『カタン』だけじゃない! クラウス・トイバーが産み出した、歴史に残る素晴らしいボードゲーム9 選

202341日にドイツのゲームデザイナー、クラウス・トイバーが亡くなりました。享年70

トイバーの代表作と言えば『カタン』です。無人のカタン島に入植して、最も開拓した人が勝ちというボードゲーム。一見ややこしそうに思えますが、シンプルなルールで単純ながらも、戦略と運の絶妙なバランス、他のプレイヤーとの交渉力が問われる近代ボードゲームの代名詞的作品です。

『カタン』を作った当時のトイバーは、いろんな出版社を回ったもののルールが複雑過ぎるという理由で出版を拒否される日々。まだ弱小メーカーだったコスモス社が出版のOKを出して1995年に『カタン』が発売されました。フタを開けてみれば世界的な大ヒットとなり、コスモス社もこれで大きなメーカーへと成長し、1995年のドイツ年間ゲーム大賞などを受賞するに至りました。現在までに世界中で累計4000万セット以上も売り上げているそうで、このゲームがなければ現在のボードゲームブームも無かっただろうと言われているボードゲームの歴史の記念碑的作品になります。

トイバー本人の希望なのか出版社側の狙いなのかは分かりませんが『カタン』は拡張も多く作られ、続編的な独立作品も数えきれないほど(200タイトル以上)発売されています。なので、世間的には『カタン』シリーズばっかり作っていた人が亡くなったという認識かも知れません。しかし、他にも面白いゲームやシステムをたくさん産み出した人物なのです!

ということで、トイバーのゲーム作家としての幅の広さが実感出来る『カタン』以外のボードゲーム9タイトルを紹介します。

バルバロッサ

バルバロッサ36人/12歳〜/60分〉

各人が粘土で作った造形物が何かを当てるクイズゲーム。

粘土細工を作ったプレイヤーに対してYESかNOで答えられる質問を繰り返して、何を作ったかを当てれば得点獲得。当ててもらったほうも得点獲得で、最終的な得点を競います。絶妙な点数配分になっていて、粘土が下手過ぎて終盤に当てられても上手く作り過ぎて序盤に当てられても、点数は低くなっています。程よくあいまいに、そして伝わるように粘土細工を完成させるのがゲームのコツです。

トイバーの作品群を振り返ってみても似たタイプのゲームはなく、かなり変化球のパーティーゲームです。しかし1981年に『バルバロッサ』の元となるゲームを作ったのがトイバーのデビュー作と言われていて、7年後に商品化されて1988年ドイツ年間ゲーム大賞を受賞するのでゲーム作家トイバーの原点と言えるんじゃないでしょうか。

貴族のつとめ

〈貴族のつとめ/2〜5人/12歳〜/60~90分〉

貴族になって、集めたアンティークを展示することで進むすごろくゲーム。

オークション会場に行くかお城に行くかを全員同時に選びます。オークション会場を選んだ人は出品されているアンティークを落札するか、泥棒になって落札したお金を盗むかを同時に選びます。また、お城を選んだ人はアンティークを展示するか、泥棒になって展示されたアンティークを盗むか、探偵になって泥棒を捕まえるかを同時に選びます。被った選択をすると何も出来なかったりして、とにかく他の人の思惑を予想しながら読み合い続けるバッティングゲームです。

トイバー2度目となる1990年のドイツ年間ゲーム大賞受賞作。プレイ人数が2人〜という記載になっていますが、少人数で遊ぶと「ん? これが大賞獲ったゲームなの?」と思うくらいつまらないです。他人とバッティングするのが楽しいので、ぜひ5人で。

エントデッカー

〈エントデッカー/2〜4人/10歳〜/60分〉

船に乗って未開の海を航海し、島を見つけて上陸して得点を稼ぐタイル配置ゲーム。

海や島が描かれたタイルをボード上に配置して、船を進めたり偵察隊を上陸させてゲームを進めていきます。ゲームが終わる頃には小さな島々が現れて海の地図が完成するので大冒険をしたような気になれるゲームです。タイル配置ゲームの名作『カルカソンヌ』の海版と言えばイメージしやすいでしょうけど、本作の方が5年も先に発売されています。タイルをめくるたびに海賊や原住民が現れたりして、こっちのほうが楽しいんですよね。

トイバーは現れた島に上陸してから開拓するというアイデアを持っていたそうで、それが『カタン』になり、海のほうが『エントデッカー』に。別々のゲームになりました。

レーベンヘルツ

〈レーベンヘルツ/24人/12歳〜/6080分〉

王がいなくなったイギリスを舞台に、より価値の高い領土を確保するエリアマジョリティゲーム。

国境線を引くことで領土が出来上がりますが、自分が引いた国境線も他人に利用されるのがこのゲームの特徴。とにかく一手一手が他人に影響を与えるので直接攻撃になりやすく、他人との交渉が重要な陣取りゲームです。ゲーム好きに支持されているのか『カタン』よりこっちをトイバーの最高傑作として挙げる人も多いですね。

さまよえるオランダ人

さまよえるオランダ人36人/12歳〜/60分〉

商人になって、幽霊船の動きを見ながら株でお金を稼ぐボードゲーム。

6色ある株券を全員3枚だけ持ってゲームを進めていきます。幽霊船がボード上で止まった船と同じ色の株券を持ってると、その枚数分お金を支払って、その株券の価値もなくなります。なので、幽霊船をどっちに動かすかが非常に需要です。幽霊船の移動権を争い、その後も全員の協議で動く方向を決めたりします。とにかく幽霊船の1歩をどうするかの交渉が肝になるゲームで、『カタン』よりもシビアな交渉が必要とされます。

ヘーゼルナッツの騎士

〈ヘーゼルナッツの騎士/24人/6歳〜/30分〉

リスの騎士になって、ヘーゼルナッツをたくさん集めるメモリーゲーム。

サイコロを振って出た目だけ自分のコマを好きな方向に進め、止まったマスに置いてある山札を1枚こっそりめくります。めくったカードがヘーゼルナッツなら自分の前に表向きに置いて、隠し場所に戻った時に得点化されます。めくったカードがキツネだった場合は、キツネの名前を覚えて裏返しのまま山札に戻します。誰かが再びこのキツネをめくった時に、いち早くキツネの名前を叫べばその人が持っているヘーゼルナッツを全て奪えます。キツネの山札が増えて進めるところが少なくなったり、キツネの名前を混乱して忘れたり、なかなか楽しいキッズ向けゲームです。

ギャロップロイヤル

〈ギャロップロイヤル/36人/10歳〜/6080分〉

お神輿のレースで勝って賞金を稼ぐダイスゲーム。

オークションでお神輿を担ぐ4人の選手を集め、サイコロを振って出目に対応した選手の能力でお神輿を進めます。一気にお神輿を進められる優れた選手がいたり、後ろにバックしてしまうダメな選手がいたり、他の人を攻撃する選手がいたり様々。レースで最下位だった人は自分のいらない選手1人、他の人の強い選手1人を捨てさせて次のレースに挑みます。最終的に6レースをやって稼いだお金で勝敗を決めます。サイコロ運に左右されるワイワイ楽しむパーティーゲームですね。

ドリュンター&ドリューバー

〈ドリュンター&ドリューバー/24人/9歳〜/3045分〉

都市開発で建物が壊されていく中、自分が担当する建物を出来るだけ多く残すのが目的の正体隠匿ゲーム。

配られたカードを見て、自分が守る建物を決めてからゲームスタート。様々な建物が描かれたボード上に、建物を隠すようにタイルを配置して城壁を延ばしたり、川を引いたりします。タイルが置けなくなったらゲーム終了で、残った自分の担当の建物数を競います。いくつかある公衆トイレの上にタイルを配置する場合は全員の投票によって決定するので、どこに置くかの交渉が重要です。

1991年のドイツ年間ゲーム大賞受賞作。これでトイバーは3度目の受賞となり、4年後に『カタン』で4度目の受賞という偉業を成し遂げます。

チップ・チップ・フラー

〈チップ・チップ・フラー/24人/6歳〜/2030分〉

ロボット用のチップ4つを集めるアクションゲーム。

フロッピーディスクのような形のチップを、シーソー型の発射台に乗せてポーンと飛ばしてボード上に投げ入れます。これが意外と難しくて、3回連続で失敗すると獲得していたチップを1つ失います。チップ飛ばしが成功したら、ボード上の自分のロボットをチップに向かって一直線に動かします。チップに隣接するマスにいるロボットがチップ獲得の権利があって、ロボットを持ち上げて中に入っているサイコロの数を比べて数が大きい人がチップ獲得です。マス目には段差のある仕切りがあって、ロボットを動かすと中のサイコロの出目が変わるというギミックが面白いゲームです。


クラウス・トイバーはホントに面白いゲームをたくさん世に残してくれました。『カタン』『エントデッカー』『さまよえるオランダ人』のようなロマンあふるる壮大なテーマの中量級ゲームばかりが話題になりがちですが、キッズゲームも面白い作品が多いんですよ。

ボードゲームの賞の最高峰であるドイツ年間ゲーム大賞を4度受賞、ゲーム好きの投票で決定するドイツゲーム賞も4度受賞(1990年『貴族のつとめ』、1992年『さまよえるオランダ人』、1995年『カタン』、1997年『レーベンヘルツ』)という誰も真似出来ない実績も流石です。

こうしてトイバーの作品を並べてみると、一緒に遊ぶ人たちと会話を楽しむためのツールとしてのボードゲームが多いのかなぁと思いました。黙ってじっくり悩むボードゲームもいいのですが、トイバーはゲームを囲んで話が盛り上がる状況をデザインしたゲーム作家だったのではないかと。

そして最後に『カタン』Q&Aでのトイバーの名言を最後に、この記事を締めさせて頂きます。他のプレイヤーと同盟組んで特定の人と対抗してもいいのか?という問いに対しての答えが

The rules do not prohibit it. However, common sense should tell you to play in such a way that your current opponents will also want to play with you tomorrow.

それはルールで禁止していません。しかし常識的に考えて、対戦相手が明日も一緒にプレイしたいと思うようなプレイをする必要があります。