【ボドゲと子供と教育と】『ノーリターン』で決断力の大切さを学ぶ

私は、塾講師という職業柄、日頃は生徒たちに「振り返りが大切だよ」と言っているわけですが、今回はこの「振り返り」ができないということ自体がタイトルとなっている『ノーリターン』についてご紹介していきたいと思います。

繰り返しですが、「振り返ることができない」のは、このゲームの世界だけです(笑)。

ゲームの概要

黄、ピンク、白、緑、橙、青の6色で1から11までの数字が書かれたタイルが23枚ずつの合計132枚があります。

これらのタイルをすべて袋に入れて、8枚を取り自分の手札とします。一番最初のみ、不要なタイルがあった場合に任意の個数を袋の中のタイルと交換することができます。

これを時計回りに各プレイヤーが1回ずつ行ったところでゲームスタートです。

フェーズ1

フェーズ1でできることは二つです。

・不要なタイルを4枚まで袋の中のタイルと交換します。ただし、このとき、手札から不要と判断したタイルは裏向きのまま箱の中に戻しゲームから除外します。

手札から1色のみを選択して、自分の前に配列します。このとき、数字は大きい順に並べていきます。さらに、今ある自分の列に追加して並べる場合には、並べてある数字以下の数字しか並べることはできません。また、同じ色に関しては1列しか作ることはできません

配列したら、同じ数だけ袋の中からタイルを引きます。

フェーズ2

「フェーズ2に入ります!」と宣言すると、任意のタイミングでそのプレイヤーはフェーズ2に移行します。

フェーズ1に戻ることはできません。フェーズ2で出来ることも二つですが、交換に関しては、フェーズ1と同様です。

そして得点化です。手札から任意の1色を選びます。最大でこの合計値の分だけ得点化することができます。このとき、自分の列の任意の色を1色選ぶことができます。手札から出す色と一致する必要はありません。列の下(小さい数字)から順次得点化していきます。得点化したタイルは裏返しておきます。

そして、得点化に利用したタイルの枚数と同じだけ袋から手札に補充します。

こうしてゲームを進めていき、袋にタイルがなくなったらゲーム終了です。

得点化できたタイルの合計値から、得点化できなかったタイルの合計値を引いた結果が各プレイヤーの得点となります。

一にも二にも決断力

プレイしてみればわかるのですが、このゲームにおいて「フェイズ2に移るタイミングの様子見」は十中八九、手遅れ状態になります。

というのも、このゲームシステムの幹である「並べるときは大きい数字から、得点するときは小さい数字から」という部分が、絶妙に効いてきます。あまりに配列すること注意を向けすぎると、せっかく並べた「11」や「10」のタイルまで手が届かず、結果として大きな失点となってしまうのです。

自分の前に並べない以上、得点にはならないのですから、「もっと並べたい」と思うのは当然のこととも言えます。しかし、大きな数字は、高い得点になる可能性があるとともに、大きな失点なる可能性も含まれてるのです。

このようなゲームにおいては、大きな得点を取ることはもちろん大切なのですが、「失点をできる限り少なくする」という方針もとても大切になってきます。そして、「失点をできる限り少なくする」ためには、少しでも早く「フェーズ2に移る」ことが求められます。

ところが、「一番最初に決断する」ということをできる生徒は、思いのほか多くありません。もちろん、早ければいいというわけではなく、根拠を持たない「様子見」は結果として致命傷になりかねません。

しかし、初めてやるゲームにおいて、初めての場面だからこそ学べることは必ずあります!他の人が誰も動かない場面においても、自信まではいかなくとも、自分なりの考えを持って決断することができる「決断力」が試される良いゲームだと感じています。

また、それだけに感想戦後の再プレイも大きな意味があります。

初回のゲームでは「遅かった」ということを多くのプレイヤーが感じることと思いますが、では、「適切なタイミングは結局どこか」を探りあう第2ゲームも、特有の面白さを持ってくるのです。

決断の根拠の作り方

そうは言っても、闇雲にする「決断」は「英断」どころか「無謀」に過ぎないわけです。しかし、このゲームは「決断」に際して、「根拠」になるものが多く散りばめられています

例えば、自分の前に並べられたタイルは全員に対しての「公開情報」となりますから、すべてを把握しきれなかったとしても、大きな数字に関しては、残り何枚であるかを把握することは十分に可能です。そうすると、1ターンでどれくらいの得点が可能かはある程度予想することも可能です。

また、タイルを袋から取る際の間隔や出ているタイルの枚数から、ゲームの終わりを想像することができます。つまり、自分に残されたターンがあと何ターンかを考えることができるのです。

このようにして、一見「思い切り」が大切に見えるこのゲームも、「思い切り」を支える根拠こそが重要であることに気が付かされます。

このことは、ゲームに限ったことではありません。「決断」という目に目る派手な部分が注目を集めがちですが、その下に隠れた部分こそ、「決断の成否」を決するものと言えるでしょう。

その意味においても、先述の通り、振り返りのあとの2ゲーム目がとても意味を持ってきます。「決断するタイミングの重要性」を認識したうえで、実はそれは「思い切り」だけではなく、むしろ「その決断を作る根拠」にこそ、勝負の綾があるということを噛みしめながらプレイしてみると、よりジリジリしてよいかもしれませんね(笑)。

最後に

こういうゲームにおいて、私は性格上、「早く動き過ぎる」傾向があります。せっかちなんですよね。

反対に、私の長女は基本的に一番最初には動かないタイプ。本当に私の遺伝子は入っているのだろうか?と思うことがあったりなかったりする長女ですが、このゲームに限らず、性格的な側面が垣間見えるのがボードゲームの良い所の一つだと言えるのかもしれませんね。

せっかちが向いているボードゲームの情報、お待ちしています!