「タイムボム」はたった1時間で作られた!?ゲームデザイナー佐藤雄介氏に直撃インタビュー!

ボードゲームを作った人の話を聞く【作者直撃】の3回目。作者の話を聞いてから、その人のゲームを遊ぶと狙いや意味がハッキリして楽しさが倍増するんです。一度遊んだゲームも読んだ後だと印象が違いますからね。

ちなみに第1回のMasao Fukaseさんと第2回の大山徹さんのインタビューはコチラ。

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今回インタビューに応じて頂いた作者は、正体隠匿ゲーム『タイムボム』などを作った新ボードゲーム党の佐藤雄介さんです。実はこの取材の日の2日前にも一緒にボードゲームで遊んでいたので、改めて話を伺うというのはちょっと照れ臭いところもあったんですがゲーム作りの意外なこだわりまで語って頂きました。

本業はお笑い芸人?ゲームデザイナー?

ーー今おいくつですか?

佐藤「36才です」

ーー仕事は何をやってるんですか?

佐藤「お笑い芸人が本業で、副業でボードゲーム制作と塾の講師をやっています。本業と副業の割合は010です」

ーーいやいや、0なら省いて下さいよ!

佐藤「そうすると本業無くなっちゃうんで」

ーー収入的にメインは塾講師って事ですか?

佐藤「メインはボードゲーム制作ですね」

ーーじゃあ本業ゲームデザイナーじゃないですか!塾講師やらなくても生活は出来る感じですか?

佐藤「出来ます。でもここ3年くらいですよ、昔サラリーマンやってたんですけど3年前にやっと当時の収入に追いついたなと。なのでゲーム作り始めて5年くらいはボードゲーム制作で食えるって感じではなかったです」

ボードゲームに触れるきっかけはモダンアート

ーーそもそもボードゲームに触れるようになったきっかけはなんですか?

佐藤「大学の終わりか社会人なりたての頃だから…2006年とか……高校の友人に、ちょっと面白い物があると呼び出されまして。何で呼ばれたのかも分からないまま集められて『モダンアート』を。理系のハマりそうな人を選んで呼んでて、全員その場でハマってましたね。もうそこからはあっという間で『ニムト』『ごきぶりポーカー』『コロレット』とか当時の軽いゲームは一通り遊びましたね」

ーー『モダンアート』はやっぱ面白いもんなぁ。

佐藤「ボードゲームは『人生ゲーム』と『モノポリー』しか知らなかったんで、すごろくみたいなボードをイメージしていたのに何だこれ?って惹かれましたね。ついたても初めてでしたし。衝撃度も含め今もボードゲームの歴代1位ですね。その後は『アグリコラ』『電力会社』『プエルトリコ』辺りですかね。公民館の部屋借りてやってました」

ーー同じメンバーとずっと遊んでたんですか?

佐藤「月に12回集まってましたね。私たちを集めたリーダー格がゲームをいっぱい持ってたんで。そして遊んでるうちにボードゲームだけを売ってる専門店があるんだと教えてもらいまして。それが高円寺にあるすごろくやです」

ーーボードゲームにハマったきっかけで必ず出てくる店()

佐藤「すごろくやで初めて買ったのが『ゲシェンク』だったかな?ゲーム買うと周りに布教しなきゃいけないじゃないですか。パーティーゲームも今みたいに沢山ないから、ハマりそうな人と遊んでましたね。『ごきぶりポーカー』とか本当メチャクチャやりましたよ」

ーー『ごきぶりポーカー』って面白いゲームだけど今ならそれだけ遊ぶんじゃなくて他の選択肢もありますよね。

佐藤「その時は面白くて。出会った順番ってあると思うんですよね。私は今まで遊んだゲームを一覧表にしてるんです。数は1800タイトルくらいで、全てに10段階で評価付けてるんです。10点のゲームって数える程しか無いんですけど、全部初期にやったやつなんです」

ーーほぉ、どういう事なんですかね。原体験みたいなものかなぁ。

佐藤「そうですね。『パンデミック』も『ティカル』も10点付けてて、メチャクチャ面白かったです。でも、果たして今『モダンアート』やって10点になるだろうか、と。逆に最近遊ぶゲームは何やっても57点なんですよ。当時は『ぴっぐテン』とかも9点付けてましたね。当時の9点は今の5点ですけどね」

ーーやり過ぎるとシステムの確認になっちゃうんですかね。今何個くらいボードゲーム持ってるんですか?

佐藤「その頃に買った小箱50個くらいで止まってて、ゲームを作るようになってから買ってないんですよ。実家暮らしをしてて自分の部屋以外に物は置けないルールでやってるので、自分のゲームの在庫置かなきゃいけないんで」

ーー遊んだ数は1800だけど50個だけ!ホントはボードゲーム欲しいんですか?

佐藤「環境が許すなら欲しいですよ」

ーーいつまでも『モダンアート』ばっかり遊ぶわけにもいかないですしね。

佐藤「いや『モダンアート』持ってないです。箱がちょいデカイんで」

ーーえ?自分の1位を持ってないとは()

人狼の最大の欠点を無くすゲーム

ーー佐藤さんがゲーム作りをしてるのは“新ボードゲーム党”ってサークルですよね?そこで活動するようになったきっかけは?

佐藤「芸能事務所の浅井企画に入るタイミングですね。お笑いの養成所1年通って卒業する時に面接と言うかネタ見せがありまして、合格すれば所属なんです。コンビ名がカルカソンヌだったんで、ネタが終わった後に名前の由来を訊かれて。ボードゲームが好きなら浅井企画にボードゲーム好きな芸人いるから連絡先教えるよって言われまして。それで連絡したら当時定期的にやっていた新ボードゲーム党のゲーム会に呼ばれまして。呼ばれたけど、この時点で浅井企画受かってるか分かんないんですよ」

ーーガハハハ。普通にゲーム会に呼ばれただけだもんね。私もよく行ってましたよ、新ボードゲーム党の集い。

佐藤「結局受かってたからいいんですけど。最初の頃って芸人が沢山来てる集いみたいなゲーム会で、そこで新ボードゲーム党の人に良くしてもらって」

ーーゲーム作りのきっかけは?

佐藤「新ボードゲーム党がすでに作ってたんですよ『貨モッツァ』って作品を。それが2013年だったと思うんですけど、普通の人が作れるんだというのを知って。箱に印刷出来るとか知らないと想像も出来ないじゃないですか。ゲームマーケットの存在も同じ時期に知るんですけど、普通の人が自分で考えて作る事が出来るんだ〜って。それで芸人なりたてだったし先輩にいいとこ見せたいと思って、ゲームを一丁作ってみようかなって」

ーー近くに作っている人がいるんだから自分でも、と。そんなノリで始めたんですね。

佐藤「そうですね。あと、ゲームマーケットに新ボードゲーム党の手伝いで行って他のゲーム見た時に大した事ないなって思って、これなら自分で作れると。このルール思いつくじゃんって」

ーー玉石混淆と言うか、良いのも悪いのもあるのが魅力ですしね、ゲムマは。で、ゲームを作り出したのはいつですか?

佐藤「ゲームマーケットで売り子をした1年後ですね。先輩たちからも作ろうよとか言われたりして、みんなでいろんなテストプレイの試作品をやったりとかしてて。そんな中で持って行ったのが『タイムボム』です」

ーーえ!最初がいきなり『タイムボム』??

佐藤「そうですね。作ろうと思って1時間で出来ました」

ーーあれが1時間で完成……。なんで正体隠匿だったんですか?

佐藤「人狼が流行ってたので。『ワンナイト人狼』とか、なんとか人狼も当時いっぱい出てましたし。なんとか人狼は山程あったんですけど、どれも役職追加だったんです。面白いんですけど、それは人狼が面白いから当然なんですよ!人狼の最大の欠点って脱落がある事なんですね。それをなくせたらなぁというのが出発点です。自分達で殺し合うから脱落しちゃう訳で、殺しあってるのを上から見てれば脱落しないじゃないですか」

ーーあのゲームは人狼の客観視なんだ!

佐藤「そうなんですよ。人狼を全て当てたら村人の勝ち、村人のリーダーを見つけたら人狼の勝ちというのにして。人狼がサクセスカードになって、村人のリーダーがボムカードに置き換わったのが『タイムボム』ですね」

ーー最初は人狼とか役職が書いてあるカードを俯瞰で見て当てるって感じのゲームだったんですか!

佐藤「そうです。元々のタイトルは『人狼狩り』でしたから。狩人が主役の人狼スピンオフみたいな位置付けで」

ーー人狼ってみんなが担当する役をもらって主役になって演じてるのが醍醐味だったり面白さかと思ってたけど、神様視点でも面白かったって事なんですね。

佐藤「私の人狼のプレイスタイルがそうだったので。ロジカルに推理したいので会話はどうでもいいかなって」

ーー『タイムボム』の凄い所ってウソが苦手な人でも遊べるとこだと思うんです。人狼と違って途中で陣営がバレても問題ないし、ウソが苦手な人がテロリストになっても積極的にウソをつかなくてもゲームが成立するし、黙ってても大丈夫な正体隠匿って部分が受けたのかなぁって分析してるんですけど。それは狙い通り?

佐藤「それは全く狙ってないです。完成した時にルールが論理的に出来てるのは分かるんですけど、やって面白いかは一切分かんないんです。テストプレイでやっと面白いぞってくらいで」

ーーじゃあ喋らない人が楽しんでるって感想は?

佐藤「それは発売してからそういう声を聞いて、あぁ確かにそうだなと」

ーー狙いじゃないかったのか…。

面白さより美しさを優先してしまう

ーー正体隠匿をいくつか作った後に『シブヤ』がありましたよね。ポップな物を作ってた人がなんで急にアブストラクト寄りのゲームを作ったの?って思ってたんですよ。

佐藤「その当時一緒に遊んでた人達……けがわさん(ボードゲームブログplay:gameの執筆者)とかなんですけど、アブストラクトの会をやっていて」

ーー土嚢の会ですか?ネスターゲームズとかアブストばっかりを遊ぶという。

佐藤「そうです、土嚢の会に出入りするようになった頃です。これは面白いなと。アブストラクトゲームはコンポーネントとルール量の少なさで成立しているところが魅力で。だって……『オセロ』より美しいルールって無いですよね?あれは凄いですよ。悩みとまでは言わないですけど、ルールが好きなのかゲームが好きなのかたまに分からなくなる時があるんです。自分でゲームを作って、よしっと思ってもこれはルールが良いのかゲームが良いのか

ーーフフフ。何を言ってるんですか??ルールもゲームも考えた人は同じじゃないですか?

佐藤「うーん、ゲームで例外処理とかがあると美しくないじゃないですか。でもそれがあった方がゲームとして面白いとしても私はたまに美しさを優先しちゃうんですよ、面白さよりも」

ーー美しいの方が上。確かに『シブヤ』は美しいルールですよね。

佐藤「土嚢の会に行って見識が広がったんでしょうね。『シブヤ』は厳密にはアブストラクトではないんですけど。ルールの綺麗さだと、その後に作った『レクト』ですかね。あれは美しいでしょう」

ーー『シブヤ』も『レクト』も綺麗ですね。説明書もスッキリしてるし美しいと言われるとそうですね。どんな時にゲームの発想は出てくるんですか?

佐藤「常にゲームの事考えてるので、ベタな言い方ですけど降りてくるというか。路線図見てはゲームに出来ないかとか考えたり、塾で教えてる時にもゲーム考えてたり。ま、シャワー浴びてる時とかベッドに横になってる時とかリラックスしてる時にシステムが思い付くことが多いかも知れないですね。外を歩いてる時はシステムじゃなくテーマとかが浮かんだり」

海外版タイムボムの誕生

ーー佐藤さんの作ったゲームは海外のメーカーからも発売されていると。読者でその辺の事情を知りたい人も多いのかなぁと。海外を目指すゲーム作ってる人とかは特に。『タイムボム』が海外で売られる事になったのはどういう流れなんですか?

佐藤「最初は海外からBGG(ボードゲームギークという海外のサイト)の『タイムボム』のページにメールが来ましたね。そんなページが出来てる事も知らなかったんですけど。メール見たら英語だし分からないしイヤだなぁって思ってたんですけど、その頃ヤポンブランドに参加してたので代表の健部さんが英語出来るので読んでもらって。そしたら版権だって分かりました」

ーーいきなり版権の連絡。えっと、まずヤポンブランドってなんですか?

佐藤「日本の同人ゲームを海外に出したいという人達が集まって、海外で出展する時のブース名ですかね。今は一般社団法人ですけど、当時は単なるブース名。同人ゲームの集まりです」

ーーじゃあ、ヤポンブランドに参加してたのは何故なんですか?

佐藤「海外にゲームを出そうとしてたからです」

ーー海外に出す前に海外版権取れちゃったってこと?

佐藤「はい。向こうからなので相当ラクなパターンだと思います。インディボード&カードという『レジスタンス』とか出してるメーカーですね。そこから英語版の話が来ましたね」

ーー苦労話とか聞きたかったんですけど。全く参考にならないですね。でもゲームマーケットに海外のメーカーが視察に来てますもんね。そういう幸運もあるかぁ。でも『タイムボム』って海外で何パターンか出てますよね?

佐藤「ヤポンブランドで世界最大のボードゲームイベントをやってるエッセンに参加した後、ホントいっぱい連絡あって契約したのはシュミットとイエロですね」

ーーええっ?!何社も断ったってこと?

佐藤「そうですけど、とりあえず声を掛けるってメーカーも多いんですよ。当時のヤポンブランドってノリにノってて、『ラブレター』があって、カワサキ(ファクトリー)さんがいて、『ワンナイト人狼』が出て、『街コロ』が出て。それ以外にもOKAZU BRANDBakaFirePartyもいてですから。毎年凄いのが出てくるって事でヤポンブランドが注目されてたんですよ。そんな時なので私は良い時に出せた。いろんな人の目に止まると」

ーーメーカー側としては日本から毎年凄いのが出てくるぞって期待してたんですかね?

佐藤「そうですね。ホント良いタイミングで」

ーー『タイムボム』は世界中で何種類あるんですか?

佐藤「えっと……スペイン、韓国、アークライト版同人版も含めると9種類ですかね。最初が英語版だけの契約だったので、他のメーカーからこの言語で出したいって感じで複数と契約させてもらってます」

ーー凄い数だ。ちなみに『タイムボム』以外のゲームで版権取れてるのはあるんですか?

佐藤「『タイムボム・エボーリューション』はイエロから、『シブヤ』がスペインと中国のメーカーから。『スティンキー』は版権取れてるんですけどコロナの影響で止まってるらしくて。『レクト』はリモートで何度か打ち合わせして、『ダンスオブスパイダー』って名前で出てますね」

ーーそんなに!じゃあ、それ以降に作った『ハイドアウト』『スプリット』『ゴールデンアニマル』は?

佐藤「そこからはコロナ禍でエッセン行けてないので」

ーーそっか。作り手もメーカー側も一旦止まってる感じですかね。版権は全部エッセンがきっかけって事ですか?

佐藤「うーん、どこで来るか分かんないです。エッセンに持って行って出展した時もあるし、帰って来てからの時もあるし、行く前に決まる時もあるし、とにかくエッセンに出して広がってからです」

エッセン行くのに最もお金が掛かるもの

ーーエッセン行くのも当然タダじゃないですよね?

佐藤「ブース代はヤポンブランドにみんなで割り勘で払って、あとは自分の交通費と宿泊代。やっぱ、ゲームの輸送費が一番掛かるんですよ」

ーー海外とは言えゲーム送るだけならたかが知れてるでしょ。

佐藤「いや、ゲーム100個とか200個なので段ボール1つには収まらないですからね。小箱か大箱かで全く違いますけど、人によっては輸送費が相当高くつきます。安くて10万円とか」

ーーうわ、そんなにするのか

佐藤「ヤポンブランドも最初はゲームを航空便と船便に分けてドイツに送ってたんですけど、それは高くなるってのが分かってきて。ヤポンブランドもそんなに歴史ないですからね。その辺も改善されつつあるのかな?でもゲームの輸送費はバカにならないです」

ーー1回エッセン行くと結構な出費ですよね?

佐藤「3040万円ですかね。持って行ったゲーム全部売れてもペイ出来ないです。まぁ、向こうに一週間滞在しますから、一週間の海外旅行なんですよ。会場とホテル以外どこにも行かないですけど」

ーーゲーム作ってれば誰でもヤポンブランドからエッセンに行ける?

佐藤「ある程度のレベルのゲームは求められますけど、誰でも。でも行って帰って来ましたってだけではエッセンにゲーム出したって以上の意味はなくて、私としては1つ版権を取れればゲームとして上がりです。完成。だからタイトルも全て英語表記にして、カードにも日本語載せてないので。もっと厳しい目標の人もいますけどね」

ーー行った人はみんな版権取って帰ってくるんですか?

佐藤「いや、取れてる人は半分もいないんじゃないですかね。1回取れると取りやすいんですけどね。契約したそのメーカーの人がブースに来て雑談しながらゲーム渡したり出来るんで。幸い私の場合は『タイムボム』が数社から出てるのでいろんなメーカーに新作を渡しやすいんです。1回取れると2回目以降の難易度は下がりますね。だから同じ人が何度も海外版権取るって事はあります」

ーー版権に関するお金の話は訊いてもいいんですか?会社によって違うでしょうけど。

佐藤「大丈夫ですよ。ロイヤリティが卸値の数%とか。売値じゃないので、日本とは違うよって凄く丁寧な説明を受けましたね。卸値って定価の4割とかなので思ってるより少ないですね。ま、その代わり日本とは売れる数が違うんで。日本語喋れる人1億人だけど英語はもっといますから」

ーー今まで一番売れた佐藤さんのゲームは?

佐藤「それは『タイムボム』です。シリーズ累計で30万セットは売れてるはずです」

ーー世界中でそんなに?!まだ売れてる?

佐藤「コロナ禍で売り上げ増えましたね」

ーー時期的に海外でも家の中で遊んでるのか。ボードゲームやる人限定だけど、日本より海外の方が名前知られてるんじゃないですか?

佐藤「そうでしょうね。海外の方がサインしますからね。ゲームマーケットでサインしましょうか?って言うとニヤニヤされて冗談に受け取られるんですよ。エッセンだと普通にサインしてるのにって思いますけど」

ーー海外だと『タイムボム』の作者の新作って事で注目浴びたりするもんですか?

佐藤「う〜ん毎年ヤポンブランドのブースに来てくれる人はいますけどね、あまりそういう注目されてるとは感じないですね。お前が凄い好きなんだ〜って言ってくる人はたまにいますけどね」

ーーその好きって何?性的な意味なの?ゲームデザイナーとして?

佐藤「性的にじゃないと思いたいです。私だけじゃなく他の人にも熱狂的な人っているんですよ。日本じゃ見ないですよね。これはエッセン行かないと出会わないでしょうね」

目標はドイツ年間ゲーム大賞

ーーエッセン行くのは宣伝って事なんですよね。で、気になるのは日本国内のゲームマーケットだと佐藤さんは全く宣伝しませんよね?

佐藤「エッセンは行って出展してインストとかしますよね。ゲームマーケットも同じなんです、やってる事は。要はツイッターとかゲームマーケットのサイトのブログをやってないだけで。イベントは好きなんですけどツイッターとかがイヤなだけなんです」

ーーせっかく作ったゲームだし多くの人に遊んでもらいたいとか制作費を回収したいとかは無いんですか?

佐藤「頑張ればゲームマーケットで100個売れますけど、1つメーカー捕まえれば10万個売れちゃいますからね……っていう成功体験を『タイムボム』でしてしまってるので、どこかにそれがあるんでしょうね。今までのゲームマーケットで100個売れたのは『タイムボム・エボーリューション』と『ハイドアウト』だけなので。私売れてないんじゃないですか?『タイムボム』作った人のゲームって事でもっと注目してくれてもいいのに()

ーーう〜ん一発屋なのかな()やっぱ宣伝不足なのではと思いますけどね。今回の新作『ゴールデンアニマル』もかなり良く出来てるのに全くウワサに聞かないと言うか。

佐藤「私はゲーム作りますけど……う〜ん、例えば、クニツィアやクラマーが自分で宣伝しますか?って思うんですよ。だったら宣伝しなくていいかなって。その暇があったらゲーム作りたいです、ゲーム作れるのは自分だけなんで」

ーー分かりますけど、クニツィアやクラマーは宣伝してくれる人がいるからでしょ。

佐藤「というか、10年前だからゲーム作ってましたけど今のゲームマーケットなら飛び込む勇気ないです。昔は透明のパケにカード入れて20個くらい売ってる人とかいたじゃないですか。ルールさえ作れればいいっていうか。今はルールだけじゃなく、絵は凄いし、ブースにのぼり立てたり、映像作って編集してYouTubeにアップしたり。そこまでしないとゲーム作る資格ないの?って思っちゃって」

ーーみんなルールを売ってるって言うより商品っぽいですよね。自主制作のレベルじゃないと言うか。最後にですけど今後の目標をお聞きしたいのですが、ゲームは作り続けたいですか?

佐藤「はい。作り続けたいですし、エッセンには毎年行きたい。自分のゲームを出展して海外版権を取りたいというのが最低ラインの目標ですね。もう一つ上の目標は賞を獲りたい、SJDSDJ?」

ーーSDJ、ドイツ年間ゲーム大賞ね。

佐藤「昔SDJなんて言い方してませんでしたよね?選出リストに選ばれた事はあるので、大賞を。こればっかりは狙って獲れる物でもないですし、運とかいろんな要素があるので。獲る可能性のあるゲームを作り続けたいです、アイデアが出るうちは。いつアイデア出なくなるか分かりませんので」

ーー『恐怖の古代寺院』(『タイムボム』のドイツ語版)が2017年のドイツ年間ゲーム大賞の推薦リストですね。更に上ですよー!

佐藤「あとは『タイムボム』級のゲームを死ぬまでにいくつ作れるかですよね」

ーーそっかぁ〜、一発屋ですもんね。

佐藤「でもホントよく言われるんですよ〜。『タイムボム』しかないですよねって『タイムボム』すら無い人に言われますから」

ーーハハハ…。では最後に今後発売されるゲームとか宣伝あれば

佐藤「なんかあったかなぁ

ーーあれ?なんか和菓子のゲームが出るとか出ないとか。ゲムマに試作品が飾ってたような。

佐藤「あ!『菓子道』が次のゲームマーケットで出るはずです。ライブレイジって会社から。ホントは今回のゲムマで出るはずだったのが中国の工場がロックダウンで次回になります。ま、ルールとか私がやる事はもう終わってるので」

終わっての感想

佐藤さんが作るゲームって一見難しそうなのにどこかシンプルで分かりやすく直感的な部分があって、その辺がルールの美しさとして表れてるのかなぁと感じました。ゲームタイトルも検索で引っ掛からない程にシンプルですしね。

今の同人ゲームと昔の同人ゲームのどちらが良かったのかは比べられないけど、佐藤さんみたいに本質に向き合う人にしてみれば昔のゲームマーケットが魅力なんでしょうね。ビジュアルとか宣伝で勝負をしないでゲームのルールだけを見て欲しいという想いが伝わりましたから。ってかさ、せっかく面白いゲーム作ってる人なんだし誰か宣伝してあげて〜。