「しりとり」は多くの子供が大人と最初にするゲームといっても過言ではないかもしれません。今回は、そんな「しりとり」を「絵」を通して行うゲーム『ウォッチャ』について考えていきたいと思います。
ルールの概要
このゲームは、40枚のカードを用いて行います。
このように、さまざまな絵が描かれたカードを10枚並べ、スタートカードとなる1枚をその上に並べます。
そして、スタートカードに書かれた絵に関する「キーワード」で「しりとり」ができるようにつなげていこうというゲームです。
「自分の手番」はなく、思いついた人からプレイすることができます。
思いついた人は「ウォッチャ」と大きな声で宣言をし、その後カードとそれから連想されるキーワードを発表します。
その際、他のプレイヤーの多数決によって「しりとり」が成立すると承認された場合には、スタートカードの横から順々に並べてき、今答えたカードの上に自分のカラーキューブを置きます。
このようにして、最初に4個のキューブをすべて置くことができた人の勝利となります。
ただし、このゲームでは、場に並べられた10枚以外にも、すでに「しりとり」としてプレイされたカードも再利用することが可能です。その場合には、再利用されたカードの上に置かれているキューブが担当プレイヤーのもとに戻されてしまいます。このようにして、アガリそうなプレイヤーを妨害することも可能です。
子供でも簡単にできる……のか?
「しりとり」ということで、大人も子供も手軽にプレイできそうなこのゲームですが、意外と一筋縄にはいきません。子供たちと一緒にプレイしていると、まずは「瓶」「机」といった、カードに書かれているものでしりとりをしようとします。これ自体は悪いことでもなんでもなく、むしろ当然に多くのプレイヤーがとる行動であると考えられます。
しかし、このゲームは絵に描かれた具体物だけでしりとりができるほど甘くはありません。問題は、この次のステップにいけるかどうか、という点にあります。
例えば、このカードを見てみましょう。
「孤独」「さみしい」「一人暮らし」といったキーワードを連想することも可能です。要するに、「書かれている具体物からイメージを吸い上げ、抽象化した後に、言語に落とし込むことができるかどうか」、なのです。
私は主に中学受験の国語と社会を指導しておりますが、言語に関して、「抽象化する力」というのは精神年齢にリンクする部分もあり、指導がとても難しく、決して「語彙力」の一言で済ませることはできません。
そのような意味においては、このゲームはプレイヤーの抽象化能力と、それによって紐づけられた語彙力の差が露骨に出るゲームであると考えることもできます(このように書くと怖いゲームのように感じますが、実際にはとても盛り上がるよいゲームです(笑))。
発想力も経験の集積
もちろん、言語において大人顔負けという小学生もいますし、大人が子供に負けるということも十分に考えられます。ただ、そうではないからと言ってまだこのゲームをするのは時期尚早ということもありません。大人たちが抽象化してイメージを紡いでいく様を、子供たちと一緒に楽しめばよいのです。
きっと最初は……とくに低学年の子供たちにとっては、頭の中に「?」が浮かぶことでしょう。しかし、そういうときの「どういうこと?」ほど、子供たちの抽象化能力を高めるチャンスです。「それなら、このカードはこういうのもアリ?」となってくれば、もうあとは手放しでもこのゲームを楽しむことができるでしょう。そして、心配しなくてもそのうち大人が負けます(笑)。
最後に
子供たちの語彙力は大人が思っている以上についていなかったり、反対に成長していたりします。我が家でも先日、年中の次女が「リモコンが反応しない」と言い出したかと思えば、小2の長女が「風呂を沸かす」を知らなかったり。こうした、子供たちの語彙の現在地を確認していくのも一つの楽しみかもしれませんね。