私は幼少期において極度の野菜嫌いで、未だにピーマンは食べることができません。せめてボードゲームの世界では!ということで、今回は『ポイントサラダ』について書いていこうと思います。対象年齢は14歳以上となっていますが、8歳の長女も十分にプレイすることができましたので、掛け算ができるようになったお子様がいらっしゃるご家庭にオススメのゲームです。
また、「カードの裏面」をゲームに用いるという点も画期的なゲームシステムとなっており、リプレイ性が高い点もお勧めできる理由のひとつとなっています。
ゲームの概要
このゲームに登場する「野菜カード」は6種類。「トマト」「レタス」「ピーマン」「タマネギ」「キャベツ」「ニンジン」があります。
これらのカードの裏には「得点条件」が書かれていて、カードの端には裏に描かれている野菜のアイコンがあります。
ゲームが始まるとカードを三つの山に分け、それぞれの山から2枚をめくり写真のように並べていきます。
ゲーム中にすることは以下の2つです。
1 「得点条件」が書かれたカードを1枚獲得する。
2 「野菜」が書かれたカードを2枚獲得する。
この場合に、野菜が置かれていたところには、同じ山から補充がなされていきます。
さらに、手番中に獲得した「得点カード」を任意のタイミングで裏返し「野菜カード」として使うことが可能です。
このように各プレイヤーが手番をくり返し行い、すべてのカードがなくなるとゲーム終了となり、最も得点を多く獲得したプレイヤーの勝利です。
「単位当たりの量」という考え方
このゲームの面白さのポイントは、「得点条件」までも自分で獲得しなくてはいけない点にあります。例えば、このようなカードの取り方をしたとしましょう。
一見、効率よく加点できているように思いますが、ニンジンとタマネギは1枚当たり1点にしかなりません。さらに、ピーマン(上記写真では5枚獲得:得点条件は3枚で8点)はあと1枚とることができればよかったのですが、これだと5枚なので8点(6枚なら16点に)、これもまた必ずしも高得点とは言い難い状況です。
さて、この「1枚当たり」というところが重要です。算数でいう所の「単位当たりの量」という概念です。しかし、この言葉、算数が苦手な生徒たちは口を揃えて「意味が解らない」と言ってきます。「単位当たり」という言葉が、絶妙にこの概念の理解を妨げていますね(笑)。
ところが、このような生徒でも、このゲームで「ピーマンは1枚何点?」などと聞いてみると、意外にも答えられるから不思議なものです。幼稚園生や小学校低学年の子供たちは、基本的に具体的なものを通じて、自分の言語や感覚を作り上げていきます。その意味では、いきなり「単位当たりの量」と言われても理解できないのは当然ともいえます。このゲームのように「この得点カードだと、1枚で3点獲得できるから……」などと考える経験値を増やしていくことで、高学年の算数で苦労することも少なくなってくると思っています。
ゲームの振り返りを通じて、勝ったプレイヤーと負けたプレイヤーの違いについて確認してみると、「単位当たりの量」の感覚も養われてくると思います。
掛け算は両方増やさなくては意味がない。
次に、掛け算は「かける数」と「かけられる数」の両方を高めることで、より積が大きくなります。
例えば、二つの整数の和が「10」であるとしましょう。このとき、「9×1」よりも「5×5」の方が2倍以上大きくなっています。このゲームでは、掛け算の子の性質をいやというほど目の当たりにすることができます。
例えば、先ほどの写真の例で考えてみましょう。
三種類に集中して枚数を確保しているように見えますが、ニンジンとタマネギは得点条件が「×1」なのであまり大きくなりません。
下の写真の場合を見てみましょう。多くの種類を獲得していますが、この場合のレタスは多くの得点条件に関わっており、1枚あるだけで獲得できる点数は大きく、その意味では「効率よく」という考え方ができます。
また、この状況でいくら「トマト」に関する得点カードを獲得しても、トマトそのものを持っていません。言い換えると、「トマトに関する単位当たりの量」を大きくしても、トマトのカードが少なくては(持っていなくては)意味がありません。
このように「得点条件」と「枚数」のパラメーターを両方あげていくことが、このゲームでは要求されているのです。
しかも、このゲームではすべての情報がオープンとなっています。他のプレイヤーの動向を把握することが可能です。他のプレイヤーの意図を感じながらも、自分のパラメーターを高めていかなくてはいけないという駆け引きもこのゲームの魅力のひとつですね。
最後に
……と、ここまで偉そうに書いてきたのですが、実は小2の長女に負けました! 必要以上にマイナスを避けるというのもやはりよろしくないようで……。
期せずして、我が娘から多少のマイナスも覚悟しながら、既存のリソースを最大限生かすことの重要性を教わりました(笑)。