後に

心理戦というのは得意不得意が分かれるところではありますが、他のゲームにおいて、ウチのスタッフも含め男性陣が長女にこれでもかと見透かされていたことがありました。

いつの時代も、男の考えていることなぞ、女性からは手に取るようにわかるのかもしれませんね(笑)。恐ろしや恐ろしや……。