皆さんは、ボードゲームを作るクリエイター、ゲームデザイナーに注目したことはあるでしょうか。それぞれのデザイナーにはデザインする際のクセのようなものがあり、彼らのゲームにはその特色が如実に現れます。プレイしてみて面白いと思うゲームがあったら、ぜひデザイナーをチェックしてみてください。そして、同じデザイナーの別のゲームをプレイしてほしいと思います。そのデザイナーの特色に自分の好みが合えば、きっと他のゲームも楽しめることでしょう。
今回は、ひとりのデザイナーに注目してみたいと思います。その名は、アレックス・ランドルフ。2004年に死去するまで100以上のゲームを世に送り出し、ボードゲームの本場ドイツにて最初に“ゲーム考案者”と自らを呼称した偉大なゲームデザイナーです。
彼がデザインしたゲームはその多くが定番化し、現在でもゲームショップで販売されていたり、ボードゲームカフェやプレイスペースに置いてあったりします。実際に遊んだという人も多いはず。そのアレックス・ランドルフの名作のなかから、7つほどをご紹介しましょう。
※五十音順に紹介しています。
ウミガメの島
親ガメの上に子ガメを乗せて……? 抜きつ抜かれつ・乗りつ乗られつ、手に汗握るカメのレース
ダイスを振り、カメのコマを進めていくすごろくのようなゲーム。ボードに描かれた島の周囲をぐるぐると周り、一周すると“たまごカード”を獲得して勝利点を得ます。ダイスはひとつずつ振り、最大3個まで振ってその数だけ進むのですが、目の合計が8を超えるとバースト。スタート地点まで戻されてしまいます。
進めた先のマスに他のカメがいた場合は、その背中の上に乗ります。この状態になると、下のカメと一緒に上のカメも進むうえ、ダイスを追加で振るかどうかの判断は上のプレイヤーの指示に従わなければなりません。さらに、このままゴール地点まで到達すると上のカメのプレイヤーだけが勝利点を獲得し、下のプレイヤーはカードを引けないのです。また、すでに2匹以上のカメが重なっているマスにカメが来ると、さらにその上に乗ります。この際もゴール時に得点が獲得できるのはいちばん上のカメのプレイヤーだけです。
他のカメの上に乗れば有利になるので積極的に狙っていきたいところですが、そこはダイスを追加で振るかどうか、きちんと欲しい目が出るか、そしてバーストするかどうかの勝負。ダイスを振るたびにドラマが生まれる、簡単なのに熱いゲームです。最大7人までプレイできるので、人が多いときにも重宝します。
ウミガメの島プレイ。多分はるか昔に遊んだ事はあると思う。🎲降って駒を進めて得点を取ろう系GAMES。・🎲は7を超えなければ2個目、3個目が振れる&🎲複数個振れた場合は出目合計×🎲の個数・駒は他人の駒の上に乗れるのが大きな特徴。人数多いと時間がかかるがシンプルで分かりやすくて面白い。負け。 pic.twitter.com/0QNDxcPaTt
— KASANARI (@kasanari0) December 6, 2024
【ウミガメの島 概要】
メーカー:メビウスゲームズ
プレイ人数:2~7人
対象年齢:7歳~
プレイ時間:30~60分
ガイスター
このオバケは赤か青か!? 心理戦が熱い2人用ゲームの傑作タイトル
2人のプレイヤーが向かい合わせに座り、6×6マスのボード上で8個のオバケのコマを動かし合う対戦型のゲームです。
自分のオバケのコマを相手のオバケのコマのいるマスに進めると、将棋やチェスのように相手のコマを取って除外できます。赤いコマを4個取らされてしまうと負け。もしくは、相手方の盤の最奥の列の端の2マスのどちらかから自分の青いコマを脱出させることができれば勝ちです。ただし、オバケのコマは“赤の悪いオバケ”と“青のいいオバケ”の2種があり、正面の対戦相手はコマを取るまでどちらか判別できません。
