今年は、イメージを文字で伝えるとたった数秒でイラストを完成させるMidjourneyなどのAIが話題になりました。近未来が急速に現代にやって来たなぁという技術の進歩ですね。2023年は画像生成AI元年と言っても過言じゃないでしょう。もう人間が時間を掛けて絵を描く時代じゃないのかも知れません。
AIが描くイラストも否定しませんが、やっぱり「あの人が描く絵のタッチが好きだなぁ」というものはありますよね。どれだけAIが素晴らしいイラストを短時間で描き上げようと、最終的には機械よりも人ですよ。
という訳で、ボードゲームのアートワークを担当したことがある著名人をピックアップしました。アートワークと言ってもイラストだけの参加という場合が多いようですが、ゲームの良し悪しやルールではなくボードゲームのアートに注目してみた記事です。「あの人がボードゲームのイラストやってたの?」という人を中心に集めました。
では、順不同で紹介します。
村上隆(UNO)
漫画やアニメから多大な影響を受けていて、伝統的な日本画とアニメーションのセル画に共通して見られる造形上の特徴を抽出した「スーパーフラット」を確立した日本を代表する現代アーティスト。
カードゲームの『UNO』はアーティストシリーズとしてバスキアやキース・ヘリングなどとコラボをしていて、その第5弾が村上隆です。発売と同時に即売り切れだったようで実物は見てませんが、代表作であるフラワーが描かれたカードが多いようですね。ここまで派手だとゲームどころじゃなさそう。またゲームには使用しないカードを4枚並べるとイラストが完成するスペシャルカードが入っているのも特徴。
— takashi murakami (@takashipom) August 3, 2022
ケン・ニイムラ(ケン・ニイムラ版ラブレター)
『ヘンシン』や『I KILL GIANTS』で知られる漫画家。特に『I KILL GIANTS』は『バーバラと心の巨人』というタイトルで実写映画化されているほどの作品です。
16枚だけで遊ぶ『ラブレター』のイラストをケン・ニイムラさんが描き下ろしたバージョンが2014年に作られました。オリジナルとは違ってキャラクターの全身が描かれて、可愛らしいのがテーマに合ってて良いですね。トークンがハート型なのも素敵。
「Love Letter / ラブレター」はこんな感じです。その② pic.twitter.com/K1A7KFi0RC
— ken niimura (@ken_niimura) November 13, 2014
松浦聖(ヒドゥン・リーダーズ〜帝国の策士たち〜)
『聖剣伝説 LEGEND OF MANA』や『ブレイブリーデフォルト』などスクウェア・エニックスのテレビゲームを中心に様々なゲームでモンスターデザインをしていたデザイナー。ゲームだけではなくアニメ『デカダンス』ではガドルという謎の生命体のデザインを担当しています。
2022年にオーストリアのメーカーから発売されたゲームでイラストを担当しています。日本語版じゃなく、海外のオリジナル作品のイラストを描いてるとは珍しいケースです。しかもボードゲームのイラストを出掛けるのはこれが初。83枚のカードは全て書き下ろしでイラストがゲームの雰囲気を高めてくれます。
ヒョーゴノスケ(老師敬服)
ポスターや挿絵など数々のイラストを出掛け、2017年には映画『ドラえもん のび太の南極カチコチ大冒険』のポスターがかなり話題になったイラストレーター。最近だと星のカービィ絵本シリーズ『カービィのひとり時間』のイラストを担当しています。
アナログゲームとしてはポケモンカードのイラストを何枚か描いていますが、ボードゲームはHOY GAMESのオリジナル作をホビージャパンがリメイクした『老師敬服』のみです。キャラクターだけでなく背景なども描いています。イラスト1枚がどれも絵本のようで、もっといろんなボードゲームのアートワークをやって欲しい1人です。
今夜19時41分から「映画ドラえもん のび太の南極カチコチ大冒険」テレビ初放送!
イメージボードと宣伝用ポスターを描かせていただきました。 pic.twitter.com/tPW88TQ37p— ヒョーゴノスケ (@hyogonosuke) March 2, 2018
夢眠ねむ(ポコン!)
アイドルグループ「でんぱ組.inc」の元メンバーで、現在は夢眠書店の経営者。美大出身で、大学時代に制作した作品などを収めた作品集『まろやかな狂気』を出版するなどアーティストとしての活動もしています。
2015年に誕生してグッズ展開もしていた「たぬきゅん」が、するめデイズが作った『ポコン!』をアークライトがリメイクする際に採用されました。対戦ゲームなのでたぬきゅんの相手として「きつねどん」という新キャラクターが誕生。オセロのように挟んだら裏返すという幼い子供でも理解出来るルールで、分かりやすいゲームにピッタリのイラストです。
ポコン!発売日|夢眠ねむ #note https://t.co/pe8dVcbhuJ
— 夢眠ねむ (@yumeminemu) June 17, 2021
磨伸映一郎(シャドウレイダーズ)
『氷室の天地 Fate/school life』などで知られる漫画家。名作ボードゲームなどを描いた『アナゲ超特急』という漫画も描いているほどで、アナログゲーム好きとしても有名。
廃版となり入手困難だった正体隠匿ゲーム『シャドウハンター』をグループSNEがリニューアルした『シャドウレイダーズ』のイラストを担当しました。磨伸さんご自身はかなりボードゲームを遊ばれいるのに、イラストは『シャドウレイダーズ』の拡張と『ソーシャル・トレイン』だけというのは意外。
そんな訳で「右手で仕事できなくても、トークで仕事はできるよね」という事で大怪我復帰第一弾は大阪のキウイゲームズさん、4/30(火・国民の休日)にトークライブ&ゲーム会『オールドゲームを思い出せ!!』に出演しますー。
10連休は昭和アナゲが頂いた!! pic.twitter.com/ZSZ6MfdPfx— 磨伸映一郎@氷室15巻発売中! (@eiitirou) April 13, 2019
スーパーログ(インフェルノ)
昔のアメリカンコミックのようなタッチのイラストを描くイラストレーター。アメコミ風のイラストですが、実際にMARVELで表紙などを描いてます。他には映画『シン・エヴァンゲリオン劇場版:Ⅱ』に参加していたり、Tシャツのデザインなど幅広く活躍しています。個人的にはライブのフライヤーのイラストの人というイメージ。
ライナー・クニツィアの名作『インフェルノ』をテンデイズゲームズが2014年にリメイクするときにイラストを担当しました。オリジナルは赤いカードに優しそうな悪魔が描かれていましたが、テンデイズゲームズ版はかなりセクシーな女性の悪魔が描かれています。2016年に箱が小さくなったときにもイラストが全て修正されました。
『インフェルノ2016年版(https://t.co/zWCSgp1ykt)』テンデイズゲームズさんのサイトで販売開始しております。2014年版と比べて箱がコンパクトになっております。パッケージ周りと絵札と説明書の絵はすべて描き直しました。よろしくどうぞ! pic.twitter.com/ENsva4efGX
— スーパーログ (@superlog) December 19, 2016
error403 (メイメイ)
顔も出さず、プロフィールも1990年生まれで北海道出身しか分かっていないイラストレーター。独特なタッチのイラストは一度見るとクセになってしまうほどで、最果タヒさんの単行本『モグ∞』の装丁など様々なイラストを手掛けています。
このゲームはイラストだけなくゲームデザインも兼ねています。今まで名前が無かったものに名前をつけるゲームで、お題も絶妙に練ってあるのが面白いですね。このゲームの他に非売品の『学園チョイス』やコロナ禍に散歩しながら遊ぶ無料印刷ゲーム『さんぽビンゴ』のイラストも描いています。
つくった pic.twitter.com/IgzpU6NSIo
— 2nd_error403 (@2nd_error403) April 28, 2020
ぽよよん🖤ろっく(探ぱん 探偵になってぱんつを当てるゲーム)
『化物語』や『ひぐらしの鳴く頃に業』のキャラクターデザインを担当したアニメーターの渡辺明夫さんの別名義。数えきれないほどのアニメ作品の作画監督を務めています。
女の子がどんなパンツを穿いているかを当てるというゲームの原案とイラストを担当しています。トレーディングカードのデザインをした事はあるようですが、カードゲームでここまでしっかりイラストを描いたのもゲームデザインをしたのも初めてのようです。
平尾アウリ(#推しあつめ)
地下アイドルとファンを描いた『推しが武道館いってくれたら死ぬ』などで知られる漫画家。
アイドルグルーブ「ふぁん!といぼっくす」の柚井ゆいさんが自分達のグループをモチーフにしたゲームをデザインし、平尾アウリさんが「ふぁん!といぼっくす」のメンバー4人を描きました。ファンにとってはたまらない作品でしょうね。
たきりょうこ(801号室へようこそ!)
ツイッターで話題になった、漫画家の職場の猫を描いた『職場の猫』などで知られる漫画家。
ゲーム業界を描いた漫画『大東京トイボックス』の作品の中に出てくる架空のテレビゲームを、ボードゲームとして作り上げたという変わりダネ。原作の漫画はうめさんの作品ですが、アシスタントのたきりょうこさんがこのゲームのイラストを描いているという、これまたファンにとってはたまらないですね。
326(タイムボム)
音楽グループ「19」の元メンバーのイラストレーター。絵本の出版も多く『ぼくのおばあちゃん』は映画化されています。
同人ゲームで話題になっていた正体隠匿ゲームをアークライトがリメイクする際にイラストを担当しました。326さんがボードゲームに関わるのはこのゲームが最初で、後に『ito』『ミリオンヒットメーカー』『poi』のゲームデザインや『シリト:リミット10』のイラストなどを手掛けています。
萩岩睦美(ペアーズ)
『銀曜日のおとぎばなし』『がんこちゃん』などで知られる漫画家。北九州市の人権推進キャラクター「モモマルくん」のキャラクターデザインもしています。
テンデイズゲームズが『ペアーズ』の日本語版を発売する時、日本オリジナルのデザインが3種類作られました。切り絵作家のタナカマコトさんがアートデザインした『ファニーハッターデッキ』、タンサンファブリークがデザインした『ボールゲームデッキ』、そして荻岩睦美さんが担当した『リトルバードデッキ』です。今のところボードゲームに関わるのはこれだけのようです。
劇団イヌカレー・泥犬(ウィキッドフォレスト)
『獄・さよなら絶望先生』のオープニングや『魔法少女まどか☆マギカ』の異空間設計などで知られるアニメーション作家ユニット。2白犬と泥犬の2人で構成されています。
儀式に参加する1人になって、牛の頭を持つ迷宮を探索して魂の欠片を集めて脱出するというかなり独特な世界観のボードゲーム。そこに劇団イヌカレーの泥犬さんのおどろおどろしいアートワークがピッタリ。ゲームが先にあったのか、アートデザインが先にあったのか。続編の『ウィキッド・ラビリンス』もアートワークを手掛けています。
岬ましろ(花見小路)
イラストの即売会「メルメリィマーケット」を主催するイラストレーター。
国王になるために7つの派閥から支持を得るのが目的の『二十一輪の花』という同人ゲームがあって、それが台湾のメーカーから京都の芸者を囲い込むというテーマに変わり『花見小路』という名前でリメイクされました。そして日本語版が作られる時に岬ましろさんがイラストを担当しました。台湾版がちょっと大人向けでダークな雰囲気だったのに対し、日本語版は明るく見やすくになりました。
神保賢志(スイートハニー、ビーマイン!)
『漫画じゅんぼくん朝と夜』などで知られるイラストレーター。ロックバンド「おとぎ話」のMVでは監督も務めています。
懐かしい感じがする可愛いイラストを描くので、古っぽいイメージのポスターや昭和を彷彿とするグッズなどのイラストを数多く手掛けています。ボードゲームに関しては調べた限り『スイートハニー、ビーマイン』だけのようです。もっと依頼があっても良さそうな気が。
ネゴシックス(ベストフレンドS)
吉本興業所属のピン芸人。現在放送中のフジテレビ系列バラエティ番組「火曜は全力!華大さんと千鳥くん」では、番組のロゴとスタジオのセットを担当しています。
お題を引いた人に選んでもらうための回答を考えるコミュニケーションゲームで、2013年に発売された『ベストフレンド』でイラストを担当しました。また、ピクセルスレートを付けて2015年にすごろくやがリメイクした『ベストフレンドS』でも引き続きイラストを担当しました。なんとも言えない味のあるイラストで、子供でも遊べるゲームというのが絵のタッチで分かるのは見事!
ここからは、ゲームの為にイラストを書き下ろしたりデザインしたのではなく、すでに発表されている漫画を使用したボードゲームの紹介です。
尾田栄一郎(ONE PIECE VIVRE RUSH)
『ワンピース』で知られる漫画家。『ワンピース』は1997年から連載が続いていて、ギネスブックには「最も多く発行された単一作家によるコミックシリーズ」として世界記録に認定されています。
お題に合うカードをいち早く取るカルタゲームで、イラストは第1話からワノ国編までに登場した100人のキャラクターが描かれています。書き下ろしではないので、あのセリフや名場面がそのまま描かれています。
久保帯人(BLEACH 巻頭歌骨牌 SONGS OF THE SOUL)
『BLEACH』で知られる漫画家。映画化、ミュージカル化、小説化、ゲーム化など様々なメディアミックスをしていて国内外で人気の漫画です。
上記の『ONE PIECE VIVRE RUSH』と同時に集英社から「マンガボドゲ」第1弾として発売されたカルタゲーム。『BLEACH』の単行本には巻頭に短いポエムが掲載されていて、それに対応したコミックの表紙をいち早く取るというゲームになっています。ガチのカルタですね。もちろん全74巻の表紙カードが入っています。
浅野いにお(浅野いにお しりとりスピード)
『おやすみプンプン』などで知られる漫画家。バンド活動を通して大学生カップルを描いた『ソラニン』は宮崎あおい主演で映画化もされています。バンドを組むほどの音楽好きで、様々なアーティストのCDジャケットも手掛けています。
場に並べたカードと手札で連想した言葉でしりとりをして、いち早く手札をなくすのが目的のゲーム。イラストは『デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション』『おやすみプンプン』『勇者たち』『ソラニン』『素晴らしい世界』の5作品の中から50シーンが使われています。
かんばまゆこ(犯人の犯沢さんの4コマンガ)
『名探偵コナン 犯人の犯沢さん』などで知られる漫画家。『名探偵コナン』の犯人が主役のギャグ要素のあるスピンオフ作品です。
マンガのカードを4枚置いて面白い4コマ漫画を作る『4コマンガ』の『名探偵コナン 犯人の犯沢さん』バージョンです。作品の中から180もの漫画が使われています。これが実現するなら、ギャグ漫画は全てこのゲームで販売して欲しいですね。
西島大介(すべてがちょっとずつ優しい世界)
『すべてがちょっとずつ優しい世界』などで知られる漫画家。映画『世界の終わりのいずこねこ』の脚本を担当したり、映画『新世紀エヴァンゲリオン劇場版Air/まごころを、君に』CGモデリングをしたり、DJまほうつかい名義で音楽活動をしたり幅広く活躍しています。
同名タイトルの漫画から60枚ものイラストが使われているだけでなく、雰囲気もそのまま。もはや漫画を原作にしたカードゲームと言えるのではないでしょうか。
森多ヒロ(ロジカル真王)
『ベイブレードバースト』や『キリヲテリブレ』などで知られる漫画家。
漫画の『ロジカル真王』が別冊コロコロコミック2021年11月号で連載開始して、その漫画の中で遊ばれているカードゲームが『ロジカル真王』のタイトルで実際に発売されたという超珍しいパターンなのです。原作の中のイラストを使用したゲームというまとめ方をしましたが、これは同時進行の一大プロジェクト!更に2021年12月からはNintendo Switchでも遊べるようになりました。
全部知ってました?あの人がイラスト描いてたの?というゲームも多かったのではないでしょうか? きっと他にもあるんでしょうけど。仕事の依頼があって描くケースもあれば、元々ボードゲームが好きで前のめりで描いてる人まで様々。ボードゲームのアートワークも馬鹿に出来ませんね。
ボードゲームって、面白いかどうかの感想に落ち着きがちですが、アートワークも魅力の1つです。イラストはもちろん、柄や色、コマの形やマークの位置まで、様々なこだわりが詰まっているのがボードゲームなのです。次に遊ぶ時はアートワークに注目して遊んでみましょう!