相手の狙いは何か、進んで来たオバケは青か赤か……。ロジカルなアブストラクト(運要素が絡まないゲーム)でありつつも、心理的な読み合いと揺さぶり合いが楽しいタイトルです。
元版の発売は1982年。2人用のボードゲームとしては定番となっており、ほとんどのボードゲームカフェやプレイスペースに置いてあります。2024年12月にはトラベル版の『マグネットガイスター』も発売されました。
ちなみに、最終回では「今までプレイした約50作品から一番面白かったボードゲームを遊ぶ」ということをしたのですが、全会一致で「ガイスター」が1位でした!さすがランドルフ大先生…! pic.twitter.com/9NjePeV8Fh
— 明地宙/SoLunerG:SLGP始動(ソラゲームポータル) (@SoLunerG) March 16, 2023
【ガイスター 概要】
メーカー:メビウスゲームズ
プレイ人数:2人用
対象年齢:8歳~
プレイ時間:~30分
チャオチャオ
ダイスの目をめぐるブラフ対決! テレビ番組でプレイされて評判に
ダイスを振って手持ちのコマを進めて橋を渡り、ゴールを目指すゲーム。ただしダイスの目は非公開で、自己申告したぶんだけコマを進めます。この際、嘘をついても構いません。
他のプレイヤーはダイスの目が本当に出ているかどうか考え、もし嘘だと思ったらそれを指摘。ダイスを確認し、違っていたらコマを進めていたプレイヤーの負け、正しかったら指摘したプレイヤーの負けとなり、負けたプレイヤーのコマは没収となって橋から落とされてしまいます。
ダイスの目は1~4までの数字と、2つの「×」があり、「×」が出たときは必ず嘘の申告をしなければなりません。ハッタリを貫く度胸と、嘘を見抜く眼力が求められる心理戦が楽しめます。テレビのバラエティー番組でたびたびプレイされたことで評判となり、一時期は品薄の状態が続いていたタイトルです。
昼間は娘の希望でチャオチャオを一戦。ブラフゲーもけっこう好きみたい。明日学校休みだから義母宅におチャオチャオ持ってお泊りしに行った。 pic.twitter.com/dwDp6GCwOF
— さほ@ちぃ (@sahochiiiii) June 25, 2023
【チャオチャオ 概要】
メーカー:メビウスゲームズ
プレイ人数:2~4人
対象年齢:8歳~
プレイ時間:~30分
ツィクスト
手と手を繋いでどんどん伸ばせ! 簡単ルールで奥深い対戦が楽しめる
24×24の穴が開いたボードにコマを配置していき、端から端まで線で繋ぐことを目指す2人用のゲーム。『ガイスター』と同じく運の要素が絡まない、ガチ対戦のアブストラクトです。
コマの配置場所は自由ですが、コマ同士を繋ぐルールが特徴的で、将棋で言うところの“桂馬飛び”(一歩進んでから斜め前)にふたつの自軍のコマがある場合に繋げられます。これで自軍側のボード端から相手側の端まで一本の線を通すことができれば勝利。相手の線を分断するような位置にコマを配置して妨害したり、先を見通して離れた場所にコマを置くなど、シンプルながらもさまざまな戦略を取ることができます。
初版は1962年に発売されており、長らく親しまれてきた古典的作品。ランドルフの代表作で、『ガイスター』ともども2人用ボードゲームの定番的なタイトルとなっています。なお、2:2のチーム戦による4人プレイのルール(同じチーム同士が向かい合って座り、お互いの端から中央に向かって進めて相手より先に接続を目指す)もあります。
ツィクスト
はるか昔に遊ばせてもらった以来。こんなに豪華に生まれ変わって、まあ。手番ではペグを1つ挿して、好きなだけ桂馬飛びに繋げてよい。対面にある自分の色の陣地同士を繋げたら勝ちのアブストラクト。
よくできてる一方で難易度も高く、得手不得手があからさまに現れる。下手の横好きだね pic.twitter.com/QGQNaQjOMb— ファズ@FGF (@bgfan_jinn) February 7, 2024
【ツィクスト 概要】
メーカー:ジーピー
プレイ人数:2人用
対象年齢:8歳~
プレイ時間:30~60分
ドメモ
見えない数字を予想する。心理的な駆け引きもある推理ゲーム
1~7までの数字のタイルを自分に見えないように裏向きで並べ、タイルの数字を当てていくゲーム。使用するタイルは書かれた数字と同じ枚数だけあり(1なら1枚、7なら7枚)、使われなていないタイルの一部の数字は公開されます。他のプレイヤーのタイルの数字はすべて見えるので、これらの情報から自分のタイルにどの数字が含まれているか予想していくのです。
手番では、数字をひとつコール。その数字が自分のタイルのなかにあるか他のプレイヤーが確認し、あれば倒す(複数あっても倒すのは1枚)。なければその旨を伝えます。こうして最初に自分のタイルをすべて倒した人が勝利です。
他のプレイヤーのコールする数字もヒントになるのですが、あえて相手を混乱させるようなコールをするといった心理的な駆け引きもあり、一筋縄ではいきません。知育的な要素もあり、大人から子どもまで楽しめる一作です。
最近の我が家の定番『ドメモ』。
見えない自分の数字を当てるゲーム。1から7までの数字だけだから、子供でも推理しやすいのがGOOD。 pic.twitter.com/R39MHxSblz— はとまめ@ぼくボド (@boku_bodo) July 22, 2023
【ドメモ(木製版) 概要】
メーカー:クロノス
プレイ人数:2~5人
対象年齢:6歳~
プレイ時間:~30分
ハゲタカのえじき
極限までシンプルながら、心理戦の要素が詰まったカードゲームの定番作
全員が1から15の数字が書かれた同じカードのセットを持ち、1枚ずつ出してポイントを取り合っていくカードゲーム。
全員が出した札のなかで数字がもっとも大きかったプレイヤーがその回の勝者となって公開されている“ハゲタカカード”を獲得し、ポイントを得ます。これを15回繰り返し、ハゲタカカードのポイントの合計がもっとも大きい人が最終的な勝者となります。
このゲームの特徴は、もっとも大きい数字のカードが複数同時に場に出ている場合、そのカードはすべて無効となり、次に大きな数字を出したプレイヤーの勝ちとなること。ただ大きい数字を出していけば絶対に勝てるというわけではなく、強いカードが次々と無効になって思いもかけぬ展開になることもあるのです。その回で獲得できるハゲタカカードのポイント数は公開されているので、得られるポイントと使う手札を天秤にかけ、どこで勝負をかけるかの判断が難しい。他のプレイヤーがそれまでにどの数字のカードを使っているか覚えていることも重要です。
非常にシンプルですが、ボードゲームの基本的な仕組みであるバッティング(同じものを出すと無効)、カウンティング(場に出た他人の札を覚えておく)といった要素を含んだロングセラー作品です。
相席5人で遊んだゲーム振り返っていく。
1ゲーム目、ハゲタカのえじき。久しぶりに遊んだけど、定番ですね。やっていくうちに他の人がどこで攻めるのかわかってくるので楽しくなってくる。2回戦目はラッキーが続いたりして結構いい点取れた。 pic.twitter.com/yRt5Me8kVa— ツーリングマニア / ウワガキらぼ (@uwagaki_lab) January 3, 2023
【ハゲタカのえじき 概要】
メーカー:メビウスゲームズ
プレイ人数:2~6人
対象年齢:7歳~
プレイ時間:~30分
ビッグショット
土地の支配権をめぐる争いを描く競りゲーム
土地の支配権をめぐる勢力争いを扱った“エリアマジョリティ”というシステムを主軸に、競りの要素を加えたゲームです。
ゲームボードの外周には全18カ所のオークションマスがあり、ここにそれぞれのプレイヤーに対応した色の勢力コマが4つずつランダムに置かれます。そして各ターンごとに競りが行われ、競り落としたプレイヤーがオークションマスに置かれた勢力コマを獲得するのです。このとき、競りのために借金をすることもできます。
競りに勝って4つの勢力コマを得たプレイヤーは、これをボード上の好きなエリアに配置します。1つのエリアには勢力を問わず最大7個までしか勢力コマを置けません。これを全18ラウンド行います。ゲーム終了時にそれぞれのエリアで最大の勢力コマを置いていたプレイヤーがそのエリアの得点を獲得(エリアマジョリティ)。全エリアの合計点に最終の所持金と借金を加え、もっとも大きいポイントを得たプレイヤーが勝利となります。
しかし、そのエリアでもっとも多い勢力コマの数が同じプレイヤーが複数いた場合は、『ハゲタカのえじき』のバッティングと同様に無効となってしまい、次に勢力コマが多いプレイヤーがそのエリアの得点を獲得します。勢力コマは競りで勝ったプレイヤーが配置するため、自分の色の勢力コマを他のプレイヤーが配置することで予期せぬバッティングが発生し、弱い勢力に点が流れるといったこともしばしば発生するのです。
どの競りを獲りに行くか、獲得した勢力コマをどこに配置するか。主な判断要素はこのふたつしかないのですが、これがなんとも悩ましい。先を見通した資金投入と適切なタイミングでする借金、他のプレイヤーの勢力コマの配置も考慮しつつの決断が求められます。短めのプレイ時間で本格的なユーロゲームが楽しめるタイトルです。
ビッグショット。ランドルフ。プレイヤーカラーの駒ランダム4個セットを競りにかけて、落札者がボード上に好きに配置→エリアマジョリティ!利子前払いの借金ルールがエグいです。性格の悪さが出る感じで好きだ〜〜最終得点16対9対マイナス6とかになって面白かった。 pic.twitter.com/FSwM9qxOWG
— ぬん(Be Catchy Games) (@be_catchy) March 28, 2019
【ビッグショット 概要】
メーカー:Engames
プレイ人数:2~4人
対象年齢:8歳~
プレイ時間:30~60分
いかがだったでしょうか。ここで挙げたタイトルは古典的作品として知られているもので、いずれもそれぞれのジャンルの定番ゲームとなっています。そして、そのすべてにルールはシンプルでありながら腹を読み合う心理戦、ロジカルな計算、そしてほどよく絡む運といったボードゲームの魅力が詰まっているのです。プレイ人数が多いゲームがたくさんあるのも良いところです。
もしアレックス・ランドルフのゲームに興味を持ったのであれば、今回挙げたゲームはもちろん、現在入手できるものや、ゲームショップで遊べるものなどから探して、ぜひとも触れてみてください。その多くは発表されてからかなり時間が経っているゲームなのですが、古さを感じさせない奥深いシステムと、ボードゲームを遊ぶ楽しさを味わうことができるでしょう。
BROADでは、これまでもたびたびランドルフや彼のタイトルを紹介しています(今回と被っているものもあります)。
【ボードゲームをデザインした巨匠たち】アレックス・ランドルフ
※『ハゲタカのえじき』『チャオチャオ』『ツィクスト』『ベニスコレクション』
https://broad.tokyo/news/12507
【2024年版】サクっと2人で! 軽めに楽しむ定番の2人用ボードゲーム8選
※『ガイスター』『ツィクスト』
https://broad.tokyo/column/36392
10人で遊べるゲーム10選!! 人が多いほうが楽しい! 大人数でワイワイ盛り上がる!
※『ハイパーロボット』
https://broad.tokyo/column/34856
ボードゲームカフェ JELLY JELLY CAFEでプレイできるアレックス・ランドルフのゲーム
https://jellyjellycafe.com/designer/alex-randolph
※店舗ごとにプレイできるゲームは異なります